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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第21話

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だれでも歓迎! 編集
「来いよ、銀之介え!」
オオカミが笑うと同時にオオカミから瘴気があふれ出す。
それはオオカミの動きを蝕み鈍らせる代わりに強い破壊力を与える。
「今度こそ、ぶち殺してやるぜ!」
黒い瘴気をまといながら、オオカミが吠えた!

「お願いだ。僕の中の狼…」
銀之介はゆっくりと目を閉じる。
瞳に映るのは、明るく黄色い、丸い月。
もう、恐れない。狼は飼いならせるって気づいたから。
「僕に力を貸してくれ…」
銀之介の銀の毛皮が艶を増す。そして、引きしまる。より、戦いに特化した姿へと。
「今度は僕が終わらせなきゃならないんだ…」
ゆっくりと開く、その瞳はいつもの優しい瞳では無い。
「こんな悲しいのは、もうたくさんなんだ!」
野生の獣性と狩人の理性。その2つを併せ持った瞳で。
銀之介もまた、吠えた!

「ククク…今度こそ息の根を止めてやるぞ。赤毛の悪魔…」
アラキの魔力が増大する。空に輝く紅き月が魔力を分け与えているのだ。だが。
「ふん。それはアンタの専売特許じゃないわ」
不敵に笑うサフィーの魔力も同じように増大する。
「なんだと…?」
「アタシが気付かないとでも思ったの?」
そう、空に輝く紅い月が加護を与えるのはエミュレイターだけじゃない。
「常識から外れた存在って意味じゃあ…ウィザードもエミュレイターも大して変わらない」
紅き月は等しく、加護を与える。
「アンタにできること、アタシに出来ないとは限らないって思わない?」
自らを糧とするものに等しく加護を。
「だって、アタシもアンタも…もとはこの世界の吸血鬼だったんだもの」
その小さな牙をさらすように。
サフィーが歯をむき出して、笑った。

「…一気に行くよ」
いのりが自らの相棒にプラーナを注ぎ込む。
いのりには分かっていた。長引かせれば、こっちが不利だ。
いのりはちらりとそちらを見る。今なおへたり込んでこちらをみている、自らの友を。
「ファイアーワークス…」
だったら…
「全力で焼き滅ぼせええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
速効でブッ倒すしかない!

「銀之介君は、オオカミを、いのり君はアラキを抑えてくれ!」
的確に指示を出しながら、静は準備を始める。
「サフィーちゃんは僕と一緒に!」
移動しながら、体内でゆっくり練り上げる。
「頼む。時間を稼いでくれ!」
静は、魔術師だ。魔法を扱う専門のクラス。
全力で魔法を発動させれば。
「僕が魔法を完成させる時間を!」
その威力は、吸血鬼にだって負けないのだ!

「ぶっ壊れろ!銀之介ええええええええ!!!!!!!!!!!」
オオカミが振りかぶり、突っ込んできた銀之介に向かって、振り下ろす。
瘴気をまとった一撃。喰らえばただでは済まない。だが。
「なんだと!?」
それを銀之介はかわしてみせる。
「僕は…」
かわしきった銀之介はそのまま、オオカミに向かって蹴りを放つ。
「負けるわけにはいかない!」
その一撃は今までで最高のスピードで、オオカミを的確にとらえた!
「がふぁ!?」
内臓にまで達する一撃に、オオカミが血へどを吐く。早く、重いその一撃をオオカミの目は捉えられなかった。
「ちきしょう…てめえいつの間にそんな技を…」
オオカミが悔しそうに呟く。
それは、生まれついての狼であったが故に、狼であることに固執した男には決して到達できない領域。
狼であることを受け入れてなお人として生きる道を選び、その力を飼いならしたとき。
そうなったとき、彼らは変貌する。人も獣も超えた存在へと。
今の銀之介は、ただの狼では無い。
狼であることを超えた…人間なのだ。

