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夏だから、そんな話

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夏だから、そんな話


外があかね色に染まり、運動部の部活もそろそろ終わりにさしかかった、そんな時間。
学校の廊下を歩く一人の影、両手にプリントを持ちながら、職員室へと歩いている。
細いリボンで髪を結び、体のラインが出ないよう、ぶかぶかのブレザーを着た少女、
近森ととろは半分ばかり面倒くさそうに歩いていた。

「むう。今日は絶好のカップルウォッチング日和なのに」

そんな風に愚痴ってはいるが、しっかり先生に頼まれたことをこなすあたり、
案外真面目なのかもしれない。
時々独り言を言いつつ近森ととろが歩いていると、
進行方向に1人の先生と2人の生徒が話しているのが見えた。

一人は髪をリーゼントにした天然記念物級の不良の格好をした男、大型台
一人は美術部部長で巫女で巨乳でと最近属性大杉と言われている天然少女、神柚鈴絵
最後の一人は2mは優に超える身長を持つ美術部教師、真田基次郎

ととろも良くも悪くも、大体知り合いになっている先輩達だった。
彼らはどうやら3年の美術の授業で描いた絵を見ながら批評し合っているようだった。
毎年、授業で描いた絵を廊下に掲示している。
今回の内容は運動場を美術室から見て描いた絵だった。

ととろはなんともなしにその横を通り過ぎながらその絵をみる。
始めに目に飛び込んできたのはそこにいる二人の美術部員の絵だった。
やはり美術部所属ということなのか、2人の絵は他の絵と比較すると別格だった。
鈴絵の絵は優しいタッチの淡い色使いが特徴、
大型台の絵はくっきりとしたタッチの写実的な画風だった。

「へぇ。やっぱり上手いなぁ」

おもわずそんな言葉がこぼれた。その言葉に反応したのか、始めに鈴絵は振り返る。

「あ、ととろちゃん。こんばんは。えへへ、誉めてくれてありがとう」
「いやー。でも本当に上手いよ」

はにかむように笑う鈴絵に対し、ととろも完全に足を止め、雑談モードに入っる。

「……ま、あれだけ練習しているんだ。これでうまくならなきゃヤバいだろ」

台もそう言いながらも、まんざらでもない顔で頷いている。
案外誉められるのに弱いのかもかもしれないと、
ととろは考えつつもふと他の人の絵にも目を向け、違和感を覚えた。

その違和感が何か確かめるため、きょろきょろと絵を見て回る。
ととろの突然の行動に不審を持ったのか、台はととろに声を掛ける。

「なんだ? きょろきょろして。どうした?」
「……あ! えーとね。ほらここ、神柚先輩に不良に真田先生の絵。
なんで校庭の中央に女の子が描かれてるの?」

ととろが気付いた違和感。それは3人の絵にだけ、なぜか女の子の姿が描かれていた。
あまりに遠い所から描かれているためか、細部は分からないが、制服から少女なのは分かった。
その少女は神柚鈴絵、大型台、そして参考として描いている真田基次郎の絵にしか描かれていなかった。

その言葉に鈴絵はポンと手を叩き、笑顔で言う。



「うん、私達が描いてる時、そこに立ってたからね」
「……でも、他の人たち描いてませんよね」
「ああ、多分、見えてるの、私達だけだからじゃないかな?」

その言葉にととろは一瞬キョトンとし、
何かに気付いたのかぎくりと硬直する。

「えーと。ソレハドウイウコトデスカ?」
「その子、ふーちゃんって言って。普通はみえない子なのよね」
「ああ、そういえばそうだったな。いたずら好き困った子だな」

「……え? それって……ジョウダンデスよね?」

二人の言葉にさらに硬直してしまったととろに、基次郎はため息を吐きつつ言葉をだした。

「まあ、こいつらの冗談だ。気にするな」
「あ、あはは。そうですよね。悪い冗談ですね」
「所で近森。そのプリントの山は持っていかなくていいのか?」
「あ、そうでした! 失礼します!」

慌てたようにととろは一礼すると歩き出す。
ととろが歩き去ると三人は同時にため息を吐きだした。

「……お前ら。分っているな」
「はい、先生。秘密です」
「おう。ま、話したって信じてもらえんだろうしな」

その三人はふと、気配を感じ、顔をそちらに向けると、そこには一人の少女がいた。

「なあに話してるの?」
「ふーちゃんのことよ」
「そーなんだ?」
「あ、夏だからってあんまり張り切り過ぎないようにね。
度が過ぎれば……お父さん呼ぶからね」

鈴絵の言葉に、少女はどや顔になりながら、腕を組んだ。

「分かってるってば。あ、今日は遊びいかない? カラオケでも行こうよ」
「ま、たまにはいいか。先生はどうする?」
「生徒との交流も時には必要か。いいだろう」
「はい。決定。それじゃレッツゴー!」

そうして、三人と一人の少女はカラオケに行くため歩き出した。
夕焼けの赤が周りに満ちた中、彼らは校舎から出て行った。







「――って感じしない? あの美術部の人たち。妙に勘がいいし、鈴絵さんって巫女さんだし」
「あはは 流石にそれはないって。幽霊とかいるわけないじゃん」
「あはは、そうだよねー。そんな訳ないよね。」















「それってだれのことかな?」
「「……え?」」



おわり。



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