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無題03

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だれでも歓迎! 編集

先輩、部活動見学です!(1)

     469 名前: ◆46YdzwwxxU [sage] 投稿日:2009/07/23(木) 06:01:51

 放課後。
 暫定学級委員長としてHRを締め、帰り仕度をしていた俺のもとに、それはやって来た。未だ生徒達も退けぬ
教室の引き戸をバァンと開き、弛緩した空気の中に何食わぬ顔で滑り込む。
 いや、滑り込むなどと表現するには、その振る舞いは傍若無人にすぎるか。勢いのままに、ばかに大きな声で
宣言までしてのけた。

「先輩、部活動の見学にいきたいと思います!」
「ひとりでいけ」

 鞄に教材を突きこむ手を止めもせず、俺は感情の篭らぬ声を返した。物言いは静かでも、迫力ではそうそう引
けをとらない。
 非常識極まりない登場をしたのは、可愛らしい姿をした、しかし俺にとっては見慣れたを通り越して見飽きた
少女だった。下の名前も聞かされたのだが、関係がおかしな方向に進展するのが怖いので、努めて「後輩」とだ
け呼ぶことにしている。

「はい! 毎朝毎晩のようにひとりで■ってますが、それとこれとは話が違います!」
「……何の話?」

 わけのわからん女だ。そろそろ発禁処分されてもいいころ。
 昨年度からの俺のクラスメイトは、後輩の言動にもとうに慣れている。今も「や、後輩ちゃん、高等部の制服
も可愛いね」「ありがとうございます! 先輩はもう陥落してるも同然です!」などと、腹の立つやりとりを横
槍的に発生させる者もいた。
 しかし、それでなくても周囲を巻き込む彼女の行為は迷惑すぎるし、大規模なクラス替えがあったために俺達
の事情に通じていない級友がほとんどだろう。俺としても初っ端から変な印象がつくのは避けたい。
 違うんだ! 俺は漫才コンビの片割れなんかじゃないんだァ!

「取り敢えず音量を落とせ。できれば黙れ」

 糊の利いた袖の上から後輩の腕を掴み、場所を変えるよう促す。香を焚いたようないい匂いがするが、口での
呼吸に切り替えて無効化。息が荒くならないように細心の注意を払う俺の努力を誰か褒めて欲しい。
 冷やかしが沸くが、ここは後日に謝罪のついでに弁明すればいい。

「やん。先輩なにもそこまでっ」
「だ、ま、れ!」

 できる限り真剣な口調で、仔猫がくすぐったがるような嬌声が生んだ甘い空気を台無しにする。ようやく大人
しくなったが、なぜか瞳が潤んでいた。何なのこの子。
 俺は彼女を廊下の突き当たりまで連れ出し、落ち着いての会話を試みる。ここまでで異様に疲れた。

「……あのな、だいたい部活の見学なんて、友達と回ればいいだろ」
「だって私のお友達には、なぜだか彼氏持ちフラグ持ちが多いのです! 新入生の分際でっ!」
「あのさ、友達、なんだよな……?」

 赤裸々にぶちまけられた負の感情に、女子高生達の友情の絆がひどく疑わしく思えた十六歳の春だった。

「この時期は強引な勧誘や、へ、変態さんも多いと聞き及びましたし、ひとりでは怖くて……」
「お前の同類じゃないか」

 俺はすごく爽やかな笑顔で、怯えた表情の彼女にいってやった。
 一場面だけを切りとればわざとらしさを巧妙に消してあるが、流れからいって間違いなく“か弱い乙女”の演
技だ。この際なので演劇部あたりへの入部を強く勧めたい。
 しかしまあ、俺と同じところに入ると駄々を捏ねるのではないかと戦々恐々としていたのだが、感心なことに
きちんと自分の趣味に合った部活動を選ぶつもりらしい。
 ……大方、「押してダメなら引いてみろ! 距離をおいて初めて気づくよ大作戦」とか「一生懸命部活動に励
む女の子の魅力でアタック超作戦」とか「この際だし花嫁修業で目指せラブラブ新婚家庭史上最大の作戦」とか、
そういう計算なのだろうが。
 ちなみに俺の所属については、またの機会に語ろうと思う。この時期は総出で勧誘なんぞに精を出すのがセオ
リーなのだが、構うまい。
 それに、違った部活動等に籍を置くのなら、それはそれで俺の疲労は大きく軽減されることだろう。
 顧問や部長が鬼ほど厳しいところを宛がえば、放課後に尾け回されることも少なくなるはず。それは、喜ばし
い……! 薔薇色の学園生活ではなかろうか。

「分かった。付き添ってやる」
「はい! 健やかなる時も、病める時も――」
「付き合うとも添い遂げるとも言ってねーからな恋愛脳」

 こうして、それぞれの思惑を胸に、俺達はわくわく部活動見学へと繰り出したのだった。



 つづく



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