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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

外伝第01話

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注意:「桃魔」「ゆにまほ」両方を服用なさった方のみ先に進みください。

ありえないけどありえたかもしれない出会い


 木枯らしが東京で吹き出した、と天気予報が伝える今日この頃。
 とあるショッピングモールで、同時に声が上がった。

「ノーチェっ!?」
「ノーチェさんっ!?」

 呼ばれた―――ゴシックロリータの銀髪ツインテールに唐草模様の風呂敷を担いだ少女―――ノーチェは、きょろきょろと左右を見回す。
 彼女の立っている十字路の、右と左から同時に声をかけられたのだから当然というべきか。
 右からやってくるのは、黒い短髪の高校生くらいの青年。
 左からやってくるのは、ショートカットを二つに括りブローチをつけた眼鏡の少女。
 目を丸くして、ノーチェは呟く。

「……ベホイミに、隼人?」



居酒屋ろんぎぬす 「ありえないけどありえたかもしれない出会い」



 居酒屋ろんぎぬす。それはとあるショッピングモールにある(中略)居酒屋。
 そのカウンター席には三人の客が陣取っており、店主は電話の対応をしていた。

「はい、はい。……わかりました。お客様のお名前は―――はい。『風雷神配下懇親会』様ですね?
 はい。ではご来店お待ちしてますー。はい」

 ちん、と音を立てて置かれる今時懐かしい黒電話。
 このショッピングモール内では、特に指定をしないと引かれる電話が黒電話になってしまうのだ。
 小さな居酒屋では、特に子機を使うこともないため店主はこれを愛用しているわけであるが。

「親父さん、なかなか景気いい話してるじゃないか。うらやましいねぇ」

 そう告げるのは、カウンター席向かって右側に位置する黒いボディスーツの男。
 表情は顔も隠れているため読めないが、声からは純粋にうらやましそうな響きが読み取れた。
 店主は人好きのする笑みを浮かべながら返す。

「へい、おかげさまで。お客さんにもご愛顧いただいてますしね、どうです? 今なら忘年会プランなんかも立てられますけど」
「お。いいっすねー。ただ、うちのトップが未成年だから、居酒屋はマズいんですよねぇ……」
「No.37564くんのとこの『ある日の暴君(ワン・デイ・タイラント)』さんはまだ小学生なんだっけ。その若さで大変だねぇ」

 そう言うのは、カウンター席真ん中のとさかつきのカブトをかぶったようなたらこ唇のひげと眉毛が特徴的なモアイローブ。
 ビール片手に枝豆をつまみながら、彼はちょっぴり愚痴る。

「うちの子たちもねー。No.37564くんくらい、とまではいかなくてもレッドさんをなんとかできるくらいまで強くなってくれたら計画にも目鼻がつくんだけどね」
「何言ってんです、フロシャイムさんはクロック(ウチ)と違って怪人たくさんじゃないっすか。
 うちは総統一人、怪人一人、戦闘員が俺含めて20人の弱小規模団体っすよ」
「何を言う。クロックは立派な団体だ、胸を張るといい」

 黒いボディスーツ―――No.37564に諭すようにそう告げたのは、カウンター席左側の、銀髪に深い紺のローブとマント、いわゆるメイジハットに蜘蛛の意匠の青年。
 まったく、とヴァン・ド・ターブルをコップに注ぎながら愚痴る。

「そこへ行くと我が組織は……最近、大首領の奥方が倒れられたからということで敵地に潜入工作をする怪人を作るため、貯金を切り崩したせいでまた、財政が傾いている。
 頭が痛いものです」
「レントくん、仕方ないよ。私たちの活動って、ほら、社会的に認められてないじゃない? どこの組織も資金繰りには困ってるものなんだって」
「そーそー。ウチも正義の味方サマをさくっと片付けたり、昼間のバイトで食いつないだりしてるけどさ。
 どこもかしこも正規の活動じゃない以上は俺らの活動費は俺ら自身で稼ぐのが普通のことだよ。ウチじゃ怪人だってバイトに行くんだぜ?
 シルクの奴が総統閣下の修学旅行の積立金が最優先ですからね、って他の奴黙らせちまったから稼ぎも増やさなくちゃならないしなぁ……」

