破邪大星ダンガイオーの第1話

『これより、開始する── 開始──』

どこかの暗闇の部屋。
主人公の少女、ミア・アリスの前に、不気味なロボットが迫る。

ミア「きゃあっ! な、何これ!?」「ちょ、ちょっと待ってよ! 一体どうなってるの!? 誰か来てぇ!!」

1人の少年、ロール・クランが突進、全身に衝撃波を漲らせ、体当たりでロボットを倒す。

ロール「はぁ、はぁ……」
ミア「……あ、あの?」
ロール「あぁ、僕、ロール・クラン。よろしく」
ミア「私はミア。ミア・アリス。……はっ、駄目。それ以上、思い出せない。名前しか憶えてない」
ロール「君もか?」
音声『これから5分間で、この小惑星基地は爆発する』
ロール「えぇっ!?」
ミア「何、この声?」
音声『これはテストである。諸君は5分以内に格納庫に到達し、そこに置かれた『ダン・メカニック』に搭乗、速やかに脱出しなければ、基地の爆発に巻き込まれる。私はターサン博士、諸君の創造者である。繰り返す、これは諸君の技能テストである。幸運を祈る』

ミアとロールが、基地内の通路を駆ける。

ロール「とにかく、逃げるしかないみたい! ──なんだ?」

ロボットに囲まれた少女ランバ・ノムが、泣きべそをかきながら指からビームを放ち、次々にロボットを仕留めている。

ミア「あなたは?」
ランバ「ランバ…… ランバ・ノムよ」

ランバを加えて3人となった一同が、通路を走る。

ロール「これで3人か。他にも、僕たちみたいなのがいるのかな?」
ミア「そうね。その人たちも見つけて、脱出しなきゃ。──あれは?」
ロール「きっと、格納庫だ」

目の前の格納庫に、一際大柄なロボットが立ち塞がる。
背後から現れた少女、パイ・サンダーが、女性とは思えない怪力で、その首をねじ切る。

パイ「やぁ、諸君。私はパイ・サンダー。4人目ってわけさ」

そして格納庫。
ダン・メカニックなる4機の宇宙戦闘機がある。

ランバ「だれが、どれに乗るの?」
ロール「ぼ、僕、飛行機なんて操縦できないよ」
パイ「みんな記憶が無いんだろ? だったら操縦できるかどうかなんて、わからないじゃないか!」

数体のロボットが、一同を取り囲む。

ランバ「ああっ!?」
パイ「きったねぇ!」
ランバ「私、もうエネルギーがない!」
ロール「僕のパワーって、走らないと出ないみたいだ」
パイ「あんたの力は?」
ミア「えっ?」
パイ「あっちの2人は力を出し切っちゃったみたいだけど、あんたはまだなんだろ!?」
ミア「そんな、力なんて……」

床が激しく揺れ出す。

ロール「基地が爆発するんだ!」
ランバ「えぇっ!? 嫌だぁぁ!」
パイ「さぁ、早く!」
ミア「だって……」

ロボットたちがどんどん、4人に詰め寄って来る。

パイ「多すぎるんだよ!」

ロボットの砲門に、火が漲る。

ミア「ああっ!? 危ない!!」

次の瞬間、ミアの全身から激しい光が膨れ上がり、ロボットたちがまとめて吹き飛ばされる。
そして、ついに小惑星基地が大爆発。

もうもうと膨れ上がる爆炎の中から、1機の巨大ロボットが姿を現す──!


オープニングテーマを挟み、科学者・ターサン博士の擁する宇宙船ダル・ダルのもとに、ミアたち4人が集められる。
ターサンの副官のギル・バーグ。
部下の兵士、ヨルドとディラ。

ターサン「よくぞ、あのテストをクリアした! 見事じゃったぞ、我が子たちよ」
パイ「我が子ぉぉ!?」
ランバ「やっだぁ!」
ギル「無礼な!」
ターサン「まぁ、良い。お前たち4人は、全宇宙に2人といない天才、ターサン博士が生んだ最高傑作じゃ。最高のエスパー戦士として、わしが造り上げた」
ミア「──ということは、私たち、ロボットなんですか?」
ターサン「いやいや、そうではない」
ミア「じゃあ……?」
ターサン「まぁ、合成人間というか何というか…… ま、とにかく、わしが造ったもんじゃ」
ロール「僕たち、記憶がないんですが?」
ターサン「わしが造って、日も経っとらん! 言わば、お前らは赤子のようなものじゃ。記憶なんてあるものか。お前たちはな、4人1組としてあのダン・メカニックと共に、宇宙海賊バンカーに売られるのだ」
パイ「売るぅぅ!?」
ターサン「当たり前じゃ。お前たちは、わしが造った商品。バンカーは優秀な兵士を欲しがっている。──」

ミアは次第に、ターサン博士の言葉が耳に入らなくなる。

ミア (何だろう? 何か、頭の隅にこびり付いているような…… もう少しで、思い出せる……)

脳裏に移る映像。
青い惑星、都会、人々──

ミア (何!? 記憶が戻っている!? 『地球』? 私、地球という星に住んでいた……?)

