完結編・その1
<-なつやすみのはじまりはじまり->
「と、いうわけでー……みなさんっ!今まで一ヶ月お疲れ様でしたぁっ!」
結希の宣言に、わー、というみんなの笑い声。
色々とあった夏休み期間も終わり、世間は新学期手前。
もともと定休にする予定だった連休を使い、喫茶「ゆにばーさる」の面々は、今、海に来ていた。
引率の結希は海での注意事項を淡々と述べた後、言った。
色々とあった夏休み期間も終わり、世間は新学期手前。
もともと定休にする予定だった連休を使い、喫茶「ゆにばーさる」の面々は、今、海に来ていた。
引率の結希は海での注意事項を淡々と述べた後、言った。
「今日は夜の7時から近くでお祭りがあるそうですので、女性陣は6時に宿に戻るようにお願いしますっ!
私のポケットマネーでちょっと皆さんにイタズラしますから、絶対に戻ってくるんですよー!男性陣は6時半には戻ってきてくださいっ。
じゃあ―――自由時間開始ー!」
私のポケットマネーでちょっと皆さんにイタズラしますから、絶対に戻ってくるんですよー!男性陣は6時半には戻ってきてくださいっ。
じゃあ―――自由時間開始ー!」
ひゃっほーう、という声と共に精神の平均年齢の低い人間達がダッシュ。
それを頭痛い、というように見ている精神年齢の高い人間達。誰がどれ、という言及はよしておこう。
それを頭痛い、というように見ている精神年齢の高い人間達。誰がどれ、という言及はよしておこう。
そんなわけで。たった一泊二日の夏休みが、はじまった。
<ちるどれんず・しーさいと>
「水着に着替えた!」
「着替えたでありますっ!」
「となればやることは一つっ!」
「一つでありますっ!」
「向こうの岩まで遠泳競争するよノーチェっ!」
「遠泳、遠泳って……ええぇぇぇぇぇぇっ!?」
「着替えたでありますっ!」
「となればやることは一つっ!」
「一つでありますっ!」
「向こうの岩まで遠泳競争するよノーチェっ!」
「遠泳、遠泳って……ええぇぇぇぇぇぇっ!?」
水着に着替えてもうテンションがおかしいことになっているらしい狛江と、同じくテンションがおかしくなっていたものの遠泳すると言われて驚愕するノーチェ。
ちなみに、狛江は旅暮らし(しかも山篭り)なため水着などは持っておらず、UGN謹製のトレーニング用水着……具体的に言うと紺のスク水を。
ノーチェは白のフリルスカートつきワンピース、ストラップ(肩紐)はピンク色、黒ふちどりの水着を着ている。髪の毛は海に入るとは思えないいつものツインテールだ。
ちなみに、狛江は旅暮らし(しかも山篭り)なため水着などは持っておらず、UGN謹製のトレーニング用水着……具体的に言うと紺のスク水を。
ノーチェは白のフリルスカートつきワンピース、ストラップ(肩紐)はピンク色、黒ふちどりの水着を着ている。髪の毛は海に入るとは思えないいつものツインテールだ。
あの戦いの後、髪の毛が大量に伸びたノーチェ。
その様子を見た椿が絶句。隼人を連行→おしおきのコンボをした後、ノーチェに事情を聞き、戦闘以上にぼろっぼろになった隼人に謝罪。
そんな一幕の後、椿によりどんな頭にしようか、と音符が迸りそうな言葉の飛び交う時間の後、結局いつもどおりのツインテールに落ち着いたのだった。
閑話休題。
彼女たちのやり取りを見ていた隼人がこら、と狛江をたしなめる。
その様子を見た椿が絶句。隼人を連行→おしおきのコンボをした後、ノーチェに事情を聞き、戦闘以上にぼろっぼろになった隼人に謝罪。
そんな一幕の後、椿によりどんな頭にしようか、と音符が迸りそうな言葉の飛び交う時間の後、結局いつもどおりのツインテールに落ち着いたのだった。
閑話休題。
彼女たちのやり取りを見ていた隼人がこら、と狛江をたしなめる。
「お前な、体力が有り余ってるのはいいけど体力ない人間を遠泳とかに巻き込むんじゃねぇよ」
