その日、飯波高校に来ていたお客と生徒たちは突然の出来事に騒然としていた。
突然昇った紅い月。それを認識していたがために。
もっとも、わずかの混乱で、それはおさまった。
ただ、空に紅い月が輝いているだけで、特に何か起こると言うわけでもない。
ただの珍しい天体現象。そう、彼らは考えていた。
そう、この紅き月の意味を知る者は10人といなかったのだ。
それが、この世界を化け物であふれさせかねないものだなんて。
突然昇った紅い月。それを認識していたがために。
もっとも、わずかの混乱で、それはおさまった。
ただ、空に紅い月が輝いているだけで、特に何か起こると言うわけでもない。
ただの珍しい天体現象。そう、彼らは考えていた。
そう、この紅き月の意味を知る者は10人といなかったのだ。
それが、この世界を化け物であふれさせかねないものだなんて。
駒犬銀之介は人気のないベンチで1人空を見上げていた。
瞳に映るのは狼に変ずることは無い紅い満月。
「…そういや今日は元々満月の日だっけ」
思い出して苦笑する。満月が昔ほど致命的じゃ無くなったせいか、危機感が薄れている。
半年前、唐子のお陰で銀之介は満月を克服した。
今の銀之介ならば、満月を見ても正気を失うことは無い。
「唐子のお陰、だよな」
半年前、銀之介が満月を克服できたのは、唐子のおかげだった。
彼女のお陰で、忌み嫌ってた満月を見た自分、ワイルドウルフも自分だと気づけた。だから、制御できる。
「思えば…あの時かも」
銀之介にとって、一番好きな子が、誰だか分かったのは。
爪と牙が、何のためにあるのか、分かったのは。
「僕は、唐子のことが…」
銀之介の気持ちははっきりしている。この街と、好きな子を守りたい。
けれど…
「幸せになって欲しいなら…黙ってないと…」
唐子ならばもっと良い人を見つけられる。わざわざ狼人間と一緒になることなんてない。
「そう、分かってるのに…」
銀之介は唇を噛みしめる。ひどく辛そうに。もどかしそうに。
そんなときだった。
瞳に映るのは狼に変ずることは無い紅い満月。
「…そういや今日は元々満月の日だっけ」
思い出して苦笑する。満月が昔ほど致命的じゃ無くなったせいか、危機感が薄れている。
半年前、唐子のお陰で銀之介は満月を克服した。
今の銀之介ならば、満月を見ても正気を失うことは無い。
「唐子のお陰、だよな」
半年前、銀之介が満月を克服できたのは、唐子のおかげだった。
彼女のお陰で、忌み嫌ってた満月を見た自分、ワイルドウルフも自分だと気づけた。だから、制御できる。
「思えば…あの時かも」
銀之介にとって、一番好きな子が、誰だか分かったのは。
爪と牙が、何のためにあるのか、分かったのは。
「僕は、唐子のことが…」
銀之介の気持ちははっきりしている。この街と、好きな子を守りたい。
けれど…
「幸せになって欲しいなら…黙ってないと…」
唐子ならばもっと良い人を見つけられる。わざわざ狼人間と一緒になることなんてない。
「そう、分かってるのに…」
銀之介は唇を噛みしめる。ひどく辛そうに。もどかしそうに。
そんなときだった。
「それは、アンタが決めることじゃないでしゅ」
ふわり、と。
そんな風に思い悩んでいる銀之介の隣にマントをはおった少女が舞い降りる。
紅い月に負けないほど、真っ赤な髪を持つ少女。
「サフィーちゃん?」
仲間の吸血鬼の少女を見て、銀之介は驚いた。
「まさか…聞いてたの?」
「唐子のお陰、あたりからね」
サフィーは肩をすくめる。その口調と瞳は、普段演じてるお子様のものじゃなく、完全に大人のものだった。
それを見て、ふと、銀之介はサフィーに尋ねる。
目の前のものすご~く長生きしている少女なら、答えてくれる気がして。
「じゃあ…サフィーちゃんはどう、思うの?」
「当然、自分の気持ちを伝えるわ」
銀之介を見上げ、はっきりと答える。
