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新カントー物語 その14 - (2007/03/27 (火) 00:22:51) の1つ前との変更点
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場所は変わって霊の間。
ジャイアンはケッキングを出してランターンを撃破。
ケッキングを見てカイはオムスターを出す。
特防の低いケッキングを仕留めるには特攻の高いオムスターが一番適任だからだ。
カイの作戦通りオムスターは2ターンかけてケッキングを倒す。
そうしてジャイアンがサンダーを出し現在の状況に至るのだ。
『奴を倒すにはオムスターを犠牲にする必要があるな……。
雨が終わる前に倒せるか? いや倒す!』
考えが固まりカイは行動を開始する事にする。
一方のジャイアンは……。
『あいつのポケモン速い! 特性をどうにかしなきゃならねえけど、天候変化技はもってねえしな。
普通の雨はもう少しで終わるが、多分時間を延ばすアイテム持たせてるよな……』
無い頭を使って考えるジャイアン。
しかし時間はジャイアンに考える暇を与えない。
「オムスター、波乗りだ!」
オムスターの攻撃を受けてサンダーは翼を振り回す。
だがサンダーはまだ地に落ちはしない。
「サンダー、雷だ!」
ジャイアンの指示を受けてサンダーは雷を放つ。
雷鳴が轟き、オムスターに直撃する。
オムスターが耐える事は無い。
崩れ落ちていくオムスターをカイはボールに戻した。
『やべえ! サンダーがやられちまう! 羽休めなんてやってる暇はねえし……
畜生! なんかまともな技はねえのかよ!』
焦りながらジャイアンは図鑑を開ける。
『なんでもいい! 時間を稼げる技! 何か! 何かねえのかよ!
サンダーでもカイリキーでもどっちでもいい! 相手に無駄なターン数をかける技!』
図鑑を見るジャイアンをカイは何も言わずに見ていた。
----
『ふん。好きなだけ悩め。考えればお前の勝ちだぞ……。
雨が消えれば俺の負けだろうからな……。
……この雨は利用できて後三回ぐらい。さあ、掴むか? お前の最後の勝機を……』
カイはジャイアンを見つめる。
『だが……時間を与えすぎたら計画がばれるかもな』
思い直してカイはボールを取る。
『ここで気付かないなら、こいつ等はそこまでの奴等だという事。
俺達の計画には不必要だということだ!』
「行け、カブトプス!」
セキエイ本部
モニターを見つめる四人。
「皆、どう思う?」
全員に尋ねるのび太。
表情には不安が募っている。
「イーブンかなあ。まだどっちにも勝機があるよ」
のび太の問いに最初に答えるのはドラえもん。
「私はタケシさんに分があると思うわ。雨ももうすぐ切れるし」
次に答えたしずかはジャイアン有利と見ているようだ。
「いや。サンダーはカブトプスに勝てない。
どう足掻こうとすいすい状態のカブトプスの素早さよりサンダーは速く行動できない。
この勝負、雨が全てを決める。あの雨の時間を潰せるかどうかだ。
僕は……ジャイアンの頭のよさを考えるなら……不利と考えるよ」
スネオはジャイアン不利と見ているようだ。
「ジャイアンの頭のよさか……」
のび太の記憶では自分以上、スネオ以下と記憶している。
そしてスネオは勝ち方がわかり、のび太も気付いていた。
「大丈夫! ジャイアンは勝つよ! 僕でも勝ち方がわかるんだから!」
----
カイは吸っていたタバコを床に落として足で踏みにじる。
そして白い息を吐き出した。
