シン・レッド・ライン/欲望と想いと世界の破壊者(後編) ◆2kaleidoSM
◇
『フェイリスちゃん、大丈夫?』
「だ、大丈夫ニャン、ちょっと疲れたけど、まだまだ元気ニャン!」
周囲に散らばったメダルを回収するラウラを士の後ろで、戦いで疲労した体を休息させるフェイリスにウラタロスが声をかける。
『で、どうだったよ猫女。これからも戦えそうか?』
「ニャ…、正直あの電気の中に突っ込んだときは怖かったニャ…。だけど士ニャンとラウにゃんが戦っててみてるだけってのも嫌だったニャ…」
『そうかよ。まあ俺等も無理にとは言わねえ。戦えねえからってそこまで背負い込むこともねえよ。
お前のやりたいようにやれ』
一方、メダルを集めた士とラウラは、それら全てをフェイリスを含めて分配した。
士のメダルは、あの戦いの中で完全に枯渇してしまったが、ここに集めたメダルはそれを差し引いてなお数十倍のお釣りがくるほどの量だった。
「コアメダルが9枚に、セルメダルが……考えるのも面倒だなこりゃ。
フェイリス、お前はこのコアメダル、欲しいか?」
「ニャ、フェイリスが持ってても仕方ニャイし、ラウにゃんが持ってるべきニャ!」
「そうか。まあ別に俺もコアメダルは必要ないしな。その代わりセルメダルを多めに寄越せ」
「コアメダルがこっちに貰えるなら別に構わん、好きなだけ持っていけ」
そうして、ラウラは緑色のメダル5枚とそれ以外の5枚のメダルをその体に収めた。
セルメダルは士に500枚、残りを240枚ずつフェイリスとラウラに分配された。
「緑のメダルはこれで5枚か。これで名実共にお前が緑陣営のリーダーだな。問題があるとすれば、陣営自体が1からのスタートとなるわけだが」
「構わない。また私の力で仲間を探すまでだ。お前もどうだ?」
「今はいい。
お前のやり方は見守らせてもらうが、他の方法も考えたい。
他のやつと被ったやり方なんて俺らしくもないしな。だからこっちのやり方はお前に任せた。
それともう一つ、今のうちに聞いておきたいことがあった。
リーダーが勝利するには、新しいリーダーが決まるまでの間に他のグリードを全滅させる必要がある。
ここまではいいな?」
「ああ、分かっている」
そう、リーダーがただ一人の状態で、他のリーダーを全滅させれば、それでこの殺し合いは終わる。
それがこのゲームの
ルールだ。
「そして、それを踏まえた上で一つ聞きたい。
分かっているとは思うが、既にグリードは二体、放送で名前を呼ばれている。
つまり、もう既に新しいリーダーが誕生していて、そいつはグリードではない、人間である可能性もある」
「………」
放送を過ぎた今、退場したグリードに代わり新しいリーダーが生まれているのだ。
それが、
アポロガイストのようなやつならばまだいいが、もし人間であったなら、ラウラは人を殺すという選択を取ることになるのだ。
もしそれが、グリードに反抗し殺し合いを打破しようとする者であったなら。
「ラウラ、そいつをお前は、殺すことができるのか?」
「…………覚悟はある」
その言葉の奥に、僅かながら迷いがあったようにも思えたのはきっと気のせいではないだろう。
しかし、それでもその決断を下したときの言葉は、はっきりとしていた。
そのラウラの決意に、何故か自分の役割を連想していた。
「いいだろう。しばらくは付き合ってやるさ。
と言いたいが、お前はいいのか?」
「何がだ?」
「俺は
ウヴァのやつが言っていたように破壊者だ。
きっと仲間になり得るようなやつらも敵に回して、俺の役割を、仮面ライダーの破壊をしなけりゃいけない。
そんなやつと一緒にいれば、無用な敵を増やすことになるかもしれないぞ」
現に、
鹿目まどかや黄色い魔法少女達、
桜井智樹といった者からは警戒されている。
仲間とするための不都合となりはしないか。それが若干気にもなった。
「生憎だが、私は仮面ライダーとやらのことをよく知らん。それより今共にウヴァを倒したお前のことを信用したい。
それにもしお前が間違っていると感じるようなことがあれば、私が止めてやる。
それでは不満か?」
「いや、合格だ」
と、ウヴァのいた場所に転がっていたバースドライバーを拾い上げる士。
