「ぐわあああああああああああ!」

草原に絶叫が響き渡る。
そこに居るのは、左腕を切り落とされた龍人と白髪の少女。ミロとユキの二人だ。
絶対無敵を誇っていた鱗と皮膚を豆腐のように切り裂いた男の名を、船坂弘
腹に穴が空いても戦に臨むその姿は、スプラッター映画のゾンビを彷彿させる。

「よくもボクの腕を! ゆるさない!」

憤怒したミロが繰り出したのは、雷の中級魔法。彼が使用出来る魔法の中では最も威力の高い技だ。
凡人が使用しても化物を殺すには至らない殺傷力だが、ミロ・ゴドゴラスⅤ世は違う。
優秀な血統、歴代最優と名高き才能。
生まれた瞬間から王族が持つべき素質を最高レベルで備えた彼の魔法は、この年齢で既に親や使用人を超越している。
耳を劈くような轟音が鳴り響く。闇を切り裂いて表れたそれは、ミロの魔法だ。
明確な殺意が込められた必殺技を一瞥して、船坂は体内の気を最大限に漲らせた。
武士道を重んじる彼は迫り来る死の奔流を恐れることなく、真正面から迎え撃つことを選択したのだ。

「ぬんッ!」

眼前に迫る雷を受け止めたのは、一振りの刀。鬼斬鬼刀だ。
盾や特殊な武器など、船坂弘には不要。武士道を生きる者の武器は、いつだって刀である。
武士にとって刀とは己が魂と同然。
腕を失って喚く龍人に折られる程、我が魂は柔でない。だから鬼斬鬼刀が折れる筈がない。
その理論は滅茶苦茶だが、船坂の信念に応えるように鬼斬鬼刀はミロの魔法と拮抗している。
初めて必殺技を受け止められたことに憤怒したミロは、ギロリと鋭い目付きで船坂を睨んだ。

「そんな……」

ユキは絶望の声を漏らす。
出会ったばかりで未だによくわからないし、妙な言い争いばかりしていたけど、彼女はミロを悪く思っていない。
焦っていた自分が冷静さを取り戻せたのも、彼が居てくれたおかげだ。
数時間でも一人で孤独に彷徨っていたら、また過去を思い出して悲しみに明け暮れていたかもしれない。
それなのに自分は血塗れで歩く死人に驚いて、ピンチに陥っているミロに守ってもらっているだけじゃないか。
部下をまもるのが王のつとめ。そう言って前線に立ったミロに甘えてるだけじゃないか。
渾身の一撃が受け止められて危ない場面でも、こうして悩んでしまう。あの男が放つ強大な殺気に、足が竦んでしまう。

(わたし、は……)

また繰り返してしまうのか?
あの日を。
あの殺戮劇を。
二度と思い出したくもない、あの悲劇を。

「嫌だよ。そんなことは、絶対に嫌だ。もう、私は誰も失いたくなんてない――!」
「そうね。私もユキや夏実や、ルピナスを失いたくないわ」

凛と透き通った声で紅い瞳の少女が言った


前へ、前へと突き進もうとする意思に反して、船坂の身体は徐々に後退してゆく。
異世界の化物と張り合える船坂の異常な怪力を、ミロの魔法が上回ったのだ。
船坂が押されている主な原因は、肉体の負傷とミロの怒り。
ミロはとても傲慢な性格だ。
鱗や皮膚に絶対の自信を持っていたのもそうだし、初対面の相手を部下扱いすることも、それをよく表している。
その鱗が切り裂かれ、腕を切り取られ、あまつさえ最強の必殺技まで刀一本で受け止められる醜態を部下の前で晒してしまった。
人生最大の屈辱だ。このまま一方的に負けるということは、彼のプライドが許さない。
怒りは負の感情だが、それは時として生物を成長させる。
ミロは生まれて初めて勝利を狂おしい程に渇望して、内に眠る才能を更に開花させた。
姿形は変わらずとも、彼の放った魔法は中級魔法から、上級魔法に進化していたのだ。

