日曜日。
飯波高校には活気が満ちていた。
「は~い1年2組ではメイド喫茶をやってま~す。お待ちしてますご主人様~」
「はい!焼そば3つ!紅ショウガと青のりはセルフなんで好きなだけどうぞ~」
「3Pシュート,1発で決められたら豪華景品!さ、お兄さん彼女にカッコいいとこみせなよ」
「文芸部の同人誌、1冊300円です。誰か買ってってくださ~い。売れないと部費が~」
「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!本日の飯波タイムス文化祭特別増刊号は
『嘘か本当か?オカルト特集第4弾。怪奇!探偵を名乗る喋る犬!?』三石春美記者の取材だよ!」
「貴様ッ!?駒犬…あれ?どこいった?」
文化部、運動部、各クラスが様々な出し物をあちこちでやっている。
文化祭は今、まさに最高の盛り上がりを見せていた。
飯波高校には活気が満ちていた。
「は~い1年2組ではメイド喫茶をやってま~す。お待ちしてますご主人様~」
「はい!焼そば3つ!紅ショウガと青のりはセルフなんで好きなだけどうぞ~」
「3Pシュート,1発で決められたら豪華景品!さ、お兄さん彼女にカッコいいとこみせなよ」
「文芸部の同人誌、1冊300円です。誰か買ってってくださ~い。売れないと部費が~」
「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!本日の飯波タイムス文化祭特別増刊号は
『嘘か本当か?オカルト特集第4弾。怪奇!探偵を名乗る喋る犬!?』三石春美記者の取材だよ!」
「貴様ッ!?駒犬…あれ?どこいった?」
文化部、運動部、各クラスが様々な出し物をあちこちでやっている。
文化祭は今、まさに最高の盛り上がりを見せていた。
「ほらほら銀之介君こっちこっち!」
唐子が銀之介の腕を引っ張る。
「そんなに急がなくても文化祭は夜までずっと続くんだから…」
「ダメダメ!そんな疲れたこと言っちゃ。こ~ゆ~ときは目いっぱい色々まわって、目いっぱい楽しまなきゃ!」
元来お祭り好きな唐子はいつもよりも生き生きとしている。
そんな様子を楽しげに眺めながら、銀之介はしみじみと幸せを感じていた。
「う~ん。まさかまたこの学校に来れるなんてなあ…」
銀之介たちは、飯波高校の文化祭へと来ていた。
本当ならば色々と危険な飯波高校に近づくこともできなかった銀之介。
それが可能になったのは…
「それもこれもサフィーちゃんのおかげだよ。ありがとう」
銀之介は傍らでクレープをかじる少女に礼を言う。
そう、サフィーのおかげで銀之介は普通に飯波高校を歩けていた。
「別に気にしなくていいでしゅ。どうせ全部銀之介のおごりでしゅし」
「…ははは。分かってるよ」
たらーりと汗を流しながら、銀之介は財布の中身がどれくらい入ってたかを考えていた。
サフィーにおごる代わりにアレな人に襲われたら助ける。
そういう約束で銀之介とサフィーは行動を共にしていた。
「女の子に用心棒を頼むのもちょっとど~かと思ったけど」
変身していればいざ知らず、普段のままだったらぶっちぎりでサフィーのが強い。魔法抜きでも銀之介では勝てないだろう。
それにサフィーは銀之介には無い特殊な能力がある。普通の人間を無力化する結界、月匣。
それを自在に作り出すことができるのだ。
「気にしない気にしない。おかげで銀之介君もどうどうと文化祭見れるわけだし」
唐子があっけらかんと笑う。唐子も実は言ってはみたもののちょこっとだけ諦めていた。
最近よく来るようになったいのりと静から話を聞く限り、ファンクラブの面々はまだまだ銀之介を狙っているらしい。
いつ後ろから刺されるか分かったもんじゃないんじゃ、おちおち外も歩けない。
「サフィーちゃん、ほんと~にありがとね。今日はどんどんおごっちゃうから、どんどん言ってね!」
「そうさせてもらうでしゅ」
「いやあの…おごるの僕なんだけどね」
女の子パワーに気圧されながら、銀之介が呟いた言葉は華麗に無視された。
