深紅郎動く! 龍之介改造計画! ◆LuuKRM2PEg
「お……おおおおおっ……!」
雨生龍之介は身体の奥底から力を感じて、大きく震えていた。
彼の心臓は激しく鼓動し、血液の流れる速度が急激に上げている。呼吸は大きく荒れ、体温が急激に上昇していき全身の至る所から汗が滲み出ていた。
「すげえ……これ、すげえよ……っ!」
龍之介は井坂深紅朗と出会ってから、ガイアメモリの使用による身体の影響を調べるという名目で、ある薬剤を投与している。深紅朗曰く、その錠剤を身体に入れれば凄まじい力を得られるらしい。
現に今、全身を構成するあらゆる細胞が歓喜しているようだと、龍之介は思った。
無論、そんなのはただの妄想でしかないと龍之介自身理解している。しかしそんな錯覚を感じてしまうほど、龍之介の精神は高ぶっていた。
「先生……俺、俺……っ!」
「龍之介君、貴方は進化するのです……!」
深紅朗もまた興奮しているのが見える。そんな彼の顔を見ていた龍之介の瞼は、一気に見開かれた。
雨生龍之介に注入された薬は決して普通の薬ではない。そもそも、薬と呼べるような物ですら無かった。それは今は亡き狂気の天才シェフ、
至郎田正影が長年に渡る研究の末辿り着いた究極の料理。
数え切れぬ高級食材と共に、コカイン・ヘロイン・モルヒネ……各種麻薬に加え、ステロイド系テストステロンや、DHEAなどの筋肉増量剤を精密なバランスで配合し、煮込むこと七日七晩!
血液や尿からは決して検出されず、なおかつ全ての薬物の効果も数倍、血管から食べることで更に数倍!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
龍之介は腹の底から大きく叫んだ。
上半身の血管がメリメリと音を鳴らしながら浮き上がり、皮膚が徐々に黒ずんでいき、筋肉が盛り上がって上着を破いていく。一般的成人男性程度でしかなかった彼の筋肉は、一瞬でプロの格闘家をも凌駕しそうなほどに膨張した。
そして龍之介の瞳はギラリと赤く輝いて、全身から湯気が昇っていた。
「はあっ……はぁっ……はぁっ……!」
身体が燃えてしまいそうな熱を感じながら、龍之介は笑っていた。
不意に彼は、近くに備え付けられていた鏡を覗く。そこにいる自分自身の姿は、いつもの自分自身と全く違っていた。
特別なスポーツや筋力トレーニングなどしてないのに、鋼のような肉体を手に入れたのが信じられない。
「……先生、これが本当に俺の身体なのか……!?」
「当然です! 貴方は進化の第一歩を果たしたのです!」
両腕を広げながら声を張り上げる深紅朗の言葉を受けて、龍之介の笑みは更に強くなる。それはまるで野生に生きる獣のように獰猛だった。
龍之介は筋肉が膨張した右腕で備え付けられた机を軽く殴りつけると、轟音と共に砕け散る。そこまで力を込めたつもりはなかったが、固そうな机がこうも簡単に壊れた。
「すっげえ! この身体すっげえよ! 俺、もしかしたら格闘技の世界チャンピオン狙えるんじゃね!?」
「それは龍之介君次第です……しかし、私と共にいれば貴方はもっと強くなれるでしょう! それこそ、究極と呼ぶに相応しいほどに!」
「マジかよ!? やったああああぁぁぁぁ!」
有り余る興奮が押さえられず、龍之介は更に吼える。
「すっげえ! すっげえ! すっげえ! すっげえ! すっげええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! COOL! COOL! COOL! COOL!」
彼が旦那と崇めるサーヴァント、
キャスターのように両手で頭を無茶苦茶に掻きむしりながら更に叫ぶ。
その行為はまるで重度の薬物中毒者のように、常軌を逸していた。龍之介の精神は元より正常ではなかったが、それでもまだ理性だけは雀の涙ほどでしかないにせよ残っている。
しかし今の彼は至郎田正影が残した究極の遺産によって、その最後のリミッターすらも破壊されていた。
「やっべえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! マジで最高だあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ドーピングコンソメスープゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
○○○
(何と……まさかこの薬品に、これほどの効果があったとは……!)
そして井坂深紅朗もまた、雨生龍之介に打った注射の効能に目を輝かせている。
クウガと名乗ったメモリを使わない仮面ライダーと戦ってから、深紅朗にとって興味深い支給品がいくつもあった。
一つは今、龍之介に打ち込んだドーピングコンソメスープという名の薬剤。その名前と説明書に書いてあった人間の筋肉を一気に発達させる効能は、深紅朗にとって興味に惹かれる物だった。
そんな都合のいい効果など最初は全く信用していなかったが、中肉中背な龍之介の肉体を一瞬で岩のように逞しくするからには効果は本物だろう。
(龍之介君の次にはリュウガですか……私は、龍に縁があるのでしょうかね?)
