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発表会後の放課後に

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発表会後の放課後に


「みなさん、お疲れさまでした。カンパーイ!」

「カンパーイ!!」


演劇が終わって、片づけ終わり、後は皆でお祝い会。

ホールには茶々森堂等々からの差し入れや、近所のレストランから買ってきた料理や飲み物が所狭しと並べられている。
全員手にはジュースを持ち、代表として脚本も書いたあかねが乾杯の音頭を取っていた。
先生も参加では流石にお酒はでない……はずなのだが実は混ざっていたりする。
しかもそれが大里巧先生の仕業だったりするので、性質が悪い。
他の先生が気付いた時には後の祭り。
今回は黙っていることで解決とすると決めていた。
ついでに後で巧先生には説教すると真田先生が言っていたが、速効巧は逃げていたようだ。

それはともかく、お祝いの会はお互い大いに健闘を称え、非常に盛り上がっている。

そんな中、ある一角では、ぶちぶちと文句を言っている集団があった。

「なんで本当に木の役になってんだよ!? だれだよ! そんな役作ったの」
「あっはっは、言霊ってあるもんだねぇ」

相川拓司はすっかり出来上がってしまってぶちぶちと文句を言う横で、
その背中を鷲ヶ谷和穂はばんばん叩く。

「ちょっと小耳に挟んだから推薦してたのよね」

同じく近くで飲んでいたウェルチがぼそりと一言。
その言葉に拓司はグリンと体ごとウェルチの方向に向ける。
そのまま無言で近づくとウェルチの両肩をガッシと掴む。

「部長のせいですか!! 部長のせいなんですか!! 高等部になって木の役なんて役やらせる原因つくったのは!!」
「ちょっ! 肩持って揺するの止めてー!! 酔うからー!!」

拓司は大声で叫びながらウェルチを大きく揺すり始めた。

「あはは。拓司酔ってる?」
「多分」

その様子を見ながら千鶴と修は笑いながら頷き合った。


その一方、その騒動が聞こえていたのか、別の少年が暗い顔して黙々と食べている。

「はぁ、木の役ならまだいいですよ……僕なんて女装ですよ、女装。きっとあれは京先輩の企みだよね」
「いやぁ、受けてたわよ! 主に女性陣に、うん、大正解って奴ね」
「……えっと……可愛かったと、思います」

牧村拓人がため息を吐くように言えば、秋月京がそれを肯定し、拓人の隣に来ていた河内静奈がぽそりと言う。
その言葉にさらに落ち込んでしまった拓人に静奈は慌てるが、続く言葉は出てこない。

「いやぁ。今のフォローじゃなくてとどめよね」
「……間違いないだろ」
上原梢は楽しそうに見守っている横では小鳥遊雄一郎がローストビーフを食べ終えた後、肯定した。

今回の演劇に関わった全員がなんだかんだで知り合いとなっている。
全員が一つの目標に一丸となってむかったためか、いつの間にか連帯感が出来上がっていた。




所変われば、そこにはやはり盛り上がっている所がある。
ただしの盛り上がり方も変わっている。
言ってみるなら少しだけ隠れた雰囲気の場所だった。

「カミ山……できたか?」
「ああ、もちろんだ。始めに言うが一枚1000円。びた一文まけはしない……」
「たけぇ! だが俺は買うぞ!」
「……毎度」

一人は放送部員のカミ山ラジ男。もちろん本名ではないが、すでに本名で呼ばれなくなって久しかった。
もう一人は小型省。狙いはカミ山が撮影した、ドレスで着飾る美少女達の写真である。
もちろんその二人だけではなく、かなりの人数がちょっと立ち寄り、購入していく。
ある者は自分の写真を記念に。ある者は密かな思い人の写真をこっそり買っていく。

――そんな所で新たな闖入者が現れた。

「……これ、一枚」
「おう、上得意さん来たねぇ。毎度あり!」
「……ん? おめぇ。台先輩の妹の……」
「……忘れろ」
(こくこく)