「さ、そ~と決まったらどんどん行くよ~。文化祭は待ってくれないんだから!」
元気100%で唐子が再び歩き出す。ごく自然に銀之介の手を取って。
「いたた…だからそんなにひっぱたら痛いよ~」
銀之介が情けない悲鳴をあげた。
その様子を見ていたサフィーがぽつりと言った。
「こりゃ…将来尻に敷かれましゅね、絶対」
妹夫婦を思い出しながら、確信を込めて。
唐子が銀之介の腕を引っ張る。
「そんなに急がなくても文化祭は夜までずっと続くんだから…」
「ダメダメ!そんな疲れたこと言っちゃ。こ~ゆ~ときは目いっぱい色々まわって、目いっぱい楽しまなきゃ!」
元来お祭り好きな唐子はいつもよりも生き生きとしている。
そんな様子を楽しげに眺めながら、銀之介はしみじみと幸せを感じていた。
「う~ん。まさかまたこの学校に来れるなんてなあ…」
銀之介たちは、飯波高校の文化祭へと来ていた。
本当ならば色々と危険な飯波高校に近づくこともできなかった銀之介。
それが可能になったのは…
「それもこれもサフィーちゃんのおかげだよ。ありがとう」
銀之介は傍らでクレープをかじる少女に礼を言う。
そう、サフィーのおかげで銀之介は普通に飯波高校を歩けていた。
「別に気にしなくていいでしゅ。どうせ全部銀之介のおごりでしゅし」
「…ははは。分かってるよ」
たらーりと汗を流しながら、銀之介は財布の中身がどれくらい入ってたかを考えていた。
サフィーにおごる代わりにアレな人に襲われたら助ける。
そういう約束で銀之介とサフィーは行動を共にしていた。
「女の子に用心棒を頼むのもちょっとど~かと思ったけど」
変身していればいざ知らず、普段のままだったらぶっちぎりでサフィーのが強い。魔法抜きでも銀之介では勝てないだろう。
それにサフィーは銀之介には無い特殊な能力がある。普通の人間を無力化する結界、月匣。
それを自在に作り出すことができるのだ。
「気にしない気にしない。おかげで銀之介君もどうどうと文化祭見れるわけだし」
唐子があっけらかんと笑う。唐子も実は言ってはみたもののちょこっとだけ諦めていた。
最近よく来るようになったいのりと静から話を聞く限り、ファンクラブの面々はまだまだ銀之介を狙っているらしい。
いつ後ろから刺されるか分かったもんじゃないんじゃ、おちおち外も歩けない。
「サフィーちゃん、ほんと~にありがとね。今日はどんどんおごっちゃうから、どんどん言ってね!」
「そうさせてもらうでしゅ」
「いやあの…おごるの僕なんだけどね」
女の子パワーに気圧されながら、銀之介が呟いた言葉は華麗に無視された。
「さ、そ~と決まったらどんどん行くよ~。文化祭は待ってくれないんだから!」
元気100%で唐子が再び歩き出す。ごく自然に銀之介の手を取って。
「いたた…だからそんなにひっぱたら痛いよ~」
銀之介が情けない悲鳴をあげた。
その様子を見ていたサフィーがぽつりと言った。
「こりゃ…将来尻に敷かれましゅね、絶対」
妹夫婦を思い出しながら、確信を込めて。
その後も色々回った。3人で焼きそばを食べたり映画研究会の映画で思わず寝てしまったり、3年生の出し物でうっかり三石ちゃんと出会って捕まったり、
写真部に狼人間の姿を撮らせてくれと頼まれて丁重にお断りしたり、倉地ファンクラブからあわてて逃げたりした。
写真部に狼人間の姿を撮らせてくれと頼まれて丁重にお断りしたり、倉地ファンクラブからあわてて逃げたりした。
*
「あ、これ!」
その看板を見て、唐子が大声をあげる。
「何?どうしたの」
「うん、これ!ちょっと見てきていい?」
不思議そうに尋ねる銀之介に唐子がその看板を指さす。その看板にはこう書かれていた。
その看板を見て、唐子が大声をあげる。
「何?どうしたの」
「うん、これ!ちょっと見てきていい?」
不思議そうに尋ねる銀之介に唐子がその看板を指さす。その看板にはこう書かれていた。
『山岳部採取 秋の味覚市』
「これこれ!なんか新メニューのヒントになるものを探してきてくれってお父さんに頼まれてたんだ」
「あ~…唐子のお父さんって、新メニュー作るの大好きだからな」
