風華学園の校門前。
人気のないその場所に、少女が仁王立ちをしていた。
人気のないその場所に、少女が仁王立ちをしていた。
「この校舎を見るのも久しぶりですわね」
豊満な肢体の少女──訂正、ここは女性にしておこう──は感慨深そうに呟く。
きっちり揃った明るい黄色の前髪から覗く広いおでこが、燦々と輝く夏の日を受けて照り返していた。
きっちり揃った明るい黄色の前髪から覗く広いおでこが、燦々と輝く夏の日を受けて照り返していた。
「──さあ、待ってらっしゃい肉欲獣と愉快な仲間たちっ!わたくしを除け者にした事、たっぷり後悔させて差し上げますわっ!!!」
そう不穏な台詞を言うと、彼女はまるで地響きを起こすかのような足取りで門をくぐっていった。
-+--+--+--+-
図書館の周りは、好奇心に駆り立てられた生徒でごった返していた。
「すみませ~ん、ちょっと通してください~っ」
そんな中を、エリスは小柄な体を精一杯使ってかき分ける。
そうしてやっとの事で騒ぎの中心にたどり着いた。待ち受けていた真白が普段どおりの口調で迎る。
「ああ、志宝さん、いらっしゃいましたか」
「遅れてしまってごめんなさい」
真白の側に控えている桃色の髪が可愛らしいメイドさん、姫野二三──ちなみに彼女も"HiME"である──にも会釈を返してから、エリスはおずおずと訊いた。
「すみませ~ん、ちょっと通してください~っ」
そんな中を、エリスは小柄な体を精一杯使ってかき分ける。
そうしてやっとの事で騒ぎの中心にたどり着いた。待ち受けていた真白が普段どおりの口調で迎る。
「ああ、志宝さん、いらっしゃいましたか」
「遅れてしまってごめんなさい」
真白の側に控えている桃色の髪が可愛らしいメイドさん、姫野二三──ちなみに彼女も"HiME"である──にも会釈を返してから、エリスはおずおずと訊いた。
「──皆さんは、もう……?」
「いいえ、志宝さんは二番乗りですよ」
真白の背後、そこに建つ図書館を中心に不可侵の結界が形成されていた。
「いいえ、志宝さんは二番乗りですよ」
真白の背後、そこに建つ図書館を中心に不可侵の結界が形成されていた。
普通、月匣はイノセンスは感知できないものだが、この月匣は紅色の薄い膜として視認できるようだ。ご丁寧に入り口まで用意してるし…。
オーファンの仕業ということでごまかしてはいる──それはそれで色々問題があると思う──が、いったい何のつもりだろうか。
「今、内部を調べてもらっています」
「調べる?」
月匣の前で、六角形の浮遊体が複数展開しているのは現生徒会執行部部長、菊川雪之。
彼女は舞衣や祐一で同学年、メガネの似合う秀才タイプの少女だ。
生憎、"チャイルド"召喚は鍵──鴇羽舞衣、玖我なつきにとって楯祐一にあたる──が不在で出来ないが、常識人で頭脳労働担当と稀有なパーソナリティの持ち主だ。
「彼女の"エレメント"で、月匣内部の様子を探ってもらっているんです」
真白が軽く説明をしていると、天輪を煌めかせ舞衣が空から降りてくる。
「うっわ。これは何というか…、スゴいことになってるわね」
舞衣に続いて、なつき、祐一とお馴染み三人組に加え、今回は晶も一緒だ。
「──ほかの方々はどちらに?」
それが、と前置きして舞衣が呆れ気味に答えた。
「あかねちゃんたちは連絡つかず、ミコトはお昼寝。結城さんは行方不明──リーダー不在だとホントまとまりないのね、あたしたちって」
オーファンの仕業ということでごまかしてはいる──それはそれで色々問題があると思う──が、いったい何のつもりだろうか。
「今、内部を調べてもらっています」
「調べる?」
月匣の前で、六角形の浮遊体が複数展開しているのは現生徒会執行部部長、菊川雪之。
彼女は舞衣や祐一で同学年、メガネの似合う秀才タイプの少女だ。
生憎、"チャイルド"召喚は鍵──鴇羽舞衣、玖我なつきにとって楯祐一にあたる──が不在で出来ないが、常識人で頭脳労働担当と稀有なパーソナリティの持ち主だ。
「彼女の"エレメント"で、月匣内部の様子を探ってもらっているんです」