「だいたい、その事でウジウジ悩むのがお門違いって奴なの」
ビシィッとサフィーが背伸びをして銀之介の胸元に指を突き付ける。
「言って、最後に受け入れるかどうか決めるのは、相手の方。だったら、狼と一緒になる覚悟がある
ふわり、と。
そんな風に思い悩んでいる銀之介の隣にマントをはおった少女が舞い降りる。
紅い月に負けないほど、真っ赤な髪を持つ少女。
「サフィーちゃん?」
仲間の吸血鬼の少女を見て、銀之介は驚いた。
「まさか…聞いてたの?」
「唐子のお陰、あたりからね」
サフィーは肩をすくめる。その口調と瞳は、普段演じてるお子様のものじゃなく、完全に大人のものだった。
それを見て、ふと、銀之介はサフィーに尋ねる。
目の前のものすご~く長生きしている少女なら、答えてくれる気がして。
「じゃあ…サフィーちゃんはどう、思うの?」
「当然、自分の気持ちを伝えるわ」
銀之介を見上げ、はっきりと答える。
「だいたい、その事でウジウジ悩むのがお門違いって奴なの」
ビシィッとサフィーが背伸びをして銀之介の胸元に指を突き付ける。
「言って、最後に受け入れるかどうか決めるのは、相手の方。だったら、狼と一緒になる覚悟がある
かも含めて、聞けばいい。
ダメならすっぱりあきらめて、OKだったらその子が少しでも幸せになるよう最大限に努力する。それでいいじゃない」
そう言いきるサフィーの目に、迷いは無い。絶対にそうする。そんな気持ちがしっかりと現れている。
その様子に、銀之介は苦笑する。
「…すごいな。サフィーちゃんは。僕には、とてもそこまで決心出来ないよ」
「そ~じゃないと生き残れなかったのよ。迷ってたら、とっくの昔にくたばってたわ」
「そうなの?サフィーちゃんがそうそう死ぬとも思えないけど」
くたばってたと言い切るサフィーに銀之介は首をかしげる。
サフィーの強さを、銀之介は知っている。目の前の小さな女の子は、本気の狼人間と対等以上にわたりあえる吸血鬼なのだと。
それに、寿命とかも吸血鬼になったら関係ないとも、聞いていた。
その様子を見て、少しだけ気まずそうに、サフィーはどこか遠くを見て言った。
「…アンタに1つ、つまらないことを教えるわ。アンタが見てたあの劇、あれってある意味ではノンフィクションなのよ」
最初、銀之介はサフィーの言葉の意味が理解できなかった。
「…え?」
「吸血鬼はね、ちょっと前まで吸血鬼を狩る吸血鬼狩人に狙われ続けてきたの」
脳みそにこびりついた嫌な記憶を掘り起こしながらサフィーが言葉をつづる。
「そりゃあアタシらだって馬鹿じゃないし、普通の人間よりはずっと強い。
けれどね…数の暴力と、あいつらの中に混じったヤバい連中全部敵に回したら、逃げ回るしか無いわ」
銀之介が息をのむ気配を感じながら、サフィーは話を続ける。
「あの話を書いたのは、アタシの妹。ちょうどその頃あの子も追われてたわ。ブラックウィナー…それも吸血鬼の奴にね」
吸血鬼、と言う言葉を特に強調して、言う。
「きゅ、吸血鬼?」
「そ。あいつら、生きたまま捕獲した吸血鬼の心臓に爆弾埋め込んで言うのよ。『死にたくなかったら、吸血鬼を殺してこい』ってね」
「そんな…酷すぎるじゃないか、そんなのって」
「…あそこのトップは吸血鬼1人殺すために街一つ滅ぼすのも躊躇しない最低のクソ野郎だったわ。
ダメならすっぱりあきらめて、OKだったらその子が少しでも幸せになるよう最大限に努力する。それでいいじゃない」
そう言いきるサフィーの目に、迷いは無い。絶対にそうする。そんな気持ちがしっかりと現れている。
その様子に、銀之介は苦笑する。
「…すごいな。サフィーちゃんは。僕には、とてもそこまで決心出来ないよ」
「そ~じゃないと生き残れなかったのよ。迷ってたら、とっくの昔にくたばってたわ」
「そうなの?サフィーちゃんがそうそう死ぬとも思えないけど」
