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第3話 「奪われた槍」 3

412 : ◆gnI8YzVxOo:2011/06/30(木) 22:20:22
大型戦略戦術輸送機レイディバードが伊豆基地の制空圏内に差し掛かっていた。
クーガー少佐はクリストフ・アサイラムから手渡された資料を読み込んでいた。その中には新たな被験者候補のものも含まれていた。
「藤村……か」
藤村紫亜。幼さを残した16歳の少女。
藤村左京の従妹。――ただし殆ど面識は認められないらしい。本人たちも覚えていないだろう。
クーガー少佐は懐かしい名前に感慨を覚えた。同時にミュレッタ・レーゲンの名前も思い出した。
彼らはDC戦争とL5戦役を通して成長し、最高のパートナーとなった。ホワイトスターでの決戦であの魔星と運命を共にしたとの報告を受けた時の、凄まじい喪失感さえ思い出した。
二人の念動力評価値はB+。高いレベルにあるが、最高ランクとは言えない。しかし彼らの戦績は時としてA級念動力者すら凌いだ。ひょっとしたら彼らこそがアイノクス・クーガーの求めていたものだったのかも知れなかった――それを確かめる術は最早ないが。
少佐が感傷の沼に腰まで浸っていられたのもそこまでだった。
「リオンが三機接近中です。――いえ、後方には……ヒュッケバイン!?」
「……HIか」
クーガー少佐がモニタ越しの敵の姿を見て告げる。
HI――ヒュッケバイン・イミテイト。模造された凶鳥。
少佐は通信機を執った。
「護衛班、出撃せよ。敵はDC系テロ組織『ジュワユーズ』。目的はこのレイディバードで輸送中のPTと予想される。繰り返す、護衛班、出撃せよ!」


413 : ◆OLze.DQMEw:2011/06/30(木) 22:27:09
【伊豆近海】

TEXチームが外食を満喫しようとしているとき、伊豆近海を潜行している一隻のキラーホエール級があった。

【キラーホエール級・ブリッジ】
「そろそろか」
「ハッ、まもなく予定時刻であります、少佐。」
少佐と呼ばれた男はモニターを眺めていた。
そこには伊豆基地が映っている。
「さぁ、どう出てくる…?」


414 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/06/30(木) 22:49:46
>>412
「敵襲」
一番早く反応したのはイータであった。
まだ焼き魚定食を食べ終わっていなかったため、口の中はもごもごと動いている
「えー、今日休暇のはずじゃー」
「軍人に休暇なんてないってこと」
はぁ、とため息をつくケイトに対して、ぴしゃりと言い放つ
仕方ないとばかりに席をたったケイトは店員にお金を渡すと、全力で伊豆基地に走っていく
これから考える迷惑料も考えて、ちょっぴり色をつけて渡していた。
「こちら、イータ・ラングレン少尉。状況は?」
走りながら無線を使い、アイノクス・クーガー少佐に指示を仰ぐ。


415 : ◆YZUHAnFXK6:2011/06/30(木) 22:52:57
>>412
(危ない、ギリギリ間に合ってよかった…!!)
あの時一歩でも判断が鈍っていたら、この出撃に間に合わなかっただろう。
俺も、きっと彼女も……そういった意味ではレイカは本当に運がいいのかもしれない

「ツインドライブ、マシンコントロールクリア……出撃します!」
大口を開けたレイディバードから放たれる、尾を引くようなスラスターの閃光
黒い凶鳥と対を成すような白いその姿がゆっくりと映し出される。

だが、色は純白であろうがその姿を嫌悪するものは少なくないだろう。
嘗て、大量の人間を拉致し人体をパーツとして使用した機体―――――――――「ミロンガ」。
多少変化していようとも、それは間違いなく悪魔の姿だ。

「わざわざご苦労だな……アポイントくらい準備してくれよ……!」


416 : ◆gnI8YzVxOo:2011/06/30(木) 22:57:14
>>414
イータの素早い反応に感心するクーガー少佐。
「リオンとHI――ヒュッケバイン・イミテイトと呼ばれる機体の混成部隊だ。奴らがレイディバードの尻を狙っている。護衛もいるにはいるが、数が足りそうにない」
レイディバードにも武装あるが、所詮輸送機の装備でしかない。PTやAMの機動力の前には殆ど無力と言っていい。
「もう少しで伊豆基地の防空圏内に入る。そこまで粘らせる」


