放送が流れ、次の目的地を地下実験場と定めたブレイカーズの二人が足を止めた。

聞こえるのは相も変わらず、飄々とした調子の声。
それにイラつきを覚えながらも、与えられた情報を享受するしかない。
そんな緩い拷問の様なもどかしい状況は、挨拶と共に締めくくられる。

その内容を聞き終えた、ミル博士が眉を吊り下げ目を細めた。
ミルの直接的な友人がいたわけでもなかったが。
死者の中に家族であるルピナスに友人として紹介された少女の名があったのだ。
初めてできた同年代の友人だと嬉しげに尻尾を振る姿を思い出し、その懐かしさに少しだけ胸が痛む。

そしてもう一つ気にかかったのは、大神官ミュートスの死亡だ。
ミルの縁者ではないが、同行者である剣神龍次郎の縁者である。
右腕たる大幹部を失い大首領にいかなる変化があるのか、それを確認すべくミルは龍次郎の表情を伺った。

瞬間。ミルは訳もなく殺されるかと思った。

この場にいたくないと拒否反応を起こしたように、足が自然と後退する。
だがそれも一瞬。
龍次郎は何を語るでもなく、止めていた足を前へと動かした。

「何をしている、先を急ぐぞ」

空気に飲まれ固まっていたミルに龍次郎が声をかける。
放送を聞き終えた以上、足を止めている理由はない。
怠惰を許さぬ余りにもいつも通りな態度に、先ほどの寒気は気のせいだったのではないかと錯覚しそうになる。

だが、そんなはずがない。
あの一瞬、漏れだした怒気は本物だった。
だと言うのに龍次郎は何事もなかったようにその揺らぎを億尾にも見せない。

憤怒は己を進める原動力として、哀愁は足元を踏みしめる礎とする。
その背には不安など微塵も見せず、付き従う者たちの羨望を背負う道標として在り続ける。
例えそれが身内が相手だろうとも、いや身内だからこそ決して弱みは見せない。
それが強さを是とする大首領の在り方であり、そう在ることを定められた哀しき宿命でもある。
ただ肩に乗せたチャメゴンが寂し気にキューと鳴いた。


地下実験場に辿り着いたブレイカーズの二人がまず行ったのは施設内の哨戒だった。
既にこの殺し合いの開始から半日が経過しようとしている頃合いだ。
この時点で誰がこの施設を訪れ、この施設がどんな魔境になっているのか知れたものではない。
待ち伏せ目的で参加者が潜んでいる可能性もあるし、罠だって仕掛けられているかもしれない。
それを把握しておかなくては、おちおち首輪の解析などしていられないだろう。

地下実験場の入り口となる地上フロアはこじんまりとしていたが、地下実験場という名の通り本体となる施設は地下に広がっているようだ。
備え付けられていたエレベーターは稼働していたようだが、罠の仕掛けられている可能性やとイザと言うとき閉じ込められる危険性がある。
そうなれば龍次郎はともかくミルはどうなるかわからない、そのため安全性を考慮して非常階段を進むことになった。

龍次郎を先頭に地下深くへと続く九十九折の階段を下ってゆく。
ひんやりとした冷たい手すりは銀に輝き、打ちっぱなしのコンクリートが不気味な威圧感と共に壁際を埋め尽くしていた。
ペンキすら塗られておらず、これのみならず施設全体に飾り気という物が見受けられない。
実験場にそんなものは必要ないという事なのだろうが、遊び心がないなと研究者としてミルは思う。

そうして普通のビルでたとえるなら5階ほど下った所で、初めて出口らしき扉の前までたどり着いた。
階段はまだ下に続いている様だが、虱潰しに哨戒していくのだから、このフロアを避けて通る訳にもいかない。

緊張するミルとは対照的に、龍次郎はあっさりとドアノブに手を掛ける。
鍵はかかっていないようで、すんなりと扉が開かれ、その先には広い通路が広がっていた。
待ち伏せなどもなさそうだ。

通路は少し進んだ先で十字に分かれ、四つの区分に施設を切り分けていた。
そこにはデザイン性は感じられず、ただ機械的にいくつかの部屋が区切られているといった印象だ。
フロアの入り口とは違い各部屋には鍵がかかっていたが、その辺は龍次郎が力技でこじ開けていったため実質フリーパス状態である。

こうなると哨戒というより、ただの押し入り強盗と言った風である。
強引に扉をぶち抜くその行動は慎重さの欠片もないが、それは慢心ではなく確固たる自信に基づく行動である。
仮に待ち伏せや不意打ちがあろうとも自分が破れるはずがないという、絶対強者の特権。
龍次郎はそれを振るっているに過ぎない。

一通り見た限り、このフロアは生活スペースの様であり、ずらりと並んだ幾つもの部屋は研究者の個室の様である。
もちろん調べた部屋の中には研究者などいなかったし、死体もなかった。
纏められた資料の中には幾つか研究成果のようなレポートが発見できた。
タイトルは。

『Psychic Refinement Report』
acquired designer child project
『Soul Proof - The human future -』
etc...

