ヒーローによる、ヒーロー殺人事件。オオトロウシンゴを守備にコロシヤ本人が証人として証言台に直接現れた。 前代未聞の尋問が始まる中、マヨイちゃんの命のタイムリミットが迫る。最後の証拠品が断たれた今、絶体絶命の闘いが始まる! |
「証人、こちらが見えているか?」
「ええ。早速始めましょうか。」
「では、証人、名前と職業を。」
「名前はコロシヤサザエモン、殺し屋を営んでおります。」
「いやいや、何ですか、これは?」
「先程届いた通信記録、逆探知をしないと言う条件に証言をすると。」
「いや、然し、これでは本人と認める事が…。」
「では、少々お待ちを。」
「マヨイちゃん!」
「今のは一体。」
「異議なし!この人をコロシヤ本人と認めます!」
「はあ?」
「弁護側に異議がない以上、問題ないと考えられます。」
「分かりました。」
「では、質問を始める。証人は依頼を受けてフジミノイサオを殺害したと?」
「はい、私がやらせて頂きました。」
「何!?」
「その依頼をした人物の名前は?」
「お答えする前に訊いておきたい事がございます。」
「何ですか?」
「我々の商売は依頼人との信頼関係がもっとも大切なのです。だから今、こうして証言台に立っている訳。」
「何が言いたい?」
「私共は正確に仕事をして申告を守る。その代わり、決して私共を号外しない、と言う事です。」
「信頼関係…裏切られる事はないのですか?」
「そんな事になれば、依頼人と言えでも容赦はしません!私共は裏切り者を最も憎みますので。」
「でも、証人は今から依頼人の名前を明かそうとしている。」
「致し方ありません、今回の依頼人は仁義に外れた事をしましたので。」
「仁義?」
「自分が助かる為、他人に罪を擦り付ける。許される事ではない。」
「証人の言う事も尤も。では、フジミノイサオ殺害を依頼した人物が何者か、証言して貰おう。」
「はい。私の依頼人は、カミヤキリオ様でございます。」
「…!!」
「そんな違う。」
「私じゃない!」
「謀ったな、証人!」
「どう言う事だ?」
「コロシヤが検事さんを裏切るなんて。オオトロウを証言する為だったのね。」
「依頼人を守る為か?」
「よって、被告人をオオトロウ様を直ちに無罪にして頂きたい。」
「異議あり!その前にこの証人に対する尋問がまだです。チヒロさん、この弁護士です。でも、こんな無罪判決、受け入れる訳には行きません!」
「…」
「しかし、依頼人の名前が明らかになった以上。一体何を事項するのですか?」
「その通り。私はあなたにとって、非常に有利な証言をしたのですがね。」
「先程証人は依頼人との信頼関係が何よりも大切だと言いました。」
「ええ。」
「でも、依頼人が信用できる相手がどうかどうして分かるんですか?」
「私は依頼を受ける前に必ず依頼人と直接お会いします。相手の目を見て言葉を交わす。信頼関係を築く為に必要な事です。」
「では、今回の依頼人とは直接会った?」
「ええ。カミヤ様が指定されたお店でお会いしまして、私は彼を信用しました。」
「…。」
「捕まえたわね。」
「あなたはカミヤキリオさんに会ったんですね?」
「そうでございますよ。」
「そして、彼を信用できると考えた?」
「はい。」
「残念ですが、それはあり得ません。」
「何ですか?」
「コロシヤサザエモン、あなたはカミヤキリオに会った事はない!」
「な、何故そのような?」
「どうやら致命的な勘違いをしているようですね?彼女について!」
「……今、どなたと?彼女と?」
「本当にキリオさんと会ったと言うのなら、人目で分かった筈です。彼女が女性であると!」
「何ですと?」
「し、しかし何故そのような勘違いを?」
「恐らく名前のせいね。」
「カミヤキリオ。聴いただけでは男性のような名前です。」
「依頼を受ける時、カミヤキリオは必ず依頼人に会う筈の証人がカミヤキリオに会った事がなかった。」
「それはつまり、依頼人はカミヤキリオではなかったと言う事です!」
「バラボーン!」
「さあ、この矛盾について説明して貰いましょうか!」
「失礼ですが、矛盾しているのはあなたの方では?」
「?」
「私は先程から、オオトロウ様に有利な証言をしている。なのにあなたは何故それを否定しようとするのか?」
「そ、それは…。」
「申し上げた筈です。裏切り者を最も憎むと。その意味、お分かりでしょうな?」
「…。」
「宜しい。私はこれで失礼します。片付けなければならない義務がありますので。」
「待て、それだけは!」
「では直ちに審理を終わらせる事です!」
「…。」
「これはどう言う事ですかな?ミツルギ検事。」
「…。」
「駄目だ。これ以上続けたら、マヨイちゃんが!」
「そうそう。カミヤ様は特別に手紙で引き受けました。そう言う事をございます。ね、検事様?」
「検察側から質問はない。尋問は以上だ…。」
「それでは、証言通り、殺人の依頼者はカミヤキリオと言う事ですね?」
「このままじゃ、キリオさんが…。」
「では、被告人、オオトロウシンゴ、前へ。」
「終わった。やっと判決ですか?」
「あなたが潔白だとは言えません。一人の女性を自殺にまで追い込みました。」
「へへっ。」
「しかし、殺人の罪については無実だったようです。」
「勿論ですよ。それにしても、酷い弁護でしたね。」
「…。」
「僕だって春風のように爽やかなあいつ何だけどな。」
「…。」
「さあ、早いとこ無罪判決お願いしますよ、大先生!」
「…。」
「あんな悪い奴、絶対有罪にしてよね!」
(そんな事をしたら、君を助けられない。でも、オオトロウが無罪になったら、キリオさんが犯人にされてしまう。有罪か無罪か、どっちを選んでも、どっちの人生が終わる!)