417 : ◆gnI8YzVxOo:2011/06/30(木) 23:04:34
先行するリオン小隊――その中にはガントレット状の兵装をマニピュレータに装備した機体があった。
リオン念動力試験型。単にリオンTTとも呼ばれる、ミツヤ・タカシロ曹長の専用機だ。
先陣を切る小隊に加えてもらえる名誉に、ミツヤは興奮の極みにあった。何しろ初陣だ。バーニングPTで旧DCからスカウトを受けたものの、訓練ばかりで為すことなく終戦を迎えたDC戦争。雌伏の二年は十代の若者には長すぎた。
――そうして俺はここにいる!
しびれるような興奮と共に、ミツヤはトリガーを引きミサイルを発射した。その後に小隊長の『馬鹿、早まるな!』という制止も、気にはならなかった。


418 : ◆YZUHAnFXK6:2011/06/30(木) 23:21:16
>>417
「陣形を整えるわけでもかき混ぜるわけでもなく、ただミサイルを撃つだけだと……」

回避行動をとる――――ことはない、むしろ逆に思い切りテスラドライブを吹かす。
プロジェクトTDとミロンガを掛け合わせただけはあり、その速度は並みの機体を凌駕している。
当然それだけのGがパイロットであるユーリにもかかるわけだが、この機体を制御するために受けた訓練の成果か、はたまた特殊なスーツのお陰か。
減速することもあまりの速さでミサイルに激突することもない、目指すリオンTTへの接近を躊躇無く行ったのだ。

「放出大サービスだ……退場料代わりにでも貰っていけよ……!」

マニピュレーターに握る巨大な銃《Cアームズ》、そのSモード……炸裂散弾、ショットガン
テキストや教科書では絶対に教えてくれないであろう《カウンター》、間合いは十分。
まるで下から飛び上がってくるように、リオンTTの前へと強襲し、躊躇無くその引き金を引いた。


419 : ◆gnI8YzVxOo:2011/06/30(木) 23:33:10
>>418
「うおお……ッ!?」
考えるより身体が反応している。腕のガントレット状の武装が変形する。
それは盾だ。Mode-DのDはDefenceのD。
「盾」とそれを覆うように展開された念動フィールドは、散弾では貫くことが出来ない。
「散弾じゃあなァ!」
ミツヤは嗤おうとして失敗した。唇が痙攣する。
速い。そして上手い。強敵だ、と感じる。
「でもな、一機だけで何が出来る!」
僚機のレールガンによる援護射撃。その最中にミツヤはTTの兵装を射撃モードに変形させる。
多目的念動兵装エアロ・クラッパーのMode-G――GはGunのG。
レールガンの弾幕を斬り裂いて、ビームの矢が敵機へ走った。

421 : ◆OLze.DQMEw:2011/06/30(木) 23:40:49
>>418
だが、その瞬間、2機に対してビームと砲弾の雨が降った。
「オイ新兵!! 新兵ごときがこのオレ様を出し抜こうなんざ100年早ぇんだよォ!!!」
ビームと砲弾の後に続き、1機の黒い機体が2機の間を高速で通過する。
黒い機体はそのままターンをかけ、メガリオンに向け再び銃弾の雨を降らせる。
その機体の名はアートルム
機体の形状はヒュッケバインによく似ていた。
「ヒャッアハッハァ!!死ねェ!!!」
パイロットのガルベスは狂っているかの如く突撃をかけた。


422 : ◆tL.I1Fkj/Y:2011/06/30(木) 23:51:25
>>414
「あ、ちょっと……行っちゃった」

代金を計算してお釣りを渡す間も無く嵐のように去っていったTEXチームに呆然とするリュコス。
置いていかれた金額はパッと見でも支払うべき金銭より明らかに多かった。


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


「エル、さっきの子、敵襲って言ってたね」
「ええ、確かに複数の害意を感じるわ……と言うよりあの子達軍属だったの?」

先程イータが言っていた言葉をリュコスは思案顔で呟く。
一方エルトロスは迫り来る害意を敏感に感じながらも、むしろ彼等彼女等が軍人であった事に若干の驚きを受ける。
確かに彼女達が居た世界ではそう言った事はよく有る事であったが、この世界もそうであるとは……。

