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「Night of the primary color jungle (密林の夜)02_Morelia viridis」


作者:本スレ 1-200

483 :オリキャラと名無しさん:2014/03/13(木) 02:46:58

こんばんは、 1-200 です
前回投下しましたクロスSSの続きをろだにうpしました
以下の点にご注意願います

※複数作者様によるクロス設定( 設定スレ 2-037 )の世界観を元にした、現代or近未来の日本が舞台のSS
※登場人物
 設定スレ 2-014 のアレスと、設定スレ 2-0441-549様 )のキャラ、
 レダ様、リコ様をお借りしました
※前回( 1_Brugmansia ( 創作物スレ 2-444 ))の続きです
※軽い暴力描写有り
※お借りしたキャラクターは筆者の想像が多分に入っております
 作者様のイメージや設定からはずれる可能性が大です
※ご都合展開
※登場する街は架空です
※いつものごとく厨モード、長文
※前後編のつもりで書いていましたが、少しだけ長くなってしまいました。また続きます

以上についてご注意いただけますよう、お願い申し上げます。


2.Morelia viridis

アレスがシャワーを浴びて浴室から出て来た時、リコは化粧を終えて髪を整えている最中だった。
壁に寄りかかり、艶やかな銀髪が長い指で器用に結い上げられていく過程を見つめる。
無防備に晒された白い首筋。絹のように滑らかな肌。
その肌にさっき付けた赤い痕は、既にきれいに消えている。
キスマークは枕の跡などと違い、皮下出血を伴う一種の傷だ。普通なら小一時間で消えるものではない。
それは即ち治癒の早さが尋常ではない事を意味するかもしれない。
もっと大きな傷を付けてみたら分かり易いだろう。アレスはリコの白い首にナイフを穿つ想像をした。
こいつの血は何色をしているだろうか。勿論赤に決まっているが、この部屋のベッドカバーのような、
派手なバイオレットの血が流れていてもおかしくない。

アレスは不思議に思う。これだけよく出来た容姿の奴が、なぜ身体を売っているのだろう。
頭も悪そうには見えないし、金が欲しいならいくらでも方法はあるはずだ。
単なる淫乱かとも思ったが、そういう風にも見えない。行為中の姿を見ていれば分かる。
こちらを昂ぶらせる為の小細工は手慣れたものだが、自分が昂ぶる事は無い。
それは軽いデジャヴだった。
こいつも誰かに強制されているのだろうか?何かを守ろうとしているのだろうか?
それとも単純に自分のセックスの技量が足りないのだろうか?

アレスがとりとめのない思考に浸っているうちに、リコは整えた髪に派手なバレッタを留め、身支度を終えた。
客からプレゼントされたGUERLAINの香水を付けながら鏡越しにアレスの方へ目を向けると、
相変わらず遠慮の無い視線で首筋のあたりをじっとりと見つめている。
慣れているとはいえ、街中で見知らぬ輩にやられたら遠慮無く「警告」するところだ。
だが今はどうでも良い。金は先に受け取ってあるから、もうこいつに用は無い。

「どうだったかしら、初めてのオカマの感想は?」
「悪くなかったよ」
「そう。それじゃあ私は帰るわ。また遊びたくなったらいらっしゃい。
 次は少しはおまけしてあげるから」

首にストールをかけ、バッグを手に取って、リコはさっさとドアに向かって歩き出す。
あの年代にしては下手ではないだろう。勢いもある。だが緩急というものが足りない。
金払いは良いから、気が向いたらまた相手をしてやっても良い。

その時僅かに空気が動いた。
リコの視界の端で、アレスの太い腕が動く。リコは反射的に後ろに飛び退いて相手の攻撃圏外に逃れつつ、
腰の銃を抜いた。遊底を引いて撃鉄を起し、相手の眉間に狙いを定める。
ここまでで1秒とかからない。

「…何の真似だテメェ」
「へぇ、SP2022ね。意外と地味なんだね」

壁に片手をついてドアへの進路を塞ぎながら、アレスはニヤニヤと笑っている。

「そんなに構えないでよ、何もしやしないって。
 そんな靴履いてるのにすごい敏捷性だなあ、驚いたよ」
「……」

「まあそう急いで帰らなくたっていいじゃないか。
 せっかくこうやって知り合ったんだし、もう少し付き合ってよ。
 …ほんとに何もしないって、僕だって痛い目を見たくないからさ」