「さあ、考慮の時間は終わりだ。
カブトプスもいい加減暇になってきてるみたいでな。
お前を狙ってしまうかもしれないぞ?」
言葉に反応してカブトプスを見るジャイアン。
銀色の刃が怪しく光り、ジャイアンにはカブトプスが笑っているように見えた。
『や、やべえ! 殺されちまう!』
図鑑をポケットにねじ込み戦闘態勢に入るジャイアン。
もう顔に余裕は無い。
『こいつはここまでの奴だったという事か……。ふん。下らん時間を使ったな』
「カブトプス、滝登りだ!」
水の上を走り始めるカブトプス。
尋常ないその速さはサンダーまでの距離をあっという間に詰めていく。
「サンダー、守る! 堪える! えーと後一つなんだっけ!?」
覚えてない技に途惑うサンダー。
その様子を呆れて眺めるカイ。
「終わりだ、剛田タケシ!」
カブトプスの刃がサンダーに向かって振り上げられる。
だがその時ジャイアンは忘れていた技の名前を思い出した。
「そうだ! 見切りだ、サンダー!」
ジャイアンの言葉に反応するサンダー。
そして凄まじい速さでカブトプスの攻撃を避けた。
「ふん。終わりだ!」
カブトプスの二度目の攻撃で倒れるサンダー。
だがジャイアンの顔に焦りは無い。
ジャイアンの顔には笑顔がこぼれていた。
----
「次はお前だ、カイリキー!」
次に出したのは最初からのパートナー、カイリキー。
「滝登りだ!」
「リベンジ!」
カブトプスが水上を凄まじい速さで走リ出す。
そのまま刃を切り上げ滝に登ってるように飛び上がる。
刃を直撃するがカイリキーは一撃では倒れない。
着地したカブトプスに待っていたのは四本の腕から放たれる拳。
その拳を避ける事など出来はしない。
凄まじい速さで壁に打ち付けられるカブトプス。
そのまま起き上がることは無かった。
雨がやんだフィールドを見て、カブトプスを回収するカイ。
『……最後の勝機。ギリギリでも掴み取ったか……上出来だ』
カイの顔には笑顔がこぼれる。
「何がおかしいんだ?」
ジャイアンがカイの奇妙な様子を見て尋ねる。
「いや、やはり俺はお前を選んでよかった。俺の眼に狂いは無いという事がわかったからつい、な」
タバコを取り出しカイは吸おうとする。
だがタバコを元に戻した。
「吸わねえのか?」
「ああ、お前との勝負が終わってから吸うさ。勝ちの一服か、負けの一服かわからんがな」
「いや負けだぜ」
カイの言葉に即答するジャイアン。
「俺は絶対に負けねえからな!」
「ふん。そうか」
カイは笑いながら最後のボールを投げる。
「ではこいつを倒してみるんだな!」
----
「やっぱりそいつが最後か!」
ジャイアンは叫び、カイは笑う。
最後のポケモンはサントアンヌの時と同じポケモンだ。
名をキングドラと言う。
「雨が消えてもカイリキーよりは速い……お前の最後のポケモン次第だ」
「俺の最後のポケモンはお前は知ってるぜ」
「ほう? お前と会ったのは3度だけなのにな。では予想でもするとしようか」
カイは考える素振りを見せる。
「その前に……キングドラ、波乗りだ!」
「カイリキー、耐えてクロスチョップ!」
波乗りはカイリキーに直撃する。
カブトプスの攻撃もある為、倒れるカイリキー。
だがジャイアンの顔は笑ったままだ。
「ちっ、やっぱ最後のポケモンの対決になったか」
カイリキーを回収しながら呟くジャイアン。
「こいつはお前が唯一取れなかったポケモンだ。俺はお前をこいつで倒そうと心に決めてたんだよ!」
「俺が……唯一?」
『取れなかったポケモン……。
そういえば一匹いや一つ取り逃した物がある!