くたばってたと言い切るサフィーに銀之介は首をかしげる。
サフィーの強さを、銀之介は知っている。目の前の小さな女の子は、本気の狼人間と対等以上にわたりあえる吸血鬼なのだと。
それに、寿命とかも吸血鬼になったら関係ないとも、聞いていた。
その様子を見て、少しだけ気まずそうに、サフィーはどこか遠くを見て言った。
「…アンタに1つ、つまらないことを教えるわ。アンタが見てたあの劇、あれってある意味ではノンフィクションなのよ」
最初、銀之介はサフィーの言葉の意味が理解できなかった。
「…え?」
「吸血鬼はね、ちょっと前まで吸血鬼を狩る吸血鬼狩人に狙われ続けてきたの」
脳みそにこびりついた嫌な記憶を掘り起こしながらサフィーが言葉をつづる。
「そりゃあアタシらだって馬鹿じゃないし、普通の人間よりはずっと強い。
けれどね…数の暴力と、あいつらの中に混じったヤバい連中全部敵に回したら、逃げ回るしか無いわ」
銀之介が息をのむ気配を感じながら、サフィーは話を続ける。
「あの話を書いたのは、アタシの妹。ちょうどその頃あの子も追われてたわ。ブラックウィナー…それも吸血鬼の奴にね」
吸血鬼、と言う言葉を特に強調して、言う。
「きゅ、吸血鬼?」
「そ。あいつら、生きたまま捕獲した吸血鬼の心臓に爆弾埋め込んで言うのよ。『死にたくなかったら、吸血鬼を殺してこい』ってね」
「そんな…酷すぎるじゃないか、そんなのって」
「…あそこのトップは吸血鬼1人殺すために街一つ滅ぼすのも躊躇しない最低のクソ野郎だったわ。
何を今さらってところね」
だからこそサフィーは戦うことを決めた。あんな奴に蘇ってもらっては困るのだ。自分も、家族も。
「アタシはね、そ~ゆ~連中から逃げ回るのを500年も続けてきた。だから、知ってる。
後悔とか迷いとかは生き残るのには邪魔。抱えたままじゃ、死ぬわよ」
再びサフィーは銀之介を見る。
「だから、どうするのかは今決めなさい。アンタに、あいつらと戦う気があるんなら」
そして、黙りこむ。銀之介の返答を聞くために。
「…分かった」
銀之介が口を開いたのはそれからたっぷり5分経ってからのことだった。
「言わないままじゃ、僕も前に進めないから」
その銀之介の顔には、もう迷いは無かった。ただ、静かな決意だけが宿っている。
そう、銀之介は決めたのだ。
「僕は唐子に本当の気持ちを伝えることにするよ。この戦いが終わったら…」
そして、背中をおしてくれたサフィーにありがとうと伝えようとした、その瞬間だった。
だからこそサフィーは戦うことを決めた。あんな奴に蘇ってもらっては困るのだ。自分も、家族も。
「アタシはね、そ~ゆ~連中から逃げ回るのを500年も続けてきた。だから、知ってる。
後悔とか迷いとかは生き残るのには邪魔。抱えたままじゃ、死ぬわよ」
再びサフィーは銀之介を見る。
「だから、どうするのかは今決めなさい。アンタに、あいつらと戦う気があるんなら」
そして、黙りこむ。銀之介の返答を聞くために。
「…分かった」
銀之介が口を開いたのはそれからたっぷり5分経ってからのことだった。
「言わないままじゃ、僕も前に進めないから」
その銀之介の顔には、もう迷いは無かった。ただ、静かな決意だけが宿っている。
そう、銀之介は決めたのだ。
「僕は唐子に本当の気持ちを伝えることにするよ。この戦いが終わったら…」
そして、背中をおしてくれたサフィーにありがとうと伝えようとした、その瞬間だった。
「ちょぉぉぉっっっっとまてぇぇぇぇぇぇいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
ガサッと音を立てて、近くの茂みから何かが飛び出してくる。
ショートヘアーの、活発そうな女の子。ついでに言えば、メイド服。
要いのりは銀之介に詰め寄って、言った。
「なにそれ!?なにその戦う前のやたら不吉なセリフは!?