「ゆるさない! このまま殺して「喝!」

船坂が吼えた。
大日本帝国の英雄に、二度の敗北は許されぬ。
既に幾つもの骨が折れ、身体が悲鳴をあげているが、そんなことは関係ない。
これは己が矜持を掛けた男の戦。先に諦めた者が、敗北者となるだろう。
肉体は負傷しても修復すれば良い。今までもそうして幾つもの戦場を駆け抜けてきたのだ。
ゆえに大日本帝国の軍人、船坂弘はただ勝利だけを求めて前進する。

「あ、ありえない」

つい先程まで押されていた男が、肉を撒き散らしながら雷を斬って走っている。
あまりにも現実離れした光景を見て、ミロは僅かに狼狽えた。
もっとも、雷を切った男は過去にも存在しているのだが。
雷切という刀をご存知だろうか?
インターネットで検索するとカ○シ先生が出てきたり、11ey○sを思い浮かべたりする人もいるだろうが、実在する刀だ。
元の名は千鳥。とある武士が雷を斬ったから、雷切。
船坂の想像を絶する行動も、その逸話を再現したに過ぎない。

「くるな!」

正真正銘の鬼神を見たミロは、魔法の威力を高めようと精一杯に力を込める。
彼を支配する感情は恐怖。
死に恐怖を感じるのは生物として当然のことだ。それはゴドゴラス家の正統後継者であれど、変わりない。
敵対する龍人の必死な形相を確認して、船坂は自らの勝利を確信する。
戦に敗北するのは、先に精神が折れた者だ。
いくら強大な力を有していようとも、敵に恐怖を抱いた臆病者が勝利することは出来ない。
己が勝利を疑わない船坂の刃がミロの首筋に届くまで、あと数メートル。



「……おかえり、舞歌」
「ただいま、ユキ。……なんだか、こうして話すのも久しぶりね」

水芭ユキと朝霧舞歌。
親友だった二人の再会は、皮肉にもワールドオーダーが用意した催しで果たされた。
処刑対象の空谷葵が参加していて感謝したのは“クロウ”だが、“朝霧舞歌”もこの瞬間ばかりは、ワールドオーダーに感謝するべきなのかもしれない。
この場に尾関夏実がいれば、運命の赤い糸とでも言って狂喜乱舞していただろう、彼女が。

「うん。それにしても、随分と普通の態度だね。
私たちは一生懸命舞歌を探して、お父さんに怒られても頑張ったのに。
だいたい、舞歌と私は友達なのに、どうして大切なことに限って教えてくれないのか、わからないよ。
もしかしてまだ罰ゲームでかき氷を奢らせた時のことを……」

ユキはムスッとした態度で長々と説教を始める。
再び独りぼっちになることを恐れる彼女は、行方不明になった友人を探そうと様々な無茶をしていたのだ。
時には、ルピナスと怪しげなバーに通って情報を集めたり。
時には、誘拐事件が起こるたびにルピナスと犯人を探したり。
時には、ルピナス、亦紅、ミルと四人でブレイカーズの支部まで乗り込んで、後から心配して様子を見に来た千斗に三人(亦紅だけ適当な言い訳をして逃れた後に支部長を退治してた)で説教されたり。

そうして舞歌が連れ去られそうな場所をルピナスと協力して手当たり次第に探しているうちに、一年はあっという間に過ぎていた。
ルピナスは『これが青春なんだね!』とわけのわからないことを言っていたが、ユキにとっては迷惑な話である。
もっとも、彼女はそれが原因で説教しているわけではないのだが。

(相変わらず、不器用な子だわ)
昔と変わらないユキの態度に、クロウは顔を綻ばせる。
それを見たユキは、頬を膨らめて何か抗議しようと口を開いた。

「むぐっ!?」

(――私としたことが、久し振りだからすっかり油断していた。
 舞歌は夏実に負けず劣らず、過剰な愛情表現をすることがあるんだ。
 それも私やルピナスが落ち込んでる時に限って、こうやって抱きしめてくる。
 ってゆうか私はいつまで舞歌に子供みたいな扱いをされるんだろう……)

舞歌に抱きしめられてユキの顔が赤くなる。

「ごめんなさい、ユキ。けど、貴女たちを巻き込みたくなかったし、私が人外になったことを知られたくなかった。それが本音だわ」
「喜びも悲しみも分かち合うのが友達だって、夏実が言ってたよ」
「ええ。けど、今の私はクロウ。悪党商会に所属しているならユキも聞いたことあるでしょう?」
「うん。それは名簿で気付いてたよ。悪党商会だけ襲われないのは変だと思ってたけど、舞歌がクロウなら納得。それでも私は、舞歌を退治しないけどね」
「不殺主義で有名な貴女がクロウを見過ごすの? 面白い話だわ」