まさか……奴の最後のポケモンは……』
カイの考えが一つに収束されていく。
その様子を眺めていたジャイアンが笑う。
「どうやらわかったみたいだな! ニビシティの館長さんから託されたこいつが!」
ボールを投げるジャイアン。
「お前の最後のポケモンは……プテラだ!」
出てきたのは博物館の最後の化石。
館長が託した最後の希望、プテラだった。
----
「くく、まだ勝負はわからないようだな」
プテラを見て笑うカイ。
「どう言う事だ?」
ジャイアンは不思議そうにカイに尋ねる。
「俺の見立てではプテラの攻撃力でキングドラを一撃で倒すのは無理だ。
だが……キングドラも一撃で倒すのは無理かもしれない。
だから、この勝負は単純に素早さが速いプテラが勝つとお前は考えているはず。
どうだ?」
「ああ、その通りだ」
カイの問いにジャイアンはあっさり答える。
「という事はお前の考えではプテラが一撃ではやられないとふんでいるわけだ。
……くく、俺も馬鹿にされているな」
「なにがいいてえんだ!」
ジャイアンは声を荒げる。
「お前の考えを見せてもらおう! まさか甘い考えでそいつを最後にしたわけではあるまい!」
カイが指示を出す。
「プテラ、岩雪崩!」
「キングドラ、雨乞い!」
高速でプテラがキングドラに攻撃を始める。
やはりカイの予想通りキングドラは倒れない。
そして、雨が降り始めた。
「これでお前の勝ち目は一つしかなくなった……」
『あのアイテムをこいつが持たせているか……これで決着をつける!』
「さあ、俺の期待に答えられるか、剛田タケシ! キングドラ、波乗りだ!」
プテラに向けてキングドラが波を起こす。
それはプテラを仕留めるには十分な大きさの波だった。
『さあ、どっちだ!?』
カイがフィールドを見る。
そこには……
----
プテラはかろうじて生きていた。
もう後一撃でも受けたら倒れそうだがまだその場に飛んでいた。
「終わりだ! 燕返し!」
凄まじい速さでプテラが攻撃を開始する。
その攻撃を避けるのは不可能。
攻撃を受けたキングドラは水浸しの床に崩れ落ちた。
「お前の予想通りだよ。俺がこいつに持たせていたのは気合の襷だ」
消えていくカイに向かってジャイアンが言葉を出す。
「ふふ、見事だ。全ては計算通りだった言うわけか……」
カイはタバコを取り出して吸う。
「負けの一服になったわけか……」
「……お前の子供はどうするんだ?」
ジャイアンは尋ねる。
「あいつなら大丈夫だ。すぐに俺の事は忘れるだろう……」
「ふざけんな!」
壁を拳で叩きつけるジャイアン。
「俺にも母ちゃんが居るけどよ、母ちゃんが居なくなったら俺は絶対悲しむ!
お前の子供はお前の為に出木杉をさらったんだぞ! そこまで心配するのに何が大丈夫だ!?」
「……なんだと? それは本当か?」
カイの顔から笑顔が消えていく。
「少しは子供の事も考えやがれ! 馬鹿野郎が!」
だがカイの姿はジャイアンが言っていくうちに消えていく。
そして、目から一筋の水を流して呟いた。
「そうか……あの馬鹿娘が」
カイはそう言ってその場から消滅した。
黒い髪の毛のような物が一つ落ちる。
「……次はドラえもんだな」
ジャイアンはカイの居た場所にお辞儀をしてワープゾーンに飛び込んだ。
----
決着
ジャイアン カイリキーLV86 ダグトリオLV79 ケッキングLV83
プテラ LV84 サンダー LV90 モジャンボLV82
カイ ヌオー LV83 ランターンLV83 スターミーLV83
カブトプスLV85 オムスターLV85 キングドラLV88
三回戦ジャイアン○―×カイ
四回戦ドラえもん対サカキ? 出木杉対ソラ?
----
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場所は変わって霊の間。
ジャイアンはケッキングを出してランターンを撃破。
ケッキングを見てカイはオムスターを出す。
特防の低いケッキングを仕留めるには特攻の高いオムスターが一番適任だからだ。
カイの作戦通りオムスターは2ターンかけてケッキングを倒す。
そうしてジャイアンがサンダーを出し現在の状況に至るのだ。
『奴を倒すにはオムスターを犠牲にする必要があるな……。
雨が終わる前に倒せるか? いや倒す!』
考えが固まりカイは行動を開始する事にする。
一方のジャイアンは……。
『あいつのポケモン速い! 特性をどうにかしなきゃならねえけど、天候変化技はもってねえしな。
普通の雨はもう少しで終わるが、多分時間を延ばすアイテム持たせてるよな……』
無い頭を使って考えるジャイアン。
しかし時間はジャイアンに考える暇を与えない。
「オムスター、波乗りだ!」
オムスターの攻撃を受けてサンダーは翼を振り回す。
だがサンダーはまだ地に落ちはしない。
「サンダー、雷だ!」
ジャイアンの指示を受けてサンダーは雷を放つ。
雷鳴が轟き、オムスターに直撃する。
オムスターが耐える事は無い。
崩れ落ちていくオムスターをカイはボールに戻した。
『やべえ! サンダーがやられちまう! 羽休めなんてやってる暇はねえし……
畜生! なんかまともな技はねえのかよ!』
焦りながらジャイアンは図鑑を開ける。
『なんでもいい! 時間を稼げる技! 何か! 何かねえのかよ!
