押し寄せた闇、振り払って進むよ ◆nXoFS1WMr6
空は明るく、本来彼女ぐらいの年の子供ならば外で遊び走り回るのが普通の時間。
だが少女、
美樹さやかは室内にいた。
ならば一人でパソコンやらテレビゲームにでも勤しんでいるのだろうか、いや彼女はあろうことか密室で異性と共に――、
「うおりゃあああああああああああああ!!」
修行に励んでいた。
そしてまた彼女の持つサーベルが男に向かって振り下ろされる。
常人であれば一刀両断されてもおかしくないレベルのスピードで放たれたはずのその攻撃を男は余裕の表情でかわす。
次の瞬間さやかは男の放つであろう反撃を予想し、腹に剣を持っていない左手をガードとして潜らせた。
だがそんな彼女を襲ったのは、あろうことか後方からくる男のエルボーだった。
予想外の角度からの攻撃にさやかの体は大きく吹っ飛ぶ。
本来ならば歓楽施設であるはずのこの建物に設置された、ショーか何かを行うような舞台にさやかが落下する。
そして落下の衝撃で少し崩れてしまったその舞台に向かって、先ほどさやかにエルボーを喰らわせた本人がゆっくりと歩いて来た。
「流石だなぁ、この短時間で俺の攻撃を予想し、ガードを作るレベルまでいくとは……、だが攻撃は一種類だけじゃない。俺が腹を狙うと予想した段階で安心しきってるようじゃまだまだだ」
男の名は
大道克己。
先ほどさやかのコーチを買って出た男の顔は言葉とは裏腹にどこか嬉しそうだった。
そう、彼は嬉しかったのかもしれない、自分を必要としてくれる人間の存在が。
大道克己は、ある意味では孤独といってもよかった。
戦場において信頼のおける仲間がいるという時点で孤独とは程遠いという人もいるだろう。
だが、彼という存在を心から求め、もっと言えば彼がいなければ生きていけないような存在は彼にはいなかった。
同じNEVERである仲間たちは二度目の生を与えてくれた克己に恩返しのつもりで(中には生き長らえるのに必要な酵素のために、という者もいるが)戦場で共に戦ってくれている。
が、言い方を変えれば、もし彼らを生き返らせた後に生き返らせた人物が克己ではなく、酵素も必要が無いと伝えたとしたらたとえそれが嘘でも彼らはいなくなってしまうのではないか、そんな不安はいつだって克己の中を渦巻いていた。
本当はそんなことないのかもしれない、生き返ったのが克己のおかげでないとしても生きるのに酵素が必要ないとしても彼らは克己についてきたのかもしれないが、克己は信頼が置ける仲間といえる存在が自分の元から去り、また母と子二人になってしまうのは残った自分自身すら見失ってしまいそうで恐ろしかったのだ。
母は死人ではない。故に共にいても、彼の心を満たす存在にはなり得ないだろうと、克己は半ば確信していた。
――だからこそ、彼はこの場でも共に戦ってくれる仲間を無意識のうちに探していたのかもしれない。
そんな時に出会ったのが、本当の意味で自分がいなければまともに戦場にも出られないようなか弱い少女、美樹さやかだったということだ。
無論、彼とてこの場でずっと修行をつづける訳にはいかないことは重々承知。
だからこそ、最早目と鼻の先にあるステージに目を向け、中からさやかが起き上がってくるのを待っているのだが……。
(さっきの攻撃で伸びちまったか?全治3カ月ってぐらいには抑えてやったつもりなんだが)
美樹さやかは、自分自身で他の魔法少女に比べても耐久力と回復力はあると語っていた。
なんでも、やり方さえ分かれば魔法少女ならだれでもできる痛覚遮断能力と、自身の願いによって生み出された癒しの力が絶妙にシンクロし、相当なことが無い限りは戦闘不能の事態には陥らないと述べていたのだ。
だからこそ彼はさやかに痛覚遮断をアレと同レベルの切り札として設定し、少なくともこの場では使用しないように言っておいた。
彼女ならばそんな小細工に頼らずとももっと高みに行けると思ったからだ。
――そんなことを考えた直後、また無意識のうちに彼の顔に笑みが浮かぶ。
当の美樹さやかがその体に与えたダメージを殆ど感じさせない様に立ちあがったため。
その体に刻まれた数多の傷は痛々しいが、しかしNEVER以上のスピードでそれらは次々と治っていく。
やはり同じゾンビといえども、魔法の力と科学の力では得意分野が違うのだなと克己は再確認するが直後さやかがまたも剣を構え突貫してくる。
その一撃を克己は上体を反らすことで軽々と避け、そのまま左フックを放つ。
一応はさやかの視覚外からの攻撃のつもりだったが彼女はそれを確実に見切り、身を屈めて攻撃をかわしつつ追撃を喰らわないため、軽やかなステップで克己の射程圏内から外れた。
なるほど、流石だと思う。
彼女ぐらいの年齢、つまり第二次成長期の人間のそのなんでもすぐさま吸収できる柔軟な体や思考には驚きを隠せない。
なんせさやかは、自身がNEVERとしての呑み込みの速さは凄まじいと称した羽原レイカと同等、或いはそれすら上回るスピードで成長を遂げているのだから。
