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「Night of the primary color jungle (密林の夜)03_Cardinalis cardinalis」


作者:本スレ 1-200

491 :オリキャラと名無しさん:2014/04/27(日) 21:18:19
こんばんは、1-200です
クロスSSの続き(前回分は 2_Morelia viridis ( 創作物スレ 2-483 ))をろだにアップしました
以下概要と注意書きです

※複数作者様によるクロス設定( 設定スレ 2-037 )の世界観を元にした、
現代or近未来の日本が舞台のSS
設定スレ 2-014 のキャラ、アレスと、設定スレ 2-0441-549様 )のキャラ、
 レダ様とリコ様をお借りしました
※暴力描写、痛覚描写、汚物描写にご注意下さい(でもお好きな方にはぬるいです)
※お借りしたキャラクターには筆者の想像が多分に入っております
 本文中に登場する彼らのエピソードも全て筆者による創作なので、
 作者様のイメージや設定からはずれる可能性が大です、二次創作としてお読み下さい
※登場する街は架空です
※いつものごとく厨モード、長文

今回で終了となります、キャラをお貸しくださった549様に感謝です
ありがとうございました!



3.Cardinalis cardinalis

※暴力描写、痛覚描写、汚物描写注意


「常識ねぇ?」

レダの態度はとても友好的とは言えない。アレスの方もこういう相手には慣れているが、
目には目をの性分である。わざとらしく眉をしかめて、しげしげとレダを頭の先から爪先まで眺める。

「君の常識の基準について、是非聞いてみたいところだね。
 まあいいや。僕の固有名詞は一応『アレス』って事になってる。姓は無い。
 これでいいかな、ワカメ君」

リコが吹出し、盛大な笑い声をあげた。綺麗な顔に不似合いな、勘に触る高笑い。
だがどこか本来の柄ではないような、後から身につけたような、かすかな違和感を覚える笑い方だった。
レダは別に腹を立てた様子も無く平然と応える。

「へえ。それで?キミは何を知ってんの、アヌス君」
「………」

肝心の質問には答える事なく、どこまでも相手を小馬鹿にした態度を崩さない。
これ以上挑発しあっても不毛なだけだ。そう判断したアレスは話を進める事にした。
名前など分からなくても問題は無い。

「とりあえず、君達が何なのかとか、どこの組織に所属しているかとか、
 そういう事は聞かないでおく。どうせ答えてくれるわけないしね。
 でもひとつ忠告しておくと、アレからは手を引いた方がいい」

今日何度目かの、冷たい空気が三人の間を流れた。
レダはやれやれという具合に頭をかき、リコの顔にはバッカじゃねえの、と書いてある。
笑うのは一応我慢してやっているという顔で、レダが口を開いた。

「ハイそうですか、分かりましたぁ!
 とか言うと思ってねぇよなまさか。なあ?」
「でもこれは事実だ。あれはきっと君らの手には負えない」

涼しい顔で淡々と忠告しているように見えるが、アレスの内心は穏やかではない。
静かに苛立ちザワついているのがレダには感じ取れる。衣服の静電気が顔面を撫でるような感じだ。
そういう者を見るのは面白い。だが後を付けられたリコは面白くなさそうだ。

「そんな事言いにわざわざ来たのかよ。暇な奴だな」
「親切と言ってほしいなぁ」

『アレは僕のものだ。あれから何年も足跡を追ってきた。
 ようやく接触する機会ができそうなのに、横からちょっかい出されてたまるか…』

なるほどそういう事かと、レダは内心で笑った。
思考を読み取られている事など全く知らないアレスはあくまでもクールを装っているが、何の事はない。
好きな子に近付くライバルを追い払いたい子供と同じだ。

「必死だねぇ」
「何が?君の相棒には世話になったから忠告に来たまでだよ。
 むざむざと殺されるには惜しい美人だからね…ねえリコ?昨夜は楽しかったね?」

リコの反応は冷たいものだった。

「楽しくねぇよヘタクソ。持久力だけのトド野郎が」

今度はレダがゲラゲラと笑う番だった。アレスの顔から笑みが消える。
遊び慣れている自負のある男にとって、これはかなり痛烈な侮辱だろう。
アレスはあらゆる種類の罵詈雑言を日常的に浴びせられる環境で生きてきたが、それは多くの場合
弱い犬共の無駄吠えに過ぎなかった。車のエンジン音や風の音と変わらない、単なる環境音だ。
だがリコからのこの言葉は、明らかにそういうものとは違った作用を彼に及ぼした。