サンダーでもカイリキーでもどっちでもいい! 相手に無駄なターン数をかける技!』
図鑑を見るジャイアンをカイは何も言わずに見ていた。
----
『ふん。好きなだけ悩め。考えればお前の勝ちだぞ……。
雨が消えれば俺の負けだろうからな……。
……この雨は利用できて後三回ぐらい。さあ、掴むか? お前の最後の勝機を……』
カイはジャイアンを見つめる。
『だが……時間を与えすぎたら計画がばれるかもな』
思い直してカイはボールを取る。
『ここで気付かないなら、こいつ等はそこまでの奴等だという事。
俺達の計画には不必要だということだ!』
「行け、カブトプス!」
セキエイ本部
モニターを見つめる四人。
「皆、どう思う?」
全員に尋ねるのび太。
表情には不安が募っている。
「イーブンかなあ。まだどっちにも勝機があるよ」
のび太の問いに最初に答えるのはドラえもん。
「私はタケシさんに分があると思うわ。雨ももうすぐ切れるし」
次に答えたしずかはジャイアン有利と見ているようだ。
「いや。サンダーはカブトプスに勝てない。
どう足掻こうとすいすい状態のカブトプスの素早さよりサンダーは速く行動できない。
この勝負、雨が全てを決める。あの雨の時間を潰せるかどうかだ。
僕は……ジャイアンの頭のよさを考えるなら……不利と考えるよ」
スネオはジャイアン不利と見ているようだ。
「ジャイアンの頭のよさか……」
のび太の記憶では自分以上、スネオ以下と記憶している。
そしてスネオは勝ち方がわかり、のび太も気付いていた。
「大丈夫! ジャイアンは勝つよ! 僕でも勝ち方がわかるんだから!」
----
カイは吸っていたタバコを床に落として足で踏みにじる。
そして白い息を吐き出した。
「さあ、考慮の時間は終わりだ。
カブトプスもいい加減暇になってきてるみたいでな。
お前を狙ってしまうかもしれないぞ?」
言葉に反応してカブトプスを見るジャイアン。
銀色の刃が怪しく光り、ジャイアンにはカブトプスが笑っているように見えた。
『や、やべえ! 殺されちまう!』
図鑑をポケットにねじ込み戦闘態勢に入るジャイアン。
もう顔に余裕は無い。
『こいつはここまでの奴だったという事か……。ふん。下らん時間を使ったな』
「カブトプス、滝登りだ!」
水の上を走り始めるカブトプス。
尋常ないその速さはサンダーまでの距離をあっという間に詰めていく。
「サンダー、守る! 堪える! えーと後一つなんだっけ!?」
覚えてない技に途惑うサンダー。
その様子を呆れて眺めるカイ。
「終わりだ、剛田タケシ!」
カブトプスの刃がサンダーに向かって振り上げられる。
だがその時ジャイアンは忘れていた技の名前を思い出した。
「そうだ! 見切りだ、サンダー!」
ジャイアンの言葉に反応するサンダー。
そして凄まじい速さでカブトプスの攻撃を避けた。
「ふん。終わりだ!」
カブトプスの二度目の攻撃で倒れるサンダー。
だがジャイアンの顔に焦りは無い。
ジャイアンの顔には笑顔がこぼれていた。
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「次はお前だ、カイリキー!」
次に出したのは最初からのパートナー、カイリキー。
「滝登りだ!」
「リベンジ!」
カブトプスが水上を凄まじい速さで走リ出す。
そのまま刃を切り上げ滝に登ってるように飛び上がる。
刃を直撃するがカイリキーは一撃では倒れない。
着地したカブトプスに待っていたのは四本の腕から放たれる拳。
その拳を避ける事など出来はしない。
凄まじい速さで壁に打ち付けられるカブトプス。
そのまま起き上がることは無かった。
雨がやんだフィールドを見て、カブトプスを回収するカイ。
『……最後の勝機。ギリギリでも掴み取ったか……上出来だ』
カイの顔には笑顔がこぼれる。
「何がおかしいんだ?」
ジャイアンがカイの奇妙な様子を見て尋ねる。
「いや、やはり俺はお前を選んでよかった。俺の眼に狂いは無いという事がわかったからつい、な」
タバコを取り出しカイは吸おうとする。
だがタバコを元に戻した。
「吸わねえのか?」