 カウンターの客三人は、同時に肩を落とす。
 ……この分だと、当分埼玉県所沢市と神奈川県川崎市とエリンディルは平和そうである。

 それを見ていてまぁまぁ、と店主が笑う。

「あ、そうそう。昨日から仕込んでた豚の角煮があるんですよ、頑張ってるみなさんに俺からのエールってことで」
「おぉー、親父さん太っ腹。よ、あんたが大将!」
「角煮かぁ。じゃあご飯が欲しいかな私は」
「豚の角煮―――私の中には該当データがありません。大いに興味があります」

 現金ですね君ら。

 と、店主がカウンターに背を向けて角煮の鍋をとろ火にかけたその時。
 店主にとってはなじみのある声が、勝手口を開くがらがらがらー、という音と共に響く。

「こんばんわー、でありますよ! 席空いてるでありますかっ?」
「……タダ飯なら帰れ、嬢ちゃん」
「冷たっ!? だ、大丈夫でありますよ! 今日はお財布が二人もいるでありますしっ!」
「俺ら財布扱いかよ」
「うーわー。なんとなくそんな気はしてたけど口に出されると改めてキツいもんがあるッスねぇ……」

 ノーチェと短髪少年―――高崎隼人、そして眼鏡地味娘―――ベホイミであった。
 店主は財布があるならまぁいいか、と納得し、火から目を放さぬままに誘導する。

「悪ぃな嬢ちゃん。俺今手が放せねぇんだ、勝手は知ってるだろ、奥の座敷にその二人のお客さん方案内してやってくれ。あとで注文取りに行くから。
 つーか、友達連れてきてタダ飯はないだろうに。せめて注文取りと配膳くらいはやるんだな」
「わかってるでありますよっ! さぁさぁ、こっちでありますよー」

 言いながら、ノーチェは隼人とベホイミの手を引いて奥の座敷へと進んでいくのだった。
 ……店主、命拾いである。


 ***

 実はろんぎぬす、カウンター席しかないわけではない。
 カウンターと廊下をはさんだところに座敷があり、そこに机が二つ。
 そして完全個室がたの掘りごたつ式座敷間が二つあり、その内の一つはある美人が買い取っている。暇があるとちびちび呑みに来るとのこと。
 勝手知ったるノーチェがそのことを知らないはずもなく、必然的にベホイミと隼人が通されたのは、もうひとつの個室であった。

「……っていうか、久しぶりに会ったから一緒にご飯でも食べようかってなるのは別にいいとしても、なんで居酒屋なんスか。
 これだけ大きなショッピングモールならもっとおしゃれにおいしいお店あるでしょノーチェさん。……あ、軟骨のから揚げと揚げ出し豆腐、それからけんちん汁ッス」

 言う割にはやけに馴染んでないかベホイミよ。
 りょーかいでありますー。と言いながら紙ナフキンにさらさらとオーダーを書いていくノーチェ。彼女は隼人に視線を向ける。

「隼人はなに頼むで……って隼人、どうかしたのでありますか?」

 そう尋ねたのは、なんだか彼が考えこんでいるように見えたからだ。実際何事か考えていただろう彼は、ノーチェの声に気づくとあぁ、とあいまいに笑った。

「いや、なんかあの店長さんどっかで見たような気がしたんだけど……まぁ、そんな気にすることでもないか。
 俺、こういうとこ来るのはじめてなんだけどなに頼めばいいんだ?」
「基本的にこれを頼まないと、というものはないでありますよ。好きなもの頼めばいいであります。個人的にはブラッディマリーとかおいしいでありますよ」
「ノーチェさん、それカクテルッスから。未成年に勧めちゃダメッスから」
「えー……じゃあピンクレディでも」
「カクテルから離れろって言ってるッスよ!?」

