「-CROSS OVER ENDLESS MISSON 3-欲求-」
作者:本スレ 1-710様
471 :-CROSS OVER ENDLESS MISSION 3-欲求-:2014/03/08(土) 21:51:23
本スレ1-710 です
本スレ1-091様 の
お子様(設定スレ 2-065) 、
本スレ1-200様 の
お子様(設定スレ 2-014) と
うちの子(創作物スレ 2-035) のスピンオフな二次SSを仕上げましたので、投下します
以下、属性表記です
・そんな描写は殆どないけど、現代風ファンタジー(獣人変化もの)
・
設定スレ2-037 の共通設定ベース のSSです
・第1話と第2話(
創作物スレ 2-427、
449 )からの続きものです
これだけでも読めるかと思いますが、若干のネタバレ要素?も含みますので、できれば
前回までのSSもお読みいただいた方がより楽しめるかも
・エロなし、でも相変わらずの軽薄攻め注意
・ストーリーはやや長めで、いつもどおりのご都合主義的展開あり
・登場キャラクターは、ヘンリー(19歳)、ルーシェルさん(17歳)、幸さん(20歳)です
・設定準拠ではない表記、設定矛盾のある表記を若干含みます
・キャラ&設定が1-091様、1-200様の公式設定から外れている可能性あり
・参考までに登場する子等のコードネームをご紹介(1-200様設定準拠に拠ります)
ARS→アレス様、CSC→シンさん、ET04→シルヴィアさん
EPSシリーズ→メサイア、エル etc.
こんな感じですが、よろしかったらどうぞ
472 :-CROSS OVER ENDLESS MISSION 3-欲求-:2014/03/08(土) 21:53:39
金色と漆黒に染め分けた幾分華美な印象を受ける髪と金色の瞳を持つ精悍な顔つき青年は、
軽く身なりを整えると、ベッドの上から静かに降りた。
彼が降りたベッドの上には、短く整えられ、手入れの行き届いたダークブラウンの髪の華
奢な身体つきの青年がその身に何も纏う事なく、眠っている。
静かに、まるで意識を失くしたかのように眠り続ける青年の姿を目に留めると、金色の瞳
の青年は、柔らかな上掛けをベッド上で眠り続ける彼の身体の上へと、そっと掛けた。
次に金色の瞳の青年はベッド脇の小さなテーブルの上に置いたままにしていた、自らの眼
鏡を手に取ると、それを掛ける。
同時に彼は、眼鏡の右側のテンプルに手を遣り、そこに取り付けられているシステムの起
動ボタンを押した。
その直後に、彼が見つめるレンズの先には、眼鏡に内蔵されたたインターネット接続のサ
ーチエンジンシステムの起動画面が映る。続いて、画面上には、本人確認の実行と、それ
を認証したとのメッセージが表示されてゆく。
この画面自体は、眼鏡を掛けている彼、本人にしか見えてはいない。
例えば、彼がこの場で他の誰かと対面していたとしても、相対するその人物には、ただの
透明なレンズの眼鏡にしか見えないように出来ている。
今、この部屋には、先程からベッドの上で眠り続ける華奢な身体つきの青年と、金色の瞳
を持つ、彼自身しか居ない。
だから、この眼鏡に搭載されているサーチエンジンシステムや、カムフラージュ機能をは