心持ちげんなりして銀之介が言う。この街にいた頃、よく新メニューの実験だ…試食役をやっていたのだ。
当たりの確率およそ2割。辛い記憶がちょっとだけ蘇った。
「ね?いいかな?」
唐子が銀之介に確認する。今、新メニューができたら実験台は多分銀之介なのだが、そこで断れるほど銀之介は鬼ではなかった。
「ま、まあそ~ゆ~ことならしょうがないな。サフィーちゃんもい…サフィーちゃん?」
ひきつった笑顔で同意をして、サフィーにも確認しようとして、2人は気づいた。
サフィーが口元を抑えて顔をいつもより余計に真っ青にしている。ついさっきまで元気だったのに。
「だ、大丈夫サフィーちゃん!?」
「だ、だいじょうぶでじゅ」
心配して聞く唐子にサフィーが何故か鼻声で答える。
「あだじはトイレいっでくるでじゅ。2人ばごごを見てていいでじゅ」
鼻声のまま、それだけ言うと、サフィーは2人を教室に押し込むと向こうへと走って行ってしまう。
「…サフィーちゃん、大丈夫かな?」
唐子が心配そうにサフィーの走って行った方を見て、言う。
「…大きい方かな?」
その走りっぷりにふと思いついて呟いた銀之介に、唐子が突っ込みを入れる。
「も~、女の子にそんなこと言っちゃダメでしょ!?」
何はともあれ、トイレについて行くわけにもいかないので、2人は秋の味覚市を見ることにした。
「あ~…唐子のお父さんって、新メニュー作るの大好きだからな」
心持ちげんなりして銀之介が言う。この街にいた頃、よく新メニューの実験だ…試食役をやっていたのだ。
当たりの確率およそ2割。辛い記憶がちょっとだけ蘇った。
「ね?いいかな?」
唐子が銀之介に確認する。今、新メニューができたら実験台は多分銀之介なのだが、そこで断れるほど銀之介は鬼ではなかった。
「ま、まあそ~ゆ~ことならしょうがないな。サフィーちゃんもい…サフィーちゃん?」
ひきつった笑顔で同意をして、サフィーにも確認しようとして、2人は気づいた。
サフィーが口元を抑えて顔をいつもより余計に真っ青にしている。ついさっきまで元気だったのに。
「だ、大丈夫サフィーちゃん!?」
「だ、だいじょうぶでじゅ」
心配して聞く唐子にサフィーが何故か鼻声で答える。
「あだじはトイレいっでくるでじゅ。2人ばごごを見てていいでじゅ」
鼻声のまま、それだけ言うと、サフィーは2人を教室に押し込むと向こうへと走って行ってしまう。
「…サフィーちゃん、大丈夫かな?」
唐子が心配そうにサフィーの走って行った方を見て、言う。
「…大きい方かな?」
その走りっぷりにふと思いついて呟いた銀之介に、唐子が突っ込みを入れる。
「も~、女の子にそんなこと言っちゃダメでしょ!?」
何はともあれ、トイレについて行くわけにもいかないので、2人は秋の味覚市を見ることにした。
秋の味覚市では山岳部がその手で集めてきたと言う山の幸がところせましと並んでいた。
「すごいね~」
唐子が目を丸くしたのも無理は無い。ブドウ、銀杏、アケビ、秋の山菜、各種キノコ…まさに秋の味覚が勢ぞろい。
部屋の端では朝方まで秋の味覚収集に駆けずりまわった山岳部が、やり遂げた男の顔で倒れている。
文字通りの山岳部の血と汗と涙の結晶だった。
「う~ん、本当にすごいな」
ぼたん肉やら松茸まで揃っているのを見て、銀之介が苦笑する。
「これなら、お父さんへのお土産もばっちりだよ!」
唐子が嬉しそうにあれこれと吟味を始める。
銀之介も一緒になってあれこれと見て回る。と言っても、精々肉がおいしそうだな~くらいしか分からなかったが。
「あ、これなんてどうかな!?」
唐子が銀之介を引きよせる。銀之介の鼻に女の子の甘い香りが飛び込んできた。
「うわっち!?」
思わず顔を真っ赤にして銀之介は飛びのいた。いきなりでびっくりしたのだ。
「ん?銀之介君、ど~したの…あ」
唐子もいつの間にやらぴったり一緒にいたのに気がついたらしい。みるみるうちに顔が真っ赤になる。
「あ、あはは…こ~ゆ~のはまずいかなほらサフィーちゃんも一緒だし」
