1、街の起源
シースト・カトラスは、ソードコースト沿岸にかぎ爪のごとく突き出たスクラマサクス半島の先端部に位置する。この場所は入り江の多い複雑な海岸線と大小多数の自然洞穴が存在することから、古くからソード・シーを荒らしまわる海賊たちの根城であった。
海賊たちの間では主導権争いや略奪品の分配をめぐっての内部抗争が絶えなかったが、DR1100年代半ば、“逆十字”と呼ばれ恐れられた大海賊ギャラクス=ナムが各勢力を武力で統合し、最盛期には50隻を数える一大海賊団の根拠地となった。
海賊たちの間では主導権争いや略奪品の分配をめぐっての内部抗争が絶えなかったが、DR1100年代半ば、“逆十字”と呼ばれ恐れられた大海賊ギャラクス=ナムが各勢力を武力で統合し、最盛期には50隻を数える一大海賊団の根拠地となった。
2、海賊戦争と街の誕生
ギャラクス=ナム率いる海賊団は情け容赦のない略奪で知られ、約10年もの間沿岸諸都市を恐怖に陥れたが、事態を重く見たウォーターディープ領主の呼びかけで、ソード・コーストの各都市(ウォーターディープ、バルダーズゲート、ラスカン、ネヴァーウィンターなど)の連合軍による討伐作戦が実施される事が決まった(一説には、この作戦の裏にはライバルの勢力拡大を嫌ったラスカンのハイキャプテンたちの思惑が働いていたという)。後世『海賊戦争』と称される戦いの始まりである。
数の上では討伐軍がやや優勢だったが、海賊たちは地の利を生かしてよく守り、また寄り合い所帯ゆえの足並みの乱れもあって、緒戦は討伐軍の敗北に終わった。更迭された指揮官に代わり抜擢されたのが、後にシースト・カトラスの初代領主となるホワイトドール卿ローランだ。女と見間違えられるほどの美丈夫であった彼は自ら女装して海賊軍に侵入し、ギャラクスに反感を持っていると思しき船長たちに裏工作を行った。戦後の特赦に釣られた彼らの裏切りにより孤立したギャラクスは、子飼いの部下たちと共に起死回生を賭けた決戦に打って出ざるを得なくなる。
“逆十字”自ら率いる海賊たちは死に物狂いの抵抗を見せたものの、多勢に無勢で各個撃破されてゆき、終には首魁ギャラクスがローランとの一騎打ちに斃れて、『海賊戦争』は終結した(この一騎打ちにおいて、足を滑らせたローランに襲いかからんとしたギャラクスの後頭部目がけ、リンゴを投げつけて指揮官の窮地を救った一郷士が、後にアップルスロウワーの家名を下賜されている)。ウォーターディープ領主会議はホワイトドール卿の大功に、海賊の根城とその周辺を領地として認めるという形で報いる。卿は自らの街に、海賊を制した地、との意を込めてシースト・カトラスと名付けたのだった。
数の上では討伐軍がやや優勢だったが、海賊たちは地の利を生かしてよく守り、また寄り合い所帯ゆえの足並みの乱れもあって、緒戦は討伐軍の敗北に終わった。更迭された指揮官に代わり抜擢されたのが、後にシースト・カトラスの初代領主となるホワイトドール卿ローランだ。女と見間違えられるほどの美丈夫であった彼は自ら女装して海賊軍に侵入し、ギャラクスに反感を持っていると思しき船長たちに裏工作を行った。戦後の特赦に釣られた彼らの裏切りにより孤立したギャラクスは、子飼いの部下たちと共に起死回生を賭けた決戦に打って出ざるを得なくなる。
“逆十字”自ら率いる海賊たちは死に物狂いの抵抗を見せたものの、多勢に無勢で各個撃破されてゆき、終には首魁ギャラクスがローランとの一騎打ちに斃れて、『海賊戦争』は終結した(この一騎打ちにおいて、足を滑らせたローランに襲いかからんとしたギャラクスの後頭部目がけ、リンゴを投げつけて指揮官の窮地を救った一郷士が、後にアップルスロウワーの家名を下賜されている)。ウォーターディープ領主会議はホワイトドール卿の大功に、海賊の根城とその周辺を領地として認めるという形で報いる。卿は自らの街に、海賊を制した地、との意を込めてシースト・カトラスと名付けたのだった。