ターサン「──聞いとるのか!?」
ミア「はっ!?」
ターサン「重ねて言う! お前たちは、わしの最高傑作じゃ。このブリッジにいる奴らもわしの造ったものだが、お前たちに比べればカスのようなものだよ、フフフ。バンカーで景気よく働けよ。お前たちは最高の兵器だからな」
ミア (兵器……)
ターサン「あと数刻で、バンカーの海賊船に着く。それまで部屋で休むが良い」


ミアは、船内に用意された自室で思案している。

ミア (ターサン博士は、私たちを『造った』と言った。造ったのなら、私たちが過去の記憶なんて、持ってるわけがない。だけど、私は憶えている…… 地球の、『日本』という国、私の街。これは、錯覚なの? それとも……)

ドアが開く。

ミア「誰!?」

ギル・バーグが現れ、いきなりミアの口を押え、壁に叩きつける。

ミア「な、何するの、あなた!?」
ギル「ギル・バーグ。ターサン博士の副官として、肉体改造を受けた者だ」
ミア「そ、それで?」
ギル「この目を見ろ」

右の眼球が変形し、小型ビーム銃となる。

ギル「俺はバンカーに入って戦いたい。宇宙海賊となって、宇宙を暴れ回りたい。そのために自分の体を、こうもした!」

レーザーがミアの頭ぎりぎりを掠め、背後の壁面に命中する。
さらにギルが右手の手袋をとり、鋼の義手がミアの首を絞め上げる。

ミア「うぅっ!」
ギル「ところが博士は、貴様らが出来た途端に有頂天で、貴様らをバンカーに売ると言っている。旧型の俺はもう売れない、って言ってな!」
ミア「う、うぅ…… そ、そんなにバンカーっていうところがいいのなら、替わってあげるわよ。私、海賊なんて嫌なんだから……」
ギル「ふざけるな!! 情けで譲ってもらうほど、落ちぶれてたまるか! 貴様、記憶が戻ったんだろう? 俺にはちょっとばかし、テレパシー能力があってな。さっきのお前の頭の中が読めたのさ」
ミア「嘘!?」
ギル「博士にな、『記憶が戻った』と言うんだ。そうすりゃお前らはもう一度、記憶処理を受ける。バンカーへの納期が遅れ、この俺にもチャンスが巡って来るというわけだ」
ミア「ちょっと待って! 記憶処理!? ということは──」
ギル「うるせぇな!! どうなんだ!? イエスか、ノーか!?」
ミア「わ、わかったわよ。確かに私、記憶があるわ。地球、太陽系の地球という星に住んでた記憶」
ギル「フフン、それを正直に博士に言うんだ」
ミア「い、嫌!」
ギル「なぜだ!? 海賊になるのは嫌なんだろうが!?」
ミア「兵器として売られるのは嫌。だけど、脅されて言いなりになるのは、もっと嫌!」
ギル「何ぃっ!!」

ミアの首を絞めるギルの手に、さらに力が入る。

ミア「うぅっ……!」
ギル「貴様ぁぁ!!」
ミア「うぅっ…… あ、あなたなんかに、負けないぃぃ!!」

小惑星基地での危機のときと同様、ミアの全身から、光が膨れ上がる。

ギル「ぐ!? ぐわああぁぁ──っっ!! こ、この力……!?」

凄まじい衝撃でギルが吹っ飛ばされ、壁面に叩きつけられて、記憶を失う。

ミア「私の力……!?」

そこへ、ロール、パイ、ランバの3人が現れる。

パイ「どうも私たち4人は、テレパシーって奴で繋がってるみたいだ」
ランバ「私たちにも見えたの。あなたが思い出した、地球という星」
パイ「とにかく、あんた1人といっても記憶がある。ということは、どうも私たちが人造人間っていうのは、怪しくなってきたな」