「…やっぱり言葉で言っても無駄みたいだね。残念だよ」

アレスは腕組みを解く。周囲の空気が変わった。
飄々とした態度の下に押し留めていた怒気が少しづつ漏れ出し、濃度を上げて行くのが分かる。

「ほら見ろ怒ってるぞ、こわいから謝っとけよなリコ」
「本当の事よ」

それでも二人に危機感や緊張の色は無い。それどころか、レダは高揚感を隠せない。
さてどんな芸を見せてくれるのか―。

だがレダの期待とは裏腹に、アレスは不意に眩しそうに目を細めたかと思うと
眉間を指で押さえて下を向いてしまった。敵と対峙した状態で顔を伏せるなど自殺行為だ。
だがその時爆発的に高まった怒りの波長に、レダは警戒した。

「………?」
「何だよ何だよ泣いちゃったのかぁ?それともゴメンナサイですかぁ?」

もちろんアレスは泣いているわけでも、許しを請うているわけでもなかった。
レダが肘でリコに合図を送る。Goサインだ。だがその瞬間。
二人の視界からアレスが消えた。

素早く移動した事の比喩ではない。文字通り視界からかき消されるように見えなくなったのだ。
あの姿を隠す妙な能力だ。リコは素早く懐からナイフを抜き、レダは身を低くして不意打ちに備えつつ、
一瞬だけ考えて銃を抜いた。

「おい、銃は―」

奴には効かない筈―リコが問おうとした瞬間、レダは身を翻しながら銃を発射した。
地面に赤い飛沫が飛び散り、レダの嬌声が響き渡る。

レダが放った.50ActionExpress弾は、今度こそ奴の体を捉えた。
血は大した量ではないが、かすった程度というものでもない。あの「見えない壁」は解除されていた。
いや、そうではない。解除したのではなく、されてしまったのだ。本人の意思とは無関係に。
レダの顔に、残忍な笑みが浮かんでいる。

流血した本人の姿は相変わらず見えない。
血は特定の位置に固まって滴るのではなく、一定の方向に向かって点々と散っている。
二人がいる場所とは反対の方向だ。つまり奴は逃げ出したのだ。

「お逃げになるんですかー?」
「無駄だよバァカ!」

レダが使用する自動拳銃、デザートイーグル.50AEは、人間相手なら明らかにオーバーキルの高い破壊力を持つ。
頭に当たれば頭蓋骨が果実のように抉れ、腹に当たれば内臓をぶちまけるだろう。
だがさすがというか、バイオロイドだけあって一発で倒れる事は無いようだ。
血を見て益々気分が高揚したレダは、更なる血を求めて大股で見えない獲物の方へ歩み寄って行く。
もはやターゲットの情報を引き出すという目的はどうでもよくなっている。
あのしたり顔を苦痛に歪ませる快楽を想像し、黄金の目をギラギラと輝かせていた。
奴は今弱っている。何故かは知らないが、不意に激しい頭痛に襲われてあの壁を維持できなくなったようだ。
このままふん捕まえたら、まず手足を撃ち抜き動けなくする。その後はナイフを使う。
足の指から始めて、手の指、性器、顔の部品、舌。体中の突起を丁寧に削ぎ落とす。
いや、まずは爪、歯、最後は生皮―

「警察がこっちに向かってるわよ」

周囲を警戒していたリコが鋭く制し、レダは歩みと妄想を中断した。
耳を澄ますと、確かに風にのってパトカーのサイレンの音が聴こえてくる。
まだ大分遠そうだが、向かっているのは間違いなくこちらの方向だ。

「どっかのバカが通報したな。ったくどんだけ平和なんだよこの国は」
「あれだけ派手にぶっ放したら、日本じゃなくたって警察来るわよ」

いくらこの都市の人間が周囲に無関心といえども、これだけ銃声がすればさすがに異常だと分かるのだろう。
怯えと好奇の混じった視線で二人を見ている者もいる。
写真など撮られてネットで拡散されれば、それなりに面倒な事になりかねない。
もう少しで人間よりはるかに丈夫で長持ちしそうな玩具が手に入るところではあったが、
とりあえずこの場は退散するべきだろう。

アレスの気配は既に無い。アスファルトには奴が流した血が点々と落ちているが、
20メートル程続いた後で突然途切れている。まるでその場から忽然と消えたか、
はてまた空へでも逃げたように。

「どっかで見た気がするんだよなぁ、あれ」
「知ってるの?」
「知らねぇけど、昔の資料にあった気がすんだよな」
「何よそれ。記憶が曖昧とか、HIPPがイカれてきてるんじゃないの?
 …でも今はそれよりも、ここから離れた方がいいんじゃないかしら?」