真白が軽く説明をしていると、天輪を煌めかせ舞衣が空から降りてくる。
「うっわ。これは何というか…、スゴいことになってるわね」
舞衣に続いて、なつき、祐一とお馴染み三人組に加え、今回は晶も一緒だ。
「──ほかの方々はどちらに?」
それが、と前置きして舞衣が呆れ気味に答えた。
「あかねちゃんたちは連絡つかず、ミコトはお昼寝。結城さんは行方不明──リーダー不在だとホントまとまりないのね、あたしたちって」
名前の挙がってない連中がいるのはご愛嬌。
というか、触れないでやっていただきたい。
というか、触れないでやっていただきたい。
舞衣の報告を聞き、真白は眉を僅かにひそめた。それも一瞬の事で、すぐさま普段の調子に戻る。
「まぁ、それは困ったことになりましたね。どうしましょう」
実は大して困ったとか思ってないだろ、あんた。
「何、私たちだけでも問題ないだろう」
なつきが根拠のない自信を口にする。
周りの面子が生暖かい目を向けていた事は秘密だ。
「──そうもいかないみたいです」
雪之の"エレメント"に写し出されたのは、本が大量に列んだ回廊を走る那岐の姿だった。
「火渡くん!?」
彼を追いかけるのは、生き物のように羽ばたく不気味な本の群れ。
那岐の黒い銃器が火を吹き叩き落としても、次から次にわき出して執拗に追い立てる。
「あっ!」
と、映像が唐突に途切れた。
「……"エレメント"での偵察はこれが限界みたいです」
「──どうやら悠長に構えている場合ではないようですね。
仕方ありません。突入メンバーは、志宝さん、楯さん、鴇羽さん、玖我さんの四人という事で……」
なつきが根拠のない自信を口にする。
周りの面子が生暖かい目を向けていた事は秘密だ。
「──そうもいかないみたいです」
雪之の"エレメント"に写し出されたのは、本が大量に列んだ回廊を走る那岐の姿だった。
「火渡くん!?」
彼を追いかけるのは、生き物のように羽ばたく不気味な本の群れ。
那岐の黒い銃器が火を吹き叩き落としても、次から次にわき出して執拗に追い立てる。
「あっ!」
と、映像が唐突に途切れた。
「……"エレメント"での偵察はこれが限界みたいです」
「──どうやら悠長に構えている場合ではないようですね。
仕方ありません。突入メンバーは、志宝さん、楯さん、鴇羽さん、玖我さんの四人という事で……」
「──ちょっと待ったぁっ!!」
突然の叫びが真白の台詞をかき消した。
声の主は、人だかりをかき分け……いや、蹴散らし真白の前で立ち止まる。
「遥ちゃん!?」
「げっ、でぼちん!」
その人物に見覚えのないエリスは舞衣に耳打ちで質問した。
「…どなたですか?」
「うちの卒業生で珠洲城遥さん。彼女も"HiME"なの」
珠洲城遥───アンゼロットより預かった資料には名前がなかった。卒業生だから省いた、という事らしい。
いい加減にも程があるんじゃないか?ロンギヌス。
とりあえず、何だか頼りになりそうな人だな、とエリスは思った。
声の主は、人だかりをかき分け……いや、蹴散らし真白の前で立ち止まる。
「遥ちゃん!?」
「げっ、でぼちん!」
その人物に見覚えのないエリスは舞衣に耳打ちで質問した。
「…どなたですか?」
「うちの卒業生で珠洲城遥さん。彼女も"HiME"なの」
珠洲城遥───アンゼロットより預かった資料には名前がなかった。卒業生だから省いた、という事らしい。
いい加減にも程があるんじゃないか?ロンギヌス。
とりあえず、何だか頼りになりそうな人だな、とエリスは思った。
(それにしても……)
視線をつつーっと落とすエリス。視線の先にあるのは遥の胸部。
(──…大きい……)
自分のと比べ密かにヘコむエリス。
普段はそんな事気にしない──気にしないのか?──エリスがショックを受けるくらい、遥のあれはけしからんサイズなのでした。
志宝エリス、花も恥じらう十七歳───悲しいかな発育具合はイマイチです。
志宝エリス、花も恥じらう十七歳───悲しいかな発育具合はイマイチです。