ターサン博士のいるブリッジに、警報が鳴り響く。

ターサン「何じゃ、何事じゃ!?」
部下「新兵の脱走です。ダン・メカニックと発進準備中!」
ターサン「バカモン!! 誰が発進しろと言った!?」

ミアたちからの通信。

ミア「ターサン博士、短い間ですけどお世話になりました。私たち、海賊になんて売られたくないんです。ここで失礼します」
ターサン「ふ、ふざけるなぁ! お前たちは、わしが造ってやったんだぞ!?」
ランバ「でも、それ嘘でしょ?」
ターサン「ぐ……」
ミア「それでは、ゴー!」

ミアたちの乗るダン・メカニック4機が、宇宙船ダル・ダルを飛び立つ。

ターサン「ヨルド、ディラ! 4次元レーダーで追跡しろ! そして、必ず連れ戻せ!」
ディラ「かしこまりました」
ヨルド「へへっ、戦いだぜ!」

遅れて、ギルもブリッジに現れる。

ターサン「ギル! 貴様、何をさぼっておった!?」
ギル「申しわけありません…… しかし、間もなくバンカーの戦域です。このままでは、ガリモス大船長に買って頂くものが……」
ターサン「わかっとるわい。……とにかくギル、お前が来い」


パイ「やった、やったぜ!」
ミア「取りあえず、追っ手を振り切らなくちゃ。行き先は、それから決めましょ」
ランバ「ミアの星に行ってみたいな」
ロール「僕、ターサン博士のところにいる方が、安全だと思うけど」
一同「……」
ロール「う! す、すいません……」


ディラ「どこまで逃げても無駄ですよ、馬鹿な皆さん」
ヨルド「よぉよぉ、さっさとやっつけに行こうぜ、ディラ」
ディラ「焦らないで。では、参りましょう」


宇宙海賊バンカーの旗艦を、ターサン博士とギル・バーグが訪れる。
バンカーの誇る幹部、四天王の1人である闘将メスティラが迎える。

ターサン「メスティラ様。あ、あの…… ガリモス大船長に、お目通りを」
メスティラ「ついて来るがいい」

傍らでは兵士たちが次々に首を刎ねられており、ターサンが震え上がる。
四天王の猛将ゴウティラ、賢将サンティラ、妖将ダァティラの笑い声が響く。

四天王「我がバンカーの前に敗れ去った者たちの処刑だ」「我々に逆らった者共はこうなるのだ」「貴様とて同様だぞ、ターサン」

ガリモス大船長が、肩に道化を侍らせた姿で現れる。

ガリモス「久しいな、ターサン」
ターサン「ははぁっ! 大船長にはご機嫌麗しく、拝謁を賜りまして光栄至極に存じますです」
道化「宇宙最強の兵士はどうした!? どこだどこだ!?」
四天王「それより、宇宙最強の兵器とやらはどうなったのだ!?」
ターサン「は、はぁ…… それが、まったくもって残念無念──」
四天王「よもや、我らをたばかったのではあるまいな」
ターサン「め、滅相もございません! 無敵のエスパー戦士とその機動兵器は、確かに完成いたしました! ところが完成した直後に、逃げられてしまいまして……」
道化「逃げたぁ!? 逃げた逃げたぁ!」
四天王「馬鹿者! ふざけおって!」
ガリモス「逃げただと!? つまり、我がバンカーを裏切ったと」
ターサン「だだ、大船長…… このターサン、いかような処分も覚悟の上です。でも、どうかどうか、命だけは、あの……」
ガリモス「責任を取ると言うのか?」
ターサン「そう、そうです! 必ず捕まえて、ここに献上いたしますです」
ガリモス「この愚か者めが! バンカーは裏切り者など買わぬ!」
ギル「恐れながら、大船長に申し上げます。私は裏切った4名と同様、ターサン博士に作られた人間兵器にございます。奴らの代りに、私をバンカーの一員に加えて頂きたく、参上いたしました」
四天王「人間兵器だと?」「大船長の前で改造人間風情が、無礼であろう!」
ガリモス「ターサン。この者の言うことは、まことか?」
ターサン「はい、それはもう。逃げた4名に決して引けはとらぬ腕を持っております」
ガリモス「ならばその4名と同様に、裏切るかもしれぬぞ」
ギル「これを、大船長への忠誠の証に」