「大丈夫!オーヴァード空手を始めれば、体力なくても今日からあの程度!」
「いや無理だから。あとノーチェは空手もやってなけりゃオーヴァードでもねぇっつーの」
「大丈夫!オーヴァード空手を始めれば、体力なくても今日からあの程度!」
「いや無理だから。あとノーチェは空手もやってなけりゃオーヴァードでもねぇっつーの」
あう、と言ってしょげだす狛江。テンションの高低の激しい娘である。
そんな彼女を見てはぁ、とため息をつくと、隼人は言った。
そんな彼女を見てはぁ、とため息をつくと、隼人は言った。
「ほら、競争するんだろうが。言っとくが手は抜かねぇぞ」
え?と首を傾げて狛江が彼を見る。隼人はにやりと笑いながら、続けた。
「お前とはあの時何度か勝負したけど、結局横槍が入ったりタイマンじゃなかったりで決着がついたとは言えないだろ。
今回は正々堂々スポーツでお前の案に乗ってやろうじゃないか」
今回は正々堂々スポーツでお前の案に乗ってやろうじゃないか」
狛江はもともとFHの人間であり、隼人たちと敵対したりしていた。
実はその前の能力発現の研究所時代にちょっとした因縁があり、そのこともあって一度白黒をつけておきたい、という意思表示だ。
もちろんそれはポーズであり、隼人自身も海に来たからにははしゃぎたい気分なのである。
ともあれ、狛江がその言葉にきらきらと瞳を輝かせ何度も何度も頷く。
実はその前の能力発現の研究所時代にちょっとした因縁があり、そのこともあって一度白黒をつけておきたい、という意思表示だ。
もちろんそれはポーズであり、隼人自身も海に来たからにははしゃぎたい気分なのである。
ともあれ、狛江がその言葉にきらきらと瞳を輝かせ何度も何度も頷く。
「うん、うんっ!今度は絶対負けないんだからっ!」
「ほっほーう。ハヌマーンをなめんなよ?」
「隼人こそっ!オーヴァード空手をみくびってると痛い目にあうよっ」
「ほっほーう。ハヌマーンをなめんなよ?」
「隼人こそっ!オーヴァード空手をみくびってると痛い目にあうよっ」
狛江の言葉に上等だ、と呟く隼人。その光景を見ていた椿が、ぽつりと呟く。
「……私も、やろうかな」
ちなみに椿はちょっと前まで狛江とおそろいの水着しか持っていなかったのだが、どういう筋から聞いたのか、どこぞの日本支部長がプレゼントしたらしい水着を着ている。
活動的なストライプのタンクトップツーピースと、スーパーミニのジーンズパンツ、という動きやすいながらも純粋露出の少ない水着。
もちろん彼女の豊満な体を隠せてはいないが。
げ、と呟く隼人とさらに目を輝かせる狛江。
さらにそこへ。
活動的なストライプのタンクトップツーピースと、スーパーミニのジーンズパンツ、という動きやすいながらも純粋露出の少ない水着。
もちろん彼女の豊満な体を隠せてはいないが。
げ、と呟く隼人とさらに目を輝かせる狛江。
さらにそこへ。
「へぇ……力比べですか。気持ちが緩む時にこそ場所を利用した鍛錬、という考え方はとても共感できます。私も参加させてもらっていいですか?」
「八重垣さん」
「いいんちょさんまでかよ……」
「八重垣さん」
「いいんちょさんまでかよ……」
黒髪黒目に、ポリエステル製のスイムスーツを着た八重垣ミナリ(やえがき・みなり)がやってくる。
彼女はあの夜やってきた補充要員であり、UGN鳴島支部のエージェントである。
ある意味椿以上の委員長属性持ちであり、相手がいないこともあって『委員長系』メイドとして大人気であったという。
そんな彼女の参戦表明に、あれ?と狛江が首を傾げた。
彼女はあの夜やってきた補充要員であり、UGN鳴島支部のエージェントである。
ある意味椿以上の委員長属性持ちであり、相手がいないこともあって『委員長系』メイドとして大人気であったという。
そんな彼女の参戦表明に、あれ?と狛江が首を傾げた。
「たしかいいんちょってブラックドックのサラマンダーじゃなかったっけ?