ホールドアップのポーズで戦意が無い事を示しているが、リコは銃を下ろさない。
壁に手をついた、ただそれだけの動作ではあるが、普通の人間には不可能なスピードだった。
あれは挑発だ。何もしないという言葉は到底信じられない。
だがとりあえず素性を確認しておく必要はある。仕事の邪魔になる手合いだったら、
場合によっては始末しておかなければならない。

「……アンタと違って暇じゃないのよ。どうしてもって言うなら別料金よ」

「なんでもいいよ、金なら払うさ。
 ほら、怖い顔しないでさ。ここは空気が悪い、移動しよう」

リコがゆっくりと銃を下ろしてホルダーへ収めると、アレスはにっこりと愛想良く笑った。
勿論作り笑いではあるが、人を馬鹿にしたうすら笑いしか出来ない奴だと思っていたリコは、
少しだけ意外な気がした。

 ***

古ぼけた雑居ビルの中にある、陰気で汚い球撞き場。
不規則な明滅を繰り返す蛍光灯の下で、アレスはボウラードに興じている。
ナインボールの3先セットマッチに勝ったリコは、賭け金の10万円を手にした。
その後は飽きてアレスが一人で撞くのを眺めながら、ある可能性について思考を巡らせている。

早朝の歓楽街(8時でもこういう街では十分に早朝だ)で出来る事は多くはない。
大抵の店は夕方の、あるいは昼からの営業に備えて短い休息の時間である。
ホテルで一眠りする事もできたが、お互い正体の知れない身で、眠る姿など見せられるわけがなかった。
結局言われるがままにアレスに付いて行き、この場末感満点の場所に辿り着いたというわけである。
設備はポケットテーブルが4台のみ、24時間営業だけが取り得の小さな店だ。
こんな店がゲームをする客だけでやっていけるとは思えない。裏で怪しい商売でもしているのだろう。
外国人の店員は眠そうな目でテレビを見ていたが、アレスが入ってくると手を挙げて挨拶した。
知り合いのようだ。二人は日本語でも英語でもない言葉で会話を交わす。
リコは聞き逃さなかった。アラビア語だ。母国語ではないが、発音がネイティブなのは分かる。
日常的に使っている言語だろう。
アラビア語圏で活動し、なおかつバイオロイド(推定)を所有する組織。
真っ先に思い浮かぶのは、テロ組織「暁の翼」だ。

暁の翼。豊富な資源国でもある国の資金力を背景に、様々な反社会活動を行っている組織。
欧州連合から流出した人材や技術を使い、生体兵器の開発も行っているという。
その為かつて金の烏も狙われ、技術者を狙ったテロ攻撃を受けた。
もし奴らだとしたら、日本に何の用なのか。
色々考えられるが、今自分が請け負っている仕事と絡んでいたらやっかいだ。
やはりホテルで殺しておくべきだったかもしれない。

一度脳裏をよぎった危険信号は、リコの中で次第に強く大きく点滅する。
奴が暁の翼である証拠は無い。リコはホテルでアレスの上着の内ポケットを調べているが、
所持品は現金と薬のみで、すぐに素性が分かる物は無かった。携帯電話すら持っていないのだ。
だがどちらにせよ人間ではない事は確実で、しかもこちらを放っておく気は無さそうだ。
今後もちょっかいを出されたのでは煩わしい事この上無い。不安材料は早めに排除しておくべきだろう。
だが殺す手間と生かしておくリスク、はたしてどちらが上か?

アレスは相変わらず球遊びに熱中している。今なら隙だらけだ。
こいつがどんな能力を持っているか不明だが、何かやる前にこちらの能力で昏倒させる。
そして頭と心臓に銃弾を撃ち込む。普通の人間よりは頑丈だろうが、バイオロイドは不死身ではない。
急所に複数の弾を撃ち込めば必ず死ぬ。問題は高い自己修復能力を持っている場合だが、
それでも限度というものがある。至近距離からの弾傷が数秒で全快する程の回復力は、
純粋な魔族でもない限り望めまい。
一般人の店員などさして問題ではないし、窓の外は隣のビルの壁面だから目撃される事もない。
サプレッサーもあるし、今すぐ大騒ぎにはならないはずだ。ためらう理由は無い。

