「ままー、このたいそうのおねえさん、おかねのことしかかんがえてないよ」

これは本当

「あら、よく分かってるじゃない実花子。あなたのそういう鋭い所、私好きよ」

これは、嘘
でもそれでもいい

「わたしもおかあさんだいすき!」

そう、これは本当


◆◇

人を探しがてら、夜道を休み休み歩き続けて、遠くから聞こえる破壊音と思しき轟音に怯えながら
か弱い少女の脚で、それでも病院を出発してから少なくとも二時間以上は経っただろう。
私は市街地の外れまで来ていた。

(どうしたらいいのかなあ――)
すっきりしない気分のまま、私は一時立ち止まってこれから何処へ向かうか考えることにした。

『ゲームに乗っていますか?』と尋ねて、乗っていないと嘘をついた奴には銃弾をお見舞いし
本当に乗っていない人ならば守ってもらう。この折角のアイディアを実行しようにも
病院で変てこな女探偵と出会ってから後、私は一人の参加者とも遭遇できていなかった。

このまま進んで橋の向こうの施設を目指すか。研究所とか、首輪を調べる人が集まってるかもしれないし。
それとも引き返してもう一度街中を探してみようか。例えば「殺し合いの最中に映画を見る奴なんているわけない」と
スルーした映画館とか、向こう側の住宅街とか、あの探偵のいる病院には戻りたくないが――

「あー!もう!!」

思わず口に出して悪態をつく。しかしそれでも、私の中に蟠ったイライラは一向に軽減しなかった。
この蟠りの原因は判る。あの変てこな探偵だ。
自分の能力を活かせると上々だった私の調子は、あいつに会ってすっかり狂ってしまった。

◆◇

人の心が読めることを他人に知られてはいけないと何時気がついたのか。
きっと生まれたときから、少なくとも物心ついたときにはもう、私は本能で知っていた。
自分に読心能力があることを悟られてはいけないと。

それでも子供の頃、二回だけ実験したことがある。
自分の能力を人前で使ったらどうなるか。一度目は他人である保育園の先生、二度目は身内である母親で。

そのさり気ない実験で、私は自分の危機感が思い過ごしではないことの確証を得た。
男との情事を指摘されて青ざめた先生の顔、そして「あなたのそういう鋭い所、私好きよ」と口で言う母の心中に過った
(気色悪い子)という思考。それは私に金輪際他人に能力の秘密を明かすまいと決心させるに充分な実験結果だった。

以来、私は読心能力の秘密を隠し続けてきた。
心を読む力があると知られたら、私は人間社会の中から排除される。
本当の自分を隠し続けるのは孤独だったが、どうということはない。
大体この世に100%の自分を曝け出して生きている人間などいないということは、人の心が読める私が一番よく知っている。

この能力は、私にとっては厄介な宿痾のようなものだった。
実際、この能力があって得したことと蒙った心労その他の損害を比べたら、きっと損のほうが多いだろう。
極力心を読むまいと努めていても、ふとしたはずみに他人の心が読めてしまうことがある。
そのせいで私は、生徒に邪な欲望を抱く教師の心中だの、成績のいい他の子供の家庭に嫉妬する保護者の心中だの
読みたくもないものを勝手に読まされてきた。
それでも表面上はそれを顔に出さず、普通の生活を演じ続けていたのだから我ながら大した精神力だと思う。
対して良かったことといえば、まあ、友達の心を読んで上手く人間関係を立ち回ることができたとか、そのくらいだ。
しかし、人付き合いの上手い者ならその程度のこと、超能力などなくても普通にできるだろう。
或いは占い師になるとかスパイになるとか、そんな方面なら力の活かしようもあったかもしれないが
生憎私は平凡な家庭に生まれ平凡な学生生活を送る普通の少女だったし、敢えてそんな世界に飛び込もうと思わない程度には
自分に与えられた環境に満足していた。

だから数年前、小学生高学年の頃に読心能力が薄れてきた時には真っ先に喜んだ。
自分の人生を煩わせるものが一つが消えるのだと、素直に嬉しかった。

だが、能力が減衰するにつれて、私は喜びと同時に
一種の空しさを感じるようになっていた。

心を読む能力は、別に私が望んで得た力じゃない。
しかしこの力は、間違いなく私を、初山実花子という人間を構成する要素の一つだった。
その力が何の役にも立たないまま私の人生から消えていくのは
まるでこの力のせいで私が人知れず傷ついたり、孤独だったりした記憶までが無意味なものとされていくような
なんとも言えない空虚さを私に感じさせた。

