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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第14話

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飯波高校の文化祭は9月の終わりに行われる。
それは、留学生の2人にもまた、無関係ではない。特に不思議研に入ろうと言う変わり者ならばなおさら。

トンテントンカン…
手を止めること無く不思議研の部室に金づちの音が響き渡る。
秋の文化祭。静たちのいる不思議研はお化け屋敷をやることになった。
ただのお化け屋敷では無い。
監修三石姉妹&静=ヴァンスタイン、中の人担当要いのりと演劇部有志(何をどうやったのか春美が話をつけて来たらしい)
ガチで怖がらせる、超本格派。それが不思議研の今年の出し物だった。

そんなわけで、いのりと静はお化け屋敷の道具を作っていた。
「そう言えばさ、ロンギヌスの方はど~なの?」
2人がこの街に来てからはや一ヶ月。飯波市での調査は、暗礁に乗り上げていた。あれからと言うもの、狼男も吸血鬼も現れていないのだ。
ふと思い出したいのりの問いかけに静は首を振って答えた。
「残念ながら、プラーナを抜かれてて、まだ目を覚まさないらしい。色々聞きたかったんだけどね」
行方不明になっていた調査隊は今、世界魔術協会の治療施設に搬送して治療している。
話によると、限界ぎりぎりまでプラーナを絞り出されていたため回復にはもう少しかかるらしい。
「そっか。それにしても…」
この1ヶ月、この世界に関わってきて感じた素直な感想を漏らす。
「この世界って、プラーナ強い人多くない?」
この前、静と一緒に行った病院でであった人のことを思い出す。
同じ病室で唯一喋れた、漆野と言う刑事。同じ病室で寝かされていた、きぐるみが枕もとに置かれた謎の外人。
2人とも強いプラーナを持っていた。もっとも謎の外人の方は限界までプラーナを抜かれていたため動くこともできなかったが。
「あたしたちがウィザードだって言っても驚いて無かったし…やっぱ世界結界が無いからかな?」
「ああ、それはあるかもしれないね」
静が頷いて今までに知り得たことを話す。
「ロンギヌスの調査だと、この世界にはウィザードこそいないけど、月匣を貫通する常識外の存在は結構ごろごろいるらしい」
「常識外のって言うと…サフィーちゃんや銀之介君みたいなの?」
「う~ん。あの2人もそうだけど、他にも、色々といるらしいよ。常識を超える技をもってる人間とかね」
プラーナの豊富なこの世界には、ちらほらと雑魚エミュレイターが侵入していると言うのが、ロンギヌスの調査結果だった。
そしてその後の調査でこの世界の住人が密かに相当量のエミュレイターを倒していることも分かっていた。
サフィーのような吸血鬼や銀之介のような狼人間の手によると思われるものもいくつかある。だがそれ以上にその他のものの手によるものらしき報告も多かった。

曰く、地球外の技術で作られたパワードスーツを着た男が現れて場をひっかきまわしていった。
曰く、とある少女を襲ったエミュレイターの群れを忍者の少年が全滅させた。
曰く、ワニのきぐるみを着た少年がエミュレイターをあっという間に倒した。
曰く、イノセントの少年を襲ったエミュレイターが忍者刀の魔剣使いに一刀両断された。
曰く、この世界に逃げ込んだエミュレイターが急所にさんまがささって死んでいるのが見つかった…などなど