余りの迫力に無言で首を振る省。その相手は大きなマスクとサングラスをした少女だった。
名前はあえて言わないが、まぁすでにばれているだろうので割愛する。
腕っ節は強いが妙に小物っぽい動作で省は購入品を懐に入れた。


そんな盛り上がっている中、静かになっている一角があった。
静かとは言ってもそれは重苦しい雰囲気ではない。
そこに集まっている面子は少しだけ真剣な顔で話していた。

「それにしても、ここまで悪意のない内容にするのも珍しいわね」

そんな感じで切り出したのはアリス。オレンジジュースを飲みながら、演劇の内容について話している。

「……やっぱりそう思いますか?」

そう聞き返すのはあかね。今回の脚本を書いたのが彼女。その点については迫からも聞かれた点であった。
あかねの問いに答えるのはアリスではなく、もう一人の少女

「ふむ、そうだね……。例えば、本来なら悪い魔女だった、死の呪いを掛けた魔女。
あれもその後眠りの呪いに変更されることを分かっていて呪いを掛けたといえるな」

そう言うのは、霧埼。こちらはウーロン茶を片手に話している。

「わざわざ針を刺すとき、死の呪いを与えた魔女が、100年眠ることを示唆している」
「ええ、そのとおりです。あの場面はそのままの意図です」

あかねはアップルジュースを飲みながら答える。

「あ、それに王子が茨の城に入る動機も変わってたのよ。
茨姫に出てくる王子が茨の城に行く理由って、大抵眠っている美女を見たいと言う理由よね。
でも今回の演劇だと、あくまで眠りから助けるのが目的になってたのよね」
「そこら辺は露骨に強調しましたからね。できれば見ている人にも気付いて欲しかった点です」

あかねは微笑みながら言う。
そんなあかねに霧埼はひとつ疑問を投げかける。

「なぜ、ここまで善意の人間ばかりが登場するようにした?
物語として見た場合、下手すればメリハリがない、ともすれば現実味がないと思われかねないが――」
「現実味のない話はともすれば薄っぺらく感じられてしまう。それなのにあえてそうした理由を俺も知りたいな」

霧埼の疑問の途中に割り込んだのは宇佐野和。彼も創作部に所属しているからか、疑問に思っている。

三人の視線が向けられていることをあかねは意識し、頭の中で少し整理。
それから息を吐き出すように語り出す。

「多分、この世の中は思った以上には悪意は多くない、そう思いたいからなんだと思います。
本当なら現実味のない話かもしれません。そう捉える人も多いかもしれません。
……でも私にはそう思ってない部分がありました」

そこであかねは一旦言葉を区切り、三人をもう一度見る。
三人は黙って頷き、続きを促す。
その態度に真剣な物を感じ、あかねももう一度言葉を続ける。

「私は高校に入って、荵や迫先輩とあって、良かったと思ってます。
だから、例え今が大変でも、未来はきっと嬉しいこと、楽しいことがある。
その時は不幸かもしれないけど、将来は幸せが待っている。
――そんな事を表現したかったのかもしれません」

その言葉に二人はしばし口を閉じる。

「どうしました。先輩?」

「うーん、いやぁ、あかねちゃんまだ一年なのに結構考えてるな、と思って」
「そうだな。私もそう思う」

その言葉にあかねは顔を赤くし、途端に声が小さくなってしまう。

「いえ、そんなことない……ですよ。足りないことばかりで……」

「そんなことないわよ。足りないと思っても、そこを改善すればいいんだし。
今日は本当に良い演劇だったものね。反省会は後にして後はぱーっと、騒ぎましょうか」
「……はい!」

四人は頷き、別の盛り上がっている場へと向かった。

そしてその後夜祭はさらに盛り上がりを見せていた。




そんなこんなで演劇は終わり――いよいよ夏休みが近づいていた。



終わり。


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