「そっ、それは舞歌だって悪党商会を見逃してるからだよ。それに私は、友達と戦いたくない」
「私も同じ理由だわ。貴女が大切にしている悪党商会を襲う気にはどうしてもなれない。……割り切って生きるのって、難しいのね。
 それと貴女、孤児でしょう? 私も両親を殺されて孤独になったけど、変な偶然ね。ルピナスも自分は捨て犬と言っていたわ。
 とりあえず再会祝いに貴女に力を貸すわ、ユキ。説教を聞くのはあそこの化物を斃した後よ」

「それなら私にいい作戦があるかもしれないし、ないかもしれない」
「どっちよ。いつまで不貞腐れてるの、ユキ」
「あるひょ。とりふぁえずほっぺ引っ張るのやめふぇ、いふぁいから」
「相変わらず可愛いわ」


船坂の刃がミロの首筋に届くまで、あと数メートル。
己が勝利を疑ったミロの魔法は、船坂にとって紙切れ同然の脆さとなっていた。

「止まれ止まれ止まれ――!」
「諦めろ。厳然な実力差とはこういうものだ」

甘やかされて育ったミロは自分が殺される覚悟など決めていない。
数々の死線を潜り抜けてきた軍人の船坂は戦死する覚悟など、とうの昔に完了している。
それが彼らの明暗を分けた。
必殺技と刀の真っ向勝負で破れ、怖気づいた時点でミロの敗北は決していたのだ。

「!」

されど、この戦場に立つ者は彼らだけではない。

足元が凍てつくような感触を覚え、船坂の猛攻が止まった。
何事かと咄嗟に地面を眺めると、大量の雪が彼の進路を阻むように積もっていたのだ。
その先に居る犯人と思わしき少女を一瞥して、船坂は舌打ちする。


「……間に合って良かった。
 ひとりよりふたり。ふたりよりさんにん。さんにんより、もっとたくさんだよね。ミロさん」

ミロの安全を確認したユキは、地面から手を離すと堂々と立ち上がった。
船坂から感じる殺気は途轍もなく強大なものだ。
茜ヶ久保を相手に善戦出来るユキでも、こうして船坂と対峙しているだけで全身が震えそうになる。
雪で足止めが出来たのも僅か一瞬。
今度は身動きの取れるユキに標的を変更して、船坂は疾走する。

「舞歌!」

鬼神の如き形相で迫る船坂を確認して、ユキが叫んだのは親友の名前。
その叫び声に反応して現れたのは、新たな乱入者だ。この暗闇ではよく見えないが、舞歌という名前から女性だろうと船坂は推測する。
彼女が視界ギリギリの場所で呆然と立ち尽くしているのを一瞥して、不意打ちを狙っていると船坂は分析。
ミロに気を取られていた先の不意打ちは見事に嵌められたが、大日本帝国の英雄に同じ手段は二度も通用しない。
彼女たちの策略を見破った船坂は、より近くに佇む乱入者を優先して排除することに決める。

「――――」

それでも乱入者は動かない。
船坂は長松のように数多の罠を用意して待ち構えているのかと考えるが、乱入者が持っているのは剣のみ。これでは罠を用意しているとも思えない。
このまま船坂が突っ込めば、船坂と乱入者の真っ向勝負となる。
乱入者はよほど自分の腕に自信があるのか。もしくは、ただの阿呆か。
どちらにせよ、船坂がやることは変わらない。このバトルロワイアルに参加している者たちを斬るだけだ。
一騎打ちの勝敗は一瞬で決する。白髪の少女が不意打ちをする暇もないだろう。

「チェりゃぁぁああ――――――!!」

唐竹割り。
ガルバインを葬った技を呆然と佇む乱入者に叩き込んだ。
渾身の一撃を受けた乱入者の頭部はパキリと砕け散り、周囲にクリスタルのような粒子が舞う。
その手応えは人間というよりも、固形物だ。コンクリートを砕いた感触によく似ている。