あたしはキュマイラだし、隼人はハヌマーン。椿なんかエグザイルのピュアだよ?こういう体使うのってあたし達とは比べられないくらい苦手なんじゃないの?」
「心配はいらないわ。私もなんの考えもなしに貴方たちと競おうとしてるわけじゃないから。
あと―――負ける気はないわよ?」
あたしはキュマイラだし、隼人はハヌマーン。椿なんかエグザイルのピュアだよ?こういう体使うのってあたし達とは比べられないくらい苦手なんじゃないの?」
「心配はいらないわ。私もなんの考えもなしに貴方たちと競おうとしてるわけじゃないから。
あと―――負ける気はないわよ?」
その不敵な笑みに、おぉ。と感心する狛江。不敵に笑う隼人。こちらも負けない、というようにこくりと頷く椿。
さらにそこへ。
さらにそこへ。
「……じゃあ、僕も入れてもらうかな。これでもスポーツにはちょっと自信がある」
「あれー、真也じゃん。なに、真也もオーヴァード空手やってたのっ?」
「そんな珍妙な武道をやってた覚えはないっ!」
「あれー、真也じゃん。なに、真也もオーヴァード空手やってたのっ?」
「そんな珍妙な武道をやってた覚えはないっ!」
名乗りを上げたのは諏訪原真也(すわばら・しんや)。
ミナリと同じくやってきた補充要員であり、もとはFH所属のファントムセルという機関で最強のオーヴァードを作る計画の一環として改造されたXナンバーズの最新型だ。
ファントムセルから逃げ出したあと、UGNの保護下におかれることとなり、一緒に逃げ出したXナンバーズ3人(+1)とともにUGNのイリーガルとして行動している。
一応、ミナリの直属の上司とも顔見知りだったりする。
真也は狛江の言葉を即座に否定。その後、はぁ、とため息をついて答える。
ミナリと同じくやってきた補充要員であり、もとはFH所属のファントムセルという機関で最強のオーヴァードを作る計画の一環として改造されたXナンバーズの最新型だ。
ファントムセルから逃げ出したあと、UGNの保護下におかれることとなり、一緒に逃げ出したXナンバーズ3人(+1)とともにUGNのイリーガルとして行動している。
一応、ミナリの直属の上司とも顔見知りだったりする。
真也は狛江の言葉を即座に否定。その後、はぁ、とため息をついて答える。
「もともとは僕、陸上部にいたんだけど色々あって……まぁ、こんな体じゃ全力で動くことなんか『普通は』できないだろ?
