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[[前へ>挑戦者 その17]] [――『気ままに夢見る機X』 取扱説明書―ー] [入り込みたい世界の夢を体験することが出来る道具『気ままに夢見る機』の進化型です。 以前までのこの道具はカセットがあり、その物語をなぞるものでした。 でも、この世界ではなぞる必要は無く、 道具を起動した人物が十分にいい思いをしたと感じれば夢は覚めます。 それ故に物語そのものが存在しないこともあります。 ただ世界の設定を入力するだけでも、登場人物の設定を入力するだけでもいいのです。 それだけで夢が構築されます。 その夢の世界はあらかじめ歴史がつくられています。 また、事前に『ホクロ型受信機』をつけている人は起動した人物で無くとも夢の中へ入り込めます。 この世界をご堪能いただくために、新しい仕組みが設けられました。 現実世界と夢の世界の時間の関係を捻じ曲げてあります。 現実世界での時間の流れは夢の世界において一切気にする必要はありません。 また、夢の世界をより楽しんでいただくために現実世界へ戻る方法を一つだけにしました。 そのため、夢の世界で眠っても現実世界にもどることはありません。 そして、秘密道具は持ち込めなくなりました。 では、この取扱説明書をよく読んで道具を楽しんでください。 あなたの見る夢がきっといいものでありますように……] ---- ~~~ 燃え盛る研究所―― 彼女はその時、叫んでいた。 博士の名前、友の名前、そしてポケモンの名前。 紅蓮の渦が全てを飲み込む。 目に映るポニータたち。 技を暴れまわり、放火し、駆け回り―― 焼き尽くす。何もかも。 博士は死んで、友は出て行き――  ~~~ 彼女は震えながら目を覚ました。 その優美な金の長髪は汗で乱れている。 月光が窓から差し込んでいる。 個室を、彼女以外誰もいない個室を照らす。 彼女の荒い吐息のほかに、聞こえる音は無い。 静かな空間が、彼女を孤独へ苛む。 再び彼女は目を瞑った。 二度と『あの日』の悪夢を見ないよう祈りながら…… ---- 「……ミヤよ。聞こえるか?」 袴姿の男は草原で天を仰いでいた。 不気味なほどはっきりと見える青白い月。 その月を刺すように、男は刀を突き上げる。 「聞こえるわけない……貴様の穢れた耳では。  だが、なぜこんなことを……」 男の気合一声。 刀が男の周りを振るわれる。 一瞬にして、刈り取られる草むら。 男を中心に円形の模様が出来上がる。 刀を鞘に収めると、男は新聞を置く。 「……いつかここに戻ってくる。  お前の墓を作るために……」 去っていく男が置いた新聞にはこう書かれていた。 [ミヤ容疑者、脱獄  先日『カデンの洞窟』内から出てきた所を警官隊に取り押さえられたミヤ容疑者だったが  昨晩脱走したことが警察関係者の報告で明らかとなった。  ミヤ容疑者といえば、十数軒以上の欠陥住宅を建てた件で全国に指名手配されていた人物。  逮捕の際には被害者たちの歓喜の声があらゆる町で響き渡ったものだが  今回、その思いを打ち砕く結果となってしまった。  警察側はこの件に対して――] ---- 「……見てごらん。ピィ」 少年は目を輝かせて、天体望遠鏡から顔を離す。 肩に乗るピィは興味津々でレンズを覗く。 「見えるだろう?色んな星たちが」 ピィは嬉しそうに頷く〔首がないので体ごと動かして〕。 少年はその様子を優しそうに見つめていた。 少年にとって、このピィは特別な存在だった。 一人の友達から受け取ったポケモン。 ずっと、もう戻ってこないと思っていた友達から。 「ふふ、僕はね。少し前まで思ってたんだ。  君のパートナーは星になったって」 ピィがレンズから顔を離し、不思議そうな仕草をする。 ピィの見た少年の顔は泣いていた。 でも顔は笑っている。 「ずっと……ずっともう戻ってこないものだと思っていた。  でも君はまだいるんだね。レイ……」 少年にその情報が伝えられたのは一昨日だった。 近所のおばさんが教えてくれたのだ。 レイが生きている、テンセイシティで見かけた―ーと。 ---- 彼はまだ眠っていなかった。 どうしてもリーグのことを考えると眠れないのだ。 それも彼の野性的な性格のせいなのだろうか……。 「……兄貴」 彼は横で大の字に寝転んでいる青年を見て呟く。 兄貴と呼ばれた青年からは大きなあくびが発せられていた。 部屋中を満たす大きな音。 そしてそれと見事に不協和音を織り成す音。 「クガノ……」 彼が呼んだ少年は歯軋りをしながら眠っていた。 いつものことながら悔しそうに歯を食いしばっている。 弱気なその少年はよほどストレスがたまっているのだろう。 彼と二人の少年は兄弟だった。 もっとも、表向きは―― ここは養育所。 親のいなくなった子供たちが集まる場所。 「お前ら……」 彼は少しずつ顔を俯かせる。 あくびも歯軋りもだんだん大きくなっていく。 彼は大きく息を吸い、そして―― 「ぅうるせぇんだよおぉぉ!!!」 彼の怒声が養育所に響く。 ---- テンセイシティ―― 「……で、ドラえもんは行っちゃったってわけか」 と、確かめたのは自称将来の大物歌手であり天下のガキ大将、ジャイアンだ。 「うん。『あとは君たちに任せる』って残して行っちゃった。  結局しずちゃんも来ないみたいだしどうする?  僕としてはもう会場へ入ったほうが――うわぁ!!」 軽妙な早口を遮られた尖がり頭の狐顔、スネ夫はしりもちをつく。 その上にはピッピが飛び乗っていた。 「ああ、ゴメン。また飛びついた!」 そう言いながら、赤い紐でポニーテールを結わえる通称ものまね娘、ユリはピッピを抱える。 「まったく、どうして僕に飛びつくんだ!?」 スネ夫は愚痴を垂れながら立ち上がる。 「うん。ツンツンしてるものを見ると触りたくなるみたいなの」 「僕のどこがツンツンそてるっていうのさ!?」 「だはは、全体的にツンツンしてるっつーの!」 ジャイアンがスネ夫の頭をぽんぽんと叩く。 あの日、リンキタウンで別れてから様々な事が起こっていた。 50日間の時は流れ…… 今日は、ポケモンリーグが開催される日―― ----

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