ギルが鋼の義手で、自らの生身の左目を掴む。

ギル「ぐうぅっ!」
ガリモス「ほぉ……」

自ら抉りだした眼球を、握り潰してみせる。

ギル「どうか私に、裏切った4名の討伐をお命じください」
道化「目玉目玉目玉!」
ガリモス「面白い。その野心、海賊にふさわしい。貴様、名は何という?」
ギル「はっ! ギル・バーグと申します」
ガリモス「よし、ギル・バーグ。貴様に一軍を与えてやろう。裏切り者の退路を断つのだ」
メスティラ「貴様を我が旗艦、ブルッドに案内してやる」
ターサン「あの、それでは大船長、私もこれで」
ガリモス「待て、ターサン! 4人の裏切り者の中に、あれもいるのか?」
ターサン「……はい、皮肉にも、超能力を引き出すための記憶消去が逆効果になってしまいまして」

メスティラ「目標は如何に?」
ギル「地球という星はわかった」
メスティラ「辺境の恒星の第3惑星だな」
ギル「奴らは必ず、そこへ向かうはずだ。我々は地球へ先回りし、奴らを待伏せる」
メスティラ「追撃するのではないのか?」
ギル「違う! 大船長は『退路を断て』との仰せだった。私の言う通りにしろ。(見ていろ、ミア・アリス。この俺のやり方をな!)」


ミアたちは、とある惑星の地表で、追っ手の追撃を受けている。

ロール「これ以上、振りきれないよ! 奴らとは戦力が違いすぎる」
パイ「逃げるばかりが能じゃないさ。反撃に出よう」
ランバ「でも、どうやるのよ?」
ミア「できるわ。この4機のシステムを使えば」
ロール「そう言えば…… そいつをすっかり忘れていた!」
ランバ「合体よ。合体するのよ!」
パイ「フン、私は自分の力だけでも戦えるわ」
ミア「各機、合体モードへ!」
パイ「ちょっと!? なんであんたが命令すんのさ!」
ロール「来たぞぉ! とにかく、フォーメーションに入るんだ!」

4機が合体フォーメーションに入り、機体が変形してゆく。

ミア「パイ、高度を一定に保って。ロールの前に出ちゃ駄目よ」
パイ「こっちは機体が大きい分だけ大変なんだよ!」
ミア「フォーメーションを崩したら、合体できなくなるわ」
ランバ「何やってるのよ!? 早く合体してよ!」
ロール「ミア、前!」
ミア「あぁっ!?」

合体に気をとられたミア機が、前方の障害物に衝突してしまう。

ロール「大丈夫か、ミア!?」
ミア「駄目だわ。今のショックで、コクピットブロックの回転が作動不能に……」
ランバ「えぇっ!? じゃあ、合体は無理ってこと!?」

さらにディラとヨルドの宇宙船が追撃に加わり、4機目がけて砲撃を加える。

ヨルド「フフフ、墜ちたようだな」
ディラ「油断は禁物よ、ヨルド」
ヨルド「脱走野郎ども! これ以上、手こずらせんじゃねぇぞ」
ディラ「おとなしくすれば、痛い思いをせずに済みますよ」
ヨルド「抵抗するつもりならよ、こっちも容赦しねぇからな。そのつもりでかかってきな!」
ディラ「冷静になりなさい。あなたの思考回路は少しオーバーヒート気味よ、ヨルド」

ディラたちの宇宙船が突如、激しく揺れる。

ディラ「な、何!? 今の振動」

地上では、機体から降りたパイが、怪力にものを言わせ、体格の倍以上ある巨岩を持ち上げている。

パイ「てめぇらこそいつまでも、ふざけてんじゃねぇぇ!!」
ランバ「いいわよ、パイ!」
パイ「おらぁぁっ!!」

パイの放り投げた巨岩を、ランバが指先のビームで切り裂き、無数の岩礫が宇宙船に降り注ぐ。

ディラ「ああぁっ!?」
ロール「行くぞぉぉ──っ!」

ロールが疾走、衝撃波を漲らせて体当たりを試みるが、狙いが外れ、地上に墜落してしまう。
ヨルドが自ら地上に降り立ち、ミアたちの前に現れる。

ヨルド「遊びはそろそろ、お終いにしようじゃねぇか」
パイ「面白ぇや。私の相手になってくれんのかい?」

パイがヨルドに立ち向かう。
ロールは気絶しており、ランバのビームもエネルギーが切れている。

ランバ「駄目だわ…… どうしよう、ミア」
ミア「ロール、しっかりして! 目を覚ますの!」

ヨルドのパンチを、パイが必死に受け止める。

パイ「このぉ…… うりゃあぁ!」

パイがヨルドを投げ飛ばすが、ヨルドは受け身を取り、逆にパイを吹っ飛ばす。

パイ「おい、何をボケッとしてんだよ!?」
ミア「えっ!?」
パイ「あんたの力はどうした!? 早く出してくれよ!」
ミア「そんな! 急に言われても、私……」
パイ「何グダグダ言ってんだよ! この役立たず!」