なんかもう最後に全力振り絞って相討ちになって血まみれで『ごめんな…唐子、僕は本当は…ぐふっ』とか言ってるシーンがアリアリと見えたわ!?」
妙に凝った設定つきで。
「い、いのりちゃん?一体どこから聞いてたの?」
「唐子のお陰、あたりから!」
割と最初からであった。
「とにかく!そ~ゆ~不吉な真似は駄目!せめて行く前に伝えろっての!唐子さんもそう思うでしょ!?」
そう言っていのりは別の茂みの方を向いて、言う。
ガサッと再び茂みが音を立てる。
そこから現れた少女の姿に銀之介の目が丸くなる。
「と、唐子…?一体いつから?」
「え、えっと…唐子のお陰、あたりからかな…」
割と最初からであった。
唐子は真っ赤な顔になっている。唐子だって年頃の乙女。銀之介が何を言いたいのかなってのは、何となく、分からないでもない。
だけど、そこはそれ、本人の口から聞きたいのが乙女心ってやつである。
「え、えっと…その…」
銀之介も真っ赤になっている。銀之介だって純情一路な青少年。唐子が期待してる言葉は何となく、分からないでもない。
だけど、そこはそれ、いざ口に出すのは恥ずかしいってのが男心って奴である。
ちなみに2人ともパニクり過ぎてすぐそばで興味シンシンで見ている4人を追い払うのすら忘れている。
そんなじれったい時間がちょっとだけ過ぎて、銀之介は手に人と言う文字を3回書いて飲み込んだ。
「唐子…その、僕は、唐子と、一緒にいたい」
銀之介、一世一代の決心の言葉であった。ちょっと頼りないけど。
なにそれー、もっとはっきりと言いなさいよ~とか外野からの声も聞こえてない。
「2年間、ずっと一緒だった。それで分かったんだ。僕には、唐子がいる。唐子が一番大事だって。
何があっても、僕はきっと唐子を守ってみせる。だから…その…これからも一緒にいて、くれるかな?」
ごくりと固唾をのむ。
再び沈黙の時間。それが過ぎて、唐子は苦笑して、言う。
「もう、銀之介君は…もうちょっとちゃんと言って欲しかったな…でも、銀之介君らしいや」
そう、唐子が一緒にいた銀之介は、ちょっぴり気弱で、臆病で…とっても優しい男の子。
その彼が言う言葉は飾り気も素っ気もないが、本気の言葉だった。
だからこそ、唐子もまた、本気の言葉で伝える。飾り気も、素っ気もない言葉で。
「もちろんだよ!あたしたちはずっとず~っと一緒!ね?」
そしてにっこりと笑う。それが、自分には一番似合うから。
だがその直後、唐子はその事に気づいて、ちょっとだけ笑顔を曇らせる。
「あ、でもそ~なると飯波市からは出ないと、駄目かな。銀之介君、狙われてるし。
お父さんなら分かってくれると思うけど…う~ん」
ショートヘアーの、活発そうな女の子。ついでに言えば、メイド服。
要いのりは銀之介に詰め寄って、言った。
「なにそれ!?なにその戦う前のやたら不吉なセリフは!?
