──アンゼロット宮殿、バルコニー。碧く輝く美しい星を一望できる特等席では、お茶会が開かれていた。
「…今日の紅茶もいい煎れ具合です」
丸いテーブルを囲むのは、この城の主アンゼロット。側に控えていた赤い騎士は何やら誇らしげだ。
「はわ~、このチーズレモンカスタードチーズシフォンパイおいし~」
チーズ(中略)シフォンパイを幸せそうに摘む赤羽くれは。
「……マフィンも美味しい…」
ペットのどんぺりと戯れるのは緋室灯。
──そして…、
「皆さん、たくさんあるのでゆっくり食べてくださいね」
紫色の制服もすっかり着なれた志宝エリスだった。
シャイマールの力を失った彼女であったが、その調理スキルは未だ健在のようである。
丸いテーブルを囲むのは、この城の主アンゼロット。側に控えていた赤い騎士は何やら誇らしげだ。
「はわ~、このチーズレモンカスタードチーズシフォンパイおいし~」
チーズ(中略)シフォンパイを幸せそうに摘む赤羽くれは。
「……マフィンも美味しい…」
ペットのどんぺりと戯れるのは緋室灯。
──そして…、
「皆さん、たくさんあるのでゆっくり食べてくださいね」
紫色の制服もすっかり着なれた志宝エリスだった。
シャイマールの力を失った彼女であったが、その調理スキルは未だ健在のようである。
と、このお茶会に参加する者がもう一人。
「ぜー、はー…や、やっと戻ってこれたぜ…」
息も絶え絶えで現れたのは、言わずと知れた下がる男、柊蓮司。どうやら"エミュレイター"と戦っていたようだ。
「あら、柊さん、ずいぶん遅かったですわね」
「お疲れー、ひーらぎー」
「柊蓮司…今日も遅刻……情けない」
「柊さんお帰りなさい。お菓子をどうぞ」
「お前ら、それが苦労して帰ってきた奴に対する態度か!?──エリスありがとな」
「い、いえ」
よほど疲れていたのだろう、柊はエリスから渡されたお菓子にかぶりつく。
「…柊さん、少々お行儀が悪いですよ?」
「ほっとけ」
そんな柊に、アンゼロット以下、女性陣はみんなして苦笑だ。
「こほん」
そんな空気を変えるようにアンゼロットが咳払いをした。
「柊さんもいらした事ですし、そろそろ本題に入りましょう」
と言って手にしたカップを置く。
「任務の話、だね」
さすがは歴戦のウィザード達。皆、即座に神妙な面もちとなった。
「今回の任務は、"高次元物質化能力者"の養成機関である風華学園への潜入調査です」
聞き慣れない単語に柊が首を傾げた。
「高次…何だって?」
「"高次元物質化能力者"──"媛星"という…有り体に言えば古代神の落とし子で、マジカルウォーフェア中に覚醒した"媛星"を倒すために尽力した方々です」
「そんな事件…あったっけか?」
「あったんです!」
強く言い放つアンゼロット。その気迫に圧されて柊は返す言葉もないようだ。
「ぜー、はー…や、やっと戻ってこれたぜ…」
息も絶え絶えで現れたのは、言わずと知れた下がる男、柊蓮司。どうやら"エミュレイター"と戦っていたようだ。
「あら、柊さん、ずいぶん遅かったですわね」
「お疲れー、ひーらぎー」
「柊蓮司…今日も遅刻……情けない」
「柊さんお帰りなさい。お菓子をどうぞ」
「お前ら、それが苦労して帰ってきた奴に対する態度か!?──エリスありがとな」
「い、いえ」
よほど疲れていたのだろう、柊はエリスから渡されたお菓子にかぶりつく。
「…柊さん、少々お行儀が悪いですよ?」
「ほっとけ」
そんな柊に、アンゼロット以下、女性陣はみんなして苦笑だ。
「こほん」
そんな空気を変えるようにアンゼロットが咳払いをした。
「柊さんもいらした事ですし、そろそろ本題に入りましょう」
と言って手にしたカップを置く。
「任務の話、だね」
さすがは歴戦のウィザード達。皆、即座に神妙な面もちとなった。
「今回の任務は、"高次元物質化能力者"の養成機関である風華学園への潜入調査です」
聞き慣れない単語に柊が首を傾げた。
「高次…何だって?」
「"高次元物質化能力者"──"媛星"という…有り体に言えば古代神の落とし子で、マジカルウォーフェア中に覚醒した"媛星"を倒すために尽力した方々です」
「そんな事件…あったっけか?」
「あったんです!」