だが、まだ足りない。
彼女はまだ、伸びることができる。
もしかしたら彼女は"アレ"を使う戦闘を視野に入れたらこの年にして自分達NEVERを超えるかも知れないポテンシャルを持っているのではと、克己は感じているのだから。
自分の直感が間違っていなければまだこんなものではさやかは終わらない。
ならばどうすればいいのか。
答えは簡単、感情を揺さぶればいい。
もっと簡単に言うならば、怒らせるということだ。
この年齢の、ただでさえ気持ちの浮き沈みの激しい少女の怒りを爆発させたなら、その際のさやかの戦闘力は克己も測定しきれない。
ただでさえ怒りという感情は人を一時的とはいえ進化させる。
もちろんこの戦場で彼女は更に進化するだろう。だが今は、さやかの限界を一瞬でもいいから見てみたい。
溢れ出そうな好奇心を抑え、先ほど聞いた情報を整理しどのような言葉が彼女に一番効くのか、考える。
(さぁ見せてくれ、さやか。お前の全力のほんの一欠けらを)
またしても無意識にニヤリと口角を歪めた克己は、さやかの攻撃をかわしながら隙を見計らっていた。
◆
分かってはいたものの、やはり痛覚遮断なしでの戦いは、それを一度知ってしまった身としては辛いものがあった。
全身に迸る痛みは確かに〝生きていた"ころに比べれば圧倒的に薄く、しかも新しい傷ができたとしてもそれは目を向けた瞬間には閉じ始めている。
先ほど自分と同じような境遇の大道克己という男に会ってどこかこの体も悪くないのではと思いもしたが、やはり忌々しいことに変わりはない。
その苛立ちをそのまま彼に向けるが、しかしこの男は自分の攻撃を難なくかわしていく。
それによって更にいら立ちが募るも、そのストレスを発散する場所は見つからぬ故、さやかは剣を振り続ける。
ゾンビになったこの"体"は疲れを知らないが、いつ終わるともしれないこの特訓にさやかの"精神"はうんざりしてきていた。
――だがその瞬間、彼女に好機が訪れる。
克己がさやかの連続攻撃に追いつけなくなったのか、足をふらつかせて彼女でもわかるほどの明らかな隙を見せたのだ。
チャンスだと確信したさやかは一気に間合いを詰めて自前の剣を突き出す。
だが、流石地獄の傭兵軍団リーダーというところだろうか、克己は肩に向けられたその攻撃を一瞬で察知し上体のみを反らすことで肩を掠める程度に抑える。
しかしそれでもダメージは通っている。証拠に克己の顔には苦痛の表情が浮かんでいた。
このまま押し切れば、いける。克己とて疲労が無いわけではないのだ、自分にも疲労は押し寄せているが、この特訓とやらがあと少しで終わるならば、気にはならない。
そんなことを考えたさやかは本当の意味で一瞬気を抜いてしまった。
――目の先にある克己の顔が苦痛から笑顔に変わり、それこそが罠だったと気付くまでの、ほんの一瞬だけ。
不味い、と判断した時には鋭い痛みが腹部を襲っていた。
恐らくは克己が自分の体を思い切り蹴り上げたのだろうと理解するより早く、さやかは自前の剣をも落として床に落下していた。
油断していた。奴が今の今まで攻撃を一切受けようとしなかったのは自分が初のヒットに喜ぶその瞬間の隙を大きくするためだったのだ。
そして自分はまんまとその罠に引っ掛かり、今は痛みが消えるのを待ってただ床に這いつくばることしかできない。これが実戦なら間違いなく死ぬだろう。
だが、そんなことすら構わずに、それでもさやかは立ち上がろうとする。先ほど克己をぎゃふんと言わせてやると決意したのだから。
しかしその瞬間彼女の耳に聞こえてきたのは克己が接近してくる足音ではなく。
先ほどまでと同じ場所にいる克己から発せられた深いため息であった。
「……ったく、こんなもんか、お前の実力は。正直期待外れだぜ」
その声音から読み取れる克己の感情は、失望の類だと理解できた。
「余計な、お世話よ……!」
「全く、こんなもんで街一つ守ろうとしてたなんざ、思い上がりも甚だしいな」
その言葉に、未だ腹痛に悩まされながらさやかはムッとした顔をするが、しかし克己はそれを無視して言葉を続ける。
「それとも、こんなもんでも倒せるぐらい、その魔女とやらはぬるい存在なのか?或いはお前は本当には街を守れてないのに守ったつもりになってるだけじゃないのか?」
「……うるさい!」
自分は街を、見滝原を守れていなかったのか?そんな疑問が彼女の中に浮かぶも、それを否定する。
自分は魔法少女としてやれることをやってきたはずだ。マミさんにはまだまだ及ばないけどそれでも私なりに必死に――!
「こんなお前でも倒せる魔女ばっかお前の街にいるなら、長い間街を守ってきたそのマミとかいう魔法少女も実はたいしたことないんじゃないのか?」
脳裏に浮かべたその人を馬鹿にされ、何かがさやかの中でドクンと高鳴った。
こいつは今何て言った?私やまどかが何も知らずのほほんと暮らしてた間ずっと魔女や使い魔と独りで戦い、感謝されることなく皆を守り続けてきたマミさんを、大したことないだと?