「それに、ナイトメアの報告もあるしね…」
静が月衣から報告書を取り出す。
「ナイトメア…ってあのすっごく怪しい恰好のあれ?」
いのりの脳裏に、奇抜な格好の男が思い浮かぶ。夢使いの集まりに姉を迎えに来たことがあるのだ。
あのときは大変だった。反射的にファイアーワークスが暴走しかけて、危うく家が焼けるところだった。
「そ。下がる男や赤き巫女に並ぶ有名人。実はマユリさんの知り合いだったらしくてね。快く報告書を回してくれたよ。
こっちの事件解決にも役に立つだろうってね」
そして、報告書の内容をかいつまんでいのりに伝える。
「ナイトメアの関わった事件の首謀者は、魔王の1人、カミーユ・カイムン。
どうやらこの世界の豊富なプラーナを利用してエミュレイターを融合させた人狼の兵士を作ろうとしていたらしい。
まあ、それはナイトメアの手で解決したんだけど、事件解決の際にこの世界の人間2人の協力を得ている。しかも戦力的な意味で。
2人とも文字通り人間離れした実力の持ち主で、彼らの協力が無かったら、解決は不可能だったって報告しているよ」
「へえ~」
2人とも魔王級エミュレイターとは戦ったが、本物の魔王と戦ったことは無い。
ウィザードでも、魔王と戦うなんてごく稀な特例を除けば一生に一度あるかないかなのだ。
その魔王と対等に渡り合ったのがこの世界の人間と聞き、いのりは目をまるくした。
「やっぱ世界って広いんだね」
まさかその2人がサフィーと銀之介の関係者だとは露ほども思わず、いのりが感嘆の声を上げる。
「そうだね。まあ、僕らも人ごとじゃあ無いんだけどね」
「へ?ど~ゆ~こと?」
いつもうさんくさ…もとい爽やかな笑顔の静が一転して真面目な顔になる。
「ああ、サフィーちゃんにはもう言ったんだけど、この事件、多分魔王が絡んでる」
「魔王って…マジで!?」
「あの人狼…銀之介君の叔父さんが言っていたことと、銀之介君が彼と戦った時のことを聞いていて気になったから調べてたんだけど…」
大声を上げるいのりに静はこの2週間の調査から出した結論を話した。
「銀之介君の叔父さんの瘴気を自在に操る能力。あれは、“落し子”の力だ」
落し子とは、ごく最近、現れるようになったウィザードのクラスである。
魔王と契約し、魂を売り渡して裏界の力を得たものたちの総称。
魔王のしもべとして、時に冥魔との戦いに協力し、時にウィザードの前に立ちはだかるクラスである。
「ってことはつまり…」
「うん。この事件の背後には、彼を落とし子にした、魔王が存在する」
ま、それが誰なのかまでは分からないけどねいつもの笑顔に戻って肩をすくめる静。
「魔王かあ~」
いのりが溜息と共に漏らす。
「ま、そういうわけだから、しばらくはここを離れるわけにはいかない。いのり君も十分に気をつけて」