「何処の世界でも事情は対して変わらず、か」

紅の少女が溜め息を吐くのも無理からぬ事であった。

「それよりエル、そんな近くで害意を感じるって事は……」
「……この辺りも巻き込まれる可能性があるわね。早めに店じまいの準備した方が良いかもね」

エルトロスの呟きに頷いたリュコスは、急いで店主のコウスケにその旨を伝えに行く。
その姿を見遣ったエルトロスは、不意に未だに帰ってこない紫亜に対する不安が増していくのを感じていた。

「……紫亜、最悪此方に戻ってこなくても良いから、無事でいなさいよね……」

その呟きは、大気に溶け込むように消えていった。


423 : ◆YZUHAnFXK6:2011/07/01(金) 00:01:36
>>419>>421
「念動フィールドだと……っ!」

ぞわりと背筋が震える、この感覚……相手も念動能力者。
このリオンに搭載されているこの兵装、セトル・リフレクター……いや、それの改良版か。

(間合いがもう少し近ければ抜けたかも知れないが、やられた)
軽く唇を噛む、リオンに念動兵器を搭載しようなんて滅茶苦茶なカスタマイズでもなければ、今ので落とせて居ただろう。
こんな実験機を投入してくるということ、さらに念動能力者をぶつけて来る形で出撃させたこと。それは相手も襲撃に対して何らかの準備をしていたの裏返しに他ならない。

「少佐、敵パイロットに念動能力者を確認……これは完全に狙われていた…っ!」

レイディバードへと通信を伝えた直後、コックピット内に響く警告音と脳内で伝えてくる直感的な警告。
リオンのレールガン、TTのエアロ・クラッパー。そこまではまだ良かった。ギリギリの中で回避することが出来たからだ。

「くぅぅ……っ!?」
機体が揺れる、機体の左面に遠方からの砲撃が叩きつけられたのだ。
アートルムの一機がこちらを攻撃してきたのだ、それも僚機へ当たることに躊躇もせずに乱射している。

「チッ、一機フリーにさせるわけには行かないんでな……!」
後方へと下がりながら、背部に搭載されたマイクロミサイル、それを弾幕としてばら撒く。
ふと横にあるガラスに防護されたボタンが目に付いた。

こいつを使うのは――――まだだ。

機体HP:残り70%

425 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 00:24:42
>>421>>423
降り注ぐ砲弾を掻い潜る。味方からの援護射撃――に見えて、その実は無差別砲撃。
これあるを事前に同僚や先輩から忠告されていなければ、被弾を受けていたことだろう。撃墜もありえる話だった。
「ガルベス中尉! 掩護するなら事前に警告を下さいよ!」
糠に釘を承知でミツヤは怒鳴る。あとで殴られるだろうな、とかはひとまず考えないことにした。
ガルベスの仇名は闘犬、あるいは狂犬。ただしそれを誰も面と言える者はいない。いずれにせよ余り愉快なことにはならないと分かりきっているからだ。
だが腕は確かだ。『ジュワユーズ』に籍を置くパイロットでも上の部類に入る。このミツヤとリオンTTでもガルベスとアートルムの相手になろうとは微塵も考えられなかった。
味方としても厄介だが、敵としてもそれ以上に手強い相手だろう。
ミツヤは僚機とガルベスに白い機体を任せるとして、自らはレイディバードに機体を向かわせた。

>>『少佐、敵パイロットに念動能力者を確認……これは完全に狙われていた…っ!』
少佐は短く「そのようだ」と応える。
「クルス曹長、もう少し持ち堪えろ。伊豆基地の増援が来るまでだ。いいな」
直截に命じる。
一方で別のところに湧く疑念――「完全に狙われていた」というユーリ・クルスの言葉。
周到に配置された襲撃。念動力者。
「まさか……これすらも陽動か!?」
すぐに伊豆基地へ通信する。


426 : ◆vGTe9D4z5Y:2011/07/01(金) 00:39:35
>>416
「了解しました、基地につき次第私たちも出撃します」
それだけ言うと、通信を切り、残りのメンバーにも状況を簡単に説明する。
全員のペースも上がっていく。
街を守りたいという想い、この場にいる誰もがそれを胸に秘めていた。
そうして、伊豆基地へとたどり着いた。

【各自出撃】

427 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 10:37:38
>>426
【伊豆基地】
エレナ(マズいわね……このままだと市街地に……)

