「-CROSS OVER 4-殺意と意思-」
作者:本スレ 1-710様
283:-CROSS OVER 4-殺意と意思- 投稿日: 2012/03/24(土) 19:02:39
本スレ1-710です。
本スレ1-091様のお子様とうちの子のスピンオフな二次SSの第4話を仕上げましたので、
お知らせします。(第3話は、
創作してもらうスレ 1-277へ)
以下、属性表記です。
・
本スレ1-091様(本スレ1-866)の設定と、
うちの子の設定(設定スレ1-036)を足した
現代風ファンタジーな世界観での二次SSです
・エロなし、残酷描写少々(微少)
・ストーリーは長めで、続きあり、今後も多分、かなりのご都合主義的展開を含む
・主な登場キャラクターは、繊様、柳様、アル、ウィル、エイシアといったところ
・今回は、柳様、アル、ウィルあたりがメインキャラクター
・設定準拠ではない表記を若干含みます
・キャラ&設定が1-091様の公式設定から外れている可能性あり
こんな感じですがよろしかったらどうぞ
283:-CROSS OVER 4-殺意と意思- 投稿日: 2012/03/24(土) 19:02:39
「とんだ期待外れのようだな」
その黒髪と緑闇色の瞳の端正な顔立ちの男――柳は、目の前の秀麗な容姿を称えた金髪碧
眼の青年に向かって、苛立ちにも似た感情と、当初から抱いていた、侮蔑の念を一層強く
しながら、吐き捨てるように言った。
それは、つい先程まで、柳が、金髪碧眼の秀麗な容姿の青年――アルと対峙していた際に、
相手に向かって投げ掛けた台詞だ。
柳がこの目の前の青年に対して、苛立ちにも似た感情を強くしていたのは、何も相手が、
自らの繰り出す剣による攻撃を際どいところで避け続けていたから、という事実だけに起
因するものでは無い。
今、柳と対峙している青年は、純粋な人間では無かった。
この青年は、欧州連合という、他国の組織より派遣されてきた、遺伝子操作などを施され、
生成された「魔獣」と呼ばれる半人半獣の人工生命体だ。
その身に備えた能力により、当初、純白の狼としての形態を取り、自らと相対していた青
年は、今、現時点においては、その獣としての形態を解き、人型の成りをしている。
それは、先程、自らの剣による一撃で早々に負わせた、左前足の傷に因るものだ。
四肢が満足な状況足り得なければ、この青年が攻撃の速度面での利があるからと、選択し
たのであろう、白い獣の姿のまま、自分と対峙する利点など無い。
自分が、相手の左前足を即座に狙ったのは、勿論、足止めという意図が最も大きかった。
加えて、例え相手が純粋な人間では無くとも、相手の命を削ぐという行為をするからには、
人型の成りをした相手の方が好ましいと思ったからの選択に過ぎない。
だが、この金髪碧眼の青年と対峙していく中で、改めて気付かされたのは、目の前の半人
半獣の青年が、自らの能力をある意図をもって抑制しているという事実だ。
そして、その事実が、この柳という、冷酷かつ、冷静な男を更に苛立たせた。
目の前の金髪碧眼の青年は、恐らくは、ある一面では、自分をも凌駕する程の力を持ちな
がら――相対する人間を傷つけるという事を躊躇っているのだ。
それは恐らく、今、彼が課せられている制限行為にあたるから、という理由だけをもって、
躊躇っているのではない。
「人の心など、欠片も持ち合せていない魔獣のくせに」
柳は、相対する金髪碧眼の青年の感情を煽る為に、敢えてその言葉を口にした。
そうして、相手に更なる追い打ちをかけるように、自らの剣で、より一層の速度を乗せた、
鋭い一撃を放つ。
それと同時に、この哀れな感情を持ち合せている、秀麗な容姿の青年に向かって、再び薄
く微笑みかけた。
その瞬間に、その一撃を再び際どいところで避けきった、目の前の青年の碧い瞳が、今ま
でには見られなかった程の鋭さを帯びる。
――ああ、やはり――
柳は、青年から返されたその反応を目にして、自分自身の推測を確信へと変えた。
この青年は、「他人を傷つけ、他人の命を狩る」という行為そのものに、ある種の躊躇い
にも似た、また嫌悪感にも近い感情を抱いている。
青年は、その身に、生きる為の殺傷能力を多分に持ち合わせている、獣の血筋を交雑させ
ている人工生命体だ。
そんな身の上にあって、恐らくは、他人が互いの命を賭して、殺し合うという、この行為
の神聖さを本能で理解している立場にありながら、この行為への嫌悪感を抱いているのだ。
それは、多分、青年自身が、至極簡単に他人の生命を奪い、死に至らしめる事が出来る自
