ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第01話ED

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エンディング

突然麻帆良の地に現れた少年、柊蓮司。

アーティファクトらしい剣を使い、いくら封印状態にあるとはいえ、エヴァンジェリンと茶々丸の二人を相手に互角以上の戦いをやってのける。

それでいながら、魔法使いの常識を知らない。
いや、本人は知っているつもりのようだが、明らかにおかしいことを言う。


彼曰く。

異世界からやってきた。

彼が元々いた世界は魔王に狙われていて、さきほど麻帆良で暴れていたのも魔王である。

彼はそういった魔王とその手下と戦う魔法使い(ウィザード)である。

これでも実は高校三年生である。

小学生に見えるのは、年齢が下がっているからである。


――以上の発言と情報から、学園長は一つの結論に達した。


――――柊蓮司はいろいろ可哀想な子である。主に頭とか。




魔王を撃退した十分ほど後。

柊はエヴァンジェリンと学園長の二人に、必死に事情を説明していた。

自分がここに飛ばされるハメになった経緯であるとか、ファー・ジ・アースのこと、ウィザードのこと。

柊はできるかぎり理解してもらおうと説明するのだが。


魔王のロリ発言のせいでわかりやすいくらいに機嫌の悪いエヴァンジェリン。

柊の見た目が子供なせいか、発言の内容が突拍子もないせいか、あまり話を信じていなさそうな学園長。

「そうか、異世界の高校生か、すごいのう」

などと、なんとなく生温かい口調の台詞に柊もちょっと涙目だ。


「で、あの変態はなんだ」

「だから本人が言ってた通り魔王だって」

「あんな魔王がいてたまるか! 貴様、大概にしろ!」

「だーっ、もう、俺だってあんなのが魔王なんてイヤだよ!
 それでも実際魔王なんだよ!」

「変態が過ぎて魔王と呼ばれているとかその程度だろう!」

「ちげーよっ!?」

「だいたい、貴様の話からしてうさんくさい。 魔王がそんなにゴロゴロいる世界があるかっ!
 毎週のように世界の危機が起きているとでも言うつもりか!」

それでだいたいあってる。

「いや、実際雑魚魔王とか割といるからな……」

「なんだその雑魚魔王というのは!? 雑魚だったら魔王ではないだろう!」

「いるもんは仕方ねえだろ!?」

「そうかそうか、柊くんは魔王を退治する勇者なんじゃの。すごいのう」

「その可哀想な子を見るような視線と台詞やめろっ!
 それに俺は勇者じゃなくて魔剣使いだ!」

「そうかそうか」

「じーさん、わかってないだろ!?」

「いやいやわかっておるとも」

明らかにわかっていない口調である。

「ああああ、もう、これだから異世界はっ……!」

あまりの話の通じなさに柊が嘆いたところで、柊の0-Phoneが鳴った。
肩を落としつつポケットから0-Phoneを取り出し、ディスプレイに表示された名前を見る。
この状況で連絡をしてくるであろう人物は一人しかいない。

「――アンゼロットからか」

うんざりした表情0-Phoneを開くと、0-Phoneの画面から光が溢れ、空中へとアンゼロットの姿を映し出した。

『魔王に逃げられた柊さん、お疲れ様でした♪』

しかも勝手に通話状態になっている。
もちろん、通常の0-Phoneにはこんな機能はない。

「なんでもう逃げられたって知ってんだっ!?
 っていうか俺の0-Phone勝手に改造するなよっ!?」

『こちらからの観測で時空の安定が確認されない間は、魔王が倒されていないとわかります』

「改造はスルーかよ。
 ……でもまあ、確かに――」

アンゼロットの正論に柊も頷きかけるが、

『そちらの音声も多少拾っていましたが』

「って盗聴じゃねえかっ!?」

結局、悪びれないアンゼロットの台詞にツッコミを入れる。

『まあ、相変わらず失礼な人ですね、柊さん。
 せっかく一人で異世界に放り出された小さい柊さんのために――』

「小さい言うなっ! だいたい、誰が原因だと思ってんだ!」

『もちろん魔王です』

「…………」

笑顔でさらりと言い放つアンゼロット。
実際、あの魔王が居なければこんな目にあわずに済んだのは確かだが。

「……おい、そいつはなんだ、柊蓮司」

エヴァンジェリンが立体映像のアンゼロットを睨みながら言う。
そいつ呼ばわりされたアンゼロットは笑顔でエヴァンジェリンの方を向く。
その表情は確かに笑顔なのだが、目はまったく笑っていない。