……これは創った奴の趣味ですか?そうですか、どうもありがとうございます。
…チクショウ。
エリスはこの日初めて、本格的におじさまに殺意(既に故人だが)を持ったとか、持たなかったとか。
もっとも───舞-HiMEヒロイン勢で一二を争うバストサイズの持ち主、珠洲城遥と比べるのは些か酷と言うものだろう。
(……灯ちゃんならいい勝負かも)
などとエリスがつらつら考えていると…、
「あっ、でぼちんだ」
「あれが伝説のでぼちん先輩?」
野次馬から驚愕と好奇のざわめきが起きる。
遥は外野のざわめきを視線で制すると、祐一の方に向き直った。
両脇にいた舞衣となつきを睨め付けてから言い放つ。
「あら、楯祐一。まだ肉欲獣をやってらっしゃるの?」
「肉よ……?」
清純派のエリスには意味がわからなかったらしい……幸いな事に。
「あー!!いや、何でもない。何でもないんだ、ホント」
首を傾げるエリスに祐一は慌ててごまかした。
まあ、酷いごまかし方だが。
「珠洲城さん……。お久しぶりですが、何故こちらに?」
「理事長!!」
ズン、と彼女の"エレメント"である星球式鎚矛──いわゆるモーニングスターが大地に突く。
「はい?」
「学園の危機だというにも関わらず、どうしてわたくしに何の連絡もありませんでしたのっ!?」
「それは学業のお邪魔にならないよう配慮しただけですよ。他意は決してありません」
遥の剣幕を笑顔でやんわり受け流す真白。
正論で返されてしまい、む…と呻くと、遥は納得したのか矛を収めた。
「ともかく、わたくしもこの月匣とやらへの突入に参加いたしますわ」
「それは助かります。では、珠洲城さんと菊川さんもお願いしますね。
尾久崎さんは私たちと一緒にここで待機を」
「わかった」
「了解ですわ。さっそく行きますわよ、雪之!」
「あっ、ちょっと待って遙ちゃん。迂闊に入ったら──」
雪之の忠告にも耳を貸さず、遥はずんずんと月匣の中に入っていった。
「あの人も変わらないな。……悪い意味で」
「ほんと変わらないわね。……悪い意味で」
肩を落とし、顔を見合わせる舞衣と祐一。
すると、なつきがぽつんと呟いた。
「──確かに厄介な事になったな」
「なつき?」
「いや、何でもない。もう手遅れのようだしな」
「??」
「あっ、でぼちんだ」
「あれが伝説のでぼちん先輩?」
野次馬から驚愕と好奇のざわめきが起きる。
遥は外野のざわめきを視線で制すると、祐一の方に向き直った。
両脇にいた舞衣となつきを睨め付けてから言い放つ。
「あら、楯祐一。まだ肉欲獣をやってらっしゃるの?」
「肉よ……?」
清純派のエリスには意味がわからなかったらしい……幸いな事に。
「あー!!いや、何でもない。何でもないんだ、ホント」
首を傾げるエリスに祐一は慌ててごまかした。
まあ、酷いごまかし方だが。
「珠洲城さん……。お久しぶりですが、何故こちらに?」
「理事長!!」
ズン、と彼女の"エレメント"である星球式鎚矛──いわゆるモーニングスターが大地に突く。
「はい?」
「学園の危機だというにも関わらず、どうしてわたくしに何の連絡もありませんでしたのっ!?」
「それは学業のお邪魔にならないよう配慮しただけですよ。他意は決してありません」
遥の剣幕を笑顔でやんわり受け流す真白。
正論で返されてしまい、む…と呻くと、遥は納得したのか矛を収めた。
「ともかく、わたくしもこの月匣とやらへの突入に参加いたしますわ」
「それは助かります。では、珠洲城さんと菊川さんもお願いしますね。
尾久崎さんは私たちと一緒にここで待機を」
「わかった」
「了解ですわ。さっそく行きますわよ、雪之!」
「あっ、ちょっと待って遙ちゃん。迂闊に入ったら──」
雪之の忠告にも耳を貸さず、遥はずんずんと月匣の中に入っていった。
「あの人も変わらないな。……悪い意味で」
「ほんと変わらないわね。……悪い意味で」
肩を落とし、顔を見合わせる舞衣と祐一。
すると、なつきがぽつんと呟いた。
「──確かに厄介な事になったな」
「なつき?」
「いや、何でもない。もう手遅れのようだしな」
「??」