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怪談もどき

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怪談もどき




 こんばんわ。
 諸事情により最後にやるはずだったのをブチ込むとかなんとか作者が言ってるわ。夏が嫌いになりそうだとも言ってたけど……。まぁ勝手に嫌いになればいいわよね。

 本来ならいろんな人が出てくるはずだったけど、今回は出てこない。
 このお話は直接私が語ってあげる。
 この話はね、昔の仁科のお話なの。一体誰が出てくるのか。このお話の真意は一体何か……。
 フフ……。それは少しずつ明らかにしていけばいい。別に夏以外にやっちゃいけないわけじゃないし。それに、夏は来年もやってくるんだから。

 じゃあ、さっそく始めましょう。とっても悲しい、とっても悲しい、怨みのお話……


 仁科の怪談 第X回
 【新浦文子(噂)】


 昔、仁科学園にはどこにでも居る普通の高校生である新浦文子という女の子がいました。
 とっても控えめで大人しい女の子でした。
 熊の縫いぐるみが大好きな、本当に普通の女の子でした。

 ある日、彼女は通学途中に猫が車に轢かれそうになる所に遭遇しました。

 彼女は危ないと思いました。なんとかしなきゃと思いました。
 彼女は車が猫を避けて行けばいいのにと祈りました。とっても強く祈りました。
 猫を轢きそうになった車は、間一髪で猫を避けて電信柱にぶつかりました。運転していた人は死んでしまいました。

 彼女は普通の女の子でした。
 成績もちょうど真ん中くらい。見た目だって普通だと言える程度です。
 ただし、とっても控えめな女の子だったので、友達を作るのは少し苦手でした。彼女はそれだけが悩みだったのです。

 ある時、体育の授業中の事です。
 同じクラスの陸上部の女の子がいました。彼女はとっても優秀な選手で、大会ではすごく期待されていた人なのです。
 彼女は、ちょっと意地悪な人でした。
 運動が苦手だった文子は彼女と居るのが少し嫌いでした。なぜならば、彼女が意地悪な事を言うからです。

 五十メートル走のタイムを計る時です。文子はその陸上部の女の子を見ていました。
 彼女が嫌いだった文子は少しだけ、転んでしまえと思いました。

29 名前:怪談もどき ◆wHsYL8cZCc [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 22:00:07 ID:fmhq3Yr+
 彼女は走りました。
 とても脚が速い女の子でした。彼女は半分ほど進んだ所で、突然転んでしまいました。
 足首をくじいて、骨折してしまったようでした。そして彼女は、陸上部を辞める事になりました。


 文子はある日、恋をしました。
 同じクラスの男子生徒の事を好きになりました。彼の事を考えると、つい頭がぼーっとなってしまいます。
 授業中でもついついぼーっとしたりしてしまいます。

 窓ガラスががたがたと揺れました。
 壁に貼られた生徒達の書がばさばさと落ちました。
 黒板の前のチョークが白い粉を出しながら割れました。

 文子はずっとぼーっとしていました。ずっと彼の事だけを考えていたのです。
 彼はその日、体調を崩して早退しました。それでも文子は彼の事を考えてしたのです。
 クラスのみんなが文子を見ていました。

 先生に呼ばれて職員室に行きました。校長先生や教頭先生もいました。
 みんな、なんとかならないかと言っていました。どうにかならないかととっても悩んでいたのです。
 しかし。文子には何事か解りませんでした。
 先生たちは、この娘は大事な娘だからと言いました。

 次の日、お昼休みに文子は大好きだった彼から放課後に会いたいと言われました。
 文子は喜びました。とても喜んだのです。大好きな彼に誘われるなんて、まるで夢のようなお話だったのです。文子はわくわくしながら、放課後を待ちました。

 そして、放課後です。
 文子は喜んで言われた場所に行きました。学園の隅にある、まるでジャングルのような所です。
 彼はいました。ですが、あの大好きだった笑顔じゃありませんでした。
 他の人も居ました。たくさんたくさんいました。よくみると、文子のクラスの人達が全員揃っていました。

 文子は言われました。化け物とか、悪魔とか。
 大好きだった彼は文子の想いに気付いていました。文子がかんがえた事は、文子が意識した人に全て伝わっていたのです。
 陸上部の彼女も居ました。彼女は転んだ理由が文子だと言っていました。