彼女は今後の作戦を練りながら格納庫へと走っていた。しかし、到着した瞬間……信じられない出来事が起こっていたのであった。

エレナ「――ば……馬鹿な、アレは……」

伊豆基地より先行して出撃している機体の中に、本来自分にしか動かせない筈のTEX-15がいるのである。

エレナ「誰だ!私のブリューナクを奪ったのは!?」
???「――奪う? 返してもらうんだよ!!」

ブリューナクのを動かす何者かはエレナの念に反応してみせる。

???「こいつは元々、俺たちDCが作っていた機体でね……わざわざ、使いやすくしてくれてどうもありがとう!」

そう言い残すと、ブリューナクはブーストを全開にして輸送樹がいる方面へと向かう。

エレナ「――DC……だと……」

あまりにも酷い事実を知り、彼女は立ち尽くしてしまった。


428 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 10:44:14
リオンTTのエアロ・クラッパーが火を噴いた。ビームは過たず、エンジンの一基を貫いた。推力を大幅に失い、レイディバードの機体が傾ぐ。
「エンジンに被弾! 高度、保てません!」
操縦士に少佐が言う。揺れが酷い。
「伊豆基地までは?」
「恐らく無理です。少し遠すぎる」
ホログラムでマップを展開。少佐がある地点を指差す。
「ならば、ここだ。大通りだし、基地からも遠くはない。出来るな?」
操縦士は可能か否かを脳内でシミュレートする。答えは可能と出たようだ。
「諒解しました。ではレイディバード、不時着の態勢に入ります。少佐殿、座席でベルトを締めてください」
揺れが更に激しくなる。
可能な限り緩やかに。卵の中身は決して割らぬよう、卵の殻も決して割れぬよう、緩やかな角度で大気を滑り落ちる。
やがて、大通りが見える。自動車のドライバーたちはゆっくりと接近しつつある輸送機に危険を感じ、車を捨てて逃げ出している。
道路の流れに沿うように、レイディバードはじわじわと車輪をアスファルトに付けた。押し付けた。
アスファルトに数百メートルの轍を刻んで、輸送機は静止した。


429 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 10:54:46
>>425
【輸送機・内部】
エドガー「申し訳ありません、お嬢様。カラヴィンカの調整……只今完了致しました」
レイカ「遅いですわ! 輸送機は敵から攻撃を受け、あのユーリって方は既に戦っていますのよ!?」
エドガー「畏まりました。お嬢様、あの者どもに知らしめて差し上げましょう……まだ真打が登場していなかったと」
レイカ「ええ、モチロンですわ! 行きますわよ、お父様がわたくしに造って下さったカラヴィンカ……!!!」

遅れて輸送機から、大型の機体が出現する。その姿……まさに鳥人であり、カラヴィンカはウイングを大きく展開する。

>>423
レイカ「だらしがありませんわ、ユーリ!」

窮地に立たされていた彼を叱咤激励し、援護に入る。

レイカ「出し惜しみはしませんわ!一気に畳み掛けますわよ!!」

カラヴィンカのウイングからエネルギーで形成された天使の翼の様なモノが発生する。機体周囲にエナジーフィールドが作られて、そこからレイピアの形をしたものがカラヴィンカを囲むように発生する。

レイカ「……お行きなさい、ファンタムレイピア!!」

カラヴィンカの周囲を回っていた8本の幻の剣が各敵機に向けて飛んでゆく。


430 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 11:51:51
>>429
「特機か!」
リオンパイロットが翼を広げる機体に目を向ける。
機体のサイズは積載量に比例する。無論出力もだ。真っ当に撃ち合って勝てる相手ではない。
リオン部隊が撹乱に動く。翼の特機を包囲し、弾幕で消耗させる腹だった――が。
発生、形成、飛来する光の剣。三機のリオンが被弾し、うち一機が直撃を受け大破四散した。