「ナルホド君…。」
「弁護人、この証人に対する最終弁論を述べますように。」
「被告人、オオトロウシンゴを。」
「どうしましたか?」
「く…。 (ごめんよ、マヨイちゃん。僕は…僕は…。僕は…!)」
「待った!」
「か、カルマ検事!」
「あ、あなたが何で?」
「判決の前に一つだけ。ナルホドウリュウイチ!」
ディスクを受け取るナルホド
「安心なさい。パトカーが通信をモニターした。腕の怪我は軽いわ。」
「裁判長!たった今、この再現に於ける最後の証拠品が届きました!」
「何、言ってる!裁判はもう終わりだ!」
「検察側に異議はない。証文は全て検証しなければならない。」
「ううむ…ビデオディスクですか?一体何が映っているのでしょう?」
「ここに来る途中確認した。事件当夜、コロシヤサザエモンがフジミノイサオを殺害した瞬間が記録されているわ。」
「静粛に!その証拠品の提出は却下します。」
「どうしてですか!?」
「コロシヤの犯行は既に分かっています。今更その証拠は無意味です。」
「そんな?」
「そう無意味なんだよ、大先生。」
「くそ!ここまで来て?」
「諦めるのはまだ早いわ。今こそ発想を逆転するの。」
「逆転?」
「裁判長はその証拠を必要としていない。だったら必要としているのは誰?」
「こ、この証拠。」
「それが最後の奇跡を起こすわ。」
「あの、失礼ですが、先程から何のお話をしているのですか?」
「コロシヤサザエモン、あなたはこの映像を見るべきだ。今すぐに!」
「ほう?止めてください。一つ伺いたい。これはどなたが撮影したものですか?」
「あの現場は盗撮されていた。カメラを仕掛けたのはオオトロウシンゴです!」
「やめろ。」
「カメラの映像は被告人の自宅に送信され、ビデオディスクに記録されていた。」
「興味深い話です。私はそのディスクを守り抜くよう、依頼人から指示を受けていました。ここにあります。映像はフィルムでしたと言う事で今まで確認していなかったのです。」
「くっそ。」
「そのディスクには同じ映像が記録されている筈よ。ここにあるのはコピーだわ。」
「コピー?一体誰が?」
「マヨイよ。あの子、ただお腹を空かせてただけじゃなかったのよ。」
「全部出鱈目だ!貴様ら!」
「あなたの依頼人はこんな事を言っていました。」
「応急手当か?コロシヤ何て信用できねえ。コロシヤがもし俺を強請ろうとしたら、強請り返してやるわ!」
「どうやら私は最初から裏切られていたようです。」
「ええ。あなたの依頼人はそう言う奴だったんです。」
「貴様!」
「さあ、どうするコロシヤ?確か証人が最も憎むのは裏切り者だった筈だが。」
「!」
「ただ今を以て契約は終了します。次のターゲットが決まりましたので。」
「次のターゲット?」
「私を裏切った愚かな依頼人ですよ。」
「い、嫌だ!やめてくれ!」
「ナルホドウ様、あなたの荷物は責任を持ってお返しします。では。何よ、こんな事をして!?」
「さあ、今度こそ判決です。」
「あなたは無罪、自由になれる!」
「尤も、自由になった夜、貴様の前に腕利きのコロシヤが現れるだろう。」
「…。」
「無罪だろうと有罪だろうと、お前はもう終わりだ!」
「うあああああっ!!」
「それでは今度こそ、判決を言い渡します。被告人、オオトロウシンゴを…。」
「待ってくれ!俺がやったのは、」
「どう言う事ですかな?」
「俺があいつに頼んだんだ!フジミノを殺してくれって!殺される!有罪だ!俺を有罪にしてくれ!」
「今、我々は揺るぎない決議に達したようです。」
「…。」
「判決、被告人オオトロウシンゴは、有罪!」
歓喜するナルホド
その場を後にするミツルギ
「キリオさん!」
頭を下げ、後にするキリオ
「穏やかな笑顔だったわね。」
「はい。痛っ!」
「何故笑ってるの?」
「ええっ?」
「有罪判決、あなたは敗けたのよ。どうしてそんな嬉しそうなの?」
「君には分からないのか?」
「ミツルギ。」
「どう言う事?」
「かつての私がする事だ。」
「…。」