『ああ、そちらの失礼な方がその世界の原住民なんですね、柊さん』

原住民の部分を強調してアンゼロットが言う。
その言葉にエヴァンジェリンも不敵に笑う。

「ふん、貴様も異世界がどうとか言い出すクチか?」

小馬鹿にしたように言う。
そして睨み合うアンゼロットとエヴァンジェリン。
何故か火花が飛び散り、嵐をバックに竜虎が咆吼する幻影が見える。

『どうやらこちらの事情を理解してもらえていないようですね……。
 これも柊さんの説明がヘタなせいですね。説明下手男。
 やはり、「下」という文字も入っていますし、柊さんがいろいろ下手なのは仕方ないのですね……』

「って俺のせいかよ!? しかも下のせいで下手とかどういう理論だっ!?」

柊がつっこみを入れるが、二人ともそれが聞こえていないようにスルーした。

「ふ、ならば貴様に説明してもらおうか。
 納得のいく説明ができるのだろうな、小娘」

と、挑発するようにエヴァンジェリンが言えば。

『ええ、もちろんです、六百歳の幼女さん♪』

アンゼロットもそれに笑顔で応じる。
そのあたりの台詞もばっちり盗聴していたらしい。
そうしてまた火花を散らし睨み合う二人。
0-Phoneを持っているせいでその睨み合いを間近で見る羽目になってしまった柊は、ちょっと表情が引きつっている。

「――まあ、説明してくれるだけマシか……」

そう呟いて自分を納得させようとする柊。

『それではいきます。えーい、安直魔法かくかくしかじか~♪』

「まて、それは説明じゃないっ!?」

いや、効果は似たようなものだけど。

立体映像のアンゼロットが人差し指を軽く振るうと、星が飛び散る演出と共に妙にリリカルな効果音が流れる。

「…………」

「…………」

無言のエヴァンジェリンと学園長。

「……さすがに0-Phoneごし――というか異世界まで魔法を飛ばすのは無理があったんじゃないか、アンゼロット」

黙ったままの二人を見て柊が言う。
だがアンゼロットは笑顔を崩さず、自信満々の口調で言った。

『大丈夫です、ロンギヌスの技術は日々進歩しているんですよ。
 先ほどの効果音と演出も完璧だったでしょう?』

「そっちかよっ!?」

そんなやりとりをしている二人の方を向くエヴァンジェリンと学園長。
いや、二人の方を見ているというよりは柊の方を見ている。

「なるほど……下がる男」

「そういうことか……下がる男」

納得したように言う二人。

「まてっ、なんだその語尾はっ!
 何に納得してんだっ!? ていうかむしろ何を説明したんだアンゼロットォ!?」

両手で握った0-Phoneを上下に振りつつ叫ぶ柊。
立体映像を投影している0-Phoeが振られているのにアンゼロットの姿はまったくぶれない。
にっこり微笑んでアンゼロットは言った。

『もちろん“柊さんの事情”です』

「……それは俺がここに来ることになった経緯って意味だよな?」

『“柊さんの事情”です』

「…………」

『“柊さんの……”』

「もういいよっ!?」

同じ言葉を繰り返すアンゼロットに柊はいろいろと諦めた。
明らかに余計なことまで知られているのだろう。主に下がるとか、下がるとか、下がるとか。
落ち込む柊の肩をエヴァンジェリンが軽く叩く。

「なに、安心するがいい。貴様の言ったこと、信用してやろうじゃないか……下がる男」

「だからその語尾やめろよっ!」

「なに、気にするな……下がる男」

魔王(と書いて変態と読む)のせいで溜まったストレスを発散するように柊で遊ぶエヴァンジェリン。
異世界に行っても『下がる男』という通称からは逃げられない柊だった。
……どちらかというと、アンゼロットから逃げられないと言う方が正しいのかもしれないが。