「ああ、お前との勝負が終わってから吸うさ。勝ちの一服か、負けの一服かわからんがな」
「いや負けだぜ」
カイの言葉に即答するジャイアン。
「俺は絶対に負けねえからな!」
「ふん。そうか」
カイは笑いながら最後のボールを投げる。
「ではこいつを倒してみるんだな!」
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「やっぱりそいつが最後か!」
ジャイアンは叫び、カイは笑う。
最後のポケモンはサントアンヌの時と同じポケモンだ。
名をキングドラと言う。
「雨が消えてもカイリキーよりは速い……お前の最後のポケモン次第だ」
「俺の最後のポケモンはお前は知ってるぜ」
「ほう? お前と会ったのは3度だけなのにな。では予想でもするとしようか」
カイは考える素振りを見せる。
「その前に……キングドラ、波乗りだ!」
「カイリキー、耐えてクロスチョップ!」
波乗りはカイリキーに直撃する。
カブトプスの攻撃もある為、倒れるカイリキー。
だがジャイアンの顔は笑ったままだ。
「ちっ、やっぱ最後のポケモンの対決になったか」
カイリキーを回収しながら呟くジャイアン。
「こいつはお前が唯一取れなかったポケモンだ。俺はお前をこいつで倒そうと心に決めてたんだよ!」
「俺が……唯一?」
『取れなかったポケモン……。
そういえば一匹いや一つ取り逃した物がある!
まさか……奴の最後のポケモンは……』
カイの考えが一つに収束されていく。
その様子を眺めていたジャイアンが笑う。
「どうやらわかったみたいだな! ニビシティの館長さんから託されたこいつが!」
ボールを投げるジャイアン。
「お前の最後のポケモンは……プテラだ!」
出てきたのは博物館の最後の化石。
館長が託した最後の希望、プテラだった。
----
「くく、まだ勝負はわからないようだな」
プテラを見て笑うカイ。
「どう言う事だ?」
ジャイアンは不思議そうにカイに尋ねる。
「俺の見立てではプテラの攻撃力でキングドラを一撃で倒すのは無理だ。
だが……キングドラも一撃で倒すのは無理かもしれない。
だから、この勝負は単純に素早さが速いプテラが勝つとお前は考えているはず。
どうだ?」
「ああ、その通りだ」
カイの問いにジャイアンはあっさり答える。
「という事はお前の考えではプテラが一撃ではやられないとふんでいるわけだ。
……くく、俺も馬鹿にされているな」
「なにがいいてえんだ!」
ジャイアンは声を荒げる。
「お前の考えを見せてもらおう! まさか甘い考えでそいつを最後にしたわけではあるまい!」
カイが指示を出す。
「プテラ、岩雪崩!」
「キングドラ、雨乞い!」
高速でプテラがキングドラに攻撃を始める。
やはりカイの予想通りキングドラは倒れない。
そして、雨が降り始めた。
「これでお前の勝ち目は一つしかなくなった……」
『あのアイテムをこいつが持たせているか……これで決着をつける!』
「さあ、俺の期待に答えられるか、剛田タケシ! キングドラ、波乗りだ!」
プテラに向けてキングドラが波を起こす。
それはプテラを仕留めるには十分な大きさの波だった。
『さあ、どっちだ!?』
カイがフィールドを見る。
そこには……
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プテラはかろうじて生きていた。
もう後一撃でも受けたら倒れそうだがまだその場に飛んでいた。
「終わりだ! 燕返し!」
凄まじい速さでプテラが攻撃を開始する。
その攻撃を避けるのは不可能。
攻撃を受けたキングドラは水浸しの床に崩れ落ちた。
「お前の予想通りだよ。俺がこいつに持たせていたのは気合の襷だ」
消えていくカイに向かってジャイアンが言葉を出す。
「ふふ、見事だ。全ては計算通りだった言うわけか……」
カイはタバコを取り出して吸う。
「負けの一服になったわけか……」
「……お前の子供はどうするんだ?」
ジャイアンは尋ねる。
「あいつなら大丈夫だ。すぐに俺の事は忘れるだろう……」
「ふざけんな!」
壁を拳で叩きつけるジャイアン。
「俺にも母ちゃんが居るけどよ、母ちゃんが居なくなったら俺は絶対悲しむ!