「自らを勝利する為、私はあらゆる手段を使い、そして勝利を重ねた。その私の前に一人の男が現れた。君に初めて敗北した時、全てを失ったような気がした。その私は被告席に立たされた。
そして、これまで信じて来たものが崩れ去るのを見た。だから私は検事を去るしかなかった。」
「勝利を断たれた検事など、死んで当然よ!」
「きっと気付いたのね、その敗北が始まりだった事に。」
「な、何を馬鹿な!」
「どんなに隠そうとしても、真実は必ず顔を出す。我々にできるのは互いを信じて、全存在を懸けて闘う事だけだ。」
「互いを信じる?」
「そうだ。検事と弁護士はその為に存在するのだ。君もそれを知っていた。だからこそ、私を許せなかったのだろう?」
「お前の失踪を知った時、裏切られたと思った。僕が弁護士になったのはずっと昔、お前の言葉を信じたからなのに、その言葉をお前自身が裏切った。だから、君との友情の証を封印した。
でも、それは間違いだった。君は自らを追い込み、本当の答を見つけたんだ。人を信じて最後まで寄り添う、それが全てを貫く真実への道なのだと!」
拳で応えるミツルギ
「また助けられた。ミツルギ、ありがとう。」
「私は自分の仕事をしたまでだ。」
「下らない!こんなの負け犬の馴れ合いよ!」
「メイ。」
警察署
「マヨイちゃん!」
「ナルホド君!」
「マヨイ、熱!」
「ごめん。」
ラーメンを置くマヨイ
「ナルホド君!」
「無事でよかった!」
「よかった、よかった!」
「ありがとうございます、ヤハリさん!」
「マヨイ!」
「お姉ちゃん。」
「マヨイ、よく頑張ったわね。」
「あたし、頑張ったよ。」
「偉かったわね。」
「うん、あたし偉かった。お姉ちゃん…。」
「何か泣けるな、ナルホドウ」
「よかったす。」
「ナルホド君。」
「はい。」
「これからもマヨイを宜しくね。」
「はい。」
「私はいつでもあなたの傍にいるわ。」
「うんうん。」
「修行をしっかりね。」
「うん。」
「マヨイ様!」
「ハミちゃん!」
「マヨイ様!」
「何だか泣けるな、成歩堂。」
「泣けちゃうっす。」
「皆さんが懲らしめたのですね、悪いヒーローを。」
「うん、コロシヤもきっと見つかるよ。」
「ヒーローと言えば、シグナルブルー。」
「それならイトノコギリが預かっているっす。」
「ありがとう、イトノコ刑事!あっ、ごめんなさい。」
「いや、平気っす!ただの掠り傷っす。」
「ナルホド君、ありがとう。」
「これがあったからあたし、頑張れたよ。」
「マヨイちゃんがいたから、僕も頑張れた。」
「そうだ、あたしお腹減ってたんだった!」
「どこへ行く?逃げるのか?」
「煩い!あなたには分からないわ、カルマの娘の立場がどんな身のか。」
「メイ。」
「父は天才だったわ。でも、私は違う。そんなの知ってた。けれど認める訳にはいかなかったのよ!」
「検事は名誉の為に闘っているのではない、それを知っておくべきだな。」
「いつもそう。あなたはいつも私を置いて先を歩いて行く。憎かったわ。だからこそ、あの男に勝ちたかった。」
「ナルホドウリュウイチ。」
「あなたを打ち負かした男を倒す、それが私の復讐だったの。」
「そうか。」
「私には無理よ…今までの自分を捨てる何て。」
「できるさ。今日、君は気付いた筈だ、あの男が闘う姿を見て、な。」
「!」
鞭を差し出すミツルギ
「私は立ち止まるつもりはない。君が歩くのをやめると言うのなら、ここでお別れだ。」
「私はカルマメイよ。いつまでも私の前を歩いていられると思わない事ね。勝負はこれからよ、ミツルギレイジ!」
「あの時、これを見て、何故か届けなきゃと思った。成歩堂龍一。いつかまた法廷で会いましょう。その時までこれは預かっておくわ。」
これで僕の物語はお終いだ。新米弁護士に別れを告げて、僕は今、新しいページを捲り、新しい物語はできている。相変わらずの顔触れで。 |
「異議あり!まだまだ甘いな、この素人弁護士が!」
「やれやれ…もう一度考え直すように。」
「分かりました。では、お言葉に甘えて、異議あり!」
最終更新:2019年12月02日 12:33