 殺す。

そう決めたリコは、もう一度アレスの様子を確認してから、異能を発動させる為に神経を集中する―

店内に響く、小さな電子音。
リコのバッグが振動している。アレスがこちらを見た。
内心で舌打ちしながら、リコは派手に飾られた携帯電話の通話ボタンをタップする。

「何?…今?××町よ。そう。…違う。いるわよ、なんか変なの。
 で?…ああ。………確かなの、それ?」

だるそうに対応していたリコの声に、ほんの僅かに緊張の色が混じった。
アレスは再び球遊びに戻っているが、意識は興味津々の態である。

「用事が出来たんで帰るわ」

バッグに携帯を仕舞いながら、リコは立ち上がった。
ターゲットが見つかった。いよいよこいつと遊んでいる時間は無い。
注意を向けられてしまった以上、今ここで敵対行動に出るのも得策ではない。

「追加料金。5万でいいわよ。さっき賭け玉で勝たせてもらったから」

殺せば持っている現金全てをいただく事もできるが、そう出来ない以上
もらうものはもらっておかなければならない。
しらばくれているのか、アレスはキューのティップにチョークを塗りつけながら何かを考え込んでいる。

「おい、さっさとしろよ」

どうでもいい他人に対して気長な方ではないリコは、思わず地が出てしまう。
といっても、本来はこうではなかったはずなのだが。

「大事な用なの?」

苛立つリコの神経を逆撫でするかのように、殊更のんびりした様子でアレスは質問する。

「テメェに関係ねぇだろ」
「僕ならきっと手伝えると思うんだけどなあ」

こいつは何を言い出すのだろうか?
さっきの通話が聴こえたのかもしれない。こいつが本当にバイオロイドだとすれば十分に有り得る事だ。
それにしても「手伝える」とは。怪しいとか胡散臭い以前の話で、馬鹿げている。
そういえば得体の知れない薬を持っていたし、どこかのネジがゆるんでいるのかもしれない。
リコはもう相手にせず、ただ冷たい目でアレスを見下ろしていた。手は腰の銃にかけられている。

「いいねえその目、ゾクゾクするね」

アレスは楽しそうに一人でクックッと笑いながら、ゆっくりとした動作で財布から金を取り出した。

 ***

「オイオイなんだよこれだけか?」

数えるまでもない枚数の札を手に、青年は呆れるよりもむしろ憐れみを込めてぼやいた。
こんな連中が大金を持っていると期待したわけではないが、それにしても小学生のお小遣いレベルだ。
まあどいつもこいつも知能はとことん低そうだし、メスゴリラも逃げ出しそうな顔をしているし、
老人や女を相手にカツアゲでもやる程度の事でしか金を得られないのだろう。
まだ弱々しく痙攣している男の顔に空になった財布の束を投げつけて、青年は大型バイクに跨った。
エンジンをかけたまますぐには発進せず、時計を確認する。

「…おっせぇな」

何やってんだリコの奴。ウンコでもしてんのか?
転がったまま動かない男達を一瞥し、サングラスをかけ直した。
一際大きな音でエンジンをふかしてから、鮮やかなグリーンの髪をなびかせてその場を後にする。

レダが相棒のリコに電話で連絡してから既に20分が経った。
××町からここまで、リコならば急げば10分程で着くはずだ。どこかで油を売っているのだろうか。
変な連れが居ると言っていたから、まだ捉まっているのかもしれない。
ターゲットは現在図書館に居る。まず様子を見て、巣がどこにあるのかだけでも確認しておこう。
そう思って昨日からの新しい愛車、青紫色のXV1900CUを裏通りの路肩に停めていた隙に、
暇な連中に目を付けられたというわけだ。

重い車体をどうにか動かそうと無い知恵を絞っていた猿達は、戻って来た持ち主を見て言葉を失った。
185センチ近い長身と、服の上からでもありありと分かる鍛えられた肉体。
だがその男らしい体とは対照的に、派手な化粧を施した顔は妖艶ですらある。
カラーコンタクトだろう、瞳は猫のような、いや猫よりも鮮やかな金色だ。目元の小さな涙黒子が、
その妖しげな雰囲気を一層引き立てていた。ファーが付いた革のジャケットは目が覚めるようなピンク色で、
髪のグリーンと見事な対比を描き出している。
普段の彼らならば、化粧をしてピンクの服を着た男を見たら即、笑って冷やかしていた事だろう。
だがこの男に対してはそれが出来なかった。大蛇に睨まれた小猿のように怯み、困惑した。
こいつはヤバイ、色々な意味で。皆そう感じていたはずだった。彼らは本能に従って逃げ出すべきだったのだ。
だがそうしなかった。一匹の猿が余裕を見せようとしてバイクを蹴り、レダをからかう。
群れて行動する動物の習性として、仲間がそれにつられて笑った。