オーヴァードとこういうことを競いあうっていうのははじめてだから、ちょっと試してみたいんだ」
「あぁ。そういえば諏訪原くんの仲間ってあんまり運動得意そうな人たちいないね。意外とガブリエルさんも普通の人だし」
オーヴァードとこういうことを競いあうっていうのははじめてだから、ちょっと試してみたいんだ」
「あぁ。そういえば諏訪原くんの仲間ってあんまり運動得意そうな人たちいないね。意外とガブリエルさんも普通の人だし」
何気にそれは傷つく発言だと思います椿さん。
閑話休題。
真也の言葉に一つ頷くと、にやりとやんちゃな笑みを浮かべて隼人が言う。
閑話休題。
真也の言葉に一つ頷くと、にやりとやんちゃな笑みを浮かべて隼人が言う。
「ほうほう。でも手は抜かないぜ?」
「隼人隼人、それさっきも言ってた」
「う、うるさいっ!ともかくっ、真也も参加ってことでいいんだなっ!?」
「あぁ。せいぜい揉んでもらうよ、先輩達」
「隼人隼人、それさっきも言ってた」
「う、うるさいっ!ともかくっ、真也も参加ってことでいいんだなっ!?」
「あぁ。せいぜい揉んでもらうよ、先輩達」
負ける気はないけどな、と続けて、珍しくやんちゃな笑みを返す真也。よっしゃ!と言って、隼人は今のなりゆきに呆然としていたノーチェに声をかけた。
「ノーチェ!」
「は、はいぃっ!?なんでありますかっ!?」
「号令頼んだっ!」
「あ……い、いちについてー」
「は、はいぃっ!?なんでありますかっ!?」
「号令頼んだっ!」
「あ……い、いちについてー」
ノーチェの間の抜けたかけ声。それに呼応し、おのおの準備をはじめる面々。
狛江は何を勘違いしているのかビーチフラッグスのように海に背を向けて砂浜に倒れこむ。
ミナリは眼鏡を外してノーチェに渡し、集中するように眉間を二本の指でおさえた。
元短距離走者の真也は手首をぷらぷらさせてクラウチングの体勢に移行。
隼人は見よう見まねで真也の真似をして同じ体勢に。
椿は体をこきこき鳴らして準備運動を。
よーい、の声でミナリ以外の全員の目が目標の島を見据える。ミナリはまだ目を閉じたまま。何かに集中しているように見える。
それを不審に思いつつも、ノーチェは半分まだ混乱した頭で、告げた。
狛江は何を勘違いしているのかビーチフラッグスのように海に背を向けて砂浜に倒れこむ。
ミナリは眼鏡を外してノーチェに渡し、集中するように眉間を二本の指でおさえた。
元短距離走者の真也は手首をぷらぷらさせてクラウチングの体勢に移行。
隼人は見よう見まねで真也の真似をして同じ体勢に。
椿は体をこきこき鳴らして準備運動を。
よーい、の声でミナリ以外の全員の目が目標の島を見据える。ミナリはまだ目を閉じたまま。何かに集中しているように見える。
それを不審に思いつつも、ノーチェは半分まだ混乱した頭で、告げた。
「どんっ!」
皆が駆け出すのと同時。
ミナリの髪の毛が一瞬ぶわりと逆立つ。
ミナリの髪の毛が一瞬ぶわりと逆立つ。
「―――<フルインストール>っ!」
「えぇえええええええっ!?」
「えぇえええええええっ!?」
優等生のはずのミナリのいきなりのエフェクト使用に驚くノーチェ。
ミナリはノーチェの驚愕を置き去りに、一歩遅れて駆け出して叫ぶ。
ミナリはノーチェの驚愕を置き去りに、一歩遅れて駆け出して叫ぶ。
「ブラックドックの本領、見せてあげましょう!」
生体電流を操り、遠泳にもっとも適した信号をプログラムして実行。あっという間に先行した4人に追いつき、海に突入。
ざばざばざばざばー、と水をかく音を聞きながら、ノーチェはぽつりと呟く。
ざばざばざばざばー、と水をかく音を聞きながら、ノーチェはぽつりと呟く。
「……おいてかれた、であります」
むぅ、とうなり、ノーチェは手をあごに当てて再び一人ごちる。
「今すぐ<虹色の才>を取得して<ウォータースパイラル>を経験点で会得……」
「すんな」
「すんな」
ばす、と上から軽いものが頭に落ちてくる感触。
跳ねたそれをあわわ、と言いつつなんとかキャッチ。よく見ればそれは浮き輪だった。
ノーチェは浮き輪から上に視線を向けようとし、いつものように頭に手を置かれてそれを阻止された。
浮き輪を持ってきた相手は言葉を続ける。
跳ねたそれをあわわ、と言いつつなんとかキャッチ。よく見ればそれは浮き輪だった。
ノーチェは浮き輪から上に視線を向けようとし、いつものように頭に手を置かれてそれを阻止された。
浮き輪を持ってきた相手は言葉を続ける。
「お前があいつらを撃つってのは考えらんねぇから……魔法を推進力にして進もうとしてんのか。どっちにしろそんな無駄な使い方はやめとけ。
泳げるのかどうかは知らんが、それでも使って大人しくぷかぷか浮かんでろ」
「おぉ、これが浮き輪でありますか。はじめて触るでありますよ」
「……意外に泳ぎ上手いのか?お前運動苦手そうなのに」
「いえいえ。そもそも海に来るのがはじめてでありましてな?