「赤毛の悪魔に、死を!《ヴォーテクスランス》!」
アラキの魔法。槍のように尖った魔法がサフィーへと放たれる。だが!
「サフィーちゃん!危ない!《プリズムアップ》!」
「なめんじゃないわよ!こっちが、何の準備もなしだと思うな!《ダークバリア》!」
魔法の鎧と闇の盾。2つの防御魔法がその力の大半を奪う。
「…っつう!?よくもやったわね!」
それでも漆黒の槍はサフィーにわずかに傷を負わせる。だが、その程度では、サフィーは止まらない!
サフィーの脳が灼熱する。不可視の力のとっておきが爆発寸前の爆弾のように膨れ上がる。
「まとめて…ふっとべええええええええええええええええええ!!!!!!!!」
それを開放し、まとめて吹っ飛ばす!
「ぐがあ!?」
既に銀之介に手傷を負わせられていたオオカミが突然の追いうちに悲鳴を上げる。
「くっ!?《ダークバリア》!」
アラキの方は予想していたのだろう。サフィーと同じ、闇の盾で持って不可視の力を軽減する。
だが、それはサフィーの狙い通り。
アラキがサフィーの魔法に気を取られる瞬間、それを待っていた。
「今よ!いのり!」
この戦いの場にあってなお、サフィーは冷静だった。
「行くよファイアーワークス…思いっきりぶん殴っちゃえ!」
ファイアーワークスの丸太のように太い腕から放たれる一撃が、アラキをとらえる。
「ぐおぉ!?」
メキメキと、背骨のへし折れる音が響く。強力な再生能力を誇る吸血鬼にとっても大きなダメージだ。
「忘れんじゃないわよ。アタシらは…4人いる!全員で、あんたらをぶっ倒しに来てんのよ!」
そう、彼らは既に仲間であり、パーティーだ。4人の力を合わせたそのとき…彼らは一気に強くなる!

「ちぃ…こっちがやられっぱなしと思うなよ!」
オオカミが吠え、再び銀之介へと攻撃を仕掛ける。

ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!

攻撃の瞬間、吠え声を上げる。威嚇のための魔獣の咆哮。
それは、銀之介の動きを止め、銀之介をとらえる。

「死ねや、銀之介え!」
自らの生命力すら瘴気へと変え、ありったけを銀之介にぶち込む!
「っく!?」
攻撃を避けられないと直感した銀之介が防御姿勢からとっさに攻撃を繰り出す。
パッと。
同時に鮮血が舞った。

「ククク…残念だが…強いな…」
わずかな時間で大きな傷を負わされて、アラキは苦笑する。
目の前の連中は、強い。守り手の分まで攻撃に回しているのは、伊達じゃない。
「いいだろう。私も、命をかけてやる…」
詠唱。だが、今度はただの魔法じゃあない。
「今度こそ、葬り去ってくれる!《ヴォーテクスランス》!」
「またそれ!?そいつはアタシには…っくう!?」
2重に張られた防御魔法。それすらも貫通し、アラキの魔法はサフィーへと到達する。
「どうだ…?私は…貴様らを撲滅するためならなんだって…ごふっ!?」
アラキもまた血を吐く。

落し子である2体は、その技を共に持っている。
自らの生命力をも瘴気に変える荒技、《リバースストライク》
自らの命をも削る、捨て身の荒技である。

形成は5分と5分。このままでは、サフィーかアラキ、そして銀之介かオオカミのどちらかが力尽きる。
そしてその可能性は…体力に劣るエミュレイターでは無い2人の方が高い。
「シズク!魔法、まだなの!?」
痛みと呪いに顔を歪めながら、サフィーが静に問う。
「御免!急いでるんだけど…もう少しかかる!」
焦りながらも、静はサフィーに返した。
威力と詠唱の長さは比例する。強力な魔法には時間がかかるのだ。
「…分かったわ。もう少しね?」
「ああ、もう少しだ」
サフィーの念押しに、静が頷く。
「させん…今度はまとめて葬り去ってくれる!」
いのりの再びの攻撃を喰らい、ボロボロになってなお、アラキの狂気は止まらない。
今度の詠唱は…《ヴォーテクストライデント》
アラキは、銀之介以外の3人を同時に葬り去ろうとしていた。
「試してみるか?赤毛の悪魔。もっとも、お前の魔法では、私を止められはせんがな!」
魔法への抵抗力の高いアラキが嘲笑する。サフィーの全力の《ヴォーティカルカノン》を持ってしても、アラキは止まらない。
そのことを、サフィーは理解し…笑う。
「言ったでしょう?こっちが、何の準備もなしだって思うなって!」
サフィーは不敵な笑みのまま、それを使うことを決意した。