 つーか飲んだことあるのかよ、貧乏のくせに。
 ノーチェは相変わらずだなぁ、なんて感想を心の内にしまい、フライドポテトと煮込みハンバーグとご飯(中)を頼む隼人だった。
 ノーチェがオーダーに行っている間、会話の無くなる二人。
 それもそうだ。隼人とベホイミは初対面であり、互いにノーチェの知り合い、ということで半ば強引にあの娘にここに連れてこられたに過ぎない。
 先に話しかけたのは、より対人経験値の高いベホイミだった。

「高崎隼人さん、でしたっけ。さっきは失礼しましたッス。あんまりにも知り合いに似てたもんスから」
「あー、なんだっけ。ヒイズミ、だっけ? 世の中に似たような奴は3人はいるっていうんだし、特に気にしてないって」

 実は出会った直後、ベホイミは隼人を別の知り合いと見間違えた。
 背丈も年格好も似たようなものだったし、髪型も似通っていたというのもあるが、
何よりもなんか厄介事に巻き込まれそうなオーラというか、そういったトラブルに愛される類の雰囲気をその友人も隼人も出していたのだという。否定はしないが。
 隼人と見間違えたその友人の名前は比泉秋名。とある町で生活相談所をしている青年である。
 ベホイミにとっては、いまだに記憶に残る厄介な事件の中心にいた目標の一人で、現在は友人である人物でもある。

『夜桜四重奏(ヨザクラカルテット)』、好評発売中! え、アニメ? なにをおっしゃる夜桜にアニメは存在しませんよはっはっは。

 閑話休題。
 そんな話をしていると、ノーチェがけんちん汁とごはん、フライドポテトを持って戻ってくる。

「ただいま戻りましたでありますよっ。
 お? なんだか仲良くなってるでありますな。なにかあったでありますか?」
「いや何にも。
 そういえば、ノーチェとも久し振りだな。夏にあった以来か」
「そうでありますな。生涯初の海、楽しかったでありますよ。椿たちは元気でありますか?」
「元気すぎて相変わらずだ。まったくあいつにはパートナーをいたわろうって気持ちはないのかっての」

 うんうん、と頷きながら隼人はフライドポテトを一口。
 椿に聞かれたらおしおきとまではいかずとも説教フルコースくらいは受けそうな発言である。
 隼人も相変わらずでありますなぁ、と笑いながら、ノーチェはベホイミに視線を移した。

「ベホイミの方はどうでありますか? ちゃんと魔法少女やってるでありますか」

 『まほーしょーじょ』、とあまりに予想外な言葉が出て思わずすすっていた熱いお茶をおもいっきり吹き出す隼人。
 UGNクビになっても人間噴水とかでやってけるんじゃなかろうかという吹きっぷりを見て、事態を引き起こした張本人はあわてた。

「は、隼人なにしてるでありますかっ!? もう、怒られるでありますよ、わたくしのツケ妙なところで増やさないで欲しいでありますよっ!」
「い、いやだってお前……今なんつった?」
「え? でありますから、ちゃんと魔法少女やってるでありますか、って……」
「いいかノーチェ、お前はダマされてる。ウィザードなんてもんが存在する以上、こっちの眼鏡も魔法使いなんだっていうのは許そう。
 でもダメだ。いいか? 魔法少女と魔法使いの間には、深くて暗い溝があるもんだ」
「たいがい失礼ッスね。初対面の人間目の前にしておいて」