「ついでに言うならお前についてってるまどかとかいう奴も、実は友達のために身を呈してる自分に酔ってるだけだったりするんじゃないのか?死ぬかもしれないのに友達の心配する私健気、みたいなことを腹の底じゃ思ってるかもしれないぜ?」
――やめろ。
まどかやマミさんを、馬鹿にするな。
私のことなら、いくらでも罵るがいい。私は馬鹿にされてもしょうがない奴なんだから。
でも、そんな私すらも労り優しくしてくれたまどかやマミさんを馬鹿にするやつは許さない。
二人は克己が思っているような人間とは、違う。
マミさんは本当に強かった。憧れるぐらいに。
まどかは本当に優しかった。呆れるぐらいに。
だから、そんな二人を馬鹿になんかさせない。
私の最高の友達たちを馬鹿になんて、絶対にさせない。
馬鹿にするやつらは、私が潰す。
そう思った途端、先ほどまで収まらなかった腹痛がピタリとやんだ、気がした。
もう這いつくばる理由は無いとばかりに、いつの間にか立ちあがっていた私はそのまま右手に魔法の剣を具現化する。
今は特訓とかどうとか関係ない。今はとにかく克己にまどか達のことを謝らせる。
私の強さがそのまままどか達の評価にも繋がるのなら、やってやろうではないか。彼女たちの力は、私の力で証明するとも。
根拠はないが、どこかから溢れ出る力が、それをできると確信させてくれる。
今ならばどんな敵でも打ち倒せると、そう錯覚させてくれるほどに。
――そんな思いを胸に、さやかは床を思い切り蹴って駆け出した。
◆
大道克己は自分の思惑通り事が進んでいると確信して、不敵に笑った。
今自分の前に立っている齢14の少女から発せられる威圧は、先ほどまでとは比べ物にならなかった。
隠そうともしていない殺意と敵意が克己の体を突き抜ける。
そういう類の物は戦場で浴び飽きていると思っていたが、なるほどこの年で考えれば、自分が今までに感じた威圧の中でも上位に入るだろう。
そんなことを考えていると、さやかがいつの間にか新しく作り出した剣を右手に構えて突貫してくる。
この特訓が始ってから幾度となく目にした光景のはずだったが、しかし今のさやかのスピードは先ほどの比ではなかった。
刹那の内に克己の眼前にまで迫った彼女は、一気にその剣を振り下ろす。
威力も、剣を振ることに対しての迷いのなさも先ほどとは比べ物にならない。
自分もさっきまでのような余裕は持ち続けられないかも知れないな、と心の中でぼやく。
先ほどまでの人を見透かしたような笑顔をやめ、克己はさやかの剣の軌道を正確に読み取ってかわす。
それにしても、とふと思う。
さやかの成長ぶりは最早黙視できないレベルになっていた。最初はガキのチャンバラ遊びのようだったが、今は実戦でも通用するようなキレが少しながら出てきたように思える。
元々剣の才能があったのだろうか、そういえば彼女が魔法少女になった際の願いと剣は全くもって関係ないことに気づく。
もしかしたらさやかの話に出ていたキュゥべえとやらが契約した少女それぞれが使いやすい武器を選んでデフォルトでプレゼントしているのかもしれない。
なればこの短期間でのさやかの伸びも納得ができるというものだ……、そんなことを考えつつも克己はさやかに反撃を加えようとして――。
――それを察知したさやかが一気に後ろに飛んだことでそれをやめる。
成程先ほどの教訓を生かし、持ち前の素早さで反撃を喰らう前に逃げるという近接武器を使う際には当然ともいえる戦術を取り始めたということか。
だが、逃げていてばかりでは何も始まりはしない。あんな読みやすい剣の軌道では幾らスピードが乗っていても避けることなど容易い。
そう考え再び余裕の笑みを取り戻しかけた克己に、さやかは自前の白いマントに身を屈めて隠れるという行動で応える。
一見すれば意味が無い行動だ。エターナルローブのように攻撃を無力化する能力など、ないだろうに。
だが、その疑問はすぐさま消える。マントの中から立ち上がったさやかの周りに魔法の剣が数本突き刺さっていたため。
マントの中で瞬時に形成したその剣をさやかはあろうことか投げつけてくる。それも一本や二本どころではなく、一気に五から六程の数を一斉に克己に向かって。
「ハッ!下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとでも思ったか?狙いが甘すぎるぜさやか、こんなもんじゃ百発飛んでこようが余裕で避けれらぁ!」
魔法さえあればいくらでも作れる剣を利用した戦法には驚いたが、しかしその程度。
確かにスピードも乗っていて、そこまで大きく外れていた物もなかったが、しかしこれしきで俺がやられると思ったら大間違いだ。
そんな言葉を胸中で吐きながら迫りくる剣の雨をよけ切り、先ほどまでさやかがいたところを見上げた克己の眼には、しかしさやかは映っていなかった。
驚きと共に辺りを見回すも、彼女を見つけることは叶わない。またも不思議な魔法を使っているのか?
そう考え改めて周りを見回しても右にはいない、左にもいない。背後からも気配はしない、ではいったいどこにいるのだろう?