「もしや……ッ」
船坂が気付くと同時に背後から氷の刃が彼の心臓を穿った。
それこそが真の乱入者、クロウだ。
付近の木陰に潜んでいた彼女は、船坂がクロウを象った氷像を砕いた直後に移動を開始。
吸血鬼の優れた身体能力と暗闇でもよく見える瞳を持つ彼女が瞬時に船坂の背後をとるのは、造作も無いことだった。

「作戦成功だわ、ユキ」
喜怒哀楽の様々な感情が混ざったような表情でクロウは報告した。
作戦の成功は喜ばしいことだが、鴉の指摘が頭から離れない。
親友と共闘しても、それすら吸血鬼の本能に従って人殺しを愉しんでいるだけではないか?
表向きは平静を装っていても、彼女の内面はそんな不安で満たされている。

「ユキ。今の私は笑っている?」
「笑ってないよ。クロウの噂は間違いだったみたいだね」
「そう。それは良かったわ」

“朝霧舞歌”は素直に笑う。
“クロウ”が殺人をしたのに笑っていない。
その事実が嬉しくて仕方がなかった。

(この変化は忌まわしき“クロウ”が死んで“朝霧舞歌”が蘇った。そう受け取っていいの?)

朝霧舞歌は自分の中に存在する吸血鬼が嫌いだ。
彼女は人間だった頃の思い出を捨て切れていない。
吸血鬼の“クロウ”はいつしか人間の“朝霧舞歌”に戻りたいと密かに考えている。
憎しみから始めた殺人が、快楽を満たすための行動に成り代わっている。
それを気付いた時に、“吸血鬼”の彼女は自分がとんでもない“人間”なのではと思い悩んだ。
そうこの朝霧舞歌の心は人間の頃から変わっていないのだ。
自分を蝕む“クロウ”が死んで“朝霧舞歌”が蘇る。
それは彼女が無意識的に求めていた理想の展開だった。


「これで私も夏実やルピナスに顔見「舞歌、危ない!」

そんな彼女の夢物語を壊すのは鬼神、船坂弘。
しぶとく生存していた彼は、油断している舞歌を容赦無く斬り掛かった。
それを阻むように表れたのは雪の壁。
だが、そんなものは無意味だと言わんばかりに船坂はそれごと舞歌を斬る。

「感謝するわ、ユキ。貴女のおかげで致命傷は避けられた」
雪の壁が崩れて舞歌の姿が現れる。
雪で威力が落ちた船坂の攻撃を咄嗟に両腕をクロスしてガードした彼女は、両腕に大きな傷を残して戦場に立つ。
ユキのサポートがなければ今頃彼女はミロよりも酷い惨状になっていただろう。
両腕に大きな痛みを感じながら、舞歌は船坂と相対した。
彼女はまだ戦える。今は自分に出来ることをやるだけだ。


「ユキがたすけてくれたのか?」
「うん。あそこにいる、舞歌と一緒にね。それでミロさん、改めてお願いがあるんだけど……」
「なんだ?」
「私たちと一緒に戦ってほしいんだ。だからその、もう一度さっきの技を使ってくれたら嬉しいなって」
「おやすいごようだ。一緒に戦うぞ、ユキよ!」

一緒に戦う。
出会ったばかりの頃と同じ言葉を、当時よりも力強くミロは叫んだ。
この戦でミロはユキに守られ、ユキはミロに守られている。
それが二人の距離を縮め、互いの信頼を高めたのだ。

「こんどこそ負けないぞ!」
再度発動される雷の魔法。
一度対処された技を二度も使うなど、愚の骨頂だ。
船坂は前回のように雷を切るべく鬼斬鬼刀を構えた。

(ミロさん……がんばって)
自分に出来ることはもうやり尽くした。
ユキはミロの勝利を祈る。

「残念ね、軍人。勝つのは私たちだわ」
舞歌は船坂に勝利を宣言した。
これまでに幾人もの吸血鬼を殺してきた彼女だからわかる。
どれほど人間を超越した存在でも、氷の刃と雷の攻撃を連続で受けて平気でいられる生物など存在しない。
船坂と戦っていた彼女は後方に跳躍して、魔法が及ぶ範囲から撤退する。