もう一つはクウガともWやアクセルとはまた別の仮面ライダーに変身出来る、カードデッキという道具。漆黒の暴龍を操る騎士、仮面ライダーリュウガの変身を可能とするカードデッキだった。
説明書を見ると、カードデッキがあれば鏡の世界に行ける上にミラーモンスターという怪物を使役できるらしい。
深紅朗は知らないが、リュウガとはネガの世界を支配していたダークライダーの一人で、凄まじい戦闘能力を誇っている。
(ああ、ここは何て素晴らしいのでしょう……! まさかコアメダル以外にも人体を進化させる秘法が眠っているなんて!)
首輪で命を繋がれ、真木清人から殺し合いを強いられている状況を除きさえすれば、この世界はまるで楽園のような場所だった。
グリードというメダルで出来た未知の生命体に加え、サーヴァントや魔術師を始めとした超常的存在が数え切れないほどいる。一体彼らは何で出来ていて、どんな力を持っているのか? またそんな彼らを一箇所に縛り付けられる真木清人とは一体何者なのか?
深紅朗という存在を構成する『探究心』という名の欲望が、湧き水の如く溢れ出ていた。
(知りたい……ああ、知りたいです! 真木清人、どうやら貴方には感謝しなければならないようですね……私をこのような楽園に招待してくれた事を)
目の前で暴れる龍之介を余所に、こんな状況を強いた主催者たる清人に礼を告げる。無論、そこに本当の感謝の意など欠片も込められていないが。
(ふむ……出来るならこのドーピングコンソメスープとやらを量産したいですが、そんな余裕はありませんね)
そして深紅朗は、数本のアンプルに付属されていた一枚の紙に目を向ける。それはドーピングコンソメスープを作る為のレシピで、七十種類もの材料が載っていた。
しかしそんな大量の食材など手元にないし、何よりもこれを作るのに七日七晩煮込む必要があるらしい。呑気に作っていてはその間に殺し合いが終わってしまう。残念ながら、ドーピングコンソメスープを作るのは帰還してからの楽しみにするしかない。
今はリュウガの戦闘力にドーピングコンソメスープの詳しい効果や副作用などを把握しながら、龍之介の体内にある「INVISIBLE」のメモリを完成させる。もしかしたら、ドーピングコンソメスープを注入した事で、体内のメモリに何らかの変化を起こすかもしれないのを祈りながら。
だが、その前に――
「さて、龍之介君……そろそろ食事にしましょう。私も結構、お腹が空いているので」
「ワオ、賛成賛成! 大賛成!」
今は空腹という問題を解消させる必要がある。
休憩のために訪れたこの建物、言峰教会には幸運にも大量の食料があった。そこで深紅朗は調達した豆腐、挽肉、ネギ、香辛料を使って大盛りの麻婆豆腐を作る。
ちなみに、この教会の主である言峰綺礼は激辛の麻婆豆腐が大好物で、それにあやかって材料が置かれているのかと思うかもしれない。しかしこの殺し合いに言峰綺礼は参加していないし、真木清人がどういう意図で食料を置いたのかは定かではない。
そしてそんな事情など、ここにいる二人にとってはどうでもいい事だった。
【一日目-午後】
【B-4/言峰教会】
【
井坂深紅郎@仮面ライダーW】
【所属】白
【状態】ダメージ(小)、食事中
【首輪】60枚(増加中):0枚
【装備】「WEATHER」のメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品(食料なし)、ドーピングコンソメスープの入った注射器(残り四本)&ドーピングコンソメスープのレシピ@魔人探偵脳噛ネウロ、カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダーディケイド、大量の食料
【思考・状況】
基本:「INVISIBLE」のメモリを食らう。そのために龍之介を保護する。
0.ひとまず食事をしながら、今後のことを考える。
1.「INVISIBLE」のメモリを完成させる。
2.ドーピングコンソメスープとリュウガのカードデッキに興味。龍之介でその効果を実験する。
3.コアメダルや魔術といった、未知の力に興味。
4.この世界にある人体を進化させる為の秘宝を全て知りたい。
【備考】
※詳しい参戦時期は、後の書き手さんに任せます。
※「WEATHER」のメモリに掛けられた制限を大体把握しました。
※言峰教会から食料を調達しました。
【雨生龍之介@Fate/zero】
【所属】白
【状態】健康、興奮状態、筋肉モリモリ、食事中
【首輪】99枚:0枚
【コア】コブラ
【装備】サバイバルナイフ@Fate/zero、「INVISIBLE」のメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、ブラーンギー@仮面ライダーOOO
【思考・状況】
基本:このCOOLな状況を楽しむ。
0.ひとまず食事をする。
1.しばらくは「INVISIBLE」のメモリで遊ぶ。
2.井坂深紅郎と行動する。
3.早く「旦那」と合流したい。
4. この筋肉……すげえ!
【備考】
※「INVISIBLE」メモリのメダル消費は透明化中のみです。
※「INVISIBLE」メモリは体内でロックされています。死亡、または仮死状態にならない限り排出されません。
※雨竜龍之介は「INVISIBLE」メモリの過剰適合者です。そのためメモリが体内にある限り、生命力が大きく消費され続けます。
※ドーピングコンソメスープを摂取したことにより、筋肉モリモリになりました。
※この状態が永続的か、一時的な物なのかは後続の書き手さんにお任せします。
最終更新:2013年11月01日 15:41