わたくし達は太陽に嫌われた種族でありますし、いくら平気だからって好んでこういう日射しの強いところに来る習慣がなかったのでありますよ。
お友達ができても、わたくしが一ところに留まることは珍しいでありますから。一緒にバケーションなんてはじめてでありますっ!」
泳げるのかどうかは知らんが、それでも使って大人しくぷかぷか浮かんでろ」
「おぉ、これが浮き輪でありますか。はじめて触るでありますよ」
「……意外に泳ぎ上手いのか?お前運動苦手そうなのに」
「いえいえ。そもそも海に来るのがはじめてでありましてな?
わたくし達は太陽に嫌われた種族でありますし、いくら平気だからって好んでこういう日射しの強いところに来る習慣がなかったのでありますよ。
お友達ができても、わたくしが一ところに留まることは珍しいでありますから。一緒にバケーションなんてはじめてでありますっ!」
だから海で泳ぐのもはじめてでありますっ!と元気に言うノーチェ。
それに少し困ったように苦笑して、彼は頭から手を放すと、そのままこんどは崖のほうへ歩いていく。
その背中に、ノーチェは不思議そうにたずねた。
それに少し困ったように苦笑して、彼は頭から手を放すと、そのままこんどは崖のほうへ歩いていく。
その背中に、ノーチェは不思議そうにたずねた。
「あれ?蓮司はどこいくのでありますか?2時間ドラマごっこなら付き合うでありますよ」
「誰がそんな怪しい遊びするか。
ちょっとマーヤの奴に頼まれててな、『拾いもん』しにいくんだよ。夏休みがはじめてのお子ちゃまはおもいっきり遊んでこい」
「ですから、わたくしは見た目より子どもではないのでありますってば」
「誰がそんな怪しい遊びするか。
ちょっとマーヤの奴に頼まれててな、『拾いもん』しにいくんだよ。夏休みがはじめてのお子ちゃまはおもいっきり遊んでこい」
「ですから、わたくしは見た目より子どもではないのでありますってば」
その言葉に柊はひらひらと手を振って、わかっているのかいないのか、返事にもならない仕草を返すだけ。後は気にせず進んでいく。
ノーチェはしばらく浮き輪を見つめ、ぷにぷにとつついてから――― 先に海に飛び込んだ子供たちのように、わー、と大きな声で海に突貫していった。
ノーチェはしばらく浮き輪を見つめ、ぷにぷにとつついてから――― 先に海に飛び込んだ子供たちのように、わー、と大きな声で海に突貫していった。
<真夏の浜辺熱血出店勝負!その1>
「司くーん!レモンといちごみるく、それとみぞれっ!一つずつ注文とってきたよっ!」
そう、元気に駆け込んでくるのは栗色の髪に同色の瞳の元気そうな少女、七村紫帆(ななむら・しほ)だ。
UGN鳴島市支部所属のイリーガルエージェントであり、ちょっとばかり世界の選択に関わった少女であり―――瀬戸川学園で『学校の何でも屋』を自称する娘である。
ベージュの地にパッションオレンジのハイビスカス柄。ヘソ出しツーピース、同色のパレオと白のストラップの水着。
アクセントなのか、鈍い銀色の石を茨のツタの形をした銀の針金がぐるぐると固定する形のトップにシンプルな皮ひものペンダントが胸元にきらりと光る。
おぼん片手に駆け回る元気な看板娘の言葉に、あいよっ、と威勢よく応えるのは呼ばれた通り司だ。
UGN鳴島市支部所属のイリーガルエージェントであり、ちょっとばかり世界の選択に関わった少女であり―――瀬戸川学園で『学校の何でも屋』を自称する娘である。
ベージュの地にパッションオレンジのハイビスカス柄。ヘソ出しツーピース、同色のパレオと白のストラップの水着。