431 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 12:27:14
>>428
「……ふぇ。なに?」
偶然にもその大通りを歩いていた紫亜。よく見えないがあちらの空から巨大な影?が迫って来ている。
……なんだあれは? 何故か自動車の中から人が一斉に逃げ出すのが見えたが良く解らない。紫亜は後ろを気にも止めず日ノ出食堂へ急ごうとした。
「あ……ふぇぇぇ飛行機!? ち、ちょっと待って…!?」
自分の目の前にまで迫られれば流石に察しの悪い人間でも事態に気が付いた様で、スットンキョウな悲鳴を上げる。
輸送機がこの道路に着陸しようとしていた。このままでは押し潰される。そう思った紫亜は、懸命に“前に”走った。脇道に入れば逃げられるはずなのだが、咄嗟に思い付かなかった。
(……ここに来て味噌が重い!)
可愛い先輩に頼まれた食材はここでも紫亜の動きを邪魔するのだが、敢えて手放したりはしなかった。可愛い紅い方の先輩に「御使いも出来ないの?」とか罵られるのも嬉しい様でやっぱり嫌だった。
(でも……ランチタイムには間に合わせるよ!?)
長い赤紫色の髪が揺れる。100メートルを10秒フラットで走る脚力でとにかく輸送機が真後ろを滑走して来るのから逃げに逃げた。全力で。
「……はぁ……はぁ。……あはは。……なにやってんのわたし??」
数百メートル程、追いかけっこを続けた頃。次第に輸送機の速度が落ち、そこからすぐに停止した。
息を大きく乱した紫亜はその場にへたり込み、動く事が出来ないでいた。


432 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 12:50:38
>>431
「大人しく中身を渡してくれるってのか!」
輸送機が不時着したのを見届けて、リオンTTがレイディバードに近づいてゆく。ミツヤは努めて冷静を装い、ゆっくりと愛機を操縦した。

「敵機が近づいてきます」
クーガー少佐は押し黙ったまま、窓越しに周囲を見渡す。
レイディバードの殆ど目鼻の先に、少女がいた。赤紫のあどけなさを残す少女が、へたり込むように地面に尻餅をついていた。
その名前をクーガー少佐は知っている。
グングニールの梱包を解いておけ」
少佐はそう言い残して輸送機から降り、少女に大事ないか尋ねた。


433 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 13:07:22
>>432
すぐに輸送機から誰かが降りてくる。白髪で頬に傷がある恐そうな雰囲気の男だった。
一瞬、怒られるのかもと思ったが、その傷の軍人は意外にもこちらを気遣い、謝罪をくれたのだ。
「……えっと、私は大丈夫ですけど。この街で戦闘が始まるんですか……?」
友達やバイトの仲間達が心配で仕方がない。
赤の大きな瞳がわずかに潤み、不安な様子で軍人へ尋ねる。

434 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 13:14:16
>>432>>433
連邦軍人「こちらに接近してくる機影が1つ……これはTEX-15・ブリューナク! キサラギ大尉、先行して駆けつけて来てくれたか……」

市街に緊急着地した輸送機に向かって伊豆基地から向かってくる早い機影を一つ確認した。識別信号はTEX-15……積み荷であるTEX-14と同じく戦後に開発されたセカンドステージの一機である。

連邦軍人「キサラギ大尉、現在レイディバードはDC系テロ組織『ジュワユーズ』の攻撃を受けている。迎撃に欧州から新入りの二人が出ているので、大尉も彼らに加わり……」
???「――――――」

AECPカノンからエネルギー反応が検出されるがTEX-15からは返事がない

???「――照準固定。目標、敵輸送機レイディバード」
連邦軍人「・・・な、何だと!? 貴様、キサラギ大尉じゃないな……何者だ!?」
???「俺か? ……俺はなぁ、こういう者さ!!」

上空のTEX-15はAECPカノンを放つ。荷電粒子砲はレイディバードを掠め、その爆発で付近の建物を吹き飛ばす。
紫亜は咄嗟に伏せたクーガー少佐に守られ無事であった。輸送機が半壊し、積み荷であるTEX-14の姿が外からでも伺えるであろう。

???「待たせたな、サイダーにガルベス……そして、アルベルト少佐」

ブリューナクのコックピットには、整備士姿の男か一人。彼は帽子を外して青髪を晒し、装着していたコンタクトレンズを剥がす。
――――その瞳は金色に光っていた。そう、彼は強化人間・カホルである。


435 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 13:19:54
>>433
「そうだ。最低限度に食い止める努力はするが」
こうしている間にもリオンは刻一刻と迫りつつある。直援機がない今、これを退けるのは不可能だ。
……いや、一つだけ方法はある。
「自己紹介が遅れた。私は連邦軍のクーガー少佐だ。藤村紫亜、君は、バーニングPTというゲームの経験は?」
怪訝な表情の少女――紫亜にクーガー少佐はまくし立てる。
「私が君の名前を知っている理由は後で話す。今君に問われているのは戦う意志だ。どうなんだ?」