少なくともバースとかいうライダーは破壊したといえるはず。火花を上げるこのベルトは少なくともこのまま変身が叶う状態ではないだろう。修理すればどうなるかは分からないが、別に興味もない。
ただ一つ気になったのは、バースを倒してもライダーカードが出現しなかったこと。
そういえばこのライダーは士の知識にあるライダーのどれとも異なっていた。何か関わっているのだろうか。
それとも、グリードが変身していたことが関係しているのか。
どれも推測の域は出ないが、その辺りは追々調べていけばいいだろう。
その不具合が分かっただけで収穫かもしれない。
「それと、これは私の勝手な願いだが……。
織斑千冬という人がいる。その人はできれば私の陣営に加えたいんだ。
あの人も、私にとっては大事な人だからな」
「なるほどな、じゃあさし当たってはその千冬とかいうやつを探すんだな」
「ああ、千冬さんは、一夏の姉だから…な」
と、その名を出したと同時、ラウラの表情に影が見えた。
その名前は、ウヴァが言っていたラウラの好きだったという男の名前。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ、大丈夫。こんなところで立ち止まることなど、きっとシャルロットも一夏も望まないはずだからな」
「………5分だけだ」
「は?」
「5分だけ待ってやる。その間に、自分の中の気持ちにちゃんと整理をつけろ」
と、フェイリスの腕を掴んで外に出ようとする士。
「ニャ?!士ニャンどういうことニャ?!」
「察しろ」
「それだけじゃ分からないニャ!」
『あー、フェイリスちゃん、今はあのラウラちゃん、一人にしてあげよう。ね?』
「ウラにゃん…?分かったニャ」
そうして一人になったラウラ。
いざ一人になると、様々なことが頭の中をよぎってくる。
織斑教官は、鈴は、果たして一夏の死に取り乱してはいないだろうか。
セシリアは、人を殺してはいないだろうか。
と、そこまで考えたところで、もう一夏はどこにもいないのだ、という事実が心に圧し掛かってきた。
もしかしたら、ウヴァの言うように一夏を生き返らせることもできたのかもしれない。
だけど、やつを倒した以上、もうその道は閉ざされた。
それは、一夏との完全な決別。
「…一夏」
もう、それは心に受け入れたはずだった。
あの放送を受けたとき、フェイリスを殺す可能性を、ほんの一瞬浮かばせ、しかしそれを完全に消し去らせたあの時から。
でも。
「一夏…、……一夏ぁ…」
一人になり、そして己のやるべきことを完全に定めた今は。
その瞳からあふれ出る涙は止まらず。
片目を覆った眼帯すらも、その涙を押し止めることはできなかった。
【一日目-夜】
【E-4/市街地】
【
門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】苛立ち、疲労(大)、ダメージ(大)
【首輪】250枚:0枚(300枚)
【コア】サイ、ゾウ
【装備】ライドベンダー@仮面ライダーOOO、ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品一式×5、キバーラ@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品1~8(士+ユウスケ+ウヴァ+
ノブナガ+ノブヒコ)、バースドライバー@仮面ライダーOOO、バースバスター@仮面ライダーOOO
サタンサーベル@仮面ライダーディケイド、メダジャリバー@仮面ライダーOOO、 ゴルフクラブ@仮面ライダーOOO、首輪(
月影ノブヒコ)
【思考・状況】
基本:「世界の破壊者」としての使命を果たす。
0.ラウラとフェイリスと同行する。
1.全てのコアメダルを奪い取り、全てのグリードを破壊してルール上ゲームを破壊する。
2.「仮面ライダー」とグリード含む殺し合いに乗った参加者は全て破壊し、それ以外は配下にしてやる。
3.ディエンドとは戦う理由がないので場合によっては共闘も考える。
4.ラウラにそこそこ関心。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ~キバまでの世界で手に入れたカード、ディケイド関連のカードだけです。