お前の子供はお前の為に出木杉をさらったんだぞ! そこまで心配するのに何が大丈夫だ!?」
「……なんだと? それは本当か?」
カイの顔から笑顔が消えていく。
「少しは子供の事も考えやがれ! 馬鹿野郎が!」
だがカイの姿はジャイアンが言っていくうちに消えていく。
そして、目から一筋の水を流して呟いた。
「そうか……あの馬鹿娘が」
カイはそう言ってその場から消滅した。
黒い髪の毛のような物が一つ落ちる。
「……次はドラえもんだな」
ジャイアンはカイの居た場所にお辞儀をしてワープゾーンに飛び込んだ。
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決着
ジャイアン カイリキーLV86 ダグトリオLV79 ケッキングLV83
プテラ LV84 サンダー LV90 モジャンボLV82
カイ ヌオー LV83 ランターンLV83 スターミーLV83
カブトプスLV85 オムスターLV85 キングドラLV88
三回戦ジャイアン○―×カイ
四回戦ドラえもん対サカキ? 出木杉対ソラ?
----
セキエイ本部
ジャイアンの帰りを全員は温かく迎えた。
「流石ジャイアン!」
スネオはジャイアンに手を向ける。
「おう!」
スネオの手に手を合わせてジャイアンは拳を上にかざした。
「カイさんに勝つなんて……凄いわタケシさん」
高く上げた拳を見つめて呟くしずか。
「どうでもいいけど、スネオは唯一負けるふうに見てたよね」
のび太が口を尖らせて言う。
「馬鹿! 言うんじゃない!」
「何だと、スネオ!」
「わあ!」
スネオはポケモンセンターの外に逃げ出した。
「待て、この野郎!」
スネオを追いかけていくジャイアン。
「僕の試合を忘れるなよ! 二人とも!」
ドラえもんの言葉にジャイアンが「わかった!」と反応した。
走っていく二人を眺める三人。
「現実世界ではこれが普通だったのにね……どうしてかなあ、凄い懐かしいんだ」
「そうね……」
『感傷に浸ってるとこ悪いけど、次のサカキさんが待ってるから早くしてくれない?』
退屈そうな声のアナウンスが響く。
「わかったよ。今から行くさ!」
ドラえもんが乱暴に扉に触れる。
そして、その場から一瞬で消えた。
----
セキエイ高原 龍の間
ドラえもんが辿り着いた先にはロケット団首領がいた。
「全員を破ったか。彼等の実力には感心するよ」
サカキはボールを持ちながらドラえもんを見る。
「皆、手加減してくれたみたいだけどね」
ドラえもんがお腹のポケットからボールを取り出す。
「出木杉英才の行方はわかったのか?」
「Dから聞いたよ。今は牢獄前に居るらしいんだ。さらったのはそっちの幹部だよ」
「なるほど、ソラがカイの為に行動したのか」
疑問が氷解したサカキは手を叩いた。
「全くDの奴め、勝手に計画を変えて……でも先に変えたのは僕だから何も言えないか」
「そうだな……この世界の為にも奴等には成長して貰わなきゃいけないからな。
お前も含めてだぞ、ドラえもん。だからDは計画を変更したんだ。お前も戦闘させるためにな」
「僕から生まれたくせに……生意気な奴だ」
ドラえもんがボールを取り直す。
「さて、戦闘するぞ。これ以上喋っていたらお前が関係者という事がばれてしまうかもしれないからな」
「そうだね。じゃあやろうかサカキさん。言っておくけど僕は手を抜かないよ!」
「手など抜いたら私は貴様を許さんぞ! 貴様との戦いを私は楽しみにしていたのだからな!」
「ソーナンス!」「カバルドン!」
両者がポケモンを出す。
「またそいつか……」
「流石に初手で出すとは思わなかったみたいだね」
ドラえもんから笑顔がこぼれる。
「……残念だがカバルドンも一撃技を使えるぞ」
「えっ!?」
「地割れだ!」
巻き起こる砂嵐を無視してカバルドンを地面を叩く。
地響きはソーナンスを捕らえ、またもソーナンスは一撃で倒れた。
----