「――!まさかっ……!」
「はあああぁぁぁ!!」
まさかと思い頭上を見上げた克己の眼に映るのは、雄たけびを上げ、すでに眼前にまで迫っているさやかだった。
チッと舌打ち一つ鳴らして、克己が後ろに下がると同時、相当の威力を持っていたのだろうその剣の一撃が床を砕いた。
もちろん下の階にまで貫通してはいないものの、それでもかなりの破壊力があったのは誰の目にも明らかだ。
もしかしたら自分はとんでもない物を目覚めさせてしまったのかもしれない。何処か背筋にぞくりとする物を感じながら、克己は一旦距離を置くために後ろに一歩ステップを踏んでその後に来る攻撃に対して回避を試みる。
だがそれはお見通しとでもいうのだろうか、さやか自身が発生させた土煙りの中から、彼女は勢いよく飛び出してくた。
またもや舌打ちをしながら克己はもう一歩大きくバックステップをする。逃がすまじと言わんばかりにさやかが勢いよく剣を振り下ろすが――。
――しかしその剣は、克己の目前を掠る程度で終わった。
なるほど今の攻撃にも力はこもっていたが、外してしまったら何の意味もありはしない。それ故に克己は一瞬油断し気を緩めてしまった。
――それこそがさやかの狙いだとも知らずに。
気がつけば、自分の胸にさやかのサーベルが突き刺さって、自分の体も大きく後ろに吹っ飛ばされていた。
突然の出来事に驚きを隠せない克己は、しかしそれでも懸命に今の一瞬で何があったのか把握しようと頭を回転させる。
そして、すぐに理解した。何故自分がかわしたはずのさやかの攻撃を喰らい、大きく吹っ飛んでいるのか。
――話はさやかのサーベルをかわしきったと思った克己が、一瞬気を緩めてしまったところまで戻る。
あの瞬間、確かにさやかの攻撃は克己には届いていなかった。だが、さやかには今の様な隙をもう一度作るのは難しいと判断できた。
詰まる所これが最後のチャンスだと、そう考えたのだ。故に今克己が気を攻撃をかわし気を抜いているであろうこの瞬間を手放すわけにはいかないと、考えるではなく理解した。
何が何でも、すがりついてでも、喰らいついてでも攻撃を続けなければならない。その一心でさやかがとった行動は――。
手に持ったサーベルの、投合。それだけだった。振り下ろす途中のサーベルには遠心力が乗っている。
なれば自分はそれを利用してこの剣を手から離せば、後はサーベルが自動的にターゲットに命中してくれると、そう考えてのだ。
結果彼女の狙いは実にうまくいき、克己にダメージを与え、更には先ほど以上の隙を作らせることにも成功した。
ならば、今度こそ決めてやる。克己がまだ事態を把握できていないうちに一気に叩く!その思いでさやかは三度右手に魔法の剣を具現化させ――。
――(これで終わりだ!)
今度こそかわせない間合いと絶妙なタイミングでその剣を振り下ろした。
手加減など一切ない。これで死んでしまったとしても──もう死んでいるが──その時は運が悪かったとしか言いようがない。
こいつ自身がまどかやマミさんを馬鹿にしたうえ、最初にこいつは言ったはずだ。全力で来いと。
なればその全力に余裕ぶって戦って死んだとしても結局は自業自得だ。怨むなら自分の無駄な余裕ぶった態度を改めてもらう他ない。
そして克己の体を一刀両断するつもりで放たれたその一撃は──、しかし克己の持つさやか自身の剣に止められていた。
◆
間違いなく渾身の力を込めたその一撃を、克己はさやかの剣で以って受け止めた。
何故だ。近くに剣は落ちていなかったはずだが。そう思考するさやかだが、しかしすぐに答えを見つけた。
克己の胸に刺さっていたはずのサーベルが、そこに開いた大きな穴と引き換えに無くなっていたため。
詰まる所、あの一瞬で攻撃が来る方向を読み取り、胸から剣を引き抜いてさやかの剣を受けとめ新たに傷がつくのを抑えたということだ。
渾身の攻撃は受け止められてしまったが、ならばまだ胸の痛みが引けない今の内に一気に攻めきるのみ。
その思いで一度剣を引き抜いたさやかがもう一度それを構えた時──。
不意に、克己が手に持った剣を地面に落した。
――それは確かに明らかな隙。だがさやかはその隙を攻める前に、驚愕で動きを止めてしまった。
しかしすぐにハッとする。もしもこれが今の自分にできる隙まで計算した行動だったならば、次の瞬間には攻撃を喰らってしまう。
それを警戒したさやかはヒュンと後ろにジャンプするも――。
――しかしそれを見た克己は敵意すら見せることなく背を見せる。
「なっ、あんた一体何のつもりなのよ!」
「何のつもりって、もうこの場で俺が教えられることはないと思っただけだ。お前だってずっとここで愚図愚図してたくはないだろ」
「え?そりゃ、そうだけど」
「なら、ここに居続けるのは無駄が多すぎる。十分後にここを出る。それまで少し休んでおけ」
「え、うん……じゃなくて、あんた他に言うことが――!」
あまりにも温度差がありすぎる克己の対応にさやかは怒りを隠せない。
こいつはマミさんやまどかを馬鹿にしたのだ。それをすっとぼけようというのか、そんなの私が許さない――!