ミルか軽く中身を確認したが、首輪の解除や脱出に役に立ちそうなものではなかった。
全ての部屋の探索を追えたが他にも目新しいものはなかったため、非常口前にまで戻る。
そこで龍次郎がミルへと問うた。

「ミルよ。どう考える?」
「そうだなぁ………ミルには、このフロアは不要に思うのだ」

このフロアは実際に実験場を運営してゆくのならば必要不可欠なフロアなのだろうが、殺し合いを行う島にある施設としては不要なフロアである。
参加者が隠れ家として使用するくらいの使い道はあるだろうが、それは他のフロアでも可能な事だし、何より禁止エリアにしてされてしまえばそれで終わりだ。
それはつまり、この施設は殺し合いのために建てられた施設ではない。
ひいてはこの舞台自体がワールドオーダーの誂えた代物ではない可能性を示していた。

だが、そうではないとミルは知っている。
ミルたちのいた研究所はブレイカーズの施設の再現だった。
その事実はナハトリッターのお墨付きだ。
大首領本人に確認してみた所、小島に施設を作った覚えはないという事である。
ここにある施設はワールドオーダーがこの狐島に用意したものに違いない。

そのことを事を鑑みれば、この施設もブレイカーズの研究所のように何かを再現しているのではないだろうか。
その可能性を龍次郎に伝えたところ、つまらなそうにふんと吐き捨てた。

「参加者に関連した施設の再現か。じゃあここは、誰に関連した施設なのかねぇ」

独り言のようにそう呟き、龍次郎は次のフロアへと続く階段へと向かう。
ミルも慌ててその後を追った。


そうして幾つかのフロアを探索した後、最下層に到達する。
これまでのフロアも地下とは思えぬほどの広さだったが、最下層に広がっていたのはより一層広大な空間だった。

いや実際の広さは他のフロアと変わらないのかもしれないが、受ける印象が違う。
なにせ他のフロアにはあった大層な設備はおろか部屋を区切る壁一つない。
ただっぴろい空間はドーム状に切りぬかれ、その地面にはただ砂が敷き詰められいるだけであった。

爆発実験などを行っていた場所なのだろうか。
飾り気のないこの施設の無骨な背景も合わさって、視ようによっては古代の決闘場の様にも見える。

その砂漠のような空間の中央。
何もないはずのその場に異物としてソレはあった。

ミルはそれが何であるのかをすぐに理解する事が出来なかった。
そう言ったモノを見慣れている龍次郎は不愉快そうに僅かに表情を歪ませる。
龍次郎が不機嫌そうな表情のままソレに向かい、ミルもその後を追う。

「…………うっ」

そして、ある程度近づいた所で漂ってきた刺激臭でミルもようやくソレがなんであるか気付きミルが口元を抑える。
それは個人の認識はおろか人間だったかどうかすら判別できない程にメチャクチャに破壊された生命の残骸だった。
思わず目を逸らすミルとは対照的に、その残骸をしっかりと見つめながら龍次郎が呟く。

「首輪がねぇな」

残骸から回収するつもりだったのか、龍次郎は首輪を探していたようである。
言われてミルもおっかなびっくり見てみれば、確かにそれらしきものは見当たらない。

「……こやつを殺した奴が回収したのではないのか?」
「これをやった奴がか? 首輪を取るためだけにしちゃどう見てもやり過ぎだぜ」

確かに、首どころか跡形もない。
こんな狂気じみた行動をとる人間が、わざわざ首輪を回収するなどという理性的な行動をとるとも思えない。

「ならどうしてここまで……」
「さぁな。私怨でもあったんじゃねえか? 人一人をここまでミンチにするっての意外と手間だからな」

俺は例外だがなと人間など一撃でミンチにできる大首領は付け加える。
とは言え、その辺を探った所で何の益もないだろう。
ただの死体などには用はないし、このフロアにはこの死体以外に見どころもなさそうである。
龍次郎は残骸に背を向けミルへと向き直った。

「それでどうだ? ミルよ。それの解析はここにある設備で可能か?」
「う、うむ。実験場というだけあって十分なのだ。ここにある設備があれば首輪の解析は可能だと思うぞ」