パイの隙を突き、ヨルドがパイを捕え、怪力で体を絞め上げる。

パイ「ああっ!?」
ヨルド「さぁ、観念しな。これ以上やると、ケガだけじゃ済まなくなるぜ!」
パイ「ぐぅっ……!」

パイの意識が朦朧とし、その脳裏を映像がよぎる。

パイ (な、何だ……? この記憶は…… そ、そうか、私は!)

ランバが力を振り絞って、ヨルドにビームを見舞う。
ヨルドの腕が緩み、パイは拘束を振りほどき、渾身の拳を顔面に撃ちこむ。

パイ「そうだったのか…… 私は、私は……」

ディラ「あぁっ、ヨルド!? 何ということ!? 許しません、許すわけには…… 許さんぞ、貴様ら!! ぶっ殺してやる!」

宇宙船の砲撃が、ミアたちを襲う。

一同「ああぁぁ──っ!」

さらにディラの宇宙船から、ナパーム弾が出現する。

ディラ「このハイパーナパームは、半径10キロ以内の如何なる物も焼き尽くすことができるわ。ヨルドを死なせた償いに、お前たちはこの星の灰になりなさい!」

ナパーム弾が地上目がけ、投下される。

ミア「あぁっ!?」

ミアの超能力が発動。膨れ上がる光の前に、ナパーム弾が掻き消える。

ディラ「な、何!? この光は!?」

そして光が、ディラの宇宙船をも飲み込んでゆく。

ディラ「ああぁぁ──っ!?」
ミア「いけない!」

ミアが大きく跳躍し、宇宙船の中へと飛び込む。
その直後、宇宙船が大爆発。


ディラはミアの手により、地上に救出されている。

パイ「正気か、ミア?」
ミア「静かにして……」
パイ「こいつは、私たちを追って来た敵なんだぜ!」
ミア「黙って!」
ディラ「その人の言う通りよ。私はあなたたちを捕まえに来た、アンドロイドよ」
パイ「ほら見ろ。こいつも私たちと同じ、殺人マシンじゃないか」
ミア「やめて!」
ディラ「わからないわ…… なぜ、助けた?」
ミア「私は…… 兵器なんかじゃない。戦うことも、人を殺すのも嫌」

ミアが潤んだ目で見つめ、ディラは思わず顔をそむける。

ディラ「あなたたちは、ターサン博士が造ったのではないわ」
ロール「やっぱり!」
ディラ「あななたち4人は、最初からエスパーとしての強い素質があった。だから博士は──」
ロール「僕たちの記憶を消し、戦士に仕立て上げたんだ」
ディラ「その通りよ…… あなたたちには、それぞれ帰るべき故郷があるわ」
ランバ「どこ? 私の故郷はどこなの!?」
ディラ「あなたの…… 故郷……」

言葉が途切れ、体から煙を吹きはじめ── やがて、動きも言葉も止る。


ギルはメスティラにより、巨大ロボ・ブラッディを与えられている。
ブラッディのコクピットで、ギルが右手の義手を引き抜き、腕をコクピットに接続する。

メスティラ「どうだ、ブラッディの乗り心地は? むっ! 何のつもりだ、それは!?」
ギル「俺の血を、こいつにも分けてやっているのさ」

ブラッディが地球、日本の都市に降り立つ。

ギル「早く来い、ミア・アリス。貴様の故郷が無くなってしまうぞ」

ブラッディが暴れ回り、都会のビルがなすすべもなく、破壊されてゆく。


パイは自機とロール機のみを強引に合体させた2体合体機で、離陸を始める。

ミア「待って!」
ランバ「どうして行っちゃうのぉ!?」
パイ「悪く思うなよ、ランバ。私には別の生き方が見つかったんだ」
ミア「待って! 私たちは4人でいるべきよ!」
パイ「1人じゃ戦えないってか?」
ミア「行かせないわ!」
パイ「フン! 口で何と言ったって、しょうがないさ。止められるもんなら、止めてみな!」
ミア「なぜ、ロールまで連れて行くの!?」