サイレンの音は、既に普通の人間でもはっきりと聞き取れるほどの距離まで近付いて来ている。
警官だろうがセルフディフェンスフォースだろうが、そんなものは怖くはない。
一人ひとりは全くの無力だからだ。だが組織としての奴らをわざわざ敵に回すのは利口ではない。

レダが悠々と愛車のバイクに跨り顎で合図を送ると、リコがその後ろに身体を寄せて跨る。
排気量約1900cc、輝く青紫色のメタリックボディ。
警察の目から逃れるのであればむしろ捨てていくべきであろう派手な車体のバイクを駆って、
二人は人々が呆然と見送る中、駐車場をあっという間に走り抜ける。

「周りの道路は封鎖されてるかもしれないわよ」
「んなもん俺らには関係ねぇし」

改造マフラーが発する爆音の残響が、長く長く尾を引いていた。

 ***

ショッピングモールから数ブロック離れたビルの屋上、給水タンクの下。コンクリートの地面の上に、
黄色い液体が小さな水溜りを作っている。
終電近くの駅のホームなどで見かける、酔客達の落し物と同種のものだ。

「……………あいつら……」

口元をぬぐい肩で息をしながら、アレスは呻いた。
だらりと下がった左腕に、暗い色の血が幾筋も絡み付いている。上腕からの出血は既に止まっていて、
指先に集まった血は乾き凝固しはじめている。

無事に残った右手で、上着の内ポケットから昨夜より大分薄くなった財布を取り出す。
中には現金の他に、薄いピンク色をした細長い錠剤が入っている。
震える指先でその中の一錠を押し出し、水も無しに口に入れて噛み砕いた。
胃袋が拒絶して反射的に戻しそうになるが、唇をかみ締めて堪える。
20分もすれば意識が遠のき、この耐え難い頭痛も治まるだろう。
そう思った時、これまでにない激痛の波が襲ってきた。

「く…あぁ……ッ!」

思わず側の機械室の壁を殴りつける。コンクリートの壁面が剥がれるように崩れ、中の鉄筋が露わになった。
髪をかきむしり地面にうずくまって、ゼンマイが切れかけた玩具のような動きでのたうち回る。

何だってこんな時に発作が来るのか。おかげでコリジョンフィールドを保てなくなり、
普通の状態なら絶対に負うはずのない傷まで負うハメになった。
絶え間なく襲う肩と頭の激痛の中で、フラッシュバックのようにリコとあのアクの強い緑髪の顔が浮かび、
アレスは痛みと怒りに身を震わせた。

あいつらはアレを狙っている。簡単にやられる奴ではないが、アレには奇妙に甘い所がある。
それにアレは大丈夫でも、一緒にいる小僧が足を引っ張るだろう。あの狡猾そうな奴らが
そっちを狙わないはずはない。リコの艶かしい色香やきつい視線は気に入っているが、
邪魔をするなら排除するしかない。
そしてあの緑髪の男。あいつは次に会った時、いや明日にでも、必ず殺さなければならない。
おそらくあれは、他人の肉の痛みに悦びを感じるタイプの本物のサディストだ。
これまでにも何人かあの手の人間は見てきたが、そいつらの比ではない化け物クラスだろう。
アレを手に入れたら、考えうる限りの手段を使って痛めつけ、陵辱し、汚し尽くそうとするはずだ。
そんな事は許さない。アレは僕のものだ。
アレは……

狭くなってゆく視界の端に、何者かが立っている事にアレスは気付く。
だが既に遅い。遠ざかる意識の中で彼が認識できたのは、それが近付いてくる足音だけだった。

 ***

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 個体識別コード:ARS_01b(Ares)
 所属:○○共和国国家親衛隊特殊部隊
 稼動開始年月日:2XXX年8月8日
 能力:熱(火炎、爆発)による対象の破壊、焼殺
    武器の自己生成とそれによる対象の殺傷、体組織の侵食(無機物には無効)
    光学迷彩フィールド 
    衝突物遮断フィールド

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「やれやれ、随分色々詰め込んだもんだ」
「オメェもだろ」
「でも自己修復系の能力は持ってねぇみてえだな」

レダは端末から掘り起こした古い内部資料を読んで笑った。添えられた画像の中に、
背中から赤い翼のようなものが生えた人間の写真がある。鳥みたいな野郎だとは思っていたが、
本当に鳥型だったとは。

