スケルトン(Skeleton)
英語で骸骨のこと。
本来なら土に還るべき遺体が骨だけになっても動き続けているという怪物。生ける屍の肉が朽ち果てて骸骨となったか、あるいは最初から骸骨の状態で蘇ったもの。死後も当人の霊魂によって動き続けているか、他人の霊が取り憑いているか、あるいは魔法使いが動かしているだけという場合もある。
魔法使いは蘇らせた骸骨戦士を
使い魔のように使役しているがこれは生前から邪悪だった者の亡骸からしか作れないという。この骸骨戦士は鎧を身につけることで骨がばらばらになるのを防いでおり、さらに何度倒しても復活する不死身の存在なので倒すのは困難を極める。
また、魔法使いが蘇らせていなくても骸骨の魔物は現れるようで、古戦場に現れた騎士を倒して鎧を剥ぐとそれが骸骨姿の亡霊だったという話や骸骨馬に乗った騎士の亡霊の話もある。
大航海時代には船内で流行病が発生したりして船員が全滅してしまうこともあり、そうして生者のいなくなった船では故郷に帰りたい思いからか船員の成れの果ての骸骨が三日月刀(シミター)や舶刀(カットラス)を手にして動き出したり幽霊船として海を彷徨ったりするという話がある。
犬が自らの死を受け入れられず死後も飼い主と一緒にいたいがために骸骨犬となって現れることもあるが、こうした骸骨犬は飼い主と一緒に過ごす日々をいつまでも続けることが目的なので無闇に人々を襲ったりする存在ではない。
土葬の文化がある地域では墓に入れなかった者も存在する。例えば、
カトリックにおいて自殺は大罪であるため自殺者は墓に入れなかったり、黒死病のような流行病で多くの人々が亡くなった時は遺体が墓地に入りきらなかったりした。ゲルマン人は遺体を見晴らしの良い場所に埋葬することで祖先に生者を見守ってもらい、一方で悪人は山奥や岬などの僻地に埋葬していたという。そういった遺体は人目につかないためこの怪物になりやすいかもしれない。
こんな話もある。ある夏の夜、ハンフリー・ドブソンという者が居酒屋で一杯やってから、馬に乗って帰路に着いた。帰り道には、何年も前に殺害された女性の霊が出るという橋があるが、そんな話は噂話に過ぎぬとハンフリーは鼻歌を歌っていた。橋に到着して馬が橋を渡り始めると、この世のものと思えない笑い声が橋の下から聞こえてきて、氷のように冷たい腕がハンフリーの腰に絡まった。何かがハンフリーの後ろに乗ってきた。馬は狂ったように走り出す。家に到着しても言うことを聞かず疾走し、家の門を通り過ぎてしまった。するとすぐ後ろで笑い声がした。振り返ってみると、見えたのは骸骨であった。眼窩に目がなく、歯は異様に輝いている。そして走っていた馬がつまづいたためハンフリーは投げ出され気を失ってしまった。気がついたのは翌日の昼近くで、馬は無傷であった。ハンフリーは出血のために息も絶え絶えになりながら馬を引き、ようやく家に帰る。それから村人たちに骸骨の幽霊の話を聞かせた。誰もその話を本気にしなかったが、日が暮れた後にその橋を渡ろうとする者はいなかった。
参考文献
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榎本秋/榎本海月/榎本事務所『物語づくりのための黄金パターン世界観設定編②異世界ファンタジーのポイント75』248頁
最終更新:2023年05月18日 18:52