強く言い放つアンゼロット。その気迫に圧されて柊は返す言葉もないようだ。
「……え、えーと、その人達って確か、あかりんがこの前の事件で会った人たちだよね?」
「ええ…一緒に"秘密侯爵"リオン=グンタと戦ったわ。…倒せなかったけど…」
灯の言葉には僅かだが悔しさを感じさせる。
普段から感情を出さない彼女がこうなのだから、逃がしたのがよっぽど悔しいらしい。
「で、その風華学園がどうしたんだ?」
「周辺で低級エミュレーターの活動が確認されているのです。今のところは大した被害は出ていませんが、捨て置くわけにはいきません」
「…魔王が関わっているかも知れないから?」
「その通り。ですから風華学園の二年生として潜入し、原因を調査していただきます」
「はわっ、二年生?じゃあ、あたしたちも柊と一緒で下がるのか~」
「下がるって言うなよっ!?…潜入か…」
学校に潜入と聞いた柊は何やらそわそわしている。
「…柊蓮司、なんだか嬉しそう…」
「う、嬉しいわけねーだろ!もう俺は高校を卒業してるんだからな!」
口先ではこう言っているが、柊の口元は緩んでいる。きっとあまりに授業に行かせて貰えなかった反動で、学校大好き人間になってしまったのかもしれない。
何やらしたり顔のアンゼロット。
「…皆さん何か勘違いされてるようですが、今回潜入するのはエリスさんだけですよ?」
「そうそうエリスちゃんが……って、はわっ!?エリスちゃんが?」
「エリス…?」
くれはと灯の視線を受けたエリスは無言で笑顔を返した。
「ちょっと待て、ウィザードでもないエリスを、そんな所に送り込むのは危険じゃないのか?」
「いいえ、今のエリスさんはウィザードですよ。先日の一件で、どうやら"志宝エリス"としての力が目覚めたようなのです」
「はい、アンゼロットさんの元でバッチリ勉強しました!」
はきはきと言うエリス。
その瞳には強い決意の色が見て取れた。そんなエリスの様子にくれはと灯は嬉しそうだ。
「でも、エリスだけじゃ大変じゃないか?新米みたいなものだし…」
ひとり、尚も食らいつく柊。よっぽどエリスの事が心配なのだろう。
「それはご心配なく。現地に手練れのウィザードを派遣しています。それに後ほど柊さんと合流していただきますから」
「そうか、それなら安心……後ほど?」
「ええ、後ほど」
と、言って手のひらサイズの赤いスイッチを取り出した。
「ええ…一緒に"秘密侯爵"リオン=グンタと戦ったわ。…倒せなかったけど…」
灯の言葉には僅かだが悔しさを感じさせる。
普段から感情を出さない彼女がこうなのだから、逃がしたのがよっぽど悔しいらしい。
「で、その風華学園がどうしたんだ?」
「周辺で低級エミュレーターの活動が確認されているのです。今のところは大した被害は出ていませんが、捨て置くわけにはいきません」
「…魔王が関わっているかも知れないから?」
「その通り。ですから風華学園の二年生として潜入し、原因を調査していただきます」
「はわっ、二年生?じゃあ、あたしたちも柊と一緒で下がるのか~」
「下がるって言うなよっ!?…潜入か…」
学校に潜入と聞いた柊は何やらそわそわしている。
「…柊蓮司、なんだか嬉しそう…」
「う、嬉しいわけねーだろ!もう俺は高校を卒業してるんだからな!」
口先ではこう言っているが、柊の口元は緩んでいる。きっとあまりに授業に行かせて貰えなかった反動で、学校大好き人間になってしまったのかもしれない。
何やらしたり顔のアンゼロット。
「…皆さん何か勘違いされてるようですが、今回潜入するのはエリスさんだけですよ?」
「そうそうエリスちゃんが……って、はわっ!?エリスちゃんが?」
「エリス…?」
くれはと灯の視線を受けたエリスは無言で笑顔を返した。
「ちょっと待て、ウィザードでもないエリスを、そんな所に送り込むのは危険じゃないのか?」
「いいえ、今のエリスさんはウィザードですよ。先日の一件で、どうやら"志宝エリス"としての力が目覚めたようなのです」
「はい、アンゼロットさんの元でバッチリ勉強しました!」
はきはきと言うエリス。
その瞳には強い決意の色が見て取れた。そんなエリスの様子にくれはと灯は嬉しそうだ。