「な、に!?」
想定外の展開に船坂は目を見開く。
以前は受け止められたミロの雷魔法が、鬼斬鬼刀を無視して彼の全身を襲ったのだ。

「水は電気をよく通す。これで死ななければ、吸血鬼以上の化物ね」

舞歌を助ける際に、ユキは能力で雪の壁を作り出している。
彼女の行動を船坂は子供の悪あがきと判断して盛大に砕いてしまった。
雪の塊が破壊されれば雪が飛び散り、溶けた雪は水になる。
自分が水で濡れていることに気付かぬまま雷に挑んだ船坂は、為す術もなくその餌食となったのだ。


「まりょく切れだ」
数分経過。
ミロの魔力が切れた。魔法が強制的に中断される。
一層悍ましさを増して船坂弘の姿が現れた。
それは生きる屍だ。常人であれば致命傷になり得る傷を負いながら、彼は生存していた。

「とんでもない化物ね。少しはバランスを考えて参加者の選定をしてほしかったものだわ」
愚痴を零した舞歌は空を見上げる。
そこに広がるのは月と星々が彩る夜空だ。
流れ星でもないかと探してみるが、やはり見つからない。
彼女はふぅっとため息をつくと震えるユキの肩を叩いた。


「この化物は私が始末するわ。ユキは今すぐ逃げること」
「え? どうして急に、」
「役割分担よ。私はこの化物を殺すけど、ユキには夏実とルピナスを守ってほしいわ。
 もう相手の命は風前の灯火。一人で勝てる相手に三人で挑む必要なんてないじゃない。
 それに夏実とルピナスを探すにしても、集団より手分けをして探した方が効率がいいわ」
「それは、そうだけど……」
「一人で残る私が不安?」
「うん。また勝手に消えたりしないよね?」

「当然よ。このリボンに誓うわ。私はもう勝手にいなくなったりしない。
 だって“朝霧舞歌”はここから脱出して、貴女たち三人と旅行や花見を楽しみたいもの。
 その時はこのリボンでより可愛くなった貴女を堪能したいわ」

そう言って舞歌は髪のリボンを解くと、ユキに渡した。
ユキはそれを受け取るとデイパックに仕舞う。

「そうゆうのを死亡フラグっていうんだよ。もしホントに死んだら、お墓の前で説教してあげるから、覚悟するといいよ」
「死なないわ。吸血鬼は不死身なのよ」
「……指切りげんまん」
「懐かしい行いね。久しぶりにやるのも悪くないわ」

ユキと舞歌は互いの指を結ぶ。
約一年ぶりにする指切りげんまん。
それは四人の間で約束をする時に必ずしていた行為。
発案者のルピナスは不在だが、それでも二人は笑顔で行う。

「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます、指切った」」

そしてユキとミロは別の場所へ向かった。
まだまだ舞歌と話したい気持ちもある。けど、夏実とルピナスも助けたいから。悪党商会の皆も心配だから。
昔の水芭ユキは無口で無愛想で泣き虫だった。
そんな凍てついた心を溶かしてくれたのは彼女を見守る周囲の人々だ。

(私は絶対に皆を守る。だから舞歌もがんばってね)
今度は自分が彼らを守ろう。ユキは固く決意した。

【B-5 草原/黎明】
【ミロ・ゴドゴラスV世】
[状態]:左腕損傷、ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消費(極大)
[装備]:なし
[道具]:ランダムアイテム1~3(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本行動方針:ワールドオーダーをこてんぱんにたたきのめす。
1:あらたな部下をあつめる。
2:じゃまするヤツらもたたきのめす。
3:くびわは気にいらないのではずしたい。
4:ユキはしばらくボクの部下としてはたらかせてやる。
5:ワールドオーダーをさがしてボコボコにする。
[備考]
※悪党商会、ブレイカーズについての情報を知りました。
※二人が何処へ向かうのかは後の書き手さんにお任せします。

【水芭ユキ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:ランダムアイテム1~3(確認済)、基本支給品一式、クロウのリボン
[思考]
基本行動方針:悪党商会の一員として殺し合いを止める。
1:今はミロと共に行動。部下も悪くないかな
2:殺し合いに乗っている参加者は退治する。もし「殺す」必要があると判断すれば…
3:お父さん(森茂)や悪党商会のみんな、同級生達のことが心配。早く会いたい。
4:茜ヶ久保が不安。もしも誰かに危害を加えていたら力づくでも止める。
5:ワールドオーダーを探す。
6:夏実とルピナスを守る。
[備考]
※二人が何処へ向かうのかは後の書き手さんにお任せします。