なんかもう最後に全力振り絞って相討ちになって血まみれで『ごめんな…唐子、僕は本当は…ぐふっ』とか言ってるシーンがアリアリと見えたわ!?」
妙に凝った設定つきで。
「い、いのりちゃん?一体どこから聞いてたの?」
「唐子のお陰、あたりから!」
割と最初からであった。
「とにかく!そ~ゆ~不吉な真似は駄目!せめて行く前に伝えろっての!唐子さんもそう思うでしょ!?」
そう言っていのりは別の茂みの方を向いて、言う。
ガサッと再び茂みが音を立てる。
そこから現れた少女の姿に銀之介の目が丸くなる。
「と、唐子…?一体いつから?」
「え、えっと…唐子のお陰、あたりからかな…」
割と最初からであった。
唐子は真っ赤な顔になっている。唐子だって年頃の乙女。銀之介が何を言いたいのかなってのは、何となく、分からないでもない。
だけど、そこはそれ、本人の口から聞きたいのが乙女心ってやつである。
「え、えっと…その…」
銀之介も真っ赤になっている。銀之介だって純情一路な青少年。唐子が期待してる言葉は何となく、分からないでもない。
だけど、そこはそれ、いざ口に出すのは恥ずかしいってのが男心って奴である。
ちなみに2人ともパニクり過ぎてすぐそばで興味シンシンで見ている4人を追い払うのすら忘れている。
そんなじれったい時間がちょっとだけ過ぎて、銀之介は手に人と言う文字を3回書いて飲み込んだ。
「唐子…その、僕は、唐子と、一緒にいたい」
銀之介、一世一代の決心の言葉であった。ちょっと頼りないけど。
なにそれー、もっとはっきりと言いなさいよ~とか外野からの声も聞こえてない。
「2年間、ずっと一緒だった。それで分かったんだ。僕には、唐子がいる。唐子が一番大事だって。
何があっても、僕はきっと唐子を守ってみせる。だから…その…これからも一緒にいて、くれるかな?」
ごくりと固唾をのむ。
再び沈黙の時間。それが過ぎて、唐子は苦笑して、言う。
「もう、銀之介君は…もうちょっとちゃんと言って欲しかったな…でも、銀之介君らしいや」
そう、唐子が一緒にいた銀之介は、ちょっぴり気弱で、臆病で…とっても優しい男の子。
その彼が言う言葉は飾り気も素っ気もないが、本気の言葉だった。
だからこそ、唐子もまた、本気の言葉で伝える。飾り気も、素っ気もない言葉で。
「もちろんだよ!あたしたちはずっとず~っと一緒!ね?」
そしてにっこりと笑う。それが、自分には一番似合うから。
だがその直後、唐子はその事に気づいて、ちょっとだけ笑顔を曇らせる。
「あ、でもそ~なると飯波市からは出ないと、駄目かな。銀之介君、狙われてるし。
お父さんなら分かってくれると思うけど…う~ん」
「あら、その心配は無いわよ」
悩み始めた唐子に声が掛けられる。ゴージャスでエレガントでクイーンな声(どんなやねん)
その声の持ち主にその場にいた全員が声の聞こえた方を見る。そこには
「やあ、盗み聞きをするつもりじゃあ無かったんだけどね」
いつもの笑顔のままの静と。
「あたしに任せときなさい」
倉地の姿があった。
銀之介が突然現れた2人に聞く。微妙な確信を持ちながら。
「先生…それに、静さん…一体、いつから?」
その言葉に、2人は顔を見合せて…
「そりゃあ…」
「まあ…」
「「唐子のお陰、あたりから?」」
ハモった。ていうかやっぱり割と最初からであった。
「いや~いきなり青春劇場が始まったりサフィーちゃんの昔話を聞いたり色々してて出そびれたってわけじゃなくてね?」
「そ、そうよ?ただちょ~っとこのまま見てた方が面白いんじゃないかな~とか思ってないわよ?」
激しく言い訳くさく、2人が銀之介に言う。
「…も~いいです」
