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ただの金銀のようだ その4 - (2007/10/06 (土) 23:01:27) のソース
[[前へ>ただの金銀のようだ その3]] 「アカネさん、強かったわね」 「本当だよ……」 のび太は心の底から疲れたように言う。 実際に心の底から疲れていたのだ。 それを知ってか知らずか(間違いなく後者だろうが)、 しずかのイーブイはのび太の頭の上に座っている。 これならば、ただ単に仲がいいとしか思われないだろう。 少なくとも、しずかはそう思っている。 コガネシティのジムリーダー、アカネとの戦闘に二人は辛勝した。 特にのび太は道具を使いまくり、 周りからブーイングが巻き起こるほどだったのだ。 「しずちゃんが一緒でよかったよ」 そうでもなければ、ジムのトレーナーたちに何を言われたか分からない。 「何を言ってるのよ。そういうルールなんだから、気にすることないわ。 それに、のび太さんのポケモンも進化できたし、いいことだらけじゃない」 そう、先ほどの戦闘で、のび太のイトマルはアリアドスに進化を遂げた。 確かに今のところはいいこと尽くめなのだ。 「まぁ、そうだよね」 のび太は自分に言い聞かせる。 大丈夫、ぼくは今までちゃんとやっている。 何も心配することはないんだ。 だってぼくの側には、しずちゃんがいるんだから。 ---- ここはアサギシティ 遠く離れた異国に 最も近い港町 「あぁ、めんどくさい……」 ぶつぶつと文句を言いながら、 アサギの灯台からスネ夫が出てきた。 「何がアカリちゃん、だよ。まったく女って奴は……」 どうやらミカンに、タンバに行って秘伝の薬を取ってくるように頼まれたらしい。 アカリちゃんとは、ミカンが可愛がっている、 病気のデンリュウのニックネームだ。 「そりゃ、みんなが来るのを待つよりだったら、 ぼくが行った方が早いんだけどさぁ……」 スネ夫は、なぜこのイベントがカットされないのか、と疑問に思うのだった。 「まぁタンバにはどうせ行かなきゃいけないしね」 文句を言っていてもしょうがないことを悟ったスネ夫は、 薬ついでにジム戦もすることに決め、ヌオーに乗って海に出た。 ---- ここはエンジュシティ 昔と今が同時に流れる歴史の町 昔を思わせる建物と、 今を感じさせる建物とが建ち並ぶ町、エンジュシティ。 「のび太さん、お願いがあるの」 ここに着いたしずかは、いきなりそう切り出した。 しずかからの頼みなんて滅多にないことだ。 「あっちに山が見えるでしょう?」 しずかが指差した先には、大きくそびえ立つ山があった。 「スリバチ山って言うの。 あそこにね、とってもかわいいポケモンがいるんですって」 「へぇ……」 はっきり言って、のび太は行きたくなかった。 肉体的にも精神的にも疲れたから、休みをとりたいのだ。 するとしずかは、それに気付いてか気付かずか、 のび太の目を覗き込みながら、ふたたびお願いをする。 「捕まえに行くの、手伝ってくれないかしら?」 悲しいかな、もちろんのび太は二つ返事で引き受けた。 自分の心身よりも、最愛の人を優先したのだった。 ---- モーモー牧場 うまい搾り立てミルクをどうぞ! 「……と言うわけで、きみの持ってる木の実を分けてもらえないかい?」 恰幅のいいおじさんがそう尋ねているのは、 これまた恰幅のいい少年、ジャイアン。 ここは39番道路のモーモー牧場、おじさんはその牧場主だ。 ここでは乳牛として、たくさんのミルタンクを飼っているが、 最近、どのミルタンクも元気がないらしいのだ。 「ポケセン連れてきゃいいんじゃねぇの?」 ジャイアンはおじさんに言うが、おじさんは首を横に振る。 「ポケモンセンターじゃダメなんだ」 「じゃあ木の実でもダメなんじゃねぇの、ふつうは」 はぁ、とおじさんが溜め息を吐く。 「そうなんだよ。おかしいんだよなあ。 ポケモンセンターの治療はなんの効果もないのに、 木の実を食べると元気になるんだよ。まぁ一時的になんだけど」 ミルタンクを見回しながら力なく話すおじさん。 するとジャイアンはいきなり立ち上がり、こう叫んだのだ。 「てめぇらいい加減にしやがれッ!」 ---- 「な、何を……」 おじさんもこれには流石に驚いた。 ミルタンクたちも突然の大声に、ただただびっくりしている。 「おっさん、分かんねぇのか? ……こいつら、木の実ほしさに仮病使ってんだよ」 この事実に、おじさんはさらに驚く。 「な、なんだってー! 本当なのか少年!」 「そうだよなぁ、お前ら?」 ジャイアンの言葉に、ミルタンクたちは申し訳なさそうに目を逸らす。 「たぶん甘やかしてたせいだと思うぜ」 必要以上に甘やかされると、ろくな奴にならない。 ジャイアンにもそんな友人が約一名いるが、まぁそれはおいといて。 「じゃあな、おっさんにミルタンク」 ジャイアンが牧場から出ようとすると、一匹のミルタンクが付いて来た。 「な、なんだよ」 慌てて追い払おうとしても、すり寄って来るばかりだ。 「どうやらきみに懐いたみたいだね。 ……よし、そのミルタンクはきみに譲るよ」 おじさんの太っ腹発言に、今度はジャイアンが驚く。 「え、いいのか?」 「いいよ、気にしないでくれ。ほんのお礼だよ」 実はジャイアン、懐かれたどころか惚れられたのだが、 それに気付く人はこの場にはだれもいなかった。 ----