 文子は否定しました。だって文子は、とても普通の女の子なのです。

30 名前:怪談もどき ◆wHsYL8cZCc [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 22:01:27 ID:fmhq3Yr+
 ですが、聞き入れられませんでした。
 そして、始まりました。とっても苦しい、とっても凄惨な。それは彼らにとっても、命懸けの事でした。自分達を守る為でした。

 文子は寄ってたかって叩かれました。お腹が凄く痛くなりました。すごく喉が渇きました。内蔵が破裂したのです。
頭は皮がべろんと剥がれるほど叩かれました。頭の形が変わっていました。頭蓋骨が割れて、脳みそが少し出ていました。
 腕は間接が増えたかのようになっていました。指はまるで投げ出された手袋のようになっていました。

 それでも、文子は生きていました。
 彼女は思ったのです。生きたい。死にたくない……! と……。
 だから文子は死にませんでした。でも、そのせいで普通では考えられない苦痛を味わう事になったのです。

 皆は言いました。やっぱり化け物だ。人間じゃ無いと。
 大好きだった彼がポリタンクを持ってきました。灯油が入っていました。
 それを、文子にかけました。
 文子は察知しました。これから生きたまま焼かれるのだと。そして、文子は焼かれました。

 それでもなお。文子は死にません。生きたかったからです。ずっとずっと、真っ黒焦げになるまで。
 文子の身体は、焼かれた人が取るポーズをとって動かなくなりました。

 文子は考えました。もう身体は使えないと。
 文子は考えました。なぜ私がこんなに苦しむのかと。
 文子は考えました。みんな大嫌いだと。

 皆は真っ黒焦げの文子を見ました。
 死んだと思ったのです。ところが、皆は驚きました。

 真っ黒焦げの文子の顔は、笑っていたのです。
 とってもおぞましい笑みを浮かべたまま、真っ黒な顔で固まっていました。
 皆は穴を掘ってそれを埋めました。場所は今は誰も知りません。誰も答えられないのです。

 何故ならば、その次の日には、クラス全員の子が行方不明になってしまったからです。
 当然、その前に何があったのか、知る人は誰も居ませんでした。


※ ※ ※


 ……以上よ。

 これはあくまで噂話よ。本当にこんな酷い事があったのかなんて信じられる?

31 名前:怪談もどき ◆wHsYL8cZCc [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 22:03:00 ID:fmhq3Yr+
 それに、おかしな所もたくさんあるしね。

 たとえば、文子ちゃんは普通の女の子だった。でも、ところどころ普通じゃない場面もあったわね。どう考えても、彼女はおかしな力を持っていた……。
 でも多分、彼女は気付いていなかった。
 フフ……。もし自覚していたら、もっと悪い事に使ってたはずよ。だってそれが人間だもの。

 それに、あれだけ凄惨なリンチを受けて死なない人間がいると思う?
 あまりに残虐過ぎるわ。きっと尾鰭が付いて来た結果ね。……もっとも、現実というのはたいがいにしてもっと凄惨な物だけど……。
 フフ……。でもこれは噂話。実際にあったかなんて、誰も知らないんだから。

 え?
 私の名前?

 どうだっていいじゃない。私の事なんか。

 それより、もっと気になる所が無い?
 たとえば、行方不明になったクラスの子供達。一体どこにいっちゃったのかしらね。

 そしてなにより、このお話には重大な事が抜けているのよ。
 ひそかに受け継がれてきたお話だけど、一度たりともそこが話された事はない。

 文子ちゃんはクラス全員から徹底したリンチを受けて、焼き殺された。
 そう。焼き殺されたのよ。
 でも、一度もはっきり言われた事がない。

 何度聞いても、何回読んでも、どれだけ噂が広がろうとも……。
 文子が死んだとははっきりと言われていないの。

 ……よく読んで?
 彼女は本当に死んだのかしら……?

 あら?
 そろそろ時間みたい。お友達が迎えに来たから。

 フフ……。
 私はこのお友達が大好きなの。私のお手伝いをしてくれるから。
 え?
 どこにも居ない?
 見えないの? 私たちの周りにたくさん居るじゃない。みんな私たちを見てる。
 そうね……。三十人くらいかしら。ちょうど一クラス分の人数ね。

 え?
 私の名前?

 どうだっていいじゃない。私の事なんか……。

 でも、みんなは私の事をふーちゃんって呼んでくれてるの。


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