ロールは気絶したまま、機内に乗せられている。

ミア「彼まで巻き込む理由はないはずよ!」
パイ「小手先のレーザーや、使い方のわからない力なんかじゃ、私のパートナーにはふさわしくないからさ!」
ミア「どうして、そんなに戦いたがるの!? 私は……」
パイ「『私は兵器じゃない』ってんだろ!? それが間違いだって言ってんのさ! 私たちは、戦うために生まれたんだ! より強い敵をブッ倒すのが、私たちの生き方なんだよ!」
ミア「私は…… 誰も殺さない! 私は兵器じゃない。たとえどんなわけがあっても、過去を持たない造られた人間でも、自分から殺人兵器なんかになるつもりはないわ……」
パイ「……フン!」

パイ機が空の彼方へ飛び去る。

ミア「パイ・サンダー……」
ランバ「行っちゃったよ、ミア。追いかけないの?」
ミア「追いかけようにも、パイが私たちのメカを飛べなくしちゃったでしょう?」
ランバ「あっ! あれ!?」

ターサン博士の宇宙船ダル・ダルが降下して来る。


ロール「ねぇ…… 一体、どこに行くつもりなの?」
パイ「私も思い出したのさ。帰るべきところをね」
ロール「じゃあ、君の故郷!?」
パイ「まぁね」


ターサンはミアとランバに脅され、パイの行方を追っている。

ターサン「無茶苦茶な合体をしおって。壊れたらどうするつもりなんじゃ?」
ランバ「そんなことより、パイの目的地はどこなの!?」
ターサン「このまま行くと…… バンカーの船域じゃな。むぅっ!?」
ミア「宇宙海賊!? どうして!?」


ロール「嫌だよ、海賊なんて! ここに売られたくないから、逃げ出したんじゃないか!」
パイ「うるさい!!」

パイはロールを強引に連れ出し、バンカーの旗艦へと乗り込む。

パイ「出迎えも無しか。入るわよ!」
ロール「ちょっとぉ!」
パイ「ただ今、帰りました!」

大船長バリモスが現れる。

パイ「お父様!」
ロール「お、お父様!?」
バリモス「バリアス。ターサンのところから逃げたそうだな」
パイ「それは誤解です! 私はターサンに記憶操作されて、そのために──」
バリモス「お前は一度、裏切った。バンカーは裏切り者を信じない」
パイ「お父様、どうかお顔をお見せください。そして、私を見てください。私は今でもお父様の忠実な娘、バリアスです」

バリモスの奇怪な巨体に、その素顔が現れ、パイを睨みつける。

パイ「お父様……」
バリモス「お前をターサンのところに預けたのは、お前の超能力を増幅させ、無敵の兵器とするためだ」
道化「無敵の兵士、アハハハハ!」
パイ「黙れ、道化者!」
バリモス「私は命を賭けたものしか信じない。お前が最強の兵器となって帰った来たことを証明せよ。殺人マシンとなったことをな。そうすれば、我が娘バリアスと認めてやろう」

パイの足元に、剣が突き刺さる。

バリモス「お前が連れて来たその男を殺してみよ。それが私への忠誠の証だ」

パイが剣を手にする。
ロールは脂汗をにじませつつ、後ずさりする。

パイ (私は兵器…… そのためにお父様は、私をターサンのところへ送った。私は兵器になることで、お父様は喜ぶ……)

道化「殺せ、殺せぇ! ゲヘヘヘ!」

パイ (殺人マシンになれ、人殺しに……)

(ミア『私は、誰も殺さない』)