ここまで見回ってきた途中のフロアに首輪解析に役立ちそうな機材は幾つかあった。
流石に万全とはいかずともミルの知識と技術力を応用すれば、首輪の解析くらいなら十分に可能である。

「そうか。ならば早速首輪の解析を開始するぞ」

最下層までの探索が終了し、砂ばかりのこの場にはもはやこれ以上用は無いと、二人は最下層を後にするべく出口となる階段へと向かう。
だが、その階段へと向かう途中、先行していた龍次郎が足を止める後ろのミルへと静止を掛けた。

「何者か。こそこそせずに姿を見せよ」

威厳と威圧を込めた龍次郎の問いに、カツンと足音が答える。
階段を下る動きに合わせ、やたらゴテゴテとした黒いフリルが揺れる。
足元から現れたのは、薄い唇を僅かに吊り上げ不敵な笑みを浮かべた少女だった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

地下深くでの会遇より少し前、地の底よりも高い地上にて、音ノ宮・亜理子は天よりの声を聞いた。
そして、先ほど宿敵として宣戦布告を叩きつけた相手の口から一ノ瀬夜空の死を知る。
月白氷の名が呼ばれた以上彼の名が呼ばれるのは解りきったことだ、今更動揺なんてしない。

そう、動揺なんてしない。
動揺なんてしない。
動揺なんてしない。
自らに言い聞かせるように三度心の中で呟き、深く息を吐く。

それよりも今成すべきことはこの事実を考察する事である。
彼の死すら考察の材料にしてみせよう。
軽蔑するならすればいい、元より私はこういう女だ。

考えるべくは月白氷と一ノ瀬夜空の死亡タイミングのズレについて。
死亡情報が嘘ではないのならばこの世界を脱出した後にあの二人がワールドオーダーに捕らわれたのは間違いないだろう。
では何故殆ど同時に消えたはずの月白氷と一ノ瀬空夜が別のタイミングで呼ばれたのか。
あの二人の違いは何か、という点をワールドオーダーの立場になって考えれば自ずと答えが導き出される。

その答えは恐らく、一ノ瀬夜空が『人間』だからだ。
計画への利用価値の高い一ノ瀬を惜しんで、何らかの交渉を持ち掛けた。
ワールドオーダーの現状を考えればこの行動は大いにあり得る。

そして、最終的に交渉は決裂し、利用できなくなった一ノ瀬を始末した。
死亡の時間差は交渉と決裂までの間であると考えれば、この流れに説明がつく。

ここから分かる事実は、やはり鍵は人間であるという事だ。
そうなると逆説的に人外の存在は何のために用意されているのかという疑問が湧く。
当て馬、それとも別の役割があるのか。

そして主催者から直接渡されたこの首輪。
首輪全てが特別な意味を持つという事はないだろう。
逐一回収していたのでは手が足りなさすぎる。
わざわざ主催者が回収しに来た以上なにか重大な意味があるはずだ。

人外である死神とその首輪。
関連があるとするならば、守人としての役割を担わされているのではないか、とう推察が立つ。
そうなると人外の首輪は特別性という式が成り立つわけだが。
これを確認するには首輪の解析と幾つかのサンプルが必要である。

手先は器用な方だと思うが、首輪をどうこうできるほどの技術は私にはない。
その他にも私一人ではいろいろと足りない要素が多すぎる。
やはり対ワールドオーダーを目指す協力者は必要だ。
とは言え、一度手痛い目に合っているだけに人選は慎重に生きたいところである。

私以外にも、首輪をどうにかするために動いている者がいるはずだ。
そう言う人間がどこを目指すかは中りが付けられる。
私はまずは現在位置から一番近い研究所に向かう事にした。

首輪探知機があるため移動はスムーズだった。
憚ることなく整備された道を進み、早々に目的地へと到達する。
いや、正確には目的地跡へと到達した。

研究所は跡形もなく吹き飛んでいた。
何か大きな戦闘があったようであり、そこらかしこに破壊跡が広がっている。

だが、犠牲者を埋葬した跡がある事から、既に事態は収取し一段落ついているようだ。
首輪探知機にも反応はない。
さしあたっての危険はないと思われるが、協力者集めという目的は空振りである。

埋葬跡からも首輪の反応はなかった。
この埋葬がフェイクでない限り、どうやら首輪は回収されているようだ。
わざわざ回収したという事は、やはりここに居た連中は首輪の解除を目的としていたと言える。
研究所が吹き飛ぶほどの事件が起きて場を移したのだろう。
そうなるとこれ以上ここを調査しても得る者はなさそうだ。次の目的地へと向かうとしよう。