じめとする、高度な機能を使用している状況にある事が他人の目に触れる可能性は極めて
低い。故に彼には今、現時点で、そうした事項を全く気に留めている様子はなかった。
「とりあえず、僕のピアスの光学迷彩機能の起動を頼むよ。
それと、このまま、ルーシェルにつないでもらえるかな」
『承知シマシタ』
青年が呟ように指示した声に応じて、電子音声のガイド音が、彼の聴覚へと直接響く形式
で流された。それに応じて、彼の瞳の色が、金色から漆黒へと切り替えられる。
恐らく、先に指示していた、彼が耳に装着しているピアスに仕込まれている連動式の光学
迷彩機能の起動によって色彩補正が行われたのだろう。
続けて、彼が掛けていた眼鏡の左側のレンズのみが、外界の景色が見渡せる通常の仕様に
切り替わると同時に、右側レンズだけに新たな映像が映し出される。
彼が見つめる画面の先には、淡い空色の色合いを基調としながらも、さまざまな淡い色合
いの光を帯びて柔らかに波打つ短く整えられた髪と紫水晶の瞳を持つ、17歳位の年頃の
青年――ルーシェルの姿が映った。
その姿を目に留めながら、先程までの金色の瞳の色を漆黒へと変えた青年は、軽く微笑み、
レンズに映る相手へと向かって声をかけた。
「やあ、ルーシェル、定刻よりも少し待たせてしまう結果になって済まなかったね。
君が精査したデータからの対象人物の推挙はいつも的確で本当に助かるよ。
おかけで僕の方は首尾よく事を進められそうだ。
これからそっちに戻るけど、君の方はどう? 特に変わりはない?」
『貴方が意図した計画をより円滑に進める事が出来るようになったのですね。
それは何よりです。加えて、私の方も演算結果の精度などをより高める事が出来ている
のだとすれば、嬉しいのですが。
それよりも、ヘンリー、今、現時点で、貴方が上半身に衣服を何も身につけていないと
いう点については、あまり関心しませんが』
漆黒へと瞳の色を変えた青年――ヘンリーが軽く微笑みながら声をかけたのに対し、彼との
会話に応じたルーシェルの方は、表情一つ変える事なく、淡々と返事を返した。
ルーシェルが目に留めているモニターには、ヘンリーの視覚が捉えている映像とほぼ同じ
対象物が、件の眼鏡に装備された機能によって、ほぼ、リアルタイムで送られている。
多分、ルーシェルは、ヘンリー自身の姿が、このホテルの客室に備えられた鏡に映ってい
る様を彼自身が見つめるモニターの先で確認していたのだろう。
自らの傍に在った大きな鏡をしっかりと目に留めていたわけではないが、ヘンリーの視界
の端にそれがあったのは事実だ。
――全く、ルーシェルは意外とそういうところに目敏いよなぁ……。
などと思いながら、ヘンリーはごく僅かに曇ったルーシェルの表情を目に留めていた。
それは、他の人物であれば気付きもしない程度のものだ。
相手のそんな表情を目に留めていながら、ヘンリーは、画面の向こう映るルーシェルに向
かって穏やかにも見える面持ちで微笑んだ。
「ああ、そうだね、済まない。これからちゃんとしようと思っていたところだ」
そう言いながら、ヘンリーは室内に備え付けられたクローゼットの方へと向かって歩いて
いった。同時に、画面に映るルーシェルに続けて言葉をかけつつ、会話を先に進めていく。
「ところで、重ねて確認して悪いけど、そっちはどう?