「速いよ……」
ボールにソーナンスを回収して思わず呟くドラえもん。
その目には呆れが垣間見える。
「当てが外れたな……さあ次のポケモンを出せ!」
サカキが叫ぶ。
その目には怒りが垣間見える。
「期待に答えるのはここからだよ! ギャラドス、行け!」
姿を現す青き龍。
その名はギャラドス、水タイプのポケモンだ。
「そいつの特攻でカバルドンを一撃では仕留めれないと思うがな……まあいい、蓄えるだ!」
「させない、挑発だ!」
挑発するギャラドス。
その行動を見てカバルドンはまた地面を叩く。
だがその地響きはギャラドスには無効だった。
「続けて龍の舞!」
ギャラドスが神秘的な舞を踊る。
「カバルドン、岩雪崩だ!」
岩をギャラドスに向かって放つカバルドン。
だが全ての岩は外れてしまった。
「運も僕の味方みたいだね! ギャラドス、アクアテールだ!」
カバルドンに近づいて、尻尾を振り上げるギャラドス。
その尻尾はカバルドンの急所に当たる。
上から叩きつけられたカバルドンが起き上がる事は無かった。
----
「やっと一体倒したか。さあ次はこいつだ!」
ボールを投げるサカキ。
そこから出てきたのは砂漠の聖獣、フライゴン。
「フライゴン……タイプは地面、ドラゴン……ギャラドス、氷の牙だ!」
氷を纏った牙でフライゴンに噛み付くギャラドス。
だが一撃では倒れない。
「な、何で?」
「氷半減の実だ! フライゴン、目覚めるパワーだ!」
フライゴンから光が放たれる。
刹那、ギャラドスに雷光が走る。
悲鳴をあげて、ギャラドスは崩れ落ちていった。
「目覚めるパワー……なんていう執念だ……」
ドラえもんが驚きの声を上げる。
『狙ったタイプを出すのはゲームでも大変だ。
この世界でそんなものを使ってくる人が僕以外に居るとは……』
「お前の実力はDに匹敵するとまではいかないが私とはほとんど同レベルのはず。
まさかこの程度で終わるわけではあるまい?」
サカキが問いながらボールを上に軽く投げる。
その様子にドラえもんは笑った。
「切り札を出し惜しみするのは止めるよ。僕のパートナーに任せる!」
ドラえもんがボールを投げる。
出てきたのは旅の相棒、ウインディ。
「日本晴れだ!」
「地震!」
地面を叩きつけウインディにダメージを与えるフライゴン。
だがウインディは痛がる様子も見せない。
「効かないよ、威嚇の特性もあるしね。サカキさん、フライゴンを戻してよ。もうそいつは戦えない」
「!?」目を見開くサカキ。
ドラえもんが言ってからすぐにフライゴンは崩れ落ちたのだ。
----
「素晴らしい攻撃力だ……」
「こいつは僕のポケモンで一番レベルが高いからね」
ウインディを見つめるサカキにドラえもんが誇らしげに答える。
「では私も気を引き締めるとするか!」
ボールを投げるサカキ。
出てきたのは蠍、グライオン。
グライオンを見て笑うドラえもん。
「何がおかしい?」
「ここまで僕の筋書き通りだと、ついね」
「何?」
サカキは目を吊り上げた。
「そう言うのなら見せてみろ! グライオン地震だ!」
地震を起こす為に動作を始めるグライオン。
だがドラえもんは全く慌てなかった。
「攻撃なんて出来ないよ。グライオンは一撃で倒れるんだから。
さっきフライゴンを倒した攻撃、目覚めるパワーでね!」
ウインディが飛び上がり光を発する。
刹那、グライオンに氷が舞い散った。
「馬鹿な……目覚めるパワーだと……」
一撃で倒れるグライオンを見て呟くサカキ。
ドラえもんの目の前に着地するウインディ。
その様子を見て笑うドラえもん。
状況は完全にドラえもんペースだ。
----
セキエイ本部
「……強い。ドラえもんの奴、こんなに強かったのか」
スネオがドラえもんを見て呟く。
「もしかしたら出木杉より強いんじゃねえか? あのウインディの強さありえねえぞ!」
驚きの声を上げるジャイアン。
「ドラちゃん……何で私達に戦わせようとしたのかしら?