パイ「私は…… 私は一体、何のために帰って来た!?」


ミアとランバは、それぞれの機体でパイたちを追っている。

ミア「パイが! パイが、助けを求めている!? ランバ、続いて!」
ランバ「OK!」

四天王たち「小癪な奴らだ、撃ち落としてくれる!」「奴らのパワーが知りたい、手を出すな」「何!?」「大船長の男場だ」


パイが剣を投げ捨てる。

パイ「私はパイ・サンダーだ! バリアスではなぁい!!」
バリモス「裏切り者めぇ!!」

強烈な電撃が、パイとロールを襲う。

パイ「ああぁぁ──っっ!?」

壁面を突き破り、ミア機とランバ機が飛び込んで来る。

ミア「しっかりして! パイ、ロール!」
パイ「ミア!?」

バリモス大船長が姿を消す。

パイ (お父様……)
ランバ「さぁ、早く! 逃げるのよ!」
ロール「ランバ!」


ミアたち4人は無事、バンカーからの脱出に成功する。

パイ「ありがとう……」
ミア「さぁ、また4人で逃げましょう」

パイ機が後退を始める。

ミア「パイ!? どこへ行くの!?」
パイ「戻って、ワープ・ビームを作動させる。そうしなきゃ、すぐ追いつかれちまう!」
ターサン「待て!」
パイ「博士!?」
ターサン「最高傑作を殺されちゃたまらん。わしの船だってワープ装置くらい、付いとるわい。さっさと戻って来い」
ミア「でも!?」
ターサン「行き先は地球じゃ。今ごろはギル・バーグが暴れ回っているはず。ミアの星を守ってやれ」
ミア「ターサン博士……!」
ターサン「さぁ、早く!」
ミア「パイ!」
パイ「行こう、ミア! あんたの星へ! ギルに勝手やられちゃ、たまんないぜ!」
ミア「うん!」


ガリモス「フフフ。この大船長ガリモスに、ターサンまでも盾突いたか! フフフ、ハハハハハ!」


地球上。
ギルのブラッディが暴挙の限りを尽くし、街がどんどん破壊されてゆく。

ギル「ハハハ、脆い! なんという弱さだ!」

ミアたち4人のダン・メカニックが飛来する。

ギル「待ちかねた…… 待ちかねたぞ、ミア・アリス!」

パイ「ひどい…… やってくれたもんだね」
ロール「すごいロボットだ……!」
ミア「地球、私の星…… 合体しましょう!」
ランバ「そうね!」
ロール「で、できるかな」
パイ「やるしかないさ!」
ミア「合体……!」

(ターサン『4人の精神力、4人の心が正確にひとつになっていなければ、合体はできん。どちらが欠けても駄目だ』)

ミア「心を一つに…… クロス・ファイト!! ダンガイオ──ッッ!!

ミア機が頭部と背、ロール機が胴、ランバ機が両腕、パイ機が下半身に変形して合体。
巨大ロボット・ダンガイオーが完成し、地上に降り立つ。

ミア「できた!」
ランバ「カッコいい~!」
パイ「よし、動け! ……あれ、動かないよ!?」
ミア「そんなぁ!?」
ギル「デクか…… フン!」

あわやというとき、ダンガイオーが両腕を振るい、ギルに対して身構える。

ロール「ダンガイオー、見参っ!!

パイ「えぇっ!?」
ランバ「あの声!?」
ミア「まさか……!?」
ロール「見たか! どうやらダンガイオーの操縦は、俺のコクピットでしかできないらしい。どうぞ休んでいてくれ!」
ランバ「えぇっ!?」
パイ「性格、変わっちゃったよ……」
ミア「大丈夫!?」
ロール「許さんぞ……!」
ギル「ふざけたことを!」
ロール「ブーストナックル!!
ランバ「きゃあっ!?」

ランバを乗せたまま両腕パーツを発射、ブラッディにパンチを見舞う。

ギル「その程度か!?」
ランバ「こらっ! 勝手に飛ばすな!」
ロール「弱点は…… どこだ?」
ギル「踏み潰してやる!」
ロール「ダンガイビ──ム!!

ダンガイオーがビームを放つが、狙いはブラッディを外れ、地表に炸裂する。

ギル「どこを狙っている?」

地表が砕け、ブラッディが陥落。
身動きが取れなくなる。

ロール「やったぁ!」

しかしブラッディ本体から、身軽なロボットのブラッディIIが分離して飛び立つ。

ロール「何!?」
ランバ「やだぁ!」
ギル「行くぞ!」

本体のブラッディIの怪力とは一転、敏捷なブラッディIIの格闘がダンガイオーを襲う。

ロール「食らえ、ブーストナックル!!」

2撃目のパンチ攻撃を、ブラッディIIはたやすく跳ね返す。

ロール「何っ!?」
ギル「フフフ…… そこまでか、ダンガイオー!」
ロール「く、くそぉ!」

ブラッディIIの剣がダンガイオーの胸を貫く──が、ダンガイオーはその剣身を握りしめる。

ギル「何っ!?」

ダンガイオーはブラッディの動きを封じ、肘打ちで吹っ飛ばし、大地に叩きつける。

ギル「えぇい、ならばブラッディIで力攻めだ!」
ロール「ダンガイビ──ム!!」

ブラッディIIはビームをかわし、再び本体のブラッディIに合体する。
ダンガイオーの戦いにより、ロール以外のミアたち3人も超能力を消耗し、次第に疲弊している。

ロール「(これ以上長引いては、体力を消耗するだけだ……) みんなの命、俺が預かる!」
パイ「任せたよ!」
ランバ「いいわ!」
ミア「頼むわ、ロール!」
ロール「サイキック斬で行く!」
ギル「行けぇ!」

ブラッディIが力任せに突進してくる。

ロール「サイキック・ウェェ──イブ!!