ユキとミロを見送った舞歌は、ボロ雑巾のようになりながら刀を構える鬼神を見据えた。
彼女とユキが会話をする程度の時間は稼げたことから、先の大技でダメージを受けていることは明らかだ。
心臓を刺して、雷を受けて、それでも戦える程度の余力は残っている。
舞歌の背筋が寒くなる。ユキの前では格好付けていたが、彼女も船坂から尋常でない恐怖を感じていた。

(やっぱり怖いわ。けど、漸く復讐以外で戦う理由が出来た)

もしかしたら彼女は、ずっとそれを求めていたのかもしれない。
復讐を続けるたびに彼女の心は蝕まれた。
殺人に快楽を見出して憎き存在を殺戮する吸血鬼。自分が最も憎んでいた存在に彼女は徐々に近付いていたのだ。
それを変えたのは鴉の一言と彼女の旧友、水芭ユキだった。
鴉の言葉は彼女を悩ませ。
ユキと共闘することで憎しみ以外に戦う理由を見出すことが出来た。
もちろん殺人を愉しむという根本的な問題の解決にはなってはいない。
それでも友達のために力を振るえるというだけで今の“朝霧舞歌”には十分だった。
悩むのは全てが終わってから。今は全力を尽くして相手を殺すことに専念する。

(暴走するのは怖いけど……手加減はなし。全力でいくわ)
デイパックから輸血パックを取り出して一気飲みした。
彼女は吸血鬼。血を吸うことで力を上げる存在。
輸血パックは切り札だ。
暴走の危険があるため親しい人間の前で使う気にはならないが、今は遠慮をする必要もない。

「最終ラウンドよ、化物。あなたはこの“クロウ”が葬るわ」

飲み終えた輸血パックを投げ捨てると、彼女は力強く宣言する。
不思議と今の“朝霧舞歌”は怪物が相手でも負ける気がしなかった。

親友を想う吸血鬼と大日本帝国英雄の戦がここに始まる――!

【B-6 草原/黎明】
【クロウ】
状態:ダメージ(小)、疲労(中)、両腕に切り傷(回復中)、ダメージ回復中、身体能力上昇、黒髪ロング
装備:なし
道具:基本支給品一式、ランダムアイテム0~1、輸血パック(2/3)
[思考・状況]
基本思考:吸血鬼や命を弄ぶ輩を殺す。脱出も視野に入れる。
1:軍人を全力で殺す。
2:夏実とルピナスはユキに任せる。
3:空谷葵を探し出して私刑に処す。
4:暴走しないことを願うわ。
[備考]
※客観的に見ても自分が殺人を愉しんでいるらしいことを知りました。
※自分が殺人を愉しんでいる原因は吸血鬼の本能だと思っています。
※輸血パックを飲みました。効果は以下の通り。時間が経てば元に戻ります。
  • 身体能力の上昇
  • 傷の回復
  • 血の気が多くなる
※短時間に血液を飲み過ぎると自我が消失して暴走すると思っています。

【船坂弘】
[状態]:全身に軽度の打撲(修復中)、腹部に穴(修復中)、全身に軽度の火傷(修復中)、心臓破損(修復中)、ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:鬼斬鬼刀
[道具]なし
[思考]
基本行動方針:自国民(大日本帝国)以外皆殺しにして勝利を
1:クロウを殺す
2:長松洋平に屈辱を返す

【輸血パック3個セット】
クロウに支給。
文字通り輸血パック。

042.転・交・生 投下順で読む 044.Yes-No
040.魔女特製惚れ薬を飲んだ俺の青春がハーレム化して大変なことになっている件について。 時系列順で読む 045.ヒッキーな彼はロリ悪女(♂)
Dragon Ash ミロ・ゴドゴラスV世 長松洋平は回想する/音ノ宮・有理子は殺さない
水芭ユキ
二人のクロウ クロウ 友のために/国のために
俺の知ってるバトルロワイアルと違う 船坂弘

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最終更新:2015年07月12日 02:39