436 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 13:34:45
>>434
ビームがビルを穿つ。崩落するビルからこぼれる破片。反射的にクーガー少佐は紫亜をかばうように動いていた。
「……む」
ガラスの破片が少佐の背中に刺さっている。急所ではないし内臓にまで貫通はしていないが、深い。
少佐は激痛を無視して空を見上げた。見覚えのあるTEX-15のシルエットは、しかし先刻のビームを放ったものだ。
市民を守るための槍が市民に向けられたのだ。
「ブリューナク……奪われたか」

「サイダーって呼ぶんじゃねえ!」
小中といじめられっ子だった頃の自分を思い出して、ミツヤはカホルに怒鳴り返す。「サイダー」の仇名は、まさに暗黒時代の象徴でしかない。
「それに……カホル准尉か? ビルまでふっ飛ばすことはないだろうに」
ミツヤの矜持はDCを正義と信じるが故にあった。いくら連邦の情報戦略によって『ジュワユーズ』がテロリストと貶められようと、正義のために闘っているという矜持がミツヤを立たせていた。ビアンやマイヤーも、そしてアルベルトも同じくらいに尊敬していた。
だが市民に発砲し、市街に損害を加えるような行動は、流石にやり過ぎではないのか。目の前の獲物の存在を忘れて、ミツヤは物思った。


437 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 13:46:06
>>436
カホル「……ああ、そうだ。作戦の通りに、間抜けな連邦から一本目の槍を頂いてきたってワケさ」

撃ち終えたAECPカノンの砲門を閉じ、滞空するTEX-15・ブリューナク。頼もしい味方であった筈の機体が、今となっては降りかかる厄災としてTEXチームへ牙を剝く。

カホル「……済まない! まぁ、試し撃ちって所さ。コイツは“アレ”を使わなくても予想以上の火力を誇るらしい」

本当であれば輸送機の一部を破壊してTEX-14を奪取しやすくするための攻撃であった。しかし実際には、市街を吹き飛ばす程の強力な荷電粒子砲。

カホル「――次はお前の番だ。少佐に手柄を立てたいんだろう、サイダー?」

アルベルトを狂信しているミツヤをおちょくるように挑発し、彼に作戦の最終シーケンスである二本目の槍ことTEX-14の回収を促す。


438 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 14:01:07
>>435
「バーニングPT……ですか? ああ……確か先輩にやらせて貰った事があった様な……?」
あまり自信は無い。紫亜はゲームでどっぷり遊ぶなんて事は経験した事が無く、はっきり言って下手だ。
「戦う意思……? ……あはは。何を言ってるんですか少佐さん? いくら意思が有っても力が無ければ意味なんて」
戦う意思は確かに有る。でも自分は無力で、こんな時何の役にも立たない。
苦笑いを浮かべてクーガー少佐の言葉を流そうとする。

>>434
連邦軍の試作機ブリューナクと言う機体から何故か悪意の塊みたいなものが感じ取れる。
紫亜がその事を口に出そうとした時。
「ぁ!!」
先程の連邦軍の輸送機が味方機である筈のブリューナクに攻撃を加えられる。
輸送機は中破し、爆発が外の紫亜を襲う。気づけばクーガー少佐に爆発から守られていた。
「きゃぁ!? ……少佐さん、ありがとうございます。……なんなんですかあれは??」
>>436
と、クーガー少佐に問い詰めようとしたが、爆発から自分を庇って少佐が怪我をした事に気付く。
「……血が。血がいっぱい出て」
自分の無力のせいでクーガー少佐が傷付いた。紫亜は自分が情けなくて仕方が無かった。
「……ごめんなさい。わたし、弱い子で、ごめんなさい」

赤の瞳からうるうると涙が零れそうになる。
が、それ以上に自分の無力が悔しい。そうしている間にもPTによって街は破壊されていく。


439 : ◆YZUHAnFXK6:2011/07/01(金) 14:03:03
>>429>>437>>438
「分かってる……!!」
モニター上に映るカラヴィンカとブリューナクの姿。
味方が来た―――そう思った刹那、ブリューナクはあろうことかレイディバードへとその槍を放ったではないか。
そして直感的に理解した、敵の目的を。

「最初からTEXを奪うつもりで……!」
いくらツインテスラドライブでも、敵のチャージの方が早いか。
この弾幕を、凶鳥を振り切ってブリューナクの砲撃へと割り込む方法はある。
目の前にあるこの防護ガラスの中のボタン、これを押すだけでいい。