「ふむ、しかし異世界が存在するとはのう……悪かったの、柊くん。てっきり頭の可哀想な子と思っておったわい」

髭をなでながら学園長が言う。悪かったと言っている割には口元が笑っているが。

「そんなこと思ってたのかよ……」

がっくりと肩を落とす柊。
ファー・ジ・アースにおいては頭が悪いと連呼されていた柊であったが、麻帆良へ来て頭が可哀想に進化しかけていたらしい。

「今でも可哀想な子であることには変わりないがの」

「なんでだよっ!?」

「自覚してないんじゃのう……」

「その憐れむような目やめろよっ!」

『まあ、いつも可哀想な柊さんはおいておきまして。
 事情は理解していただけたと思います。
 つきましては、そちらへ飛ばされた魔王の件ですが……』

アンゼロットの言葉に学園長が頷きながら返事をする。

「ああ、例の魔王じゃな。
 一定年齢以下の者にしか傷つけられないとは……こちらとしても協力はしたいのじゃが、その条件は厳しいのう……」

「ふん、私は手を貸すのはかまわん。
 アレは完膚無きまでに叩き潰さないと気が済まんからな」

悩む学園長と違い、エヴァンジェリンは即決で協力すると宣言した。
よほど魔王の発言が頭に来ているらしい。

「……それと、学園側からは私以外誰も出す必要はない。むしろ出すな」

エヴァンジェリンが学園長を睨みつけながら言う。

「エヴァ?」

「私と茶々丸と、おまけにそこの柊蓮司で十分なんとかなるだろう。
 それでいいな、柊蓮司」

おまけ扱いされたあげく、いきなり話をふられた柊は目を丸くしている。

「お、おまけってなぁ……。
 まあ、元々一人でやれって話だったからそれはいいんだけどよ。
 他の協力者を断る必要はあるのか?」

その柊の言葉にエヴァンジェリンはバンと机を叩いて怒鳴りだす。

「大有りだ! いいか、考えても見ろ!
 他の連中を連れてまたアレに遭遇して……またあんな事を言われたらどうする!?」

「アレって魔王のことか? あんな事っつーのは……ああ、六百歳の幼女とか――」

「口に出すな、忌々しい!
 ――あんなことを他の連中の前でぶちまけられてみろ、私の名に傷が付くではないか!」

プライドの高いエヴァンジェリンとしては、あんなやつに幼女扱いされるところを見られるなんてことは恥をさらすことと同じである。
特にエヴァンジェリンの正体を知る魔法使いたちになど見られたくない。