だからこの殺し合いに巻き込まれた時、こう思った。
能力が完全に消えてしまう前に、自分の読心能力を活かすことのできる、これは最初で最後の機会だと。
人間社会では忌避されるだけのこの力も、殺し合いという舞台でなら有意義に使うことが出来ると。
力はすっかり弱って今は嘘の判断くらいしかできないが、その正確さには自信を持っていた。
今こそこの力を使って生き残る。それが自分にこの能力が与えられた意味なのだとすら思った。


しかし最初に出会った探偵によって、私の自信は脆くも打ち砕かれた。

◆◇

あのピーリィと名乗った女探偵は、私の能力への信頼を見事に解体してみせた。
悔しいが、私も自分の嘘か本当かを見分ける力の弱点を認めざるをえない。

第一に、「この発言は嘘である」と言ったような矛盾した発言には対応できない。
これは私の嘘発見能力が元々読心能力由来のものなのだから、まあ当然と言えば当然だろう。
嘘・本当の部分で引っかけようとしている相手の思考になど対処できるわけがない。

第二に、発言する相手の認識が狂っていた場合。
『殺人』を『現世からの救済』だと思い込んでるキチガイがいたとして
そいつに「(自分の行っていることは殺人ではなく救済なので)殺人などしない」と言われると
私はそいつが本当のことを言っている=危険人物ではないと判断してしまう――可能性がある。
或いは「ゲームに乗っていない」と本心から答えた奴が、「バトルロワイアルのルールには従わないけど人は殺す」と思っていたら
私の判断能力はそれに対応できない――可能性もある。

第三に、「昨日は剃刀を喰った」のケース。
あれだって落ち着いて対応していれば、私は正しく判断できたはずだ。
それができなかったのは、私に「カミソリが食えるわけない」という思い込みのバイアスがかかっていたからだ。
私の思い込みと知識不足(悲しいかな私は平凡な中学生なのだ。短い人生で学んだ知識など高が知れている)によって
嘘か本当かの判断を誤る場合もある。
つまり相手の認識だけでなく、私自身の認識の錯誤によって正しい判断が下せなくなることも有り得る――その可能性がある。


こうして見るとまるで欠点だらけのようで、私は思わず溜め息をついた。
しかし、と気を取り直す。この様なケースは例外で滅多にある事ではないはずだ。
万能でないからといって、私の能力が役立たずということにはならない。

それに、あの探偵の説明を聞いても腑に落ちない点がある。
彼女が最初に言った「ζ(s)の自明でない零点sは、全て実部が1/2の直線上に存在する」という発言。
私はいつも通り相手の心を読んで嘘か本当か判断したつもりだったのだが、探偵曰くこれはリーマンだかパーマンだか言う
探偵自身にも判らない、それどころか世界中でまだ誰にも真偽の判定がついていない数学上の大問題だったらしい。
しかし私にはこれが本当か嘘か判った。何故だろう? 発言した本人が判らないのなら、私に判るはずがないのに。
「ζ(s)の自明でない零点sは、全て実部が1/2の直線上に存在する」、これは本当か嘘か、その答えは――――


「おい、娘」
「は?」

突然『上』から声をかけられ、物思いに沈んでいた私は思わず頭を上げた。

見上げると、上空に頭から角の生えた青い顔の男が浮かんでいた。


「――――えっ、な、何!?」
「魔王である」

◆◇

「その様子だと、お前は我が世界を知らぬらしいな」

男が道路に着陸するのを、私はスパス12を構えるのも忘れて馬鹿みたいにポカンと口をあけて見ているしかできなかった。
最初の大広間で見た時から異様だとは思っていたが、こう実際に遭ってみると異様どころの騒ぎではない。
超能力がある/ないといった次元どころの話じゃない、もっと非常識な存在が、今私の目の前に降臨していた。
あの魔法や超能力の存在を否定していたピーリィ・ポール探偵がここにいたらどうしただろう? 腰を抜かして驚いただろうか?
――いや、あの女はこの光景を見せられたとしても、あの亜細亜が全部沈没してしまったかのような仏頂面を崩さない気がする。

