ニュー・ゲイムの手記(ブラックシープ商会)

 俺たちが今から戦いを挑む相手がどのような集まりであるかは察することができると思う。
 魔族や魔物の存在を絶対的にと言ってもいいほど認めない帝国軍ですら、
 その魔族(もちろん、人間に対して友好的な"変わり者"の集まりだが)と力を合わせなければならないという、異常事態なのだ。
 もちろん俺たちのような一般の冒険者も、当然含まれる。
 グリル皇帝の隠し子と囁かれる男、スタートゥ出身の色物達、何やら訳ありの元勇者候補兄弟謎に包まれた過去を持つ運び屋
 トラブルメーカーの有翼人の少女(あのギルドの隠れ家の場所は彼女のタレコミが発端らしい)、桜の国から来た半神と囁かれる冒険者その一行
 何度も世界を滅ぼせそうなこの集まりでようやく拮抗すると思われる、黒い羊の紋章を掲げる凶悪な密漁者ギルドが今回の討伐対象なのだ。

 ブラックシープ商会
 元々はガイオウ共和国ヤクザ者のうち、絶縁や破門などで組織そして国を追い出された結果、国を捨て「流れ者」となった者たちが、
 生計をたてるために密漁に手を染めたことに遡ることができるギルドである。
 はみ出しものとは言っても国そのものを掌握するヤクザ者に起源を持つ彼らの戦闘力も決して低くはないものの、
 それでも「用心棒」として魔族や、あるいはアッシュラ系の荒くれ者を引き込む事により、彼らの戦闘力と凶暴性は雪だるま式に膨れ上がっていった。
 人員だけでなく得物を手にするために、正規軍にすら真正面から襲いかかり壊滅できるようになった彼らは、軍事力などのまともな手段ではもはや止められない規模となっている。
 まともな手段では止められないからこそ、まともでない手段-すなわち冒険者や賞金稼ぎなどを可能な限りかき集めた『夢の連合軍』が必要になったのだ。
 バクハーン漁師ギルド、そして国家もそれだけ奴らを問題視し、そして追い詰められているのだ…
 「成功すれば各々に可能な範囲という但し書きはつく上で、何でも望むものを与える」という"報酬"の内容にもそれが現れているのだ。

 ニュー・ゲイムの手記より-

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最終更新:2021年11月22日 23:00