3、黎明期
初代領主ローランは『海賊戦争』をともに戦った配下の兵士たちに周辺地域への入植を奨励し、幾つもの農村が街の周りに誕生する一方、交易を重視した彼は港の整備にも力を入れ、シースト・カトラスは海上貿易の中継基地として重要な位置を占めるようになる。文武両面でシースト・カトラスの礎を築いた彼の最後の仕事は、半島の先端と対岸を結ぶ巨大な橋の建設であったが、卿自身は完成を見ることなくDR1193年に没した。市街中央区にある銅像は、当時の市民たちが彼を称えて建てたものだ。
卿の死後数年、ようやく完成した橋によって危険な外套森(クロークウッド)を通ることなしに街道との行き来が可能になり、陸上交易のルートが確立するに至って、街は急速な発展を遂げていった。
卿の死後数年、ようやく完成した橋によって危険な外套森(クロークウッド)を通ることなしに街道との行き来が可能になり、陸上交易のルートが確立するに至って、街は急速な発展を遂げていった。
4、発展期
ローラン以来、シースト・カトラスはホワイトドール卿の子孫が世襲の領主として統治を行っている。代々の領主の多くは可もなく不可もなくといった人物であったが、アップルスロウワー家を筆頭とする強固な家臣団が政治、軍事両面で主君を支えた。特筆すべき業績を上げた領主としては、ソードコーストへの進出を狙うオームー商家の陰謀を巧みな外交で阻止した3代目ヨーゼフ、女性の身でありながら(この代は領主の一族に男子が生まれず、唯一の後継者であった女子が独身のまま『領主夫人』となった)ラスカン海賊相手に海戦で勝利した7代目ソーシェなどが歴史に名を残している。
ウォーターディープ、バルダーズゲートの二大都市とは一貫して良好な関係を保ち続け、時には一方に接近し、時には中立を宣言するといった上手い立ちまわりで自らの立場を強めて行った。シースト・カトラスの繁栄が頂点に達したDR1300年代前半には、港湾地区のドックは各国から訪れた船の色とりどりの帆で埋まり、酒場では様々な地方訛りの笑声が飛び交っていたという。悪どい商売で知られるオームー商人相手でさえ堂々と渡り合うシースト・カトラス商人の風評は、かつて此処を本拠とした海賊たちの時代と同じように、ソード・シー全域にこだましていたのである。
ウォーターディープ、バルダーズゲートの二大都市とは一貫して良好な関係を保ち続け、時には一方に接近し、時には中立を宣言するといった上手い立ちまわりで自らの立場を強めて行った。シースト・カトラスの繁栄が頂点に達したDR1300年代前半には、港湾地区のドックは各国から訪れた船の色とりどりの帆で埋まり、酒場では様々な地方訛りの笑声が飛び交っていたという。悪どい商売で知られるオームー商人相手でさえ堂々と渡り合うシースト・カトラス商人の風評は、かつて此処を本拠とした海賊たちの時代と同じように、ソード・シー全域にこだましていたのである。
5、呪文荒廃とその後の混乱
だがDR1385年、その繁栄は呪文荒廃によって終焉を迎える。当時の領主には双子の優秀な息子がおり、家督は安泰と誰もが安心しきっていたが、長男ジョアンは趣味であった狩猟の最中に地割れに飲み込まれて行方知れず、次男エイブラムは浜辺を散策中に突如として落下してきた隕石が頭を直撃して廃人になってしまったのだ(噂に過ぎないが、この時のショックで彼は「老化しない」身体になり、当時の姿のままレッドリバーのどこかの貴族の『切り札』として眠り続けているという)。2人の跡継ぎを同時に失った領主カルバンは悲嘆の余り病に倒れ、彼の死によってホワイトドール卿の一族は突如として断絶してしまう事となった。