 *

一方その頃。
「魔王かあ~」
同じころ、人の良さそうな青年がため息を吐き出す。
その、荒唐無稽な話に。
「らしいでしゅ」
話し終えた少女が、やっぱり溜息をついて答える。
青年の名は駒犬銀之介。少女の名は、サファイア。
狼人間と吸血鬼のコンビは、エミュレイターが発生していないか、街を見回りの最中であった。
前衛と後衛でコンビを組んでの見回り。静といのりが学校に行っている時間はサフィーと銀之介で担当なのだ。
「魔王って…やっぱりこの前の悪魔みたいな奴?」
「さあ?アタシもこれでも結構長生きしてましゅけど、流石に魔王を見たことはないでしゅ」
サフィーが肩をすくめる。
(魔王って言うのは、エミュレイターの住む世界、『裏界』を統べるエミュレイターの王の1人。貴族って言った方が近いかもね。
この世界に現れるのは本体では無く分身に過ぎないけど、それでもその力はエミュレイターと化したあの2人をも遙かに凌駕する、と考えておいてくれ)
それが、静がサフィーに教えたすべて。それ以上のことは、サフィーも知らない。
2人の脳裏に浮かんでいるのはめたらやったらごつい巨大な化け物。
ぶっちゃけ2人とも魔王なんてゲームの中の存在だった。
「本当にいるんだね。魔王って」
変なものや化け物とは会った経験はほとんど無い銀之介はまだ疑わしそうに言う。
「まあ、本物の魔法使いと化け物がいるんでしゅから、いてもおかしくは無いってことでしゅね」
鞭でビルをぶった切れる男だの人間そっくりのロボットだのこの手の怪しいものには耐性があるサフィーはすでにその事を受け入れていた。
「そう言うものなのかな…あ」
何気なくそちら側を見た銀之介が顔をしかめる。
サフィーとの話に夢中になっていて気がつかなかったがここは…
「どうしたんでしゅか?」
いきなり顔をしかめた銀之介にサフィーは不思議そうに尋ねる。
「やばいなー。近づかないようにしてたのに」
頭を掻いて呟く。
「ここ?ここって…学校じゃないでしゅか」
いつの間にか2人は飯波高校の近くまで来ていた。
「近づかないようにって…ああ、アンタ、正体ばれてましゅからね」
そう、銀之介は正体がばれている。半年前TVで大々的にその正体をさらしたために。
「でも、別に良いんじゃないでしゅか?アンタ、結構好かれてるみたいだし」
この3週間、一緒に行動するようになってサフィーは気づいていた。
目の前の青年は、この街では決して嫌われていない。
商店街でも人気者だし、時々出会う銀之介の知り合い(2年も暮らしていただけあって結構多い)も大体は好意的だ。
たま~に顔を真っ青にして逃げ出すヤクザっぽい奴とかもいたが。
「そうじゃないんだ」
だが、銀之介の顔は浮かないままだ。
「そりゃ~僕も驚いたさ。この街では、狼人間の僕が嫌われてないんだってね。でもね…あいつらはそ~じゃなかった」
「あいつら?」
「そう…倉地香ファンクラブの人たちさ」
「ああ、あいつらってまだいたんでしゅか?」
倉地香ファンクラブと聞いて、そ~言えば義弟がよく狙われてたなあと思いだすサフィー。
「なんでまた?まさかアンタ…手を出したとか?あれに」
倉地に手を出した、そう誤解されていたのが義弟が狙われていた理由だったと聞いたことがある。
そう言えば目の前のはびみょ~に似ている気がする。雰囲気とか。
「そんなわけ無いじゃないか!?」
それに銀之介は真っ赤になって反論したあと、再び溜息をついて言う。
「2年前に、見られちゃったんだ。僕の狼の姿。そんときに怖がられちゃって…それ以来ずっと狙われてるんだよ」
「ふ~ん…あの女がそんなの気にするとも思えないでしゅけど」
銀之介の言葉にサフィーは首をかしげる。少なくとも自分の知っているあの女は、もっとずっとず太い神経の持ち主だ。
ある日突然吸血鬼になっても、速効で順応するくらいには。
「あ、でもそ~言えば、静がそんなことを言ってたでしゅ。銀之介君はなんか怪しげな連中に狙われてるらしいとかどうとか」
サフィーの何気ない発言に、銀之介はビクリッと体を震わせる。
「…やっぱり?」
「確か言ってたでしゅ。いのりと2人でアンタのことを探してた時に、ファンクラブの連中が手配書を渡してきたらしいでしゅ。
ま、そのおかげで見つけられたんだから結果オーライでしゅけど」
「そっかあ…やっぱり嫌われてるんだなあ…ほとぼりが醒めてるなら唐子に付き合ってもいいかなって思ってたけど」
残念そうに銀之介がうめく。
(今度の日曜、飯波高で文化祭があるんだってさ!一緒にいこ~よ!ほら、ここんとこずっと大変だったでしょ?)
いつもの元気満タンな笑顔で唐子に誘われていただけに余計に残念だと、銀之介は感じていた。
「つきあう?…ああ、そ~言えば」
(今度の日曜日は文化祭で忙しいんだ。もし良かったら遊びに来るといいよ)
静がそんなことを言ってた気がする。いのりもいないし暇だから銀之介を誘っていくのも悪くないかと思っていたのだが。
「…いや、だいじょ~ぶだと思うでしゅよ?アタシと一緒なら」
少し考えて、それに気づいたサフィー銀之介ににやりと笑って言った。
「いや、そりゃ~サフィーちゃんなら負けないとは思うけど…流石に怪我させたりするのは」
銀之介が首を横に振る。目の前の女の子が実は滅茶苦茶強いことは知っている。
悪魔との戦いのときも最後にとどめをさしたのはサフィーだし、魔法を自在に操る能力も持っている。
狼男と並ぶホラー映画の代名詞は伊達じゃないのだ。
「それも、問題無いでしゅ」
「え?ど~ゆ~…」
サフィーの言いたいことが分からず、困惑して銀之介が聞き返した。
そのときだった。
「駒犬ぅぅぅぅぅぅ~!!!!!!!!!!!!」
叫び声と共に何人かの生徒に取り囲まれる。全員男子だ。全員ナイフやらスタンガンやらすりこぎやらを持っている。
「我らの女神の敵!今こそ成敗してくれる!」
額にはくらと書かれた鉢巻き。そして、その眼は全員…いっちゃってた。
「だから嫌だったんだ。やばいよ変身するにしても…あれ?」
愚痴を言いながらゆで卵を取り出そうとして、銀之介は気づいた。
目の前のファンクラブの面々が、変だ。妙にぼうっとしていて目の前で手を振っても気づいていない。
「さ、行くでしゅよ」
それが当然であるようにサフィーは歩き出す。
「もしかしてこれ…サフィーちゃんが?」
気がついて、銀之介はサフィーに問う。それにサフィーはにやりと笑って答えた。
「月匣。ウィザードなら誰でもできることでしゅ」
かつて、眼鏡の魔法使いに言われた言葉を。

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