 ベホイミさん、青筋青筋。
 基本的に空気を読まないノーチェだが、険悪な空気には敏感らしくまぁまぁ、ととりなす。

「ま、まぁまぁベホイミ。大丈夫でありますよ、ベホイミはちゃんと魔法少女であります。子どもの夢守ってるでありますよ」
「うぅ……そんなこと言ってくれるのノーチェさんだけッスよ、ありがとうッス」
「そ、そんな哀愁こめなくてもいいと思うのでありますが……。あ、メディアとかは元気でありますか?」
「元気すぎてなんとかなんないもんかと思ってるとこッスよ。体はなんだか知らないけど私以上に頑丈ですし。
 あぁ、そういえば柊さんは元気ッスか? どうせ任務漬けなんでしょうけど」

 ベホイミが何気なく言ったことに、ノーチェははい?と首を傾げた。

「蓮司でありますか? 風の噂ではまた異世界に飛ばされたって聞いてるでありますが……今頃何してるのでありましょうな」
「なんだよ、知らないのか?」

 意外そうに隼人がたずねる。
 隼人がいたのはノーチェやベホイミのいるファー・ジ・アースとはまったく異なる世界であり、ウィザードの事情には疎い。
 もぎゅ、と隼人のフライドポテトをつまみつつ、ノーチェは答えた。

「えーと……わたくしたちウィザードはたくさんある組織の中で、一つに身を寄せるものであります。
 わたくしなら絶滅社という傭兵斡旋会社、という具合でありますな。
 その中で蓮司はフリーでありますからな。依頼人がアンゼロットでもない限り、どこで何してるっていうのが耳に届き辛いのでありますよ」
「そーゆーもんか、よくわからん」
「柊さんはどこに所属してても動きが把握し辛いッスよ、自分が納得できなきゃ帰還命令も無視ッスし。
 ……ま、フリーの方が性に合ってるんじゃないッスかね」
「あぁ、確かにな。そりゃ言うこと聞かない部下は上司としちゃ欲しくないよなー」

 頷きながら隼人。
 命令無視の常習犯が言うな。
 でも、とノーチェが笑顔で言う。

「蓮司は、とてもいい仲間でありますよ」
「んー……まぁ、そこは否定しないッスよ。私の勝手な願いをわざわざ叶えるために、町に留まってくれるようなお人よしッスしね」

 照れたように笑いながらベホイミ。
 彼女は理解している。
 町を守るために力を貸してほしい、と言った彼女の願いを二つ返事で快諾して。
 彼女の日常の一部を守るために、ただただその体を張った大バカ者のことを。一人の少女を守るために、後先考えずに飛び込んでいく愚か者を。

「そりゃ否定できないよな。あいつが裏切るってのは想像できない。そんな頭がなさそうだからな」

 にか、と歯を見せて笑う隼人。
 彼は覚えている。
 動けない自分たちを後ろにかばい、それでも一歩も逃げも退きもしなかった背中を。
 自分が誰よりも危険な目にあうのを承知していながら、一点の曇りもなく仲間を信じきれるバカのことを。たった半月の付き合いの人間をそこまで信じられる愚者を。

 そうそう、と頷いてノーチェもまた語る。

「蓮司はちゃんとご飯くれるでありますしな」
「お前の判断基準はそこかよ」
「台無しッス、ノーチェさん」
「えぇぇツッコミ厳しくないでありませんかっ!?」

 そんな風ににぎやかに、ここにいない柊の馬鹿話を肴にして。ろんぎぬすの座敷席の時間は過ぎていくのであった。


 ***


「あ、そーだヴァンプさん。今度総統が遠足でお弁当必要らしいんですけどなに入れたら喜びますかねあの年頃のガキンチョって」
「へー、そーなんだ。そうだねぇ、この時期だとサンドウィッチとかいいと思いますよNo.37564さん。
 間にね、リンゴはさむの。ハムサンドがこれだけでほんとにおいしくなるから」
「その話、詳しく聞かせてはもらえませんか将軍。我が組織では今度新しい資金稼ぎの手段としてサンドウィッチ屋台を画策中でして―――」


 ……あんたら、ほんとに世界征服する気あんのか。


fin.

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