「一応聞いておこう。娘よ、私を知っているか?」

角男に聞かれて、私は口がきけないまま、ふんばっふんばっと首を横に振った。

「ウム、では本題だ。娘よ、我が質問に答えよ。
 ―――お前はミルという科学者を知っているか?」

ミル? 確か名簿にあった名前だ。科学者なのか。
私にとっては一面識もない、名も知らなかった人物だ。おずおずと首を横に振る。

「そうか。では、黒い鎧を纏った騎士、緑色の肌をした巨人、白衣を着た人間の少女。この内の誰かをここで見た事があるか?」

いずれも見たことがない。私はまだあの変てこ探偵にしか会っていないのだから当たり前だ。
というかそんなバラエティー豊かな面子が集められてんのか、このバトルロワイアル。

「そうか」
私が三度首を横に振ると、角男は急に私への興味を失ったようだった。
(あ、あれえ? 私、助かった?
 ……そもそも、この魔王って私を襲うつもりなかったの?)
男の異様な姿と登場の仕方に度肝を抜かれていた私も、ようやく普通に頭が回るようになってきた。
角男はこれ以上私に関わる気はないのか、私に背を向けた。
次の目的地へと飛んでいくつもりなのか。

この男に敵意がないのなら
私を攻撃する気がないのなら
異様な姿でも言葉が通じるのなら
尋ねてみようか
この男に

『ゲームに乗っていますか?』と


いや、余計な質問をしてこの男を刺激したらどうする。
怒らせでもしたら、それこそ薮蛇だ。
このまま私が大人しく黙っていれば、この魔王は私に何もせずにこの場から去るだろう。

そのほうがいいのではないか?
余計なことをしてリスクを背負うより、このまま去ってもらったほうが――


 ――止めはしない。だが、忠告しておくぞ。僕にやった事を続けるようなら――
 ――死ぬよ――


「!!」

瞬間、あの探偵に最後に言われた言葉がフラッシュバックした。

ここで尋ねなかったら、あの探偵に負ける気がした。
だから、私は証明したかった。舞台に上がることを拒み、勝手に退場したあの探偵より、自分は正しい道を歩いていると。
あの時、違うと思った、その感情を。

「あっ、あのッ!」

口から出た自分の声は、どうしようもないほど上ずっていた。

「あなたはゲームに乗っていますか?
 ――ゲームってのはつまり……ここで殺し合いをする気がありますか?」


完全に後ろを向いて今にも宙に浮かぼうとしていた魔王は、私の質問を聞いて振り返った。

「笑止。私にこんな催しにつきあっている暇はない。
 さっさと首輪を外してこの世界から抜け出す。それだけが私の目的だ」


この発言は……『本当』だ。
魔王は一つも嘘をついていない。
ほっとした。とりあえず今の所は、この魔王は私に危害を加えるつもりはないらしい。

だから安心した私は、今の発言で気になった部分を更に突っ込んで尋ねてみることにした。

「この世界から抜け出すって、そんなことができるんですか?」
「無論だ。時空操作魔法の一つや二つ、出来ずして何が魔王か。
 この忌々しい首輪さえなければ、今すぐにでも我が世界に還るものを」

これも……『本当』だ。
つまり魔王が思い込みや勘違いをしていない限り、彼は今すぐにでもこの島の外へ出る手段を持っている――
ということだ。今の口振りからすると魔法で別の空間と行き来ができるらしい。魔王だもの、そういうことも可能なのだろう。

首輪がなければ――それで思いついた質問を口にする。

「ひょっとしてさっき尋ねたミルって人……
 その人ならば、この首輪を解除することができるんですか?」
「ミル博士は極めて優れた科学者との報告を受けている。
 この首輪が貴様らの世界の技術で作られたものならば、ミル博士なら解明できるであろう」

これも『本当』。
つまりそのミルって人は首輪を外す手段を、このディウスって魔王は島の外に脱出する方法を、それぞれ持っているのだ。
つまり魔王ディウスに同行し、ミル博士を見つけることができれば――
――そうすれば、私もこのバトルロワイアルから脱出することができる。