「行くわよ!」
月衣からそれを取り出し、投げつける。
実のところ、それは賭けだった。成功するかも分からない賭け。だが、それでもサフィーは信じる。
500年間、ピンチから何度も自分を救った、自らの強運を!
「…《ヴォーティカルカノン》!」
「ククク…結局それか!芸が無いな!《ダークバリ…ぐふぁ!?」
サフィーの《ヴォーティカルカノン》がアラキの頭上にたっしたそれを正確に貫くと同時に。
アラキが身を丸め、口元を押さえる。立っていられない。
こらえきれないほどの吐き気が襲う。油断していたため、アラキはもろにその被害を受けていた。
「ぎ、ぎざまあ…」
アラキがうめく。鼻をつまんだまま。まさかこんな隠し技にやられるとは思っていなかった。
確認するのも馬鹿らしかったので、すっぱり忘れていた。その結果が、これ。
アラキは一瞬にして行動不能へと追い込まれた。
「一番最初に、言ったわよね?」
賭けはサフィーの勝ちだった。できれば使いたくなかった、不確定な切り札。
そんなことを微塵も感じさせない口調で、楽しげにサフィーは言う。
「アタシらは…もとは“この世界の”吸血鬼だって」
シリアスな場面。だが、それを微妙にぶち壊しているものが辺りに漂っている。
「気づいたのはついさっき。ウィザードになったからって吸血鬼の特徴と弱点が完全になくなったわけじゃない。
だったらそれは…エミュレイターでも変わらないんじゃないかって思ったの」
それは、匂い。
アラキの周りには先ほどまでビニール袋の中に真空パックで入っていたそれが散乱している。
「100年単位の色々に愛と感謝を込めて、アタシからのプレゼント。気に行ってもらえたかしら?」
最大級の皮肉をこめて、サフィーが笑う。
それは田舎のお土産の定番。長野県、飯波市で育った大根を使った、こだわりの逸品。
「これって…」
アラキの近くにいたいのりがちょっぴりぼ~ぜんとして呟く。彼女もその被害を受けてはいたが、特に問題は無い。服がちょっぴりばっちくなっただけだ。
大好きってわけじゃないけど、嫌いでもない匂い。ってか、冷蔵庫の中に普通に入ってるし。だってそれは和食の定番。
「たくわん?」
黄色い大根だったのだから。

「アラキの野郎何やってやがんだ!?」
突然悶絶しだしたアラキに毒づきながら、オオカミが構える。
オオカミの人間の数万倍はある嗅覚は正確にそれがなんであるかを嗅ぎとっていた。
だから余計に理解できなかった。なんでアラキがあそこまで悶絶しているのかを。
「しかたねえ!まずはてめえだけでも仕留めるぜ!銀之介えええええ!!!!!!!!」
もはや余裕は無い。オオカミは持てるすべての力を使い、目の前の狼を狩ることを決意する。
「くぅ…こうなったら!」
銀之介は迎撃の態勢をとった。一か八か、やってみるしか無い!
「死ねや…ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
咆哮と共に突っ込んで来たオオカミに再び身がすくむ。
「くっ…ダメか…」
動けない。これでは…無理だ。
こうなったら耐えるしか無いと、銀之介が身を固くした、その瞬間だった。
カッ!
銀之介のポケットが一瞬光る。その瞬間。
「動ける!?これなら…」
すくんでいた身が嘘のように軽くなる。
「いける!」
銀之介が目の前のオオカミを見据え、紙一重で攻撃をかわす。そして…
ザシュッ!
銀之介の爪が返す刀でオオカミの腹を切り裂く。
「ぐおお!?なんでアレがかわせる!?」
理解できない事態にオオカミが混乱の声を上げた。

