四十八願 (しじゅうはちがん)とは、阿弥陀仏が法蔵菩薩として修行していたとき、それに先立って立てた願のこと。浄土教の根本聖典とされる康僧鎧訳の 無量寿経 では四十八願となっている。異訳の諸本には願の数に相違があり、二十四願系統と四十八願系統に大別できる。前者は初期の浄土教思想、後者は後期の発展した浄土教思想を示すと見られる。
法然は四十八願のうち第十八願を念仏往生の願と名づけ、これが中心の願であるところから、第十八願を王本願と呼んでいる。
願名
- 無三悪趣の願
- 不更悪趣の願
- 悉皆金色の願
- 無有好醜の願
- 令識宿命の願 =宿命智通
- 令得天眼の願 =天眼智通
- 天耳遥聞の願 =天耳智通
- 他心悉知の願 =他心智通
- 神足如意の願 =神足智通
- 不貪計心の願 =漏尽智通
- 必至滅度の願
- 光明無量の願 漢本から言えば「光明勝過願」。
- 寿命無量の願 第十一願の往生浄土する者を必ず成仏せしめるという誓いの後の第十二・十三願であるから、往生浄土したものに具わるべき徳。この第十二・十三願によって真仏土巻が説かれる。
- 声聞無量の願
- 眷属長寿の願
- 離諸不善の願
- 諸仏称名の願、諸仏称讃の願、諸仏咨嗟の願、往相廻向の願、選択称名願 称讃・称名・咨嗟はともに讃歎の意味であり、名前を称える称名ではない。
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至心信楽の願、念仏往生の願、選択本願、本願三心の願、往相信心の願 「唯除五逆謗法|誹謗正法」の句があるのは梵・蔵・唐訳だけである。
- 設我得佛 十方衆生 至心信樂 欲生我國 乃至十念 若不生者 不取正覺 唯除五逆誹謗正法
- 至心発願の願
- 至心廻向の願 果遂について、親鸞は一生果遂の義。この果遂の願のままに、第十九願の仮門から第二十願の真門に入り、第十八願の弘願に転入する三願転入を説く。
- 具足諸相の願
- 還相廻向の願、必至補処の願、一生補処の願
- 供養諸仏の願
- 供養如意の願
- 説一切智の願 一切智によって諸法を演説する。
- 得金剛身の願、那羅延身の願
- 万物厳浄の願、所須延身の願
- 道場樹の願、見道場樹の願
- 得弁才智の願
- 弁才無尽の願、智辯無窮の願
- 国土清浄の願
- 妙香合成の願、宝香合成の願
- 触光柔軟の願
- 聞名得忍の願
- 女人往生の願、女人成仏の願、変成男子の願 法然は「女人往生の願」。親鸞は「変成男子の願」。存覚は「転女成男の願」「聞名転女の願」。第18願の別願。
- 聞名梵行の願、常修梵行の願
- 作礼致敬の願、人天致敬の願
- 衣服随念の願
- 常受快楽の願、受楽無染の願
- 見諸仏土の願
- 聞名具根の願、諸根具足の願
- 聞名得定の願、住定供仏の願
- 聞名生貴の願、生尊貴家の願
- 聞名具徳の願、具足徳本の願
- 聞名見仏の願、住定見仏の願
- 随意聞法の願
- 聞名不退の願、得不退転の願
- 得三法忍の願
分類
中国の慧遠と憬興(きょうごう)は3つに分類している。其々の名と分類は以下の通り。
- 摂法身願・求仏身願 仏が自らの仏身を完成すること 第12・13・17願
- 摂浄土願・求仏土願 衆生を往生せしめる仏土の完成 第31・32願
- 摂衆生願・利衆生願 正しく衆生の救済を願うもの その他の43願
日本の親鸞は、48の願を真実と権仮(ごんけ)に区分する。
真実+-往相+--教----無量寿経 | |--行----第17 諸仏称名願 | |--信----第18 至心信楽願 | |--証----第11 必至減度願 | +真仏土+---第12 光明無量願 | +---第13 寿命無量願 +-還相--------第22 還相廻向願 権仮-----化身土+要門-第19 至心発願願 +真門-第20 至心廻向願
これらの願は、すべて衆生の悲しみ苦しみをすべて観察した上で立てられたものであり、その解決としてある。本当の意味での「苦」の解決は、衆生が仏になることですべて解決されるから、往生浄土の上で仏となることが四十八願のもっとも重要な部分となる。