見つけた。
生還への糸口を。


「さて、それでは――――」
「まっ、待って!待ってください!」

再び背を向けようとした魔王様を必死で呼び止める。
ここからが本当の正念場だ。
奇跡的に掴んだ脱出のチャンス。ふいにしてなるものか。

「私も!私も連れて行ってください!きっと魔王様のお役に立てると思います!」
「……役に立つ? 貴様のような人間の娘がこの魔王の役に立つだと?」

魔王が氷のような冷たい目で私を見据える。
その視線に威圧され屈しそうになるけど、私は勇気を奮い起こした。
今は自分を売り込むことだけを考えろ。私の利点、『他人の言葉の真偽がわかる程度の能力』のことを。

「私、人の言葉の真偽を聞き分けることができるんです。
 聞いただけで、その人が本当のことを言っているか、嘘をついているかが判るんです。
 魔王様はこれから、ミル博士と首輪を外すために交渉するわけですよね?
 その時私がいれば、きっと魔王様に有利なように交渉を進めることができると思います」

魔王は無表情なままで私を見ている。
だからここでもう一押し、私は最後のカードを切ることにした。

「それに私、真偽を聞き分ける能力があるからわかったんです。
 ワールドオーダーってこの殺し合いを開いた奴、あいつが最初の大広間で言った発言には幾つもの嘘がありました。
 嘘をついたってことは、その誤魔化した部分があいつにとって不都合な、弱点だってことです。
 魔王様にとっても、いきなり拉致してこんな事に巻き込むような奴なんて邪魔ですよね?
 だから、あいつが嘘をついた部分を知ることは、ワールドオーダーを――あの男を……始末する上できっと役に立ちます。
 もしも同行させていただけるなら、この島から脱出する時に魔王様にだけあいつが吐いた嘘の内容をお教えします。どうですか?」

私は必死になって一気に喋った。
途中、ピーリィが言った『あのワールドオーダー自体が偽者である可能性』が頭を過ったが無視することにした。
今は魔王に取り入ることだけを考える。
仮令その結果――魔王がワールドオーダーを殺す手助けをすることになっても。でも、それはあの男の自業自得というものだ。

「だから、だからお願いします!魔王様、私に脱出するお手伝いをさせてください!
 貴方に協力させてください、お願いします!」

そう言って、私は90度の角度で頭を下げた。
魔王がこれ以上黙ったままだったら、土下座していたかもしれない。
殺し合いから生きて還れる絶好無二のチャンスなのだ、恥も外聞も構っていられない。

私が深々と頭を垂れたまま固まっていると
今まで無言で私の話を聞いていた魔王が、ようやく口を開いた。


「協力……人間が私に協力か。
 ……よかろう。そこまで言うのならば、貴様に協力してもらおう」


この発言は……
――――『本当』だ。


やった。
魔王の協力を取り付けた。

正直もっと疑われるとか、能力が本物かテストされるとか
そんな展開を想像していたけど、現実は私の予想より遥かにスムーズに進んだ。

勿論まだ全てうまくいくと決まったわけじゃない。
しかし生還できる可能性はこれで大きく上がる。

どうだ見たか名探偵。
私は自分の能力で、自分の力で、未来への道を切り拓いてやった。

「ありがとうございます!」

私は最高の笑顔を浮かべながら、頭を上げた。


◇◆

実花子には何が起こったのかわからなかった。

魔王ディウスの、さほど力を篭めたとも思えない、しかし常人の目には留まらぬ速度で横薙ぎにされた拳が
頭を上げた瞬間の実花子の頭部側面を打った。
頭だけ猛スピードのトラックにぶつかったといった様子で、実花子の脳は彼女の身に何が起こったのか認識するより早く
痛みを感じることさえできない一瞬の間に、脳を護る頭蓋骨と共にひしゃけ、砕き潰された。
衝撃で飛び出た目玉、折れた歯、割れた頭蓋からはみ出た脳髄の一部などが宙を舞った。
その衝撃で同時に頚骨も完全骨折し、首周りの血管、筋肉、皮膚も一気に千切れ飛んだ。

ディウスの一撃によって吹き飛ばされた初山実花子の頭部は、近くの建物の壁に激突し、血と肉の染みとなって悪い冗談のように飛び散り
広がった。壁にへばり付いた赤いペイントの中で、その中から生えた新種の苔とでもいった風に黒さを強調しているポニーテールの髪の毛
だけが、それがかつて人間の頭部であったことを示していた。