ダンガイオーが手をかざすや、強力な念動力で、ブラッディが宙に持ち上げられる。

ギル「ぐわぁっ!」
ロール「うおおぉ──っっ!!」
ギル「ど、どうした!? これくらいのことで! があぁ──っ!!」

ロール「サイキック・ザァ──ンッッ!!

ダンガイオーが剣を抜き、一刀両断。
ブラッディが真っ二つに斬り裂かれ、大爆発──!
半身のみとなったブラッディが、地上に墜落する。
内部ではギルが血まみれで、炎に包まれている。

ギル「こ、これまでか……」

ダンガイオーが、ギルに手を差し伸べる。

ロール「早く乗り移れ。爆発してしまうぞ」
ミア「早く、こっちへ!」
ギル「助けると言うのか? ……甘い! 甘いぞ、ミア・アリス!!」

ブラッディがダンガイオーに飛びかかり、咄嗟にダンガイオーは大ジャンプで飛び退く。
次の瞬間、ブラッディの残る半身も大爆発── ギルは最期を遂げる。

ミア「あぁっ……」
ランバ「そんな……」
パイ「馬鹿な奴……」

もうもうと立ち昇る爆煙を前に、ミアが泣き崩れる。

ロール「ミア…… ミア、ここでお別れだ」
ミア「……えっ?」
ランバ「寂しいけどね」
パイ「あばよ」
ミア「ちょっと待って! どうして私だけ、降ろすの?」
ロール「だって、ここは君の星。やっと思い出した、自分の故郷じゃないか」
ランバ「そうよ! ミアは兵器なんかじゃない。自分の星で、ゆっくり暮らしなよ」
パイ「帰る場所が、あるんだからさ」
ロール「さぁ、ミア」
ミア「……私、降りない!」
ランバ「ミア!?」
ミア「私、みんなと一緒に行く!」
パイ「何言ってんだ!? 私たちといたら、またあんたの嫌いな戦いを……」
ミア「だけど…… 私、まだよく思い出せないし、それに1人で降ろされても困るし、このメカ、4人揃わなくちゃいけないし、私だけが故郷に帰るわけにはいかない。それに、それに私たち、仲間なんだから…… そうよ! 命を賭けた、仲間だから……!」
ロール「……わかったよ、ミア」
ランバ「本当は一緒にいたかったんだ!」
パイ「いいのかい? 戻るところ、なくなっちまうよ」
ミア「大丈夫!」
ロール「よぉし、決まったぁ!」

ターサン博士の乗るダル・ダルが降下して来る。

ターサン「助けてやったんじゃ! 礼くらい言ったらどうじゃ?」
ミア「博士!」
ターサン「さぁ、こっちの船に入れ。ダンガイオーを修理してやる」
ロール「とか何とか言って、また僕たちをどっかに売ろうってんじゃないでしょうね?」
ターサン「心配するな! 今度は海賊じゃない。宇宙軍じゃ」
パイ「冗談じゃないよぉ!」
ランバ「逃げるが勝ち!」
ターサン「どこに逃げるつもりじゃ! お前たちが敵にしたバンカーは、ただの海賊ではない! 宇宙全土のブラックマーケットを牛耳る巨大な組織、逃げきれんぞぉ!」
ランバ「けど博士も、今日からは追われる身でしょう?」
ターサン「それを言うな……」
ロール「ダンガイオー・セパレート!」

ダンガイオーが4機のダン・メカニックに分離、あっという間に飛び去る。

ランバ「バァイ、博士~!」
ターサン「こら、待てぇ、早く、早く追わんか! 何をもたもたしとるんじゃ~!」


その頃、ガリモス大船長のもとへは、ダンガイオーについての報告が届いている。

「科学者ターサンと合体ロボットを駆使する4人のエスパーが、バンカーに謀反を企んでいる。発見次第、即刻処刑せよ。発見次第、即刻処刑せよ」

ガリモス「大船長ガリモスの名において、命令する。なお目標の通称はダンガイオーチーム── ダンガイオーチーム!」


(続く)

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最終更新:2018年08月07日 19:22