がっくりと疲れた声で銀之介が言う。
「…ま、とにかく。この街に関してはあたしに任せときなさい」
倉地がボリュームたっぷりの胸を張る。
「ファンクラブの連中にはあたしからきつ~く言っといてあげる。あたしのファンだってんなら、聞
悩み始めた唐子に声が掛けられる。ゴージャスでエレガントでクイーンな声(どんなやねん)
その声の持ち主にその場にいた全員が声の聞こえた方を見る。そこには
「やあ、盗み聞きをするつもりじゃあ無かったんだけどね」
いつもの笑顔のままの静と。
「あたしに任せときなさい」
倉地の姿があった。
銀之介が突然現れた2人に聞く。微妙な確信を持ちながら。
「先生…それに、静さん…一体、いつから?」
その言葉に、2人は顔を見合せて…
「そりゃあ…」
「まあ…」
「「唐子のお陰、あたりから?」」
ハモった。ていうかやっぱり割と最初からであった。
「いや~いきなり青春劇場が始まったりサフィーちゃんの昔話を聞いたり色々してて出そびれたってわけじゃなくてね?」
「そ、そうよ?ただちょ~っとこのまま見てた方が面白いんじゃないかな~とか思ってないわよ?」
激しく言い訳くさく、2人が銀之介に言う。
「…も~いいです」
がっくりと疲れた声で銀之介が言う。
「…ま、とにかく。この街に関してはあたしに任せときなさい」
倉地がボリュームたっぷりの胸を張る。
「ファンクラブの連中にはあたしからきつ~く言っといてあげる。あたしのファンだってんなら、聞
くでしょ。従わないなら…ね?」
にっこりと笑って、言う倉地に銀之介は変身してないけど本能で感じた。この人は、強い。
「あ、ありがとうございます」
銀之介がその迫力にタジタジとなりながらもお礼を言う。
「いいのよ。あなたも唐子さんもあたしの生徒だったんだもの。できることがあるなら、助けてあげるのが先生ってものでしょう?」
優しい目をして倉地が言う。
「と、言うわけだから安心して、この街で暮らしなさい」
にっこりと笑って、言う倉地に銀之介は変身してないけど本能で感じた。この人は、強い。
「あ、ありがとうございます」
銀之介がその迫力にタジタジとなりながらもお礼を言う。
「いいのよ。あなたも唐子さんもあたしの生徒だったんだもの。できることがあるなら、助けてあげるのが先生ってものでしょう?」
優しい目をして倉地が言う。
「と、言うわけだから安心して、この街で暮らしなさい」
*
あの後、周りの生温かい配慮により、銀之介と唐子は正真正銘の2人きりになっていた。
「なんだかさ…今日は…ほんと~に色々あったね」
「ああ…」
たった1日の学園祭で本当に色々あった。目まぐるしい位に。
「でも、よかった。ず~っと一緒にいられるってさ。この街で」
「ああ…なんだかまだ、夢みたいだ」
追われることのない生活と、ずっと大切な人と一緒にいられること。
ずっと欲しかったものが一度に2つも手に入った。
「うん…これで、決心がついた」
銀之介は唐子の方を見る。まっすぐに。
「唐子…僕は、守って見せる。唐子も…この街も。だから…」
「…うん。止めない。だって、あの人たちと銀之介君が負けるはず、ないもんね」
唐子もまたまっすぐに銀之介を見て、はっきりと言う。
「負けたら、承知、しないからね」
「分かってるよ。僕は、負けない。負けるわけに、いかない」
静かな決意を込め、男の顔になって、銀之介は言う。そして…
「なんだかさ…今日は…ほんと~に色々あったね」
「ああ…」
たった1日の学園祭で本当に色々あった。目まぐるしい位に。
「でも、よかった。ず~っと一緒にいられるってさ。この街で」
「ああ…なんだかまだ、夢みたいだ」