一瞬躊躇する、そのスイッチ《AIMシステム》を―――脳波コネクトによる強制リミッター開放を起動することを。
この後襲い掛かるであろう頭痛と、吐き気と、悪夢を思い出して指が震えたのだ。

(何を恐れる、軍人は正義の御旗の元に戦う)
(だが正義の御旗を支えるのはその国の人であり、守るべき対象だ……)

驚くほど冷静にガラスを空け、柔らかな手つきでその赤いスイッチを押す。

「T-LINK……コンタクトッ!!」

ツインアイの奥、それぞれに灯る3つ横並びの赤い点。
瞬間的に増幅される念動力、意識を吸い込むブラックホールのように渦巻く異質な念を放ち始める。
負のエネルギーとも取れるそれは、白いメガリオンを薄い緑色へと輝かせた。

背部に持つウィングと、その足に付いたカーゴがスライドする。
暴き出された緑の宝玉から放射状に6つの光が放たれた、的外れな方角へと直進していくそれ。
だが、それは突如として直角近く曲がり、ブリューナクへと降り注いでくるではないか。

念動誘導粒子砲――――それはビルの合間を縫い、銃弾を交わしながら迫る。

――――AIMシステム起動。


440 : ◆gnI8YzVxOo:2011/07/01(金) 14:20:56
>>438
「誰も、最初から強く在る訳ではない」
クーガー少佐は背中に生えた破片を引き抜いた。うめいた。血が軍服の背中を塗らした。
「『力なき正義は無力、正義なき力は暴力』――旧世代の詩人の言葉だ」
破片を捨てる。砕ける音。
「君はこの惨状に嘆くことが出来る。それは正義の意志だ。ここには一機のPTがある。それは無類の力だ。正義と力は対を為して初めて有効だ」
破損した輸送機から覗くPTを指差す。TEX-14『グングニール』を。
「君なら出来る。あの孤児のように――やれ、藤村紫亜。君が、グングニールを動かせ」


442 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 14:37:35
>>439
カホル「……曲がった光だとぉ!?」

完全に不意を突かれた一撃。その攻撃はブリューナクを輸送機から遠ざけるように計算されている機がした。

カホル「ええぃ、この感じ……念動力者かッ!? 邪魔だ!!」

敵はかの悪名高いミロンガに似ている。それが真であれば目で追っても捉える事は出来ない。カホルは金色の瞳を輝かせ、念によって相手を捕捉してAECPカノンを放つ。


レイカ「ユーリ!? 一体、何が起きているんですの?」

念動力のないレイカは、周辺で飛び交う念を感じることは出来ない。メガリオンの変化を目の当たりにし、パイロットのユーリを心配する。

【ブリューナク残りHP80%】


444 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 14:53:09
>>440
「……それ、マジで言ってるんですか?」
なんの冗談かと思ったが、違うのだろう。
正直、もう踏ん切りはついていた。クーガー少佐は負傷していて戦える訳が無い。紫亜がやらなければならないのだ。
「……なんで私の事をそんな評価してくれるのかはわかりませんけど、ここでやらなきゃ女が廃るってやつです。……やってみます」
グングニールへ向けて走る。
>>439
ただ、グングニールへ乗り込むにはどうしても隙が必要だった。
そんな時に、リオンTTとブリューナクへの射撃攻撃が始まり、紫亜がグングニールに乗り込むだけの隙が生まれる。
「なんてご都合主義。良い追い風が来てるよ……!」
中に入ると起動は実に簡単だった。こんなので良いのか?と思いつつもグングニールのツインアイが緑に光り始める。
コンテナが自動的に開き、そこからもう一つの槍、グングニールが姿を現す。
【連邦軍 グングニール出撃】
「とりあえずは動いた。動いただけ。『よし!戦いかたがわかるぞ!』……なんて事はなかったけど」
出撃したものの、グングニールは棒立ちのまま微動だにしない。たまにマシンキャノンが見当違いの方向に撃たれたりしているが……。
「なんとかやるしか無い。頼むよ、グングニール」
未知の感覚に紫亜は凄くドキドキしている。覚悟を決めてからは不思議とあまり恐くは無くなった。


445 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 15:01:06
>>444
カホル「馬鹿な……!? TEX-14のパイロットはいないと聞いていたが、アレは嘘だったってのかい!!」