らの存在に対してさえ、大きな嫌悪感を抱いているからに他ならない。
だだ、この青年は、全ての生命体が持つ、生存競争的な見地から見れば、他の存在よりも、
圧倒的に優位な立場にあるのだ。
なおかつ、この他人の生命を狩るという、神聖かつ、尊ぶべき行為の意味を否定するなど、
それこそ、柳自身の認識からすれば、到底、容認できる行為ではなかった。
「そんな身の上に在りながら、人を傷つける事を躊躇うとはね」
柳が再び呟くように言った言葉に対し、金髪碧眼の青年は、即座に反応を返した。
青年は、自らの右掌の手元に、瞬時に、光の粒子を凝縮したような外見を持つ、両刃の剣
を作りだす。
それと同時に、青年は、その剣を、まるで獣の咆哮にも似た声を上げながら、相対する柳
へと向けて、思い切り振るった。
直後に、二人が互いの剣を激しく交わす、その所作に合わせて、剣と剣とがぶつかり合う、
鋭さを帯びた大きな音が辺りに鳴り響く。
「おや、漸く少しは、その気になってくれましたか」
「知ったような口を叩くな!!」
柳からの数回に渡る挑発を受けた、アルはこの時点で、初めて、直情的な口調をもって、
相手へと言葉を返した。
その言葉に合わせて、アルが相手の剣を弾き飛ばすようにして、再度、振るった太刀筋さ
えも、柳は易々と見切って、かわすと、相手に向かって、再び微笑みかける。
「何をそんなに憤る必要があるんでしょうね?
その身に余る程の力は、相対する者との命を賭けた遣り取りをする為だけに、
唯、唯一、そういった目的の為だけに、行使されるべく、備えているものでしょうに」
「黙れ!!」
アルは、相対する柳の言葉をまともに受けて、更に激しい口調で短く切り返した。
同時に彼は、自らの剣を左斜め下の位置から大きく斬り上げるように振るう。
それは、もう、既に、相手が繰り出してきていた、次の一撃をかわす事だけを目的とする
太刀筋などでは、無い。
アルが、放った一撃は、明らかに目の前の相手の命を絶つ事を意識したものだ。
彼が放つ太刀筋は、相手への殺意の意思をより明確に乗せたものへと変っていた。
赦せない。やはり、自分は、目の前のこの男を赦せないのだ。
そう思った瞬間に、アルは、自らの能力を行使し、自らの感情の赴くままに、剣を振るっ
ていた。
この目の前の男は、やはり、こちらの事などは、自ら思考を重ねて行動する、新手の戦闘
用の殺戮兵器程度にしか捉えていない。
加えて、ただ単に、相手の命を狩るという、それ以上でも、それ以下でもない、この行為
に、ある種の尊厳を強く見出している。
それは、以前、自分に手酷い傷を負わせた挙句、打ち捨てていった、あの連中が持ち合せ
ていた思考の過程と何ら変わる事の無い性質に満ちたものだ。
自分が、そんな行為を受けたのは、もう、2年程前の事にはなるが、今もその痛みは、自
分の脳裏に痛烈な記憶として焼き付きついて、残ったままだ。
今、傍に居てくれている、数少ない友人達の助けがなければ、自分が救われる事などは、
全く無かった。
きっと、他の生命を殺戮し、殲滅せしめる兵器として造られた、自分自身に対する自己矛
盾を強く抱えたまま、一切の感情を放棄し、思考する事さえも、やがて諦めていただろう。
あの日までは、自分は、無為な殺戮を繰り返す為の道具として、また、その都度、必要に
応じて人々の欲望の受け止めるだけの存在でしかなかったのだ。
自らという存在が瓦解し、その役目を果たさなくなるまで、ただ、ひたすら使役される。
そんな日々を送る筈の身の上にあったのだから。
今、再び、それを自覚した瞬間、アルの背筋に、言いようもない、自分自身が持つ、獣と
しての本能に忠実に即した、高揚感とも畏怖心とも取れない感覚がはしる。
同時に、アルは、今、自分の目の前にいる柳から、最も嫌悪するあの人間と同じ類の性質
を極めて明確に感じ取っていた。
たった今、相手への殺気を全く抑える事無く、また、自らの持つ能力を殆ど乗せずに、放
った一撃は、やはり、こちら側が想定していた通りにかわされている。
ならば、本気で自らの力を解き放った上で、相手の息の根を止めるまでだ。
そうして、アルは、今までに、この男の目の前で、殆どと言って良い程、使役する事無く、
封じてきた自らの力の一片を、更に明確な意図を持って、解き放つ。
アルは、自分自身の持つ能力によって、手元に生成している光の粒子のような物質で構成
された剣に自らが持つ力を更に乗せる。
それを今までの所作とは、全く比べものにならない速度で、相対する柳に向かって、一気
に振り抜く。