「そ、そ~だなあんな小さい子にこ~ゆ~の見せたらきょ~いくに」
照れ笑いしながら2人は同時に後ろを見て、気づいた。そう言えばサフィーは一緒じゃないってことに。
「すごいね~」
唐子が目を丸くしたのも無理は無い。ブドウ、銀杏、アケビ、秋の山菜、各種キノコ…まさに秋の味覚が勢ぞろい。
部屋の端では朝方まで秋の味覚収集に駆けずりまわった山岳部が、やり遂げた男の顔で倒れている。
文字通りの山岳部の血と汗と涙の結晶だった。
「う~ん、本当にすごいな」
ぼたん肉やら松茸まで揃っているのを見て、銀之介が苦笑する。
「これなら、お父さんへのお土産もばっちりだよ!」
唐子が嬉しそうにあれこれと吟味を始める。
銀之介も一緒になってあれこれと見て回る。と言っても、精々肉がおいしそうだな~くらいしか分からなかったが。
「あ、これなんてどうかな!?」
唐子が銀之介を引きよせる。銀之介の鼻に女の子の甘い香りが飛び込んできた。
「うわっち!?」
思わず顔を真っ赤にして銀之介は飛びのいた。いきなりでびっくりしたのだ。
「ん?銀之介君、ど~したの…あ」
唐子もいつの間にやらぴったり一緒にいたのに気がついたらしい。みるみるうちに顔が真っ赤になる。
「あ、あはは…こ~ゆ~のはまずいかなほらサフィーちゃんも一緒だし」
「そ、そ~だなあんな小さい子にこ~ゆ~の見せたらきょ~いくに」
照れ笑いしながら2人は同時に後ろを見て、気づいた。そう言えばサフィーは一緒じゃないってことに。
(あ、そう言えばさっきサフィーちゃんおトイレに行ったんだよね。ってことは…)
(そ~言えばサフィーちゃん戻ってこないな。あれ?てことは…)
(*1)
お互いの顔が更に真っ赤になった。
「あ、その、さ、サフィーちゃん遅いね!」
「そ、そうだね!や、やっぱり大きい」
「それはもういいの!」
2人であちこちに出かけるなんていつものことなのに、意識したせいかお互いが素敵にぎくしゃくする。
男と女の深い耳の穴については、2人ともまったくの無知だった。
2人の間に沈黙が訪れる。
「え、えっと…その…サフィーちゃん、遅いね」
「そ、そうだね」
再び沈黙。会話が続かない。
「えっと…」
「あの…」
それでも何とか2人して会話を続けようとしていた、そのときだった。
(そ~言えばサフィーちゃん戻ってこないな。あれ?てことは…)
(*1)
お互いの顔が更に真っ赤になった。
「あ、その、さ、サフィーちゃん遅いね!」
「そ、そうだね!や、やっぱり大きい」
「それはもういいの!」
2人であちこちに出かけるなんていつものことなのに、意識したせいかお互いが素敵にぎくしゃくする。
男と女の深い耳の穴については、2人ともまったくの無知だった。
2人の間に沈黙が訪れる。
「え、えっと…その…サフィーちゃん、遅いね」
「そ、そうだね」
再び沈黙。会話が続かない。
「えっと…」
「あの…」
それでも何とか2人して会話を続けようとしていた、そのときだった。
ピピピピピピピ…
「「のわあ!?」」
いきなり鳴りだした着信音に2人して驚く。
「えっと、あれ、これど~やるんだろ?」
慌てて銀之介が懐から取り出す。この前、静から渡されたそれを。
「あれ?それ、携帯電話」
「うん。この前貰ったんだ。なんかファーなんとか製とか言ってたけど、え~と、これどうやるんだ?」
渡されたのはいいものの、携帯電話なんて持っていなかった銀之介が操作が分からず困惑する。
「あ、これじゃない?その電話のマーク、通話って書いてある」
「ああ、本当だ。これかな?」
ピッ、と銀之介がそのボタンを押すと、着信音が鳴りやむ。
「え~と、もしもし…ああ、サフィーちゃん」
電話の主は、サフィーだった。
「分かった。すぐ行くよ」
電話を終えて、銀之介が唐子に向きなおる。
「サフィーちゃんからだった。今は別の場所にいるからそっちに来てだって」
唐子に電話の内容を伝えながら、銀之介は首をかしげた。
「でも、サフィーちゃん、あんなところに何しに行ったんだろう?」
いきなり鳴りだした着信音に2人して驚く。