「でも、エリスだけじゃ大変じゃないか?新米みたいなものだし…」
ひとり、尚も食らいつく柊。よっぽどエリスの事が心配なのだろう。
「それはご心配なく。現地に手練れのウィザードを派遣しています。それに後ほど柊さんと合流していただきますから」
「そうか、それなら安心……後ほど?」
「ええ、後ほど」
と、言って手のひらサイズの赤いスイッチを取り出した。
「…あ、アンゼロット?それはいったい何だ?」
脂汗を額に浮かべて青ざめるのは通称"下がる男"。
「これですか?これは、柊さんの足下に穴を開けるためのスイッチですよ?」
純真無垢に見えるとびきりの笑顔で見返すのは"世界の守護者"。
「柊さん、私の事なら大丈夫ですから、安心して任務がんばってきてくださいね」
ついでにとびきりの笑顔を送る元"裏界帝国皇帝"。
純真無垢に見えるとびきりの笑顔で見返すのは"世界の守護者"。
「柊さん、私の事なら大丈夫ですから、安心して任務がんばってきてくださいね」
ついでにとびきりの笑顔を送る元"裏界帝国皇帝"。
残った"星の巫女"と"紅き月の巫女"は我関せずといった風で残ったお菓子を口に運ぶ。
「ままま、待てっ!まさかそれを押す気じゃないだろうなっ!?」
椅子からずり落ち後ずさる"下がる男"。
「まっさかー☆…ぽちっとな♪」
椅子からずり落ち後ずさる"下がる男"。
「まっさかー☆…ぽちっとな♪」
──ガコン。
"下がる男"柊蓮司の足下に開いたのは虚空の奈落。
「やっぱりかぁぁっ!?ぁぁァアンゼロットォォぉぉぉぉぉぉーーーっっっっ!!!!」
叫びながら落ちる柊蓮司。
アンゼロットはどこから持ち出した拡声器で、落ちる柊に呼びかけた。
「ひーらぎさぁーん!!エリスさんの事はこちらに任せて、任務に専念してくださいねーーーっっ!?」
「ちっくしょぉぉぉーーーーーっっっ!?」
アンゼロットはどこから持ち出した拡声器で、落ちる柊に呼びかけた。
「ひーらぎさぁーん!!エリスさんの事はこちらに任せて、任務に専念してくださいねーーーっっ!?」
「ちっくしょぉぉぉーーーーーっっっ!?」
徐々に遠ざかっていく声。
「はわーお約束だねぇ」
「…さすが柊蓮司、下がる男は健在……」
柊蓮司、あんまりな言われようである。
「はわーお約束だねぇ」
「…さすが柊蓮司、下がる男は健在……」
柊蓮司、あんまりな言われようである。
「さて、エリスさん」
「はい」
奈落から向き直ったアンゼロットはエリスに告げる。
その表情は真剣だ。
「現地の戦力は豊富ですし、任務としてはさほど難しいものにはならないでしょう…しかし、油断は禁物です」
「わかってます、アンゼロットさんの教えはしっかり守ります」
「よろしい。ふふっ、いい教え子を持ってわたくしは幸せ者ですわ」
エリスの答えにアンゼロットはほほえんだ。
「一緒に行けないけど…応援、してるから……気をつけて」
灯の表情は複雑だった。
やはりエリスを送り出すのは心配なのだろう。 「エリスちゃん、頑張って!何かあったらあたしとあかりんがすぐに駆けつけるからね」
逆にくれはは元気いっぱい。我が子の初登校を送り出す母親の心境、といったところか。
「灯ちゃん、くれはさん…ありがとう!──それじゃあ行ってきます!」
「はい」
奈落から向き直ったアンゼロットはエリスに告げる。
その表情は真剣だ。
「現地の戦力は豊富ですし、任務としてはさほど難しいものにはならないでしょう…しかし、油断は禁物です」
「わかってます、アンゼロットさんの教えはしっかり守ります」
「よろしい。ふふっ、いい教え子を持ってわたくしは幸せ者ですわ」
エリスの答えにアンゼロットはほほえんだ。
「一緒に行けないけど…応援、してるから……気をつけて」
灯の表情は複雑だった。
やはりエリスを送り出すのは心配なのだろう。 「エリスちゃん、頑張って!何かあったらあたしとあかりんがすぐに駆けつけるからね」
逆にくれはは元気いっぱい。我が子の初登校を送り出す母親の心境、といったところか。
「灯ちゃん、くれはさん…ありがとう!──それじゃあ行ってきます!」
──こうして、"ウィザード"志宝エリスの、本当の意味での初任務が始まったのだった──