二人が見つめる先にはモニターがあり、一人の人間がどこかの国の軍を相手に
単独で対峙している様子が映し出されている。コピーと圧縮を繰り返したのか
画質が劣化しひどく見づらいが、体格から男であるのは分かる。音声は無い。

男は特殊部隊が着るような全身黒の戦闘服で、ヘッドセットと一体化した黒いヘルメットをかぶり、
口元もガードされたフルフェイスゴーグルを付けている。そして異様な物を手にしていた。
身長に近い程の長さのある、槍のような、剣のような赤い物体。
そんな人間が、アサルトライフルを構えた兵士達に怯みもせずに仁王立ちしている。
一人の兵士が身振り手振りを交えて男に警告を与えているが、それを無視して向かってくる様子を見せると、
先頭にいた数人がついに発砲した。
だが男は倒れない。まるで男の周囲に見えない壁があるかのように、何も無いはずの空間で火花が散り
煙が上がっている。男が歩みを進めるにつれて発砲される弾数は増え、巻き上がる煙で姿が見えなくなる。
後ずさりしながら必死で応戦していた兵士達だが、一人が背を向けて逃げ出したのを合図に一斉に
我先にと逃げ出した。

その時だった。逃げる兵士達の群れの中にオレンジ色の火球が出現し、あっという間に膨らんで爆発した。
兵士達は火達磨となって吹き飛び、転げまわり、その火が最初の爆発から助かった兵士に燃え移る。
黒い男はパニックになった兵士達の群れの中に踏み込んで行き、手にしていた赤く長い武器を水平に薙いだ。
まるでアニメの魔法のように剣身が炎を纏い、切っ先から生まれる炎が周囲の人間達を包み込んで行く。
画面いっぱいに炎と煙が広がり、動画はそこで終わっていた。

「まるでコミックヒーローだな」
「派手ならいいってもんじゃないわ」
「まぁな。コイツの設計者はかなり頭が悪ィな」

確かにアレスの能力は派手で、多くのゴミを一度に消去するには適しているだろう。
だがそれは単なる掃除だ。戦いというのは、必ずしも火力で勝敗が決まるものではない。
特に火焔を操るとかいうガキの妄想みたいな能力は、少し考えれば防ぐ方法は沢山ある。
赤い馬鹿でかい得物は小回りがきかないから隙が出来るし、他者の体組織を侵食するというこれまた臭い能力も、
百分の一秒単位で生死が決まるバイオロイド同士の接近戦ではほぼ死に能力だろう。
0.01秒で相手の意識まで完全に操れるというのなら話は別だが。

一番注意すべきなのは光学迷彩フィールドだ。こういう一見地味な補助的能力が、戦いでは重要なのだ。
例えばリコの能力、相手の方向感覚を狂わせ一時的にでも酩酊状態にするというのは、逃走にも便利だが
戦闘には絶大な威力を発揮する。たとえ一秒でも行動を制限できれば、殺す機会は無限だ。

「この前は随分お怒りだったからなぁ。近いうちにお礼参りがあるかもしれねぇぞ」
「でも大体の能力は分かったから対策は出来るわ」

確かに注意は必要だが、対策さえとっていればさほど恐ろしい相手ではない。
自己修復能力が無いのも大きい。自分達のターゲットに比べればかなり容易な相手だ。
加えて薬物中毒の気もあるようだから、放っておけば自滅するかもしれない。
だがターゲットが他組織に渡るのを防ぐ、それも自分達がシュウから請け負った仕事だ。
あれを狩れる奴ではないだろうが、競合相手は少ない方が望ましい。
あの赤い小鳥さんには、できるだけ早めに舞台から降板してもらう事にしよう。

「なぁ、腹減らねぇ?」
「そうね。どうする?」
「アザブのあの店で地鶏でも食うか」
「鴨のがいいわ」

食事にうるさい二人は、様々なジャンルの高級店によく出入りしている。
金持ちの客を多く抱えるリコにとっては、ファミレスや定食屋などよりよほど馴染み深いし
稼ぎの良い相棒を持つレダにしても同じ事だった。

「あれの羽も毟ったら手羽先みたいになるのかしら」
「とっ捕まえたらやってみるか?」

日が暮れはじめた街は、再びギラギラとした原色の光に覆われつつある。
それらの光より更に鮮やかな警戒色を身に纏った二匹の猛獣は、今宵も新鮮な獲物の血肉を求めて
石とガラスの密林に消えて行った。


【end】


※レダ様がアレスに関する資料を所持していたエピソードは筆者による創作です。
 549様の設定ではありません。



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最終更新:2014年04月29日 22:30