ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第07話

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nwxss

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 こなたと柊にとっては地獄の学習会から少しの時間が経って、こなたの寝る場所が
どこになるのかと言うのが問題になった。

 何せ普段なら客人が使う客間は、今は柊の部屋として宛がわれている。まさか居間
に布団を敷くわけにもいかないという話になったのだが…。

 「ああ、お構いなくなく♪あたしはかがみんと親睦を深めつつまったり過ごします
ので~」
 「って即答!?アンタ本気であたしの部屋に押しかけるのっ!?」
 「ええぇぇぇ…かがみん、あたしと親睦深めるのは嫌なのかぁぁ…がっくり」
 「わざとらしく声に出すんじゃないっ!…ったく、今晩だけだからねっ!?」

 などという微笑ましいやり取りの後、こなたはかがみの部屋に布団を持ち込んで過
ごす事になったのである。

 そして、早めに風呂を貰って一息ついた柊は宛がわれた客間の中で…心の中に灯る
青い熱風を伴う炎を空間に広げるように『認識』を広げていく。

 ややあって、キン!という甲高い音とともに客間の中が青い色彩に染まり、時間の
流れまでもが静止した。

 先の大争乱『マジカル・ウォーフェア』以降、全てのウィザードに備わった新たな
る異能の力。自分の意思で展開できる『月匣』である。これによって隔離された空間
はウィザードやそれに類ずる存在以外から完全に隔離される。

 無事に『月匣』が展開出来たことに安堵してから、蛍光灯の明かりの元に『月衣』
から引き抜いた己の魔剣を晒し、そのまま床に横たえた。
 そのまま瞑目し、己の心をゆっくりと刃のそれと同化させていく。その途端、柊の
体から黄金色の燐気が立ち上り、それがゆっくりと魔剣の刃に吸い込まれていく。
 刀身の腹に刻まれた魔法文字にゆっくりと『力』が溜まり、くすんでいた様な印象
を与えるその刃が、まるで今しがた磨き上げられたばかりの煌きを取り戻す。

 柊はこの後来るであろう激突に備え、普段は滅多に行わない生命力の供与による魔
剣の活性化を行っているのである。

 『マジカル・ウォーフェア』以降の魔剣使いに使えるようになった新たなる異能力
『刃の供物』が遂行され、魔剣が鮮やかな煌きをその刀身に宿す。

 無事に儀式が完了したことを示すように輝きを宿した刃を眺めていると、不意に枕
元に置いてあった0-Phoneが振動した。

 液晶画面に目をやる、そこに記された名前は『泉 こなた』
 迷わず受信し、一息おいてから声を潜めて話しかけることにする…と。

 「もしもし…今かがみは?」
 「お風呂にいってるよん♪やっぱ体重が気になってたみたいだねぃ」
 「おーそっかそっか…ってそ ん な 事 は どうでもいいっ!?さっき紙片で
そっちに頼んだ確認は取れたのかよっ!?」

 即座に始まる掛け合い漫才。声を潜めた意味なんかあっという間に消失した。事が
非常事態だというのにこなたの様子は相変わらず。間違いなく馬鹿か大物のどちらか
だと硬く確信し(そして間違いなく前者だと思いを強め)さらに会話を続けていく。

 「…うん、間違いないよ。かがみんの左の肩口に、あの時の剣の傷跡みたいなのが
はっきり浮かんでた」
 「…その事にかがみは気が付いてたか?」
 「それが…かがみんは『その傷のことを全然認識してない』みたい。はっきり目で
わかる程度の跡なのに、全然気にしてないみたいで」

 一瞬息を呑む…だが、柊は意を決して言葉を続けることにした。

 「もう間違いないな…侵魔『夢喰らうもの』と契約して、時間の流れを操作してい
るのは…かがみだ」
 「…なんで、かがみんが…?」

 電話の向こうで息を呑むこなた。

 「俺にもその理由まではわかんねぇ…だが、このまま放置しておくわけにはいかね
ぇのが確定したな。もう少し対応が遅れてたらかがみが『夢喰らうもの』になりかわ
られてた所だ」
 「えっと、その…対応って…?」

 不安げな声のこなた。下手に隠し事はできないと思い、一息ついてから柊は話を続
けることにした。

 「学校の校庭で受け取ったあの宝玉『夢見の宝玉』を使って、かがみの夢…ってい
うか精神世界の中に直接飛び込む。んで、その中にいるはずの『本物のかがみ』に呼
びかけて侵魔との契約を破棄させる。

 うまくやればこれで侵魔とかがみを切り離せる。あとは…まぁ、俺に任せろ」

 決意の声とともに、すぐ傍に横たえている魔剣に目をやる柊。使い手の生命力を喰
わせて威力を活性化された魔剣ならば、間合いに入れば間違いなく一撃で片が付く。

 あとは何とか、かがみの魂と融合している侵魔を叩き出さねばならない。今のまま
侵魔を剣で倒しても、『夢喰らうもの』は別の獲物を求めて霧散し、契約を結んだか
がみの精神だけが破壊されることになるからだ。

 「ともかく、決行は今夜の2時過ぎにするぞ…起きてられるか?泉」
 「あー全然平気。普通にノッたときとか、その時間バリバリ引きやってるし」
 「…あー…話が見えないんだが…なんの話だおい」
 「でも引き役だけがノッてても、肝心のWIZが寝落ちしててさくっとデスペナ貰った
りしたら凹むんだよねぇ~。いやはや、参った参った♪」
 「…だからあっ!!何でそう緊迫感ねぇんだよお前はぁぁぁぁっ!?」

 柊蓮司、二度目の大絶叫。もはや息を殺して話をするなどという意識は遥か彼方に
ぶっ飛んでいる。

 「だって…いくら緊迫感もったって結果変わんないし…あたしたちが上手くやれば
いいだけじゃん?かがみんを助けて、その化け物叩き出して、あたしたちは普通に明
日に向かう。そんだけでしょ?」

 こなたの返事が耳に届く。そこには欠片一片の不安の色も見受けられない。『出来
るかどうか』ではなく『絶対やる』と決めているからこその平常心。

 「…うし、わかった。んじゃ決行は夜の2時。こっちから向かうから準備と心構えだ
けはしっかりやっておけよ。じゃあな」
 「…ん、ありがと。またあとでね、パーカー」

 0-Phoneを閉じ、そのまま時計に目をやる…夜の十一時半。まもなく決行の時間にな
る。こなたたちの明日を勝ち取るための決戦を前に…柊は、静かに魔剣を手にして月
明かりに刃を翳して心を澄ましていく。

 絶対に負けられない決戦の幕開けまで、あとわずか…。柊は魔剣を『月衣』に収め
てから、『月匣』を解除した。途端に客間の中に『存在感』が戻ってくる。
 その上で、ただ座して時間を待つ…。決戦の時間が、やってくるのを。

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