こんなに強いなら最初から戦えばいいのに」
しずかが疑問を全員にぶつける。
「ドラえもんもこれほどの強さを自分が持っていると気付かなかったとか?
いや、図鑑で確認できるか……」
スネオは髪をかきあげて考える。
「全員に戦わせようと思ったんじゃねえか。皆戦いたがってると思ってたとか、かもよ」
「タケシさんだけよ。戦いたがってたのは」
ジャイアンの言葉に反論するしずか。
「戦えない理由があったとか? でもそんな理由思いつかないなあ」
のび太の言葉に頷く全員。
ドラえもんの行動には何かが腑に落ちない。
「あいつの言葉を聞くと、ソラの誘拐はイレギュラーみたいだったな」
スネオが髪をかきあげる。
「命がかかった戦いにドラちゃんが参加しない理由。……わからないわね」
しずかは思考を深めていく。
「出木杉が居たらな……何か言ってくれんだろうけどよ」
ジャイアンの言葉どおり、一行で一番頭のいい出木杉はここには居ない。
「考えてもしょうがないよ。皆で応援しようよ!」
のび太はそう言って全員にモニターを見るよう指示する。
だが一番考えているのは彼自身だった。
『あいつの名前……ミュウに聞いた法則に当てはめると……偶然かなあ?
それとも……まさかあいつとドラえもん、もしかしたら……』
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「そいつを倒すには色々策を取るしかないようだ」
「策? 僕のウインディは倒せないよ!」
ドラえもんが叫ぶ。
自信に満ち溢れている表情はもう勝ちを確信しているようだ。
その表情を見てサカキはドラえもんを睨みつける。
「私が思う強者が負ける理由は三つある。
一つ、敵が単純に自分より強い場合。
これはどう足掻いても勝てぬ。
二つ、止むを得ない事情で本気を出せない場合。
これは言い方を変えるなら手を抜いているという事だ。
そしてお前に当てはまる物は最後だ。何かわかるか?」
サカキが真剣な表情で尋ねる。
ドラえもんは考える素振りを見せる。
そして、『わかった!』と言わんばかりに手を叩いた。
「わかった! 自分自身を強いと思い込んでるときだ!」
ドラえもんの言葉にサカキは頷く。
「その通り。
今のお前は自分の強さに溺れている。
それではお前の強さは発揮できない。
一番の実力を持つお前が試された理由はそこだ。
思い当たるだろう?」
ドラえもんはサカキの問いに笑って頷く。
「忠告はありがたく貰うよ。
……あいつは僕の事をよく理解しているね。
流石は僕から生まれただけのことはあるよ。
ありがとう、サカキさん。
思っていた通り、貴方とあいつは僕の間違った道を正せる人だったよ。
僕は貴方達を選んで正解だった」
ドラえもんの言葉にサカキは笑った。
「私達を選んで失敗など無い。何故なら私達は世界で一番の悪だからな!」
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