「えっと、あれ、これど~やるんだろ?」
慌てて銀之介が懐から取り出す。この前、静から渡されたそれを。
「あれ?それ、携帯電話」
「うん。この前貰ったんだ。なんかファーなんとか製とか言ってたけど、え~と、これどうやるんだ?」
渡されたのはいいものの、携帯電話なんて持っていなかった銀之介が操作が分からず困惑する。
「あ、これじゃない?その電話のマーク、通話って書いてある」
「ああ、本当だ。これかな?」
ピッ、と銀之介がそのボタンを押すと、着信音が鳴りやむ。
「え~と、もしもし…ああ、サフィーちゃん」
電話の主は、サフィーだった。
「分かった。すぐ行くよ」
電話を終えて、銀之介が唐子に向きなおる。
「サフィーちゃんからだった。今は別の場所にいるからそっちに来てだって」
唐子に電話の内容を伝えながら、銀之介は首をかしげた。
「でも、サフィーちゃん、あんなところに何しに行ったんだろう?」
*
郷土史研究部の出し物は「飯波市のお土産販売」だ。
民芸品から食べ物の類まで様々な飯波市の特産物が並んでいる。
郷土と密着した、飯波市ならではのお土産。
…ぶっちゃけ来場者の99%は飯波市に住んでる人たちな文化祭で売れるわけもなく。
郷土史研究部の出し物は、閑古鳥が鳴いていた。
そんなわけで1人だけ残った店番は、珍しくやってきたお客に愛想よく接していた。
「はい。どうぞお嬢ちゃん。ちょっとおまけしておいたよ。500円ね」
やって来たのは、外国人の小さな女の子だった。ふわふわの赤毛がとてもきれいだ。
その少女が買ったのは小さな女の子が買うのはちょっぴり変かな?と思わないでもなかったが、
きっと異文化交流ってやつなんだろうと、店番は納得していた。
「ありがとでしゅ。お兄ちゃん」
女の子は小さな財布から取り出した500円玉を渡し、白いビニール袋を代わりに受け取る。
「…これならきっと…」
しげしげとそれを見て、にやりと笑ってサフィーが呟く。
「あ、いたよ銀之介君!」
「お、本当だ。お~いサフィーちゃ~ん」
後ろから唐子と銀之介の声。サフィーが思っていたよりも早く来たのを察し、サフィーが振り向く。
「ああ、銀之介に唐子。はやかったでしゅね」
振り向いたとき、サフィーの笑顔からはすでに邪気が消えていた。
「えっと、うん。その…なんてゆ~か…なあ」
「うん。サフィーちゃんほっとくのもな~ってね」
2人して照れくさくて会話が続かないのでさっさと迎えに来ましたとも言えず、2人が言葉を濁す。
「そ、それより、サフィーちゃんはここで何してたの?」
とっさに話題を変えようとして、銀之介がサフィーにたずねる。それにサフィーはちょっとだけ考えて、にこやかに答えた。
「…お世話になった人に、ちょっとしたプレゼントを買ってたでしゅ」
「プレゼント?」
そう聞いて銀之介は辺りを見まわす。
「う~ん…ここで?」
置きものとか、漬物だとか味噌だとかローカルな感じのお菓子とか。あんまし贈っても喜ばれそうもないよ~な気がする。
「そうでしゅ。欲しかったものが売ってたのはここだけだったでしゅから」
だが、そう答えるサフィーに迷いは感じられなかった。
「そ~だ!銀之介君も何かお土産送ってあげたら?」
一緒になって色々と見ていた唐子がぽんと手を叩いて言う。
「え?誰に?」
「ほら、銀之介君のお父さんとお母さん!今、アメリカにいるんでしょ?」
「…ああ、そう言えばそっか」
銀之介もポンと手を叩いた。
「あんときは父さんと母さん2人きりで旅行行っちゃって1人で留守番してたからな。すっかり忘れてた」
そう言えばこの前、銀之介の父、銀一郎から手紙が来た。
なんか旅行先で素晴らしい友人ができたとか、詳しくは約束があって言えないけどすごい経験をしたとか書いてあった。
「まあ、すごい経験ってのは僕もなんだけど」
ほんの少し前まではまったく想像もしていなかった。今の自分の状況を。
本物の魔法使いと知り合ったり、悪魔と戦ったり、果ては魔王を敵に回したり…
「…信じてもらえないよなあ」