EPSシリーズに対しては、引き続き、従前からの継続的な監視体制が取れてるかな。
あと、ARSはどう? 問題行動を起こしたりしてないかい?」
『問題ありません。件の監視対象については、引き続き継続的な監視体制を敷いています。
ARSの許諾範囲を超えた問題行動も今のところ、検知していません』
「そう、それは良かった」
ルーシェルが述べた言葉の意図から推測すると、少なくとも、ARS――アレスにはまた、
軽微な問題行動に類する行動が見受けられたという事なのだろう。
それでも、ヘンリーは、その事に大して気を取られた様子もなく、彼自身が、今、現時点
で、その他にも幾つか気に掛けている事案の詳細を確認していこうと思案を巡らせていた。
同時に彼は、クローゼットに掛けてあった、漆黒のフィールドコートとジャケットを手に
取り、それを素肌の上に、そのまま重ねて着込む。
本来なら、この下に元々着ていた墨色のミリタリーシャツを羽織るところなのだが。
だが、それは先程、このベッドの上で今も眠り続ける青年との行為の後で、その残滓を拭
う為に脱ぎ捨て、そうした目途に使用したままだった。
――我ながら、随分と余裕を無くしていたかのようにも取られかねない真似をしているな。
まるで他人事のように思考を巡らせながら、ヘンリーは、ベッド脇に置かれた小さなテー
ブルの方へと戻るように歩を進めた。
その間にも、ヘンリーが見つめるレンズの先に映像が結ばれたままになっているルーシェ
ルの方からは、淡々と続けて報告がなされる。筈だったのだが。
『それから……』
次の案件の報告へと話が移る直前に、ルーシェルは僅かに間を空けた。
だが直後に、ルーシェルは普段どおりの様子を取り戻し、その後も感情を一切乗せずに、
ヘンリーへ要件を伝えてゆく。
『主任からCSCの再度の動作確認テストと前回作戦時の行動確認を兼ねた対象地域巡視
中にET04を捕縛したとの連絡が入りました。彼等は今、此方に向かっています。
対象車両については、現在、既に位置情報常時取得モードに切り替えて監視を行い、
彼等の位置情報と現況把握の常時確保に努めているところです』
ヘンリーは、新たに報告がなされたこの事項の内容を気に留めるとともに、ルーシェルの
僅かな表情らしきものの変化にも気付いていた。
それでも、ヘンリーは、敢えてそれを気に留めていないのだ、といった態度を取りながら、
ルーシェルの言葉に淡々と短い返事を返す。
「そうか、それはすごいね」
ルーシェルは、人間ではない。
彼は後方支援型として高度な情報処理を担うバイオロイドだ。
バイオロイドながら、既存のデータベースへの親和性を極限まで高める為に、人間でいう
ところの情感といった機能がかなり削ぎ落とされて生成されている。
通常、一般的に生成されている人工生命体が持ち合わせる、生物本能的な感情の根幹に関
わる部分についても、その例外はない。
だから――彼には、自らを他人と比較し、自己優位性を他人に認めてもらいたいと思う欲
求など、ごく僅かにしか存在しない筈だ。
――僕等と常日頃から日常的に関わる事で、ルーシェルにも少しずつ、自らの存在を他人
からも認めて欲しいっていう、そんな欲求が出てきたのかな。
まあ、それ自体は、喜ばしい事だと思うけどね。
そんな事を考えながら、小さなテーブルの前まで戻ってきたヘンリーは、その場でジャケ
ットの胸元のポケットに入れっぱなしにしていた、万年筆を取り出した。
同時に彼は、ジャケットのサイドポケットから自らの氏名と連絡先を付記した名刺を取り
出し、余白にメッセージを書き添えていく。
その間にもルーシェルからの報告は途切れる事なく続けられる。
『あと、ヘンリー、貴方宛に、欧州連合日本国総領事 事務次官補 第一秘書官補 ウィリア
ム・グレイス・ハーグ氏から電話連絡が入っています。
よろしければ、先方に貴方の携帯電話の番号を再度伝えておきますが』
「そう、相手先の彼は、彼の個人的な連絡先は君に伝えてくれなかったって事か。
いいよ、彼に僕の携帯番号を伝えてくれないか」
ヘンリーは、ルーシェルからのその報告を耳にしても、名刺へと文字を書き添える自らの
手許を止めることなく、極めて平静な様子で返答を返した。
ただ、彼は、内心では、ET04の保護者たる青年――ウィリアムの行動の早さに少しばかりの
驚きを覚えていたのだ。
同時に、ウィリアムが起こした行動に対して、僅かばかりの期待とともに、高揚感を感じて
いた、自分自身の心境の変化にも少々苦笑していたのだが。
『解りました』