チッと舌打ちをする。ここまで順調に作戦が動いていたからだろうか、肝心の締めでこのザマでは収まらない。

カホル「……だったら、あのグングニールとかいうのをやるしかない! 連邦に渡すワケにはいくかよッ!!」

ブリューナクは射程ギリギリからAECPカノンでグングニールを狙い、荷電粒子砲を今一度放つ。

カホル「落ちろってんだよ!」


446 : ◆YZUHAnFXK6:2011/07/01(金) 15:10:39
>>442>>444
――――この瞬間の最適解、TEX-15への各種ルートと軌道を最適化。
システムによって強制的に広範囲へと広げられた自己の感覚により、知覚範囲内の情報を理解。
それを選定し不要な情報を淘汰、選び抜かれた情報をさらに吟味し導き出す。
通常の脳ならば耐えることは難しい、その処理速度を超えるからだ。
しかし、AIMを行うために取り付けられた超外部記憶保有演算装置へと直接脳波コンタクトすることによってそれを可能にした。

「…………」
ユーリはレイカの言葉に答えない、答えることを忘れたからだ。
集中していたらいつの間にか日が暮れていたという経験は無いだろうか。
いつの間にか口が開いていたという経験があるものも居るだろう、そのどちらも集中によって無意識的な行動や感覚を排除してしまった結果に他ならない。
ではそれが極限まで研ぎ澄まされたら……?
呼吸をすることも、眼を動かすことも忘れるに違いない、今まさにユーリはその頂に立っていた。

既に早かったその機体速度がさらに速く、とんでもないGがパイロットと機体にかかって居るのは間違いない。
命を投げ出す速度―――そう言わしめる程の速さで、瞬間的に移動して影を作り出す。

しかしその速さを持ってしても念動力による直感的な攻撃では捕らえられる。
迫り来るその砲撃に対し、メガリオンが選び抜いた答えは《念動フィールドに寄る軽減》。
念動フィールドを展開したままその速度を維持し、ビームを文字通りその体で分ける。

―――あくまで行うべきはTEX-15を叩き飛ばし、グングニールの安全を確保すること。
その最適化されたルートにビームが入り込んだとしても、撃墜されなければ変更する理由にはならない。
被弾しようが躊躇無くその懐に飛び込みその機体が繰り出した行動は銃を使うわけでも、搭載されたエネルギー剣を振るうわけでもなかった。

もっと原初的でシンプルな、且つその速度を最大限に生かした行動―――――蹴り。
その蹴りで引きずり、蹴り飛ばすつもりなのだ。

HP40%


447 : ◆FB0Vu0hpIc:2011/07/01(金) 15:28:42
>>445
「いきなり?ちょっと練習させて。……よけれないから!?」
全くその場から動けないまま、荷電粒子砲でいとも容易く右腕を破壊される。
それと同時に主兵装である専用デバイス『セトル・リフレクターⅡ』をも失う結果になってしまう。
【グングニール 残りHP60%】

「……ブーストの仕方は? ……何か武器は? ……『T-LINKシステム』、これかな?」
きっとこうに違いない。当てずっぽうの操作でT-LINKシステム及び、T-ブースターが起動する。
「なにこれ? ……なんか頭がすっきりすると同時にあの敵機体の黒い気? みたいなのが感じ取れてる」
機体に何か変化が起きたかはわからないが、先程と違って自分の感覚が研ぎ澄まされている事だけは確かだった。


449 : ◆hrBR6tpC7Y:2011/07/01(金) 15:38:26
>>446
カホル「……ぬうわあぁぁっ! ――ッッ、荷電粒子砲にまともに突っ込んでくる馬鹿がいるのかよ!?」

メガリオンの特攻染みた攻撃。愚行としか思えない。されど、だからこそ、一撃を加えられたのだが。
蹴りで吹き飛ばされ、更にメガリオンや輸送機から離される。そのお陰で体制を立て直せもする。

ブリューナク(敵)残りHP70%】


カホル「……俺を脚で殴ったツケを安くは済ませないぜ!」

カホルは怒りまかせにスイッチを押しそうになる。
しかし――

???「落とし前は自分で付けさせてもらうぞ、DC!!」

量産型ヒュッケバインMk-2が出現し、ブリューナクに対して射撃を行う。

カホル「ぐッ……、貴様は――」
エレナ「……"グラウ・カッツェ"だ。皆、私の失態でこんな事になって申し訳ない」

味方機にエレナが通信を入れる。

【ブリューナク残りHP65%】

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最終更新:2011年07月01日 20:08
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