オグドアド(Ogdoad)は、エジプト神話における、ヘルモポリスで崇拝されていた8柱の神々(八神)である。紀元前2686年から紀元前2134年にかけての大昔に拝まれていた。

概要

上(ナイルの上流 南)エジプト第15ノモスであるヘルモポリスの州都クムヌウ(「8」の意)において創世神として崇められていた神である。それぞれ4組の夫婦神で、男性神がカエル、女性神はの頭を持つとされる。荒俣宏『世界大博物図鑑』によれば、古代エジプトではカエルさんはフェミナンな、蛇さんはマッチョなものとされた*1。一応何柱かの神々、「髭を蓄えた青いおっさん」として書かれるヌン、「赤い冠を被り鞘のような衣を着たお姉さん」として書かれるアマウネトと、人間として表現されるものもおる。また、マンフレート・ルルカーによれば、八柱の神々はサルとされる場合があったという*2

ヘルモポリスでなんやかんやあった後、アモンを拝む神官の人がテーベへ行ってなんか興した際、世界創造の土地を、原典を準拠しつつ地元にするため、ヌン大明神はジャメでケマテフというの神を産み、それがいろいろあって次に生まれた蛇神イルトと造ったオグドアドの皆さんが、ケメヌウ行って創造をし、メンフィス経由でジャメ帰ったとする。

一応アメンだかアモンはまあ拝まれてたっちゃ拝まれてたし、ヌン信仰にあやかってできた壁がある説もあるのだが、オグドアドの皆さんはオグドアド単位であんまり拝まれてた節がない。

諸資料によって、8柱の構成が若干異なる。

一応まあ共通っちゃ共通したのは、a原初の水,b無限、c暗闇、である。この超古代にこんな概念を考え出しうるのはナイルのたまものである。

M・ルルカー『エジプト神話シンボル事典』では
a原初の水 ヌン&ナウネト
b無限の空間 ヘフ&ヘヘト
c暗闇 ケク&ケケト
にd不可視なるものアムン&アマウネト。*3

池上正太『エジプト神話』によれば
a水ヌン&ナウネト
b無限、不定の空間フウ&ハウヘト
c暗闇ケク&カウケト、の次が場合によって1「否定」ニアウ&ニアウト、2「欠乏」ゲレフ&ゲルヘト、3「隠れたもの」アモン&アマウネトである。*4

ヴェロニカ・イオンズ『エジプト神話』によれば
aヌン&ナウネト
b「終わりなきこと」の意のフフ&ハウヘト
c「闇」クク&カウケト、の次に
「不可視」を司るアモンとアマウネト。*5

ステファヌ・ロッシーニ、リュト・シュマン・アンテルム『図説エジプトの神々事典』によれば、「オグドアド(八位一体)」は
a原始の水ヌン&ナウネト
b無限、不定の時間フウ&ハウヘト
c暗闇 ククとカウケトが基本で、次の2対が、
「相違する教義により」1否定を指すニアウ&ニアウト、2隠されたものアモン&アマウネト、3欠乏、不在ゲレフとゲルヘト。*6


吉村作治編著『古代エジプトを知る事典』では、「8柱神(オグドアド)」は、泥海の中から自然発生した、4組の夫婦神で、
a原始の水ヌン神&ナウネト神
b無限はフフ神&ハウヘト神
c暗闇はケク神とケケト神、最後の一組を「さまざまな伝承がある」としてそれぞれ1否定を表すニアウ神&ニアウト神、2欠乏ゲルフ神&ゲレフト神、3不可視アメン神&アメンテト神などが充てられたという。*7

キャサリン・チェンバーズ『エジプト神話物語百科』では、
a原始の水 ヌン&ナウネト
b形を成さない無限 ヘフ&ハウヘト は水を切り裂くなど上記のご夫婦と対立もする上ハウヘトさんは長寿の神もやる
c無限、暗闇 ケク&カウケト 昼光を齎すものケクと夜を齎すものカウケト夫婦の別名がゲレ&ゲレアヘト。
 大気、呼吸、エネルギーを司るアメン&アムネトは、信仰を広げ長となった後他のオグドアドへ行った際、「虚無」を指すニアとニアトが権力を襲うことになったとする*8