『まあまあ、大丈夫ですよ。
 貴女の二つ名に≪永遠の幼女(エターナル・ロリータ)≫が追加される程度です♪』

楽しそうに余計なことを言うアンゼロット。
実際にそう呼ばれることを想像したのかエヴァンジェリンは怒りで顔を赤くする。

「勝手にそんな二つ名を増やすなッ!
 とにかく、他の連中は絶対に同行させん! いいな!」

「む、むう……ワシとしては他の先生方とも話し合って方針を決めたいのじゃが……」

「いらんと言ったらいらん!
 ジジイ、貴様は情報だけこちらに渡せばいい。
 後はヤツが余計なことを言う前にひねり潰す……!」

変な二つ名を付けられかねない危機感からか、いつも以上に殺気の籠もった口調になっているエヴァンジェリン。

「わ、わかった。この件はエヴァと柊くんに任せるとしよう」

学園長の言葉にそれでいいとばかりに頷くエヴァンジェリン。
その様子を見ていたアンゼロットが微笑む。

『――話がまと……って良か――』

「アンゼロット?」

安定していたアンゼロットの映像と音声がぶれ始める。

『また――空……不安定――った……』

「おい、アンゼロット!?」

ノイズがのったテレビのように映像がぶれていく。

『……にか――ば連絡……ッ――』

そして音声は途切れ、映像はブラックアウトし――『視聴できません』という白文字だけが浮かび上がった。
音声もツーツーという電子音だけになっている。

「――ダメだ、完全に切れちまったみたいだ」

柊はしばらくいろいろと0-Phoneを操作してみたが、アンゼロットへと回線が繋がることはなかった。
諦めて0-Phoneを閉じてポケットに押し込む。

「ふむ……時空が不安定ということだったのう。今日はもう夜も遅い。
 続きは明日としよう。明日になればまた時空も安定するかもしれん」

「そうだな。さすがに疲れた……」

思えば、朝からほぼ戦うか気絶するかのどちらかである。
年齢が下がっているとはいえ体力は本来の年齢のままだが、それでも十分疲れが溜まっていた。

「帰って休むか……って、帰れねえんだよな。
 まあ、最悪野宿でいいか……」

「い、いや、学園の中で野宿されても困るんじゃが……」

学校の敷地内で野宿する見た目小学生、中身も未成年。
どう考えても休んでいる途中に補導されるだろう。
ついでに学園のイメージ的にも、教育的にもよろしくない。

「エヴァ、今日は柊くんを泊めてやってくれんかの?」

「私の家にか?」

面倒そうに言うエヴァンジェリン。

「空いている寮の部屋にでも押し込めればいいだろうに……」

「そう言われてものう。明日から新学期じゃからどこも満員じゃよ」

「チッ――面倒な――」

「下手に他の者にまかせてあの魔王のことがもれても困るじゃろ?」

断る口実を考えていたエヴァンジェリンだったが、その一言に凍り付く。

「エヴァ以外のところに泊めるのなら、事情ぐらい説明せんとまずいからのう」

別に事情を説明せずとも子供一人を泊めるぐらいはできるのだが、学園長は言外にそうするならそのあたりのことをばらすと言っているのだ。

「ぐっ――いいだろう。寝床ぐらいは提供してやる。
 ジジイ、電話を貸せ、茶々丸に連絡する」

そう言って学園長の返事を待たずに机にある電話を手に取る。
なんで私が、などとぶつぶつ呟いている。

「茶々丸ってあのロボの子だよな?
 エヴァンジェリンと一緒に住んでいるのか?」

電話しているエヴァンジェリンの邪魔にならないように少し抑えた声で学園長に訊ねる。

「ああ、彼女はエヴァの魔法使いの従者(ミニステル・マギ)じゃよ」

「みにすてるまぎ?」

聞き慣れない単語に首をひねる柊。

「ああ、こちらのことはまだ説明していなかったのう……明日はそのあたりも含めて話しをするとしよう。
 柊くんもこちらのことがわからないと困ることもあるじゃろう」

いくら協力者がエヴァンジェリンだけだと言っても、麻帆良学園やこちらの世界のことも知らなければ困ることも多いだろう。
ここでトラブルを起こさないためにも説明は必要だ。そう思い柊も頷く。

「ああ、そうしてくれると助かる。今日は俺の方ばっかり話してたからなあ」

「そうじゃの。おかげで“柊くんの事情”はよくわかった」

「蒸し返すなよっ!?」

「ふぉっふぉっふぉ。細かいことを気にしていると大きくなれんぞ、柊くん」

「嫌味かっ!? 俺の年齢わかってて言ってるよな!?」

「はて、なんのことかの? 柊くんは見た目が小学生な高校生じゃろ?」

「んなわけあるかっ!」

「……何を騒いでいるかと思えば。漫才か?」

受話器を置いたエヴァンジェリンが呆れたように言う。

「漫才じゃねーよっ!」

学園長に遊ばれていた柊が叫ぶが、エヴァンジェリンは興味なさそうに扉の方へ向かう。

「ふん、そんなことはどうでもいい。話はついた。行くぞ、柊蓮司」

何故かさきほどまでとは違い、楽しそうな口調のエヴァンジェリン。
それを柊は不思議に思ったが深く考えないことにした。
――何かを企んでいる時のアンゼロットの笑顔と同じような雰囲気を感じたが、気のせいだろう。
そうして退室しようとする二人へと学園長が声をかける。

「ああ、柊くん。明日の午後、またここに来てくれい。
 エヴァも身体測定が終わったら来てくれるかの」

「ああ、わかった」

「ああ――ほら、トロトロしてないでさっさと着いてこい!」

エヴァンジェリンは立ち止まっていた柊の袖を掴み、せかすように引っ張った。

「わ、わかったから引っ張るなっ!」

そして柊は引きずられるようにエヴァンジェリンに連れて行かれた。




「……なあ、エヴァンジェリン」

「どうした、柊蓮司」

「――これはなんだ?」

「お前の寝床だ」

「どう見ても犬小屋じゃねーかっ!?」

柊の前にあるのは大型犬用ぐらいのサイズの犬小屋だった。
ちゃんと『ひいらぎれんじ』とネームプレートまでついている。
茶々丸が周りの余った木材や工具を片付けているところを見ると、作りたてのようである。

「わざわざ茶々丸に用意させたんだ。感謝しろ」

「そんなものわざわざ用意するなよっ!
 使ってない部屋を貸すとか、そういう選択肢はないのか!?」

「ない!」

エヴァンジェリンは即答した。

「その方が面白いからな!」

仁王立ちして胸を張って言う。そのまま高笑いする姿は、間違いなく悪の魔法使いであった。
――やっていることは悪の魔法使いらしいと言えるかは微妙だが。

「なんでどこに行ってもこんなやつらばっかりなんだああぁぁぁぁ!」

そんな柊の叫びと共に、麻帆良での初日は幕を閉じたのだった。


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