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     287 名前:携帯 ◆4c4pP9RpKE [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 04:16:36 ID:WlJFBZPC

学園内で茶トラ柄の猫を見掛けても、用務員の田中君には報告しないで頂きたい。
アニマルセラピイを知っているかしらん。
私が仁科学園に飼われているのはまさしくそれが目的らしく、
着けられた首輪には仁科学園一階用務員室と言う住所と寅(トラ)という私の名札と、
法務省人権擁護課のマスコットキャラクタであるジンケン君が印刷されたプレイトがぶら下がっている。
法務省人権擁護課課長とやらが幼子だった私を保健所から引き取り仁科学園に寄贈したらしい。
なんとも金の掛からぬ企画ではあるが私が生来のお調子者で誰にも人懐こいせいか、
アニマルセラピイの評判はなかなかに良く、おかげで課長殿は都会への栄転にありついたとの噂である。
一応注釈をさしておくと、老いの著しい田中君のためのアニマルセラピイではない。
生徒達の心の安らぎのためである。
毎年春に入学式という騒がしい式典があるが、私は基本的に初等部だけを覗きに行く。
中等、高等の部はほぼ全てがエスカレエタ式に上がる者ばかりで新参がいないため、
忍び込んで拝見するほど面白みがない。
初等部の子らは大抵が私を知らないし、私を見つければ必ずと言って良いほど「かわいい!」と歓声をあげてくれる。
寅なんて風来坊みたいな名を頂いているが私は雌である。
かわいいと言われて悪い気はしなかったり。
はてさて今年の面子は如何なものか。
初等部が式典を行っている棟へ尻尾ふりふり歩いていると、曲がり角で突然人に会った。
出会ったのは見上げるほどの大男であるが、私が猫である事を鑑みれば人はみんな見上げるほどの大きさだ。

「こりゃ!寅ぁ!また勝手に出歩きやがって!!」

見上げてみれば、大男は老い著しい田中君であった。
私は踵を返して植え込みの深緑に躍り込んだ。
ニャア、とひとつ鳴いてから、田中君に掴まらないうちに駆ける。
飯抜きだからな、とか田中君が叫んでいたが、田中君は案外優しいので、
きっと結局はいつも通りに給仕してくれるに違いない。
私は揚々とした気分で初等部の式典会場に向かうのだった。


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