再び剣を強く握り克己に切り掛ろうとしたその瞬間、しかしそれは中断させられることとなる。
「――あぁ、それとお前の友達のこと、悪く言って済まなかった。幾らお前の実力が見たかったからってやり方が汚すぎた。謝る」
そうして人には絶対に謝らないタイプだと思っていた克己が、本当に悲しげな声で謝ってくる。
克己らしくないとすら言えるその行為にさやかは怒ることも出来なくなり、ただ戸惑うのみしか出来なくなってしまう。
「言いたいことはそれだけか?なら下で待ってるからな、十分後には下に来い」
そして克己はそれだけ伝えて再び歩き出す。外の世界に向かって。
それを見たさやかもこれ以上克己に謝らせようとしても無駄だと判断し、変身を解いた。
修行が始まる前より自身のメダルが明らかに減っているのを感じるが、まだ十分に戦えると判断し、そのまま床に寝転がった。
そして目を閉じて思い切り体を休めようかと考え、しかしふとあることに気づいてデイパックを開く。
先ほどは大まかなことしか把握できなかったから、余裕がある今のうちにもしもの時に備えてマニュアルだけでも読んでおこうと思ったのだ。
詰まる所克己が痛覚遮断と同程度の切り札として設定したさやかの最期の支給品のマニュアルを。
彼女がマニュアルを探している途中でデイパックから〝ソレ″が零れ落ちる。それに気づいたさやかはそれを受け止めた。
さやか自身の切り札になりえるかもしれないとまで克己が称賛した"ソレ"は、さやかの手の内で怪しく銀に輝いた。
◆
時間はさやかと克己がお互いの支給品を確認していた時にまで溯る。
「俺の支給品は今のジャケットで最後みたいだな、お前のとこにはほかに何か入ってたか?」
「うん、ちょっと待ってね……」
そうしてさやかはデイパックに手を突っ込み、がさごそと基本支給品ごと中身をかき回していたが、やがて目当ての物を探し当てたのか笑顔になり、ジャーンと口に出しながら〝ソレ″を取り出した。
だがそれは、外見のみで判断するならあまりにも地味な銀色のベルトだった。
「なんだそりゃ。腰に巻いてオシャレでもしろってか?」
「私もまだ説明書見てないからよくわかんないんだよねぇ、えっとどれどれー?」
そう言いながら再度デイパックに手を突っ込み今度はあっさりと恐らくは付属だったのであろう説明書を取り出す。
さて目を通そうとさやかが両手でそれを持った時、上からひょいと克己がそれを引っ手繰った。
「ちょっとあんた、人のものを無言で盗るんじゃない!」
「お袋みたいなこというな。にしても・・・・・フン、良かったなさやか。この説明書の厚さならただ腰に巻いてオシャレしてくださいなんてこと以外にも何か書いてあるかもしれないぜ?」
さやかの文句は軽く無視して、克己はそんな冗談を言いながら説明書に目を通していく。
それを見ていたさやかも、騒ぐことをやめて克己の言葉を待つ。
やがて詰まらなさそうに説明書を眺めていた克己の目がいきなり驚愕に染まる。それを見たさやかも何かいいことが書いてあったのかと期待せざるを得ない。
「どうだった?使い道ありそう?」
先ほどとは打って変わって真剣な顔で説明書を読み進める克己は、これを読めと言い、あるページを開きながらそれを手渡してくる。
そこには大きな文字で"概要"と書かれており、恐らくはそのベルトについての説明が書かれていることは誰の目にも明らかだった。
細かい字で長々と書いてあるその内容にさやかは目を細めあからさまに嫌そうな顔をするも、克己の真剣な様子に押されて嫌々読み進めだした。
「えーと、何々~、このベルトは『カブトの世界』に存在する秘密組織ZECTが開発した『マスクドライダーシステム』の一種、仮面ライダーガタックに変身するのに必要なベルトです……?」
そこから先には変身後に出来るクロックアップシステムなる物の説明などが長々と書かれていたが、さやかには難しくてよくわからない。
マスクドライダーシステムとは何なのか、ZECTという組織は何が目的の物なのか、そもそも『カブトの世界』という括りには一体何の意味があるのだろうか。
自分の中に次々と湧き上がってくる疑問に悶々としながらさやかは頭を抱える。結局のところ克己は何が大事だと思ってあんな真剣な顔をしていたのだろう。
沸き上がる疑問に頭を抱えつづけるさやかを見兼ねたのか、ハァと克己がため息をつく。
「お前、本当にこれの何が重要なのか分からないのか?」
「う、うるっさいわねぇ。ちょっと黙ってなさいよ!」
少し強がってみたが、しかしさやかには何が大切な情報なのかなど見当もつかない。
それを見透かしているのか、克己は先ほどよりも強い溜息をついた。
「
アポロガイストが俺の変身したエターナルを見たとき、何て言ったか思い出してみろ」
「え?うーんと確か……」
――「貴様っ……! 仮面ライダーだったのかっ!!」
それを思い出して、ハッとする。
あいつは確かに言った。仮面ライダーと。