その結果彼らは――
ある者はその無為な生涯を終え、ある者は悔いる頭も失ったまま、ベッドの上で生涯を送る事となった。
たった一台のバイクを盗もうとした、ただそれだけの出来心と引き換えに。

 ***

尾行を再開したものの、結局ターゲットは最後まで追尾できなかった。
ショッピングモールに入って行ったのでレダも同じ建物に入ったが、人混みのせいで奴の思考を拾う事は困難だ。
目立つ容姿をしているので姿を追うのは簡単だが、今はこちらも控え目な恰好とは言い難い。
距離を保ちつつ尾行を続けていたが、とあるネズミのキャラクターグッズを売る店に入ったきり出て来なくなってしまった。
入り口はひとつしか無いのに、店の中のどこにも姿が無い。
こちらに気付いたのか、普段から尾行されている事を前提とした行動をとっているか、どちらかだろう。
何せ奴は、出来ない事は無いと言われる程の高性能を誇るのだ。突然消えても何の不思議も無い。
レダは気落ちする事もなくあっさりと諦め、アイスクリームを買ってなめながら鼻歌交じりに駐車場へと向かった。

「なんだよおせーよ。もうどっか行っちまったよ王子様は」

駐車場では、レダに負けず劣らずとがった外見の相棒、リコが待っていた。
単独でも十分に人目を引く彼らだが、一緒に居るとその相乗効果は凄まじい。
無個性な自動車が並ぶ駐車場に居ると、どこか間違った場所に紛れ込んでしまったかのように見える。

「うるせえのに捉まってたんだよ」
「へえ」

面白くもなさそうに相槌をうちながら、レダはワッフルコーンをバリバリと噛み砕いた。

「少しは何か分かったの?」
「さあ。ネズミに興味がおありだって事くらい?
 ………あと、他にもなんか五月蝿いのがいるって事くらい?」
「他?」

レダは半分残ったコーンを足元に放り投げて踏みつけた。白とピンクとミントグリーンが混ざった液体が飛び散る。

「つけられたのかよお前」
「……!」

レダは他者の思考を読み取れる。対象を選ぶ事が出来ない事と、自分の意思で遮断できない事が難点だが、
一定の距離内ならば認識していない相手でも思考が流れ込んで来る。
コソコソと姿を隠す者の探知には非常に有効なのだ。ただし、位置を特定する事は難しい。

「あの野郎か…」

リコは舌打ちした。あの頭のゆるいサボテン野郎だろう。やはり殺しておくべきだったと改めて歯噛みする。
銃を抜いたが、相変わらず姿は見えない。

「光学迷彩ねえ」

レダは腰の銃を抜いた。リコが持つものより大型の、デザートイーグル.50AE。
二人は耳を澄ました。姿は見えずとも、気配で位置を探る。
相手も訓練を受けているのか、簡単には察知されないように気配を殺している。
そういている間にも、レダの頭の中には敵の思考が流れ込み続ける。
気付かれたらしい事への疑問と、こちらがどういう能力を持っているのかについての様々な予測。

突然レダが振り向き、近くの建物の屋根に向かって発砲した。マズルフラッシュが光り、銃声が聴覚を貫く。
サプレッサーも無しに街中で発砲するなど無謀もいいところだが、レダは気にしない。
近くを歩くカップルが驚いて見たが、テレビか映画の撮影だとでも思ったらしく、騒ぐ事は無かった。
二人の出で立ちが日常離れしている事が、この場ではプラスに作用したようだ。
熱い空薬莢が地面に転がり、周囲に硝煙の臭いが漂う。弾が当たった様子は無い。
流れてくる思考から大体の位置を予測しただけなのだから無理の無い事だ。
しかし全くの見当違いというわけでも無かったようで、驚いた敵は移動を始めた。
こうなれば更に追いやすくなる。なかばテレビゲームのような感覚で、レダは見えざる敵を追って銃を連射した。
リコもそれに倣って銃を向ける。

「…分かったよ。降参降参」

突然声がして、何も無かった空間に獲物が姿を現した。黒髪に黒い瞳の、大柄な青年だ。
逆立てた髪が、なぜかある種の鳥を連想させる。
最初にリコに銃口を向けられた時と同じように、ホールドアップのポーズをとっていた。