こんなとてつもない経験をしてるのは自分とサフィーくらいだろう。そう結論した銀之介が苦笑する。
「そう言えば、母さんが日本食が食べたいとか言ってたな。向こうの料理にも飽きたとか」
そう言いながら銀之介は早速お土産品を物色する。
「あ、これなんかい~かも」
「でも、こっちもよくない?」
「日本のなら、こっちも捨てがたいでしゅ」
お土産選びに唐子とサフィーも加わって、和やかな雰囲気になる。
2人の間のぎくしゃくした空気はいつの間にか消え去っていた。
民芸品から食べ物の類まで様々な飯波市の特産物が並んでいる。
郷土と密着した、飯波市ならではのお土産。
…ぶっちゃけ来場者の99%は飯波市に住んでる人たちな文化祭で売れるわけもなく。
郷土史研究部の出し物は、閑古鳥が鳴いていた。
そんなわけで1人だけ残った店番は、珍しくやってきたお客に愛想よく接していた。
「はい。どうぞお嬢ちゃん。ちょっとおまけしておいたよ。500円ね」
やって来たのは、外国人の小さな女の子だった。ふわふわの赤毛がとてもきれいだ。
その少女が買ったのは小さな女の子が買うのはちょっぴり変かな?と思わないでもなかったが、
きっと異文化交流ってやつなんだろうと、店番は納得していた。
「ありがとでしゅ。お兄ちゃん」
女の子は小さな財布から取り出した500円玉を渡し、白いビニール袋を代わりに受け取る。
「…これならきっと…」
しげしげとそれを見て、にやりと笑ってサフィーが呟く。
「あ、いたよ銀之介君!」
「お、本当だ。お~いサフィーちゃ~ん」
後ろから唐子と銀之介の声。サフィーが思っていたよりも早く来たのを察し、サフィーが振り向く。
「ああ、銀之介に唐子。はやかったでしゅね」
振り向いたとき、サフィーの笑顔からはすでに邪気が消えていた。
「えっと、うん。その…なんてゆ~か…なあ」
「うん。サフィーちゃんほっとくのもな~ってね」
2人して照れくさくて会話が続かないのでさっさと迎えに来ましたとも言えず、2人が言葉を濁す。
「そ、それより、サフィーちゃんはここで何してたの?」
とっさに話題を変えようとして、銀之介がサフィーにたずねる。それにサフィーはちょっとだけ考えて、にこやかに答えた。
「…お世話になった人に、ちょっとしたプレゼントを買ってたでしゅ」
「プレゼント?」
そう聞いて銀之介は辺りを見まわす。
「う~ん…ここで?」
置きものとか、漬物だとか味噌だとかローカルな感じのお菓子とか。あんまし贈っても喜ばれそうもないよ~な気がする。
「そうでしゅ。欲しかったものが売ってたのはここだけだったでしゅから」
だが、そう答えるサフィーに迷いは感じられなかった。
「そ~だ!銀之介君も何かお土産送ってあげたら?」
一緒になって色々と見ていた唐子がぽんと手を叩いて言う。
「え?誰に?」
「ほら、銀之介君のお父さんとお母さん!今、アメリカにいるんでしょ?」
「…ああ、そう言えばそっか」
銀之介もポンと手を叩いた。
「あんときは父さんと母さん2人きりで旅行行っちゃって1人で留守番してたからな。すっかり忘れてた」
そう言えばこの前、銀之介の父、銀一郎から手紙が来た。
なんか旅行先で素晴らしい友人ができたとか、詳しくは約束があって言えないけどすごい経験をしたとか書いてあった。
「まあ、すごい経験ってのは僕もなんだけど」
ほんの少し前まではまったく想像もしていなかった。今の自分の状況を。
本物の魔法使いと知り合ったり、悪魔と戦ったり、果ては魔王を敵に回したり…
「…信じてもらえないよなあ」
こんなとてつもない経験をしてるのは自分とサフィーくらいだろう。そう結論した銀之介が苦笑する。
「そう言えば、母さんが日本食が食べたいとか言ってたな。向こうの料理にも飽きたとか」
そう言いながら銀之介は早速お土産品を物色する。
「あ、これなんかい~かも」
「でも、こっちもよくない?」
「日本のなら、こっちも捨てがたいでしゅ」
お土産選びに唐子とサフィーも加わって、和やかな雰囲気になる。
2人の間のぎくしゃくした空気はいつの間にか消え去っていた。