ようやく勘付いたらしいさやかの様子を見て、克己はまたあのニヒルな笑いを浮かべて話しだす。
「そういうことだ。エターナルが本当に仮面ライダーとやらかどうかは俺には分からんが、そのベルトを使えば、その仮面ライダーとやらになれるらしい」
「ってことはつまり……!」
「あぁ、奴は仮面ライダーを恐れてるようにも見えた。てことは仮面ライダーになればアポロガイストにも匹敵する力を得れるかもしれないってことだ」
アポロガイストに匹敵する力。
それは確かにさやかが熱望するものの一つでもある。
ベルトへの関心が一気に引き上げられるのと同時に、さやかの中に新たな疑問が浮かんだ。
「あれ?でもこれどうやって変身するの?なんかを入れるっぽい場所はあるけど、特に他の物は入って無かったよ?」
「あぁ、それに関する事も書いてあった。そのベルトを使って変身するには対応するゼクターとやらが必要不可欠らしい」
ゼクター?とさやかがパクパクと口を動かすと、克己はニヤリと笑う。
「ゼクターとやらはそのベルトを持っている参加者を資格者かどうかを自分で認めて、そいつが資格者たる人物だと判断したら必要に応じて力を貸すらしい」
「それじゃもしかしたら変身できないってこともあるんじゃ……?」
「いや、恐らくはユニコーンと一緒だ。お前のことを資格者だと見初めて、主催者がわざわざお前に渡したんだろ」
つくづく悪趣味だと思う。
個人にしか使えない道具を渡して、わざわざ対主催を掲げる者に力を与える主催者には虫唾が走る思いだが、しかしそれならばこの力を自分に渡したことを後悔させてやる。
そうしてさやかが再び主催者への怒りを再燃させていると、すくと克己が立ち上がり――。
「よし、俺がお前を鍛えてやる」
そう言って、特訓のコーチを申し出たのだった。
◆
数十分前のことをぼんやりと思い出しながら、さやかは銀のベルト――説明書によればライダーベルトというらしい――及びそれを使って変身できる仮面ライダーに関しての情報をある程度把握する。
中に書いてあったことは難しいこともあったが、これが悪を打ち砕く自分の力になるのだと思うと、多少の努力など苦でもなかった。
そうしてふと時計を見ると、ちょうど十分が経つ所だった。さやかは慌てて周りに置いてあったベルトやその説明書をデイパックに詰め込み、いつの間にか高く上がっている太陽に向かって歩き出した。
◆
外に出たさやかはすぐに風都タワーの前の、来た時には気にも留めなかった謎の自販機の前で屈みこみ、大量に何かを買い込んでいる様子の克己を発見する。
「あんた、一体何やってんの?まさか水分補給のために呑気にミネラルウォーターでも買ってたんじゃないでしょうね」
「ふん、それでも悪くなかったんだが、残念ながら外れだ。いつか役立つだろうと思って便利グッズを買っておいた」
そう言いながら自販機から吐き出された缶ジュースの様なものを取り出す。
赤く彩られた外見はあまり中身を飲みたいと思わせはしない。訝しげにそれを見つめるさやかを克己はさほど気にせず、新たに自販機に硬貨を投入する。
次はこれだな、などとぼやきながら克己は別の色の缶ジュース(?)を購入する。それをただ突っ立って見届けるさやかだが、しかし彼女がみてから通算三本目になるそれを購入しようした克己の手に握られているものを見てびくりとする。
「ちょっとあんた、それセルメダルじゃないの!そんなもんでそれ買えるの!?」
「逆ださやか。これじゃなきゃ買えないんだよ、特訓中お前は変身してたが、俺は生身だったからな、これでメダル数に大差はないだろ」
そう言いながらまたも缶ジュースを購入すると思われたその手は真ん中の黒い大きなボタンに触れていた。
「え、なんで?そこに触って何の意味があるのよ」
「黙って下がれ、怪我するかもしれないぞ」
さやかには克己の言っている言葉の意味が半分も理解できないが、しかし従っておいたほうがいいのだろうと判断し、数歩後ろに下がる。
すると、あっという間に目の前の自販機は変形を始め、一瞬のうちにバイクになってしまった。
「す、凄い……!」
「さて、これで移動手段は手に入れた」
そう言いながら克己はバイクに跨り、ヘルメットを渡してくる。
一瞬どういうことなのか図りかねたさやかが疑問の眼差しを向けると克己は鼻でフンと笑った。
「後ろに乗れって言ってんだよ。早くしないと置いてくぞ」
言われて少しだけさやかは照れるも、克己からはそんな思いを毛ほども感じない。
それに少しだけがっかりしてしまったさやかは、克己に少しだけそういうものを期待していた自分が馬鹿だったと思いなおし、そのままヘルメットを被って克己の後ろに乗り込む。
それを見届けた克己も、しっかりとヘルメットを被りエンジンをかけた。
「さぁ、行くぞさやか。次の行先は警視庁だ」
呟くようにぼそっと言った克己は次の瞬間、アクセルを踏み込んだ。
◆
(マミさん……あなたは本当にあの
巴マミさんなんですか?)