アクセントなのか、鈍い銀色の石を茨のツタの形をした銀の針金がぐるぐると固定する形のトップにシンプルな皮ひものペンダントが胸元にきらりと光る。
おぼん片手に駆け回る元気な看板娘の言葉に、あいよっ、と威勢よく応えるのは呼ばれた通り司だ。
今彼が何をしているのかというと、モルフェウスの友人達に協力して作ってもらった小さな屋台で、自分の力で作った純氷で作るカキ氷屋を開店しているのであった。
結希が例の件で疑ったお詫びとしてどこかから調達してきた人力カキ氷機で、このわずかな時間の間もお金を稼ごうという涙がちょちょぎれそうな努力であった。
そんな司を見て同情していたのか、はたまた単に『何でも屋』の血が騒いだのか。
紫帆が配達注文の手伝いをしようと言い出し、半ば強引に手伝いをしているのだった。
実際司の作るカキ氷は、サラマンダーとオルクスの能力を無駄にうまく使用し、カキ氷に最高に適するように作った氷をごりごり削っているため、評判がいい。
結希が例の件で疑ったお詫びとしてどこかから調達してきた人力カキ氷機で、このわずかな時間の間もお金を稼ごうという涙がちょちょぎれそうな努力であった。
そんな司を見て同情していたのか、はたまた単に『何でも屋』の血が騒いだのか。
紫帆が配達注文の手伝いをしようと言い出し、半ば強引に手伝いをしているのだった。
実際司の作るカキ氷は、サラマンダーとオルクスの能力を無駄にうまく使用し、カキ氷に最高に適するように作った氷をごりごり削っているため、評判がいい。
とんとんとんっ、と黄・ピンク・透明に染まった白い氷の山の詰まったカップを、紫帆が持ってきたおぼんに載せる。
「七村、頼んだっ!」
「はいはーいっ!今行きますよー、左京くんがレモン、桜ちゃんがいちごみるく、史朗くんがみぞれっ!」
「はいはーいっ!今行きますよー、左京くんがレモン、桜ちゃんがいちごみるく、史朗くんがみぞれっ!」
全部身内かい。つーか渋いな史朗。
閑話休題。
しばらく一人で回し続けて疲れたのか、手をぷらぷらとさせる司。そこへ。
閑話休題。
しばらく一人で回し続けて疲れたのか、手をぷらぷらとさせる司。そこへ。
「おやおや、お隣さんですか。今日はよろしくお願いしますね」
なんだか怪しい風貌の男が正面に入ってきて、司が露骨に警戒してみせる。
どのくらい怪しいかというと、真夏に臙脂色のローブにマントにブーツ、さらには大きな黒い蜘蛛の描かれている魔法使いのような大きな三角帽といういでたち。
その帽子からぴょこぴょこと紫色の髪が飛び出している、優男風の男だった。
彼は笑みを崩さないまま、フレンドリーに言う。
どのくらい怪しいかというと、真夏に臙脂色のローブにマントにブーツ、さらには大きな黒い蜘蛛の描かれている魔法使いのような大きな三角帽といういでたち。
その帽子からぴょこぴょこと紫色の髪が飛び出している、優男風の男だった。
彼は笑みを崩さないまま、フレンドリーに言う。
「いやぁ。昨日までお隣にいたたこ焼きやさんが、昨日いなくなってしまいまして。
あれは困りましたねぇ。こっちに積極的に地味なイヤがらせを繰り返すのをずっと無視してたら、結局むこうにはお客さんがいなくなって、泣きながら逃げるんですから。
今度はそんなお隣さんじゃないことを祈りますよ」
「……へぇ。そりゃ、妨害をするようなってことなのか泣いて逃げ出すようなってことなのか、どっちの意味で言ってるんだ?」
「決まってるじゃないですか。むろん両方です」
あれは困りましたねぇ。こっちに積極的に地味なイヤがらせを繰り返すのをずっと無視してたら、結局むこうにはお客さんがいなくなって、泣きながら逃げるんですから。