追われることのない生活と、ずっと大切な人と一緒にいられること。
ずっと欲しかったものが一度に2つも手に入った。
「うん…これで、決心がついた」
銀之介は唐子の方を見る。まっすぐに。
「唐子…僕は、守って見せる。唐子も…この街も。だから…」
「…うん。止めない。だって、あの人たちと銀之介君が負けるはず、ないもんね」
唐子もまたまっすぐに銀之介を見て、はっきりと言う。
「負けたら、承知、しないからね」
「分かってるよ。僕は、負けない。負けるわけに、いかない」
静かな決意を込め、男の顔になって、銀之介は言う。そして…
チュッ
銀之介は、唐子と2回目のキスをした。
「…へ!?」
突然の出来事に、唐子が思わず混乱する。
それに銀之介は少し赤くなりながら、言った。
「ごめん。前にしとかないと、変身、とけちゃうから」
そして、空を見上げる。
「…へ!?」
突然の出来事に、唐子が思わず混乱する。
それに銀之介は少し赤くなりながら、言った。
「ごめん。前にしとかないと、変身、とけちゃうから」
そして、空を見上げる。
空には相変わらず紅い月がでている。紅くて丸いその月を見ても、銀之介は変身しない。
その月を瞳に写しながら、銀之介は呟いた。
「満月は、心の中にある」
昔、父親に聞いたことがある。どうすれば、好きなように変身できるようになるのかって。
その答えがそれだった。その言葉を言った本人は、こうも言っていた。
意味は自分で考えろ。自力で気付かなきゃ、意味が無い。
「あの時は、意味が分からなかった」
だけど今なら何となく、分かる。
大事なのは…
「嫌がることも怖がることも無く、自分で狼に変身したいって思うことだったんだ!」
その瞬間、銀之介の瞳には確かに映っていた。美しく、黄金に輝く満月。
そう、一番大切な人の笑顔にそっくりな満面の光を放つ満月が!
その月を瞳に写しながら、銀之介は呟いた。
「満月は、心の中にある」
昔、父親に聞いたことがある。どうすれば、好きなように変身できるようになるのかって。
その答えがそれだった。その言葉を言った本人は、こうも言っていた。
意味は自分で考えろ。自力で気付かなきゃ、意味が無い。
「あの時は、意味が分からなかった」
だけど今なら何となく、分かる。
大事なのは…
「嫌がることも怖がることも無く、自分で狼に変身したいって思うことだったんだ!」
その瞬間、銀之介の瞳には確かに映っていた。美しく、黄金に輝く満月。
そう、一番大切な人の笑顔にそっくりな満面の光を放つ満月が!
…ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォン!!!!!!!!!!!!!!!!!!
血が昂ぶる。その昂ぶりのままに遠吠えをして、銀之介の身体が膨れ上がる。
変身すると同時に、狼の本能が目を覚まし、様々なことを要求する。
変身すると同時に、狼の本能が目を覚まし、様々なことを要求する。
食わせろ、子孫を残せ、全部壊せ、ぶち殺せ…
全部却下だ。今やるべきことは、たった1つ。戦うこと。
その瞬間、銀之介はついに完全に狼を飼いならした。
その瞬間、銀之介はついに完全に狼を飼いならした。
「…じゃあ、行ってくる」
変身を終え、優しい瞳を持った狼が言う。最愛の少女に対して。
「うん!行ってらっしゃい!」
それを少女は満面の笑みで返した。他の表情は、戦うことを決意した、強く優しい狼にはふさわしくないから。
変身を終え、優しい瞳を持った狼が言う。最愛の少女に対して。
「うん!行ってらっしゃい!」
それを少女は満面の笑みで返した。他の表情は、戦うことを決意した、強く優しい狼にはふさわしくないから。