バイクによる風と揺れを感じながらさやかは物思いにふける。
それは自分がこの非日常に連れ込まれる原因になったとも言える憧れの先輩のことだった。
巴マミは理想の先輩だった。学生としても、魔法少女としても。
勉学は軒並み平均点以上を取り続けていたし、彼女の戦いは舞いでも踊っているようで、自分が命の危険に晒されていることすら忘れるほど華麗で優雅で、そしてなにより力強かった。
だからマミさんが魔女なんかにやられるわけない。そう何かテレビの中のヒーローでも見る感覚で、自分とまどかは彼女の負担を増やしているなどと思いもせずに、彼女についていったのだ。
――それが結果的にグロテスクな彼女の死をトラウマとして植えつけられることになるとは、あの頃の自分は思わなかったのだから。
自分達が付いていかなければ、彼女は死ななかったのかもしれない。
彼女が死んでから、何度そんな意味のない考えを巡らせたのか分からない。
死んでしまった人は永遠に戻ってはこないのだ。ましてやマミさんは結界の中で死んでしまったから、死体も残っていないし、葬式も執り行われてはいない。
あまりにも大きすぎる自分達の責任は無くせるとは思わないが、しかしそれでも少なくとも彼女の守ろうとした街を魔女や使い魔から守るために、自分は魔法少女になったのだ。
だから彼女の死は自分にとって忘れられない物として今も胸にしまっている。例えどんな残酷な死に方でも、自分だけは彼女の最期を覚えていたいから。
――なのに彼女は、この場における参加者として、名を連ねている。
一体どういうことなのだろうか。
もしかしたらあの時マミさんは死んでいなかったのだろうか?
いや、これはない。ソウルジェムという本体ごと魔女に喰われ、あまつさえその後魔女が爆散したその中から生存することなど、百パーセントあり得ないからだ。
では、同姓同名の赤の他人か?
これも一瞬考えたが、ないだろう。自分やまどかを惑わせる材料にはなるかもしれないが、そうそう同姓同名の人間がいるとは思えない。
ではどういうことなのか。さやかが考えた仮説はこうだ。
――マミさんはあの場で死んでいて、主催者がそれを蘇らせたのではないか……?
これが一番ピンとくる。
もしくは死ぬ前から連れてきたというのもあるかもしれない。
どちらにせよ死者への冒涜だ。主催者に対するさやかの怒りは膨れ上がるばかりだが、しかしマミさんがいるのなら、これより心強い味方はいない。
彼女は間違いなく殺し合いを潰すほうに動くだろう。今の、魔法少女となった自分と彼女が力を合わせれば、きっとどんな困難でも越えて行ける。
だが同時に懸念もある。彼女はキュゥべえを家族同然に思っていた。そのキュゥべえが自分を騙していたと知った時、どんな行動に出るかはさやかも予想できない。
(でも、マミさんはマミさんだ。頼りになるのは間違いない!)
憧れの先輩を、今度こそ死なせはしない。共に戦って今度こそ一緒に元の世界で楽しく暮らす。
その決意を固めた時、さやかの中に二人の親友の姿が浮かぶ。
(まどか、仁美。死なないでね……、あんたたちとは、まだまだ友達でいてもらうんだから)
その二人は自分やマミのように特別な力を何一つ持たない。
故にこんな場所では狩られる側でしかない。せめて誰か対主催を掲げる人に保護してもらえればいいが――。
仁美は護身術を習っていると言っていたが、そんなものがアポロガイストなどに通用するはずもない。
まどかは、それすら持っていない。だが仁美にも、さやかにも無かったある種の絶対的な切り札が存在する。
――それはつまり、彼女の魔法少女としての素質。
だが、それはさせてはならない。
魔法少女となった自分がこんなに後悔しているのだ。だが彼女はこんな場ではすぐに他人を守るために簡単に契約を交わすだろう。あの悪魔と。
(駄目だよ、まどか。あんたは人間でいて……。ちゃんと考えずに馬鹿みたいな理由付けて軽々しく契約したら後悔するのは私が一番知ってるから)
自分の願いが馬鹿馬鹿しいとは思わないが、しかしもっと慎重になってもよかったのではないかという思いは多少ある。
叶った願い自体には後悔していない自分でさえこんな思いを抱くのだから、誰よりもやさしいまどかは他人のために祈ったらもっと様々なことを考えてしまうだろうと、そんな不安を抱いた。
そして次の瞬間に脳裏に過るのは、恐らくはこの場でも戦うことになるであろう二人の魔法少女の顔。
(
佐倉杏子、それに転校生、
暁美ほむら……あんた達はここでも、誰かを犠牲に自分だけ得しようとするんでしょうね)
それは先ほど参加者名簿を見た際に見つけた、自分の利しか考えない、さやかとは敵対関係にある者たちだった。
彼女らは恐らく殺し合いの打破などの前に、自分が生き残り得をすることを最優先に考えるだろう。
故にさやかは、状況によっては勝ち目がなくても戦わなければならないだろうと、決意を固めていた。
と、その時ふとあることが頭をよぎり、顔を上げる。
(こいつ、行先は警視庁だって言ってたよね……、でもあのタワーから一番近いのって園咲邸ってのじゃなかったっけ?)