今度はそんなお隣さんじゃないことを祈りますよ」
「……へぇ。そりゃ、妨害をするようなってことなのか泣いて逃げ出すようなってことなのか、どっちの意味で言ってるんだ?」
「決まってるじゃないですか。むろん両方です」
フレンドリーな表情の優男と、敵意むき出しの司。その間に静かな火花が散る。
司が宣言する。
司が宣言する。
「上等だ。真っ向からその出店勝負、受けて立ってやるよ」
「はっはっは。こちらも二日連続でお隣さんをなくしたくはないですからね、お手柔らかによろしくお願いします」
「はっはっは。こちらも二日連続でお隣さんをなくしたくはないですからね、お手柔らかによろしくお願いします」
そう言うと、ローブ男はいそいそと隣にある『だいなすとかばる・極東ヤキソバ支店』と書かれた屋台に入っていく。
かくして―――真夏の壮絶な戦いは、始まった。
<すなのしろ>
ざばーん、ざざーん、と波の打ち寄せる波打ち際。
そこには、珍しい光景があった。
そこには、珍しい光景があった。
ただ静かに立つ久遠寺綾と、青い顔で浮き輪を腰に置いたまま正座するノーチェ。
綾の水着は白いビキニのツーピースだ。飾りの一切ないその出で立ちは、逆に危うい印象を与えるような気がしなくもない。
閑話休題。
目線のあわない二人。なんかノーチェの方は流れる水音が聞こえそうなほど大量の冷や汗をかいているような気がしないでもない。
そもそも人懐こいノーチェが、静かな誰かに対して何も話しかけないというのは非常に珍しいことだ。
綾が、ぽつりと言った。
綾の水着は白いビキニのツーピースだ。飾りの一切ないその出で立ちは、逆に危うい印象を与えるような気がしなくもない。
閑話休題。
目線のあわない二人。なんかノーチェの方は流れる水音が聞こえそうなほど大量の冷や汗をかいているような気がしないでもない。
そもそも人懐こいノーチェが、静かな誰かに対して何も話しかけないというのは非常に珍しいことだ。
綾が、ぽつりと言った。
「……言いたいことは?」
「え、えぇと……きょ、今日は暑いでありますなっ!」
「え、えぇと……きょ、今日は暑いでありますなっ!」
あはは、とごまかすように笑うノーチェに、やはり表情を変えず、綾が一言。
「……間違えた」
「へ?な、なにをでありますか?」
「言いたいこと、じゃなくて……言い残したいこと、だった」
「へ?な、なにをでありますか?」
「言いたいこと、じゃなくて……言い残したいこと、だった」
ぴぃっ!?と涙目になりつつツッコミすら入れられないまま鳴くノーチェ。
と、そこへ。二人の少女を覆い隠すほど大きな影がかかる。おいおい、と低く太い声が二人にかけられた。
と、そこへ。二人の少女を覆い隠すほど大きな影がかかる。おいおい、と低く太い声が二人にかけられた。
「ずいぶんと怖い話をしてるじゃないか、嬢ちゃんたち。何があったんだ?」
ガブリエル・ガルシア。南米出身で、真也と同じくXナンバーズの脱走者の一人で、名前に似合わぬゴツい大男だ。
彼もまた、補充要員の一人である。子どもを見るとどうも庇護欲がかきたてられる皆のお父さんみたいなポジションをしめている。
ついでに言うと、霧谷はみんなのおじ様、柊がみんなの兄さん、ノーチェがみんなの妹みたいなポジらしい。年齢(一部精神年齢)的なものが関係しているのだろう。
がぶりえる~、と地獄に仏を見たような顔ですがってくるノーチェ。
綾はそんなノーチェを一顧だにせず、ガブリエルを真正面から見据えてぽつりと答える。
彼もまた、補充要員の一人である。子どもを見るとどうも庇護欲がかきたてられる皆のお父さんみたいなポジションをしめている。