自らの視線の先の画像に映る相手からの短い言葉を受けて、ヘンリーは普段どおりの人好
きのする微笑みをルーシェルへと向けながら、儀礼的かつ定例的な指示を伝えておく。
「じゃあ、これから戻るから。また、何か動きがあったら、報告してくれるか。
これの回線は常時オンにして、すぐに応じられるようにしておくよ」
『了解しました』
「ありがとう。なるべく早く戻るよ」
ヘンリーが、再び微笑みながら、そう伝えたと同時に、今まで彼の眼鏡のレンズ上に結ば
れていた、ルーシェルの映像が途切れた。取り急ぎ、ヘンリーに報告すべきだと判断した
事項は全て伝えたという事だろう。
その途端に、ヘンリーの視界を遮るも映像が何一つ無くなり、彼が身に着けている件の眼
鏡はただ、普通の眼鏡と何ら変わらないものになった。
――やれやれ、こんなに早く、事が展開するとは思ってなかったな。
だからこそ、ねえ、幸、資産家であり、なおかつ、この日本でも名の知れた権力者だった
渡氏――の養子たる君と友達になろうと思ったんだけどね。
もう既に、渡氏が死去されてから久しいという事も了知してるけど。
それでも、彼の交友関係を辿れば、日本国における最高峰の対魔防衛組織である白き槍や、
欧州連合日本国総領事館にも独自の交渉ルートを作れるかもしれないと思ってたんだが。
まあ、どちらにしても――ウィリアム、これで漸く、また君に会えるね。
改めてそうした事項に想いを巡らせながら、ヘンリーは、ベッドの上で未だに眠り続ける
艶やかなダークブラウンの髪の青年――幸の方へと、もう一度だけ、視線を向ける。
程なく、彼は、その視線を幸の方から外すと、音を殆ど立てる事もなく、このホテルの部
屋を後にした。
へンリーが立ち去った後には、自らの限界を超える程の相手からの行為を受け止め続けた
結果、意識を無くしたまま、深く眠り続ける幸だけが残された。
※
ただ一人だけで部屋に残されていた幸は、それなりの間隔を置きつつではあるが、幾度と
なく響き続けていた自らのスマートフォンの振動音で再び目を覚ます事になった。
幸は未だに意識が覚醒しきってはいないに等しい状態の中で、自らの気力を振り絞り、気
だるい感覚の残る自分自身の身体をベッドの上から無理やり引き起こした。
そうして、彼はベッドから起き上ると、すぐ傍に在った小さなテーブルの上に置いたまま
にしていた、自らのスマートフォンを手に取る。
幸は、自らのスマートフォンに表示された、連絡をしてきた相手方の名前を確認してから、
その電源を一度、切った。
いつもなら、スマートフォンに表示されている、連絡相手の表示を目にした瞬間に、相手
への返信メールなり、電話連絡なりをしようとする筈なのに。その日の彼の行動は違った。
スマートフォンの電源を切った先程の小さなテーブルの上に、幸は改めて目を留める。
其処には、先程、幸が手にしたスマートフォンの近くへと、置かれていた、一枚の名刺が
あった。
幸が目に留めている名刺――その小さな紙片には、黄金の瞳を持つ、あの青年自身の連絡
先が付記されており、其処には更に、幸に宛てたメッセージが添えられていた。
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幸、君が望むなら何時でも構わないから。
僕を呼んで。心から愛している。待っているから。
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青年からのメッセージを目に留めながら、幸は自分自身の脳裏に焼きついた、黄金の瞳を
持つ、精悍な顔つきの彼――ヘンリーが自らに向かって、微笑みかけた、あの表情を思い出
した。
自分自身の心の内側に、切なく遣り切れない複雑な感情と、何処か火照りを帯びた熱病に
も似た感覚を覚え、幸は無意識のうちに握った両手を自らの胸元に押し宛てる。
自らの感情を押し殺そうとするかのように、幸はその場に立ったまま俯き、自身の瞳を強
く閉じた。
【END】
※wiki収録後に、一部修正を加えました。
お読みいただきありがとうございました!
ということで、今回はまたもストーリーを更に分岐させるべく? 伏線らしきものをいくつか
入れてみましたw
ヘンリーさん同様、相変わらず場当たり的な感じではありすが、またそのうち、ちょっとした
続きなんかも書けるといいなと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いします!
最終更新:2014年08月17日 16:25