◆
彼は風都タワーから一番近い建物が、園咲邸だと知っていた。だが彼には園咲邸に行きたくない理由があったのだ。
(
園咲冴子……、お前は俺の敵だ。〝園咲″である以上俺はお前を潰す)
それは自身が昔NEVERの研究結果として財団Ⅹに材的支援を要求しに行った時のこと。
あの時に自身が戦った小道具、ガイアメモリ。それを提供していたスポンサーが園咲琉兵衛という男だったのだ。
自身はあれ以来、打倒ガイアメモリ、及び打倒園咲家を目標にやってきた。
そして、母マリア・S・クランベリーの情報によれば園咲冴子は園咲家の長女であるらしかった。
母の情報が間違っていた試しはないから、恐らく正確だろう。ならばそれを潰すいい機会だ。
だが今はまだ早い。奴らの家でもある園咲邸を潰すのは元の世界に戻ってからだ。
ここにあるレプリカを潰しても何の意味もない。それに園咲冴子がそこを目指すとしても、まだ今のさやかでは園咲の者と戦うのは早いだろう。
故に今は園咲冴子は後回しだ。だがいつかは宿敵の娘を倒すことを胸に誓いながら、彼は別のことを考える。
(さやか、お前は気付いてないかもしれんが、あの時のあの一撃の時、俺は本気だったんだぜ?)
あの時というのは、さやかの意外な一撃に自身がひるみ、その一瞬を逃がすことなく攻撃してきたあの時のことである。
あの瞬間、自身の胸に刺さっていた剣を引き抜き、さやかの一撃を受け止めるまで、自分は間違いなく本気で対応していた。
結果として攻撃は与えられなかったとはいえ、まさかさやかに本気を出させられるとは思ってはいなかったのだ。
(さやか、お前はまだまだ伸びる。お前が本当の意味で一人で戦場に出られるその時を楽しみにしてるぞ)
そう心の中で克己はポツリと呟いた。
この先は安全地帯ではない。どんなことが起こっても不思議ではない。
だが、今のさやかならきっと大丈夫だ。挫けることもあるかもしれないが、しかしきっとそれを乗り越えていくだろう。
溢れ出るさやかへの期待を抑えもせず、克己はこれすらどこかで見ているのであろう主催に向かって言った。
(見てろよ真木清人。誰かの明日を奪うような行為をしたことは絶対にゆるさねぇ。いつかお前の首を掻っ切ってやる!)
◆
そんな二人を空から見守る青いクワガタが一匹。
その名をガタックゼクター。
現在さやかが持っているライダーベルトに対応する自律行動型ユニットだ。
先のアポロガイスト戦の際にデイパックから抜け出し、それ以来さやかを上空から見守り続けている。
彼はさやかの頑張る姿に自分が元の世界で資格者に選んでいたアラタという男にも似た物を感じていた。
だがそれだけではまだガタックゼクターがさやかを認めたかどうかは誰にも分からない。
ただ彼はさやかの更なる活躍に期待して、ライドベンダーを追って飛び続けていた。
――希望を持った二人の男女と、資格者を求める一匹の虫。
――彼ら彼女らが向かう先に何が待っているのかは誰にもわからない。
――その先に待つのは、希望か、絶望か。
【一日目-午後】
【G-5/道路】
【大道克己@仮面ライダーW】
【所属】無
【状態】健康 、ライドベンダーを運転中。
【首輪】50枚:0枚
【コア】ワニ
【装備】T2エターナルメモリ+ロストドライバー+T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW、
【道具】基本支給品、NEVERのレザージャケット×?-3@仮面ライダーW 、カンドロイド数種@仮面ライダーオーズ
【思考・状況】
基本:主催を打倒し、出来る限り多くの参加者を解放する。
1.さやかが欲しい。その為にも心身ともに鍛えてやる。
2.T2を任せられる程にさやかが心身共に強くなったなら、ユニコーンのメモリを返してやる。
3.機会があれば、T2ユニコーンメモリでのマキシマムドライブを試してみたい。
4.T2ガイアメモリは不用意に人の手に渡す訳にはいかない。
5.園咲冴子はいつか潰す。
【備考】
※参戦時期はRETURNS中、ユートピアドーパント撃破直後です。
※回復には酵素の代わりにメダルを消費します。
※仮面ライダーという名をライダーベルト(ガタック)の説明書から知りました。 ただしエターナルが仮面ライダーかどうかは分かっていません。
※魔法少女に関する知識を得ました。
※NEVERのレザージャケットがあと何着あるのかは不明です(現在は三着消費)。
※さやかの事を気に掛けています。
※加頭 順の名前を知りません。ただ姿を見たり、声を聞けば分かります。
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】青
【状態】疲労【中】、ライドベンダーに乗っている。
【首輪】40枚:0枚
【コア】シャチ
【装備】ソウルジェム(さやか)@魔法少女まどか☆マギカ、NEVERのレザージャケット@仮面ライダーW
【道具】基本支給品、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:正義の魔法少女として悪を倒す。
0.克己を乗り越えてより強くなる。
1.克己と協力して悪を倒してゆく。
2.勝つ為なら自分の身体はどうなっても構わない。
3.T2ガイアメモリは不用意に人の手に渡してはならない。
4.仮面ライダーっていったい何なの?
5.マミさんと共に戦いたい。まどかや仁美は遭遇次第保護。
6.暁美ほむらや佐倉杏子とは戦わなければならない。
【備考】
※参戦時期はキュゥべえから魔法少女のからくりを聞いた直後です。
※ソウルジェムがこの場で濁るのか、また濁っている際はどの程度濁っているのかは不明です。
※回復にはソウルジェムの穢れの代わりにメダルを消費します。
※NEVERに関する知識を得ました。
※さやかの最後の支給品は、ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーディケイドでした。
※ガタックゼクターがさやかを認めているかどうか不明です。
※ガタックの性能を大体把握しました。
最終更新:2015年03月20日 23:45