脳を失ってデタラメに痙攣を始めた実花子の手足を押さえると
ディウスは血を噴出させ続けている千切れた首の下に光る首輪を取り外してバッグに仕舞った。

「これでミル博士への土産が出来た」

それだけ言い残すと、まだ痙攣を続けている実花子の死体には目もくれず
ディウスは再び空へと飛び上がっていった。


ディウスにとって、首輪を手に入れることの優先度は高くなかった。
彼の目的は第一に脱出のためにミル博士を探すことと部下たちと合流することであり
解除のためのサンプルとしての首輪を手に入れることは、『出来れば』『機会があれば』程度の消極的な目標だった。
しかし都合よく「魔王に協力したい」などという珍しい人間と遭遇したのだ。
ミル以外の人間と協力するなどディウスの発想には無かった。それが向こうから協力させてほしいと申し出てきたのだ。
だから協力させてやった。首輪の供給元として。

娘が語った人の言葉の真偽云々など、ディウスはてんで興味が無かった。
彼にとってみれば人間の如き下等生物に係う気など毛頭無いし、故に人間が嘘をつこうが本当のことを言おうが
そんな事は『羽虫が右に飛ぶか左に飛ぶか』という程度のどうでもいい問題だった。

それに彼は人間の中で唯一、ミルにだけは協力を要請する心算だったが
そのことに関してミルと交渉する気など更々無かった。
『協力してもらう』のではない、『協力させる』のだ。
ミルが自分に協力することは、既に魔王の中では確定事項だった。
人間などという浅はかな生き物は、脱出というエサをちらつかせれば九割は矢も盾もなく飛びつき
自分から進んで協力を申し出るとディウスは確信していた。
もしもミルが残り一割の目先のエサに動かない奇特な人間で、協力を拒んだり、嘘をついてこの魔王を謀ったりするようなことがあれば
その時はそれに応じた処置をして、協力するように仕向けるだけだ。
首輪の解除など、最悪でも頭脳と目と両手さえ無事ならば可能だろう。それなら如何様にでも仕様はある。

また主催者のワールドオーダーやその協力者については現在、彼の部下で異世界に潜入中のサキュバスが探っている。
あれは享楽的でサボリ癖があるのがたまに瑕だが、その探査・偵察能力は確かなものだ。
サキュバスが駄目でも、元の世界に帰れば探索や追跡、隠密行動に長けた部下の魔物など五万といる。
そいつらを異世界に送り込んでワールドオーダーについて調べさせ、目障りならば暗殺すればいい。
要するに、元の世界にさえ帰ることができればどうとでもなる。
人間の小娘の読心術などより、部下の魔物の能力に信頼を置くのは彼にとって当然のことだった。



「無駄な寄り道だったが、首輪も手に入れたし、好しとするか」
そう独りごちながら、ディウスは橋の向こう、研究所を目指して飛び去る。

その後を追うように昇ってきた太陽の、不気味なほどに赤い朝焼けが
血の海の中で動くのを止めた首のない少女の死体を赤く照らしていった。


【初山実花子 死亡】

【C-7 街外れ/早朝】

【ディウス】
【状態】:健康、魔力消費(小)、飛行中
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式、ランダムアイテム1~3個、初山実花子の首輪
[思考・状況]
基本思考:首輪を解除して、元居た世界に帰る
1:ミルを探し出して、保護する。
2:暗黒騎士ガルバインと合流する。
3:サキュバスに第一回放送後に連絡する。
4:研究所へ移動し、何らかの資料がないか探索する。
※何者か(一ノ瀬、月白)が、この場から脱出したことに気づきました。
※ディウスが把握している世界にのみゲートを繋げることができます。

※初山実花子の支給品一式がC-7 街外れに放置されています。

043.ひとりが辛いからふたつの手をつないだ 投下順で読む 045.ヒッキーな彼はロリ悪女(♂)
042.転・交・生 時系列順で読む 046.Hitman's:Reboot
魔王と悪党 ディウス ミルファミリー壊滅!魔王襲来
探偵がリレーを/矛盾る 初山実花子 GAME OVER

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最終更新:2014年11月03日 01:41