※アクセルを仮面ライダーだと思っています。
※ファイヤーエンブレムとルナティックは仮面ライダーではない、シンケンジャーのようなライダーのいない世界を守る戦士と思っています。
※アポロガイストは再生怪人だと思っています。
※少なくとも電王は破壊する意味なしと判断しました。
※仮面ライダーバースは”破壊”しました。バースドライバーが作動するかどうかは不明です
※()内のメダル枚数はウヴァのATM内のメダルです。士が使うことができるかどうかは不明です
【
フェイリス・ニャンニャン@Steins;Gate】
【所属】無
【状態】疲労(大)、深い哀しみ、ゲームを打破するという決意、戦いに対する不安、イマジンズへの信頼
【首輪】250枚:0枚
【装備】IS学園女子制服@インフィニット・ストラトス
【道具】IS学園男子制服@インフィニット・ストラトス、
デンオウベルト&ライダーパス+ケータロス@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:仲間と共にコアメダルを全て集めて脱出し、マユシィを助けるニャ。
0.今はまだ、誰かと戦う覚悟はニャいけど……いつかはフェイリスも……?
1.ラウニャン、大丈夫かニャ…?
2.アルニャンとセシニャンを止めなくちゃいけニャい!
3.凶真達とも合流したいニャ!
4.変態(主にジェイク)には二度と会いたくないニャ……。
5.イマジンのみんなの優しさに感謝ニャ。
6.世界の破壊者ディケイドとは一度話をしてみたいニャ!
7.ラウニャンに人殺しはさせたくニャい。とくに友達を殺すニャんて……
【備考】
※電王の世界及び仮面ライダーディケイドの簡単な情報を得ました。
※モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークが憑依しています。
※イマジンがフェイリスの身体を使えるのは、電王に変身している間のみですが、
ジークのみは特別で、その気になれば生身のフェイリスの身体も使えるようです。
※タロスズはベルトに、ジークはケータロスに憑依していました。
※ジークがまだフェイリスを認めていないので、ウイングフォーム及び超クライマックスフォームにはなれません。通常のクライマックスフォームまでなら変身できます。
※イマジンたちは基本的に出しゃばって口出しする気はありません。フェイリスの成長を黙って見届けるつもりです。
【
ラウラ・ボーデヴィッヒ@インフィニット・ストラトス】
【所属】緑・リーダー代行
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、精神疲労(大)、深い哀しみ、力への渇望、セシリアへの強い怒り(ある程度落ち着いた)
【首輪】300枚:0枚
【コア】バッタ(10枚目)、クワガタ(感情)、カマキリ×2、バッタ×2、サソリ、ショッカー、ライオン、クジャク、カメ
【装備】シュヴァルツェア・レーゲン@インフィニット・ストラトス、ライドベンダー@仮面ライダーOOO
【道具】基本支給品、魔界の凝視虫(イビルフライデー)×二十匹@魔人探偵脳噛ネウロ、、ランダム支給品0~2(確認済)
【思考・状況】
基本:グリードに反抗する仲間とコアメダルを集めて優勝し、生還する。
0.一夏……
1.士、フェイリスと行動する。
2.セシリアを止める。無理なら殺すことにも躊躇いはない。
3.陣営リーダーとして優勝するため、もっと強い力が欲しい。
4.もっと強くなって、次こそは(戦う必要があれば、だが)
セイバーに勝つ。
5.一夏やシャルロットが望まないことは出来るだけしたくはない。
6.Xというやつは一夏を―――?
【備考】
※本当の勝利条件が、【全てのコアメダルを集める事】なのでは? と推測しました。
※"10枚目の"バッタメダルと肉体が融合しています。
時間経過と共にグリード化が進行していきますが、本人はまだそれに気付いていません。
※コアメダルを、その体に取り込みました――――――――――――
◇
(このままでは済まさん…!)