だが、その剣撃の軌道は、彼と柳の間へと割り込むように入ってきた、予期せぬ相手から
の一撃によって、アルが意図していなかった方向へと逸れた。
「っ!」
自らが放った攻撃が鋭い衝撃音とともに弾かれ、その軌道が逸れ、通常の剣撃と何ら変わ
ることなく、柳のフランベルグによって、受け止められた瞬間、アルは思わず声をあげた。
そうして、新たな攻撃を挟んできた相手を確認する為に、アルは、反射的に、その方向へ
と視線を向ける。
また、今まで、アルと相対していた柳も、ほぼ同時に、アルと同じように、その方向を見
ていた。だが、それは、確認するまでも無い相手である事は、明白ではあったが。
相対する二人の間へと割り込むような攻撃を仕掛けてきたのは、もちろん、ウィルだ。
彼は、蒼い光の粒子を帯びたブレードを少し離れた距離から、的確に放ち、アルの攻撃の
軌道を反らし、柳へと直接当たり込む筈であった、その位置から外していた。
墨色の真っ直ぐに伸びた長い髪とトパーズブルーの瞳が印象的な、精悍な顔つきをした、
上背の高い、その青年は、最初に攻撃を放った直後から動きを止める事なく、再び攻撃を
繰り出す。
その攻撃は、先程と同じく、二人の間へと割り込みをかける為のものだったが、今度のも
のは、若干、その性質が異なる。
それは、アルと柳の間合いを広く開けさせる事を目途としたものだったからだ。
ウィルは、その攻撃を放つと同時に、素早い動作で走り込み、今度は間違いなく、二人の
間に自らの身体を割り込ませた。
そうして、そのまま、引き続いて、流れるような所作をもって、激しい金属音と火花を散
らしながら、柳と剣を打ち交わしていた。
「そろそろ代わってもらうよ」
ウィルは、新たに対峙する事になった、柳と笑顔で視線を交わしつつ、そう言った。
その直後に、たった今、柳と打ち交わした剣をそのままの流れに乗せて、大きく振りきる。
それも、勿論、その動作をもって、アルと自らの間合いを更に大きく開けさせる為だ。
「貴様になど、代わりが務まるのか」
「少なくとも、今までの奴と比べれば、貴方をより愉しませる事が出来ると思いますよ」
新たなに対峙する事になった、この相手の太刀筋についても、柳は正確に見切った上で、
今までと何ら変る事なく、軽く受け流すようにして、かわし切る。
ただ、柳は、自分と今まで対峙していた、金髪碧眼の青年以外の者が急に立ち入るという
事自体に、強い不快感を露わにした表情を見せていた。
また、今、ウィルが微笑みながら告げた言葉が、その感情を更に強くさせた。
先程の金髪碧眼の青年と比べると、大人びた雰囲気を持つ、このトパーズブルーの瞳の青
年が、恐らくは、こちら側の関心を全て引き付ける為に、そうした言動をしているのだと
いう事は、すぐに判った。
だが、柳にとっては、この青年がそうして、全ての事柄について、冷静に思考を重ねた上
で、成しているという事自体が、特に気に食わなかった。
先程、仕掛けてきた攻撃も、今まで、金髪碧眼の青年が成し得ていた、自分と対峙すると
いう役割を代わりに引き受けるという目的を明らかにした上で、一番効果的な時宜を見計
らった上でのものだ。
能力的な見地で見た場合には、恐らくは、このトパーズブルーの瞳の青年の方が格下にも
関わらずに、だ。
さて、新たに対峙する事となった、この相手には、出過ぎた真似をすると、どういう結果
になるのか、その身をもって、真摯に学んで貰う必要がありそうですかね――。
柳は、そんな事を考えながら、新たに対峙する事になった青年に向かって、緑闇色の瞳を
もって微笑みかける。
それから、この相対する青年が、余裕を帯びているようにさえ、見える表情を保ったまま
で応じる事など、決して出来ない速度を自らの剣に乗せて、鋭い一撃を再び放った。
一方、自分の意思に反して、その場から退く事になった、アルは、その二人の遣り取りを
険しい表情のまま、未だにそう遠く離れていない位置で、間近に見ていた。
つい先程、ウィルが、自分との間合いを大きく開けるように剣を振るった直後の時点では、
自分自身が、再び柳と対峙するべきだと思ったからだ。
だからこそ、アルは、あえてこの場所で、ウィルに続いて、攻撃を挟むための間合いを取
ろうと考えていた。
でも、それは違う。
それでは、ウィルが成した行為を無駄にする事になる。
そう気付いた瞬間、アルは、我に返った。
自分は、たった今、この仕事の制限事項を破って、あの男を手に掛けようとしていたのだ。
安易に感情を昂らせたまま、他人の命を狩ろうと、して、いた……んだ。