ついでに言うと、霧谷はみんなのおじ様、柊がみんなの兄さん、ノーチェがみんなの妹みたいなポジらしい。年齢(一部精神年齢)的なものが関係しているのだろう。
がぶりえる~、と地獄に仏を見たような顔ですがってくるノーチェ。
綾はそんなノーチェを一顧だにせず、ガブリエルを真正面から見据えてぽつりと答える。
「……わたし、砂の城を作ってた」
つまり彼女の話を要約するとこうだ。
知り合いの十也は穂波のためにプレゼントを買うため不参加。左京と和美は見当たらない。他の「ゆにばーさる」店員の同年代もまたみんなどこかに行ってしまった。
泳ぐのはあまり得意ではないので、マイペースに砂の城を作っていた。
もう少しでトンネルが開通しようとしていた、そこに……
知り合いの十也は穂波のためにプレゼントを買うため不参加。左京と和美は見当たらない。他の「ゆにばーさる」店員の同年代もまたみんなどこかに行ってしまった。
泳ぐのはあまり得意ではないので、マイペースに砂の城を作っていた。
もう少しでトンネルが開通しようとしていた、そこに……
「わたくしが波に流されてその砂の城をぐしゃ、と」
ノーチェがどよん、と珍しく落ち込んだように言う。さすがに罪悪感にさいなまれているようだ。
それを哀れむように見て、ガブリエルは綾をさとす。
それを哀れむように見て、ガブリエルは綾をさとす。
「ほら綾。ノーチェも悪いと思ってるみたいだし、わざとやったんじゃない。許してやったらどうだ?」
それに少し逡巡し、綾はほんの少し目を細めて言った。
「……城が、もとに戻るわけじゃない」
「いや。まぁそれはそうだが……」
「いや。まぁそれはそうだが……」
そう困ったように呟いて、ガブリエルはぽん、と手を打った。彼は得意げにこれでどうだ?とたずねると、手のひらを砂浜に埋めた。
次の瞬間。
さらさらと流れていく砂浜の砂が、ずおっ!と大きく音を立てて生き物のように盛り上がり―――刹那、1mほどの砂の城が完成していた。
虚ろな綾の瞳が、驚くように大きく見開かれた。
ガブリエルは自嘲するように告げた。
次の瞬間。
さらさらと流れていく砂浜の砂が、ずおっ!と大きく音を立てて生き物のように盛り上がり―――刹那、1mほどの砂の城が完成していた。
虚ろな綾の瞳が、驚くように大きく見開かれた。
ガブリエルは自嘲するように告げた。
「俺の二つ名は『砂男(サンドマン)』でな。砂の扱いなら誰にも負けんさ……まぁ、できることといえばこれくらいだがな」
綾はそれを珍しく目をきらきらさせながら微にいり細にいりじっくりと見て、ガブリエルの方に視線を移し、ふるふると首を横に振った。
「……すごい。わたしは、こんなことできない」
「そ、そうか?じゃあ……こんなのはどうだ?」
「そ、そうか?じゃあ……こんなのはどうだ?」
まんざらでもなさそうにガブリエルが砂を操ると、今度は城の中に砂で出来た人形が現れる。
その変化を、これまで鈴木和美にも見せたことのないような表情で見ている綾。調子に乗って次々と砂の城を変化させるガブリエル。
綾から重苦しい気が抜けたことを実感すると、ノーチェはもう一度謝って、その場を後にした。
あんなに幸せそうなところを邪魔するのはよくない。別に命が惜しいからではけしてない。ないったらない。
その変化を、これまで鈴木和美にも見せたことのないような表情で見ている綾。調子に乗って次々と砂の城を変化させるガブリエル。
綾から重苦しい気が抜けたことを実感すると、ノーチェはもう一度謝って、その場を後にした。
あんなに幸せそうなところを邪魔するのはよくない。別に命が惜しいからではけしてない。ないったらない。