コアメダルだけとなったウヴァは、しかしそれでも意識を失ってはいなかった。
彼自身の生に対する執着心か、あるいは虫のしぶとさの表れか。
これで、これまでに増やしてきた戦力も、メダルも全てチャラになってしまった。
いくら自陣営が優勝するにしても、それが自分の優勝にならないのであれば意味がない。
しかし、こうなってはもはやどうしようもない。
そう、思っていた。
(ん…、あ、あれはまさか―――)
そうしてラウラの中を漂っていたウヴァは、ある事実に気付いた。
ラウラが取り込んだメダルの1枚、おそらく自分を倒す以前から取り込んでいたバッタメダル。
それが、ラウラの体内で肉体と融合しようとしている、という事実に。
(これは…、そうか、これならまだ俺にもチャンスはある―――!)
そう、もしもこのメダルがラウラの体に完全に馴染めば、彼女自身がグリードとなる。
そして、その力に溺れ、なおかつセルメダルが十分集まりさえすれば。
きっと、またグリードとしての肉体を取り戻せる。
復活さえできれば、今ラウラが持っている緑メダルの全ては俺の総取りだ。
こうなれば今の状況はそこそこ好都合だ。
少なくとも確認している限り唯一メダルを破壊できる手段を持つオーズと、ラウラと同行するディケイドは敵対している。
メダルに意志が残っていることに気付かれさえしなければ、破壊される可能性は低い。
(そうだ、俺はまだついている!こんなところでは終わらんぞ!
ハハハハハハハハ!)
もし、ラウラが力に、欲望に溺れることがあるとするなら、いつだろうか。
決まっている。
織斑一夏への想いだ。
ああは言っているが、今だにその恋が消えたわけではないことは、ウヴァには分かった。
そして、それを増幅させるものがあるとすれば。
一夏を殺した人間と―――Xと相対したときだろう。
(せいぜいあがいてみろ!その欲望の中でな!ハハハハハハハハ!!)
そうして、復活を望むウヴァは、誰に聞こえることもなくラウラの中で笑い続けた。
◇
「ラウラ・ボーデヴィッヒか。なるほどね」
それは、ウヴァが爆散した衝撃で飛ばされたもの。
参加者全員のパーソナルデータ。
その中の、ラウラのページを眺めながら、彼らの戦いを眺めていたインキュベーターは呟く。
「やっぱり感情というものは理解できないなぁ。どうしてこうも非効率的な道ばっかり選ぶんだろう?」
ともあれ、ウヴァはいなくなり、新しい観察対象を探した方がいいのだろうかと考える。
「ん?この項目…、『VTシステム』?なんだろう、これ」
彼女のIS、シュヴァルツェア・レーゲンの説明の中にあったその単語。
それが何を意味するのかを確かめるため更に読み込もうとしたインキュベーター。
しかし。
「あれ?もう移動するんだね。こうしちゃいられない。早く追いつかないと」
インキュベーターはそれっきり、そのデータ集を拾うことも未練を残すこともなく。
去っていくラウラ、士、フェイリスの後を追いかけた。
誰もいなくなったその場で。
ラウラのデータが記された一ページが、ただはためき続けた。
【ラウラ・ボーデヴィッヒの備考・追記】
※取り込んだコアメダルは、緑メダルは全て取り込みましたがそれ以外はいくら取り込んだかは不明です。
その中の一枚には、ウヴァの意識が残っています。
また、メダルを取り込んだことでグリード化が若干進行しました。
※シュヴァルツェア・レーゲンにVTシステムが取り付けられている可能性があります。
【ウヴァ@仮面ライダーOOO 自律行動不能】
※E-4に参加者全員のパーソナルデータが放置されています。
※キュウべえがE-4にいます。士達の観察を目下の行動方針とした様子です。
最終更新:2014年05月03日 21:03