「ちょっとした好奇心だよ、好奇心。君らと争う気は無いんだよ。
 リコもさあ、そんな怖い顔しないでよ。君の事気に入ってるのに、悲しくなっちゃうな僕」

リコは皆まで聞かずに無表情のまま、今度こそ銃を発射した。
狙いは正確だった。.40S&W弾はまっすぐにアレスの眉間を貫き、奴はその場に膝を―――折らなかった。
弾は届いていない。奴の顔から50センチくらい前方の空間がほんの一瞬虹色に光ったかと思うと、
目に見えない壁に当たったように弾かれたのだ。

「危ないなぁ…張ってて正解だよまったく」

兆弾を気にしながら、アレスは不貞腐れたような顔をしてブツブツと文句を言っている。
二人は大して驚く事もなく分析した。なるほど、あれが奴の能力か。
詳しい事は分からないが、あの「見えない壁」は、高速で衝突してくる物体に反応しているらしい。
その証拠に、風に舞うゴミは奴の身体に付着した。すべての物理現象に有効なわけではないのだ。
おそらく最前線で戦う事を前提に作られた軍事用のバイオロイドなのだろう。ショットガンやマシンガンも
あれがある限り効かないと見ていい。だが逆に言えばガードをする必要があるという事であり、
そういうもので殺せるという事だ。例えば爆発物を放り投げられた程度ならば、あれは反応しないだろう。
方法はいくらでもある。こちらの手段は何も銃だけではないのだ。

「君達少し血の気が多いよ。
 僕は見ての通り丸腰なんだよ、もう少しやさしくしてほしいなあ」
「…………」
「…………」
「…………」

大げさなジェスチャーで訴えかけたが、少しも共感を得られなかったようだ。
冷たい視線に晒されたアレスは耳を掻きながら真顔に戻り、改めて二人に切り出した。

「それに、君達が狙ってるバイオロイドの事ね。…狙ってるんだろ?
 あれについて話があるんだよ。多分そっちにとっても悪い話ではないと思うけど?」

リコはちらりと相棒を見た。
レダに嘘は通用しない。丸腰なのも、今のところ敵意が無いのも本当のようだ。
そして奴は彼ら二人のターゲットの事を知っている。あんな奴の話など到底信用出来ないが、
レダがいるとなれば別だ。

「ふーん…まぁいいや、とりあえず聞いてやるよ」
「話が分かるね」

二人は銃を収めた。距離を置くよりも接近した方が対処しやすいだろう。
話を聞くふりをしておびき寄せておく必要がある。情報を引き出したら、あるいは無用だと判断したら、
銃口を体に密着させて撃ち殺せばいい。リコの能力があれば簡単だ。
靴底に付いたアイスクリームを地面にこすりつけながら、レダは鳥男がこちらに近付いてくるのを黙って見ていた。
インペリアルトパーズのような濃い黄金の瞳は、獲物を狙うパイソンのそれに似ていなくもない。

「とりあえず名前を聞いておこうかな、リコの相棒君」
「…なぁリコ、人に名前聞く時の常識ってお前知ってるよな?」

よく晴れた穏やかな天気の日だったが、不意にこの場だけ冷たい風が吹いたように思われた。

【To be continued】


お読みいただきありがとうございました。以下補足です。

 ・アレスは携帯電話を持ってない?
 →他人名義のものを数台、こっそりどこかに所持してます。時々抜き打ちの私物検査があるので
 私室や手元には置いてません。(携帯電話の意味がw)
 バイオロイドに個人的な通信手段は与えないのが組織の方針なので、ルーシェルとシンは持ってません。
 組織独自端末は三人共持ち歩いてますが、通信記録や中身のアプリはチェックされています。
 ヘンリーさんの携帯電話は特例と思われます。

 ・アレスにはリコ様とレダ様の通話内容が聞こえた?
 →アレスはそれなりに身体機能も強化されていますが、通話全部が聞こえたわけではなく、
 所々、ターゲットの名前とかそのあたりだけを耳聡く聞きつけたんだと思います。

 ・リコ様は簡単につけられちゃう程鈍くないはず
 →と思っていますが、気付かれちゃうとレダ様とアレスを接触させられないので
 今回は気付かないでいていただきました。あとアレスは一応隠密行動は得意なのです。

 ・レダ様リコ様が使用している銃について
 →こちらの勝手な想像です。549様の想定と違うかと思いますが、きっと何丁か持っているんだという事で
 ご容赦いただければと思います。 

このお話は「if」の位置付けで書いておりますので、549様が今後お考えになるお話の妨げとなるものではありません。

※続きは、創作物スレ 2-491


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最終更新:2014年04月28日 00:28