俺は、また、本能のままに、そう、相手を殺そうと、していたんだ。
「……っあ、……」
アルは、その事実を自覚した直後に、ほんの一瞬だけ、自らの内側に急速に込み上げてき
た複雑な心情を反映させるかのように、自らの心を押しつぶされそうな感覚に捉われた。
それと同時に、まるで発作のように現れた自らのその感情をやり過ごすために、彼は、既
に手元から剣を消失させていた右掌をもって、自分の左肩を強く掴む。
そうして、アルは、その場で足を止めたまま、咄嗟に自らの身体を強く掻き抱くようにし
て、俯いた。
こんな風に立ち止っている暇は、無い、のに。
感情のコントロールが利かない。
自分には、稀にこんな状況に陥る時があるのは、常日頃から心得ている事だ。
でも、これが、今、この場で、コントロール出来なくなるのは絶対に嫌だ。
再び昂っていく、この感情に合わせて、自身の能力の方も本気で制御出来なくなる。
それだけは、嫌だ。
アルは、その場で、荒い呼吸を繰り返しながら、自らが抱える本能に合わせて、再び、急
速に箍が外れそうになっていた自らの荒ぶる感情を抑え込んでゆく。
そうして、自らの感情を抑え始めたアルの脳裏に、自らが良く知る、白銀の髪とアイスブ
ルーの瞳の青年の声と、その際に彼が見せた真摯な表情が不意によぎる。
――もう、大丈夫だから。君は、自分自身が思っているよりも、相当に強い。
そんな風に、自我を壊してまで、相手を仕留める必要なんて、もう、二度と無いんだ。
それに、今の君には、自我を失って、立ち止っている余裕なんか、全く無い筈だろ!!
それは、以前、今と同じように歯止めが利かなくなりつつあった、自分を救ってくれた、
エイシアの言葉だ。
アルは、その言葉を胸に留め、再び、自らに言い聞かせるようにしながら、自分が本来、
併せ持っている、自らの心の奥底から強く湧き上がりつつあった、魔獣としての闘争本能
を抑え切る。
そうして、自らの呼吸をもう一度、整えながら、アルは、自らの顔をあげると同時に、も
う一度、改めて、ウィルと柳が互いに剣を激しく打ち交わす、その方向を見据えていた。
自らの目にそのウィルの様子を目に留めた瞬間、アルは、彼が自分との役割を変えた真意
について、確信を持った。
この場に、自分が再び加わって闘う事など、ウィルは望んではいない。
ウィルは、未だに微笑みさえ浮かべながら、何時もと同じように、あの黒髪と緑闇色の瞳
の端正な顔立ちの男と、相手の剣と自らが手元に生成したブレードをもって、ただ、ひた
すら、闘う事に徹している。
それを改めて認識したアルは、自らの方が、ウィルのこなす筈だった、役割に自らが徹す
る事に集中しようと、意識を切り替える。
そうして、この部屋に突入を仕掛けようとしていた、後続部隊の動きを止めた上で、再び、
繊の身柄を保護する役割に就く為に、この場を後にしていった。
【 続く 】
284 :-CROSS OVER 4-殺意と意思-:2012/03/24(土) 19:36:00
以下、前回同様、今回UP分のおまけ
↓
もし、今回の役回りを担うのが、アル以外だったら…ということで、彼らの言葉を借りてご紹介
◆ウィルの場合
⇒「アルみたいに切れる事は無かったと思うけどね。
俺が最初から、柳氏と当たっていたら、それはそれで、結構きつかったと思う。
あ、どちらにしろ、少し面倒な事になっていたという意味では、変わらないかな……」
◆エイシアの場合
⇒「えー! 無理!
切れたりとかは、絶対にないけど、アルとか、ウィルみたいに持たないよ!
情けないけど、多分、下手をすると、途中で相手に捕捉されてたんじゃないかと思う。
他の奴等にも結構迷惑かけてたんじゃないかなぁ……」
◆アルの場合
⇒「いや、好きで、ああなった訳じゃないし。
単に、相手を傷付けないって、制約事項に気を配り過ぎて、しくじっただけだし。
それを気にしなくても良ければ、もう少し、上手く対処出来たと思う」
「え、君、普段から、人を殺すとか、殺傷行為には結構、抵抗感あるでしょ」
「っ! 煩いよ! エイシア!」
更におまけ
後段の回想部分で入るエイシアの台詞は、ウィルだと、「大丈夫」とか短い言葉とともに、
アルを抱きしめるだけで終わっちゃうので、この組み合わせになりましたw
やっぱり、ウィルは相手に早く手を出す方なんだという事を改めて実感ww
以上、3人の行動パターンの考察第2段でしたw
アルは、色々な面で、すごく秀でていて、強い半面、繊細で優しい人…という、
王道パターンを狙った筈なのに、何か間違ってる気がするw
最終更新:2012年09月06日 20:43