『世界神話伝説大事典』所収のイザベル・フランコによれば、
a水を支配するヌーンとヌーネット
b空間的限界の不在を指すヘフーとヘフート
c闇を司るケクとケクート、の次の2柱は彷徨うものテネムーとテネムートで 「アモンとアモネト」は後世のもので、場合によって「何も造られていない空間の空虚」を指すニウーとニウートが含まれる*9

AJスペンサー『大英博物館古代エジプト史』によれば、オグドアドは
a原初の海ヌン&ナウネト
b無限の神ヘフ&ヘヘト
c暗闇の神ケク&ケケト
薄明りの神テネムとテネムトであり、ピラミッド・テキストでは不可視アメンとアメンネト(アマウネト)が入るという*10

ジャン=ピエール・コルテジアーニ『古代エジプト神々神話百科事典』によれば、アシュムネインで拝まれていた当時の「ケメヌウ(8柱神)」は
a原初の水ヌン&ナウネト
b空間の無限の広がりヘフ&ヘヘト
c暗闇ケクとケケト
の初めか終りに付けられる空虚ニアウとニアウトで、彼らの本質を集めた神が隠された者アメンとアメネトだという*11

イアン・ショー、ポール・ニコルソン『大英博物館古代エジプト百科事典』によれば
a水ヌン&ナウネト
b無限ヘフ&ハウヘト
c暗黒ケク&カウケト
最後のアムン&アマウネト2柱は「神秘」*12

松本弥によれば「8の町」を指す古代エジプト語「ケメヌウ」で崇拝されていた8柱神「ケメニィウ」は、
a深淵 ヌン(ネヌウ)&ヌウネト
b無限 ヘフウ&ヘフウト
c暗闇 ケクウ&ケクウトで最後がアメンとアメネト。*13

参考文献

  • ヴェロニカ・イオンズ『エジプト神話』酒井傳六青土社
  • キャサリン・チェンバーズ 『エジプト神話物語百科』田口未和訳 原書房
  • ステファヌ・ロッシーニ、リュト・シュマン・アンテルム『図説エジプトの神々事典』矢島文夫訳、河出書房新社
  • 吉村作治編著 長谷川奏、菊池敬夫、岩出まゆみ『古代エジプトを知る事典』、東京堂出版
  • マンフレート・ルルカー著 山下主一郎訳『エジプト神話シンボル事典』大修館書店
  • 篠田知和基 丸山顯徳編『世界神話伝説大事典』勉誠出版
  • A・J・スペンサー著 近藤二郎監修、訳, 小林朋則訳『大英博物館 古代エジプト史』原書房
  • ジャン=ピエール・コルテジアーニ著、近藤二郎監修、 近藤悠子訳『図説古代エジプトの神々・神話百科事典』原書房
  • イアン・ショー、ポール・ニコルソン著  内田杉彦 訳『大英博物館古代エジプト百科事典』 原書房
  • 松本弥『古代エジプトの神々』弥呂久
  • 池上正太『エジプト神話』新紀元社

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最終更新:2025年01月31日 15:51

*1 新装版『世界大博物図鑑 爬虫 両生類』46頁

*2 『エジプト神話シンボル事典』101頁

*3 『エジプト神話シンボル事典』101頁

*4 『エジプト神話』24

*5 『エジプト神話』59頁

*6 『エジプトの神々事典』16頁

*7 『古代エジプトを知る事典』78頁

*8 『エジプト神話物語百科』86頁

*9 『世界神話伝説大事典』557頁

*10 AJスペンサー『大英博物館古代エジプト史』p78

*11 JP・コルテジアーニ『古代エジプト神々神話百科事典』486頁

*12 『大英博物館古代エジプト百科事典』417

*13 『古代エジプトの神々』12頁