一方その頃。
銀之介のポケットの中では今回の役目を終えた幸福の宝石が輝きを失っていた。

「シズク!後は任せたわ!」
「静さん!後は頼む!」
サフィーと銀之介の声が同時に静にかけられる。
「ああ、任せてくれ!」
静が力強く頷き、ついに魔法を完成させる。
「マユリさん…ありがたく使わせてもらいます」
サフィーや銀之介の色々を用意してもらうときに、静はそれを取り寄せていた。
ヴァンスタイン家が保有する魔法の中でも最高クラスに位置するもの。広範囲殲滅用の、高レベル魔法。

「…《ジャッジメントレイ》!」

《グレートスペル》、《ドロウルーン》、《マジックコントロール》…静の知る限りの魔術師の秘儀を詰め込んだ、静の最大の魔法。
天から降り注ぐ光の雨が、オオカミとアラキを焼いて行く。近くにいる銀之介やいのりを正確に避けて。
やがて光の雨がやんだとき。

そこには完全に致命傷を負った2体のエミュレイターの姿があった。

「勝った…だけど、やっぱりまだ終わらない、か…」
空と穴を見て、静が呟く。まだ月匣は崩れていない。
「ククク…そのとおり、先ほど言っただろう?」
致命傷を負い、崩壊が始まってなお、アラキは笑う。
敗北と滅び。今度は蘇ることは無いだろう。だがそれでも良い。
自らが主と認めた魔王は、いまだ無傷のまま。必ずこいつらと吸血鬼を滅ぼすだろう。
「私とあの男…そして…我が主が全力で貴様らを排除する、と…」
「魔王…」
アラキの言葉にサフィーが呟く。そうだった。まだ一番手ごわいのが残っている。
「その通り…そして、我が主もどうやら…準備を終えたようだ…な…」
そう、アラキが呟いた瞬間。

再び天から光の雨が降り注ぐ。今度はその場にいる全員を焼きつくすように。
…たった1人をのぞいて。

アラキとオオカミは焼きつくされ、黒こげの灰と化した。

「くぅ…みんな、大丈夫!?」
焼きつくされ、かなりの重傷を負いながら、サフィーが傷を再生しながら全員に確認する。危なかった。
とっさに《ダークバリア》を張らなければ、死んでいたかも知れない。
「僕は何とか…今のは一体…?」
持ち前の超体力で生き延びた銀之介が辺りの様子を窺うように辺りを見回す。
「ジャッジメント…レイ…まさか」
《プリズムアップ》で持ちこたえた、魔法に詳しい静が、何かに気づく。
ジャッジメントレイの射程はさほど長くない。そうそれこそ…この屋上のどこかにいないと、届かないはずだ。
「…!春美ちゃん!春美ちゃんは!?」
ファイアーワークスの《シールドフォーム》で比較的軽傷のいのりがバッと屋上の扉の方を見る。
友達の安否を確認するために。だが…

「いやあここでの戦いで安定を保つように穴を補強するのにちょっぴり時間がかかっちゃいました」
そこには、にこやかに笑う1人の少女が立っていただけだった。
「それにしても、ウィザードって案外丈夫なんですねえ…うちの魔法で、1人も倒せないなんて。あ、でも駒犬先輩はウィザードじゃあないんでしたね」
いつもと変わらぬ、いやむしろちょっぴりテンションの上がった、ぐるぐるメガネのその少女。
「ま、いいです。どのみち最後の決着は、うちがつけるつもりでしたし」
三石春美は、どこか楽しげに宣言した。

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