順番に道沿いに進むとして、次は地下実験場である。
そこもダメなら工房に向かおう。そう心の中で予定を決めてアスファルトを踏みしめた。


四半刻ほど歩いたところで、次の目的地へとたどり着く。
こちらも消し飛んでいたらという危惧は杞憂に終わり、地下実験場は健在だった。
と言っても、そこにあったのは小さな事務所の様な建物で、パッと見では実験場と呼べるほどのものではなかったのだが。

無論、ここは入り口に過ぎない。
私は受付近くのエレベーターホールを無視し、非常階段へと向かう。
そして、階段を下る前に首輪探知機を確認した。

レーダーには私の座標に重なる様に複数の反応が点滅しており何者かの存在を示していた。
だが首輪探知機はそのポイントを平面的な距離で示すのみで高さまではわからない。
地下深くに掘り下げられたこの施設では余り役に立たたないようである。
一先ずそれだけを確認してから、私は音を立てないよう慎重な足取りで階段へと踏み出した。

暫く下った所で最初のフロアに辿り着く。
そのフロアに入った瞬間、私の目に少しおかしな光景が入ってきた。
フロアの全ての部屋の扉が閉じられることなく開きっぱなしになっているのだ。
住民の居ないこの無人島で不用心もないだろうが、開けっぱなしになっているのも仕方あるまい。
なにせ閉じようがない、扉は例外なく破壊されていたのだから。

恐らく参加者の誰かがやったのだろう。
この状況なのだから鍵が開かないのなら壊してしまえと言うのは正しいと言えばそうなのだが、些か乱暴すぎる。
これを行ったのは、レーダーに映っている何者かか、それとも先んじてこの施設を訪れただれかかか。
ともかく接触対象への警戒度を若干上方修正しておく。

扉の開け方こそ乱暴であるのだが、ご丁寧にも全ての部屋を漏らさず破壊しているというのは、何かを探していたと考えるべきか。
問題は何を探しているのかである。

逃げ込んだ参加者を探している殺人者という線もあるが、だとしたら時間をかけ過ぎである。
ワンフロアを潰している間に獲物を逃しかねない。

この施設から使える道具を探していたと言うのが妥当な線だろう。
そうなるとこれを行った人物が首輪解除を目的として行動している人物である可能性が高まる。
まあ乱暴に破壊された扉の跡とデリケートな技術を要求される首輪の解除というのは人物像が一致しないが、その辺はイメージだけで断定する事ではないだろう。

それに仮に首輪の解除を目指しているからと言って誰にでも交友的な人物であるとは限らない。
もしかしたらあくまで自分が助かるのが目的でその恩恵を他者にくれてやるなんて微塵も考えてない輩である可能性も高い。
接触すべきかそうでないかは今のところ半々と言ったところだろうか。
施設自体の調査は早々に切り上げ、この人物を確認すべく次のフロアへと向かう。

そうして途中のフロア全てを確認していくと、底のない奈落のように暗闇が続いてた階段の底が見えた。
隠し部屋でもない限り、次が最下層で間違いないだろう。

ここまでに偶然入れ違ってたとかでなければ、この首輪の反応の主はそこにいるという事である。
これまで以上に慎重に気配を殺して行動する。
尾行や情報収集などのを行う為に必要なため、隠密行動は探偵のスキルの一つである。
そう簡単に気付かれることはないはずだ。

まずは相手がどんな人物なのかを確認する事が最優先である。
それで相手が危険人物だったら即刻大跳躍でも何でも使ってこの場を立ち去ろう。
そのくらいの慎重さを持って、最後の階段を一歩踏み出そうとした。

「何者か」

瞬間。言葉自体が重量をもっているのではないかという程の威圧感が全身を襲った。
何故気づかれた。音など立てないよう細心の注意を払って行動していたはずなのに。

「こそこそせずに姿を見せよ」

驚きに身を固め、完全に機を失った。
ここで逃げたらそれこそ、敵対行動とみなされかねない。

こうなったら腹をくくる。
逃げも隠れもするつもりなど最初からなかったという風を装って、ワザと足音を立て階段を下った。
そして顔には動揺など見せず、あえて内心とは裏腹の不敵な笑みを張り付ける。
交渉なんてハッタリとクソ度胸である。飲まれた方が負けだ。

そんな決意で出て行って、いきなり私は後悔する。
そこにいたのはブレイカーズの大首領。剣神龍次郎だった。
超級の危険人物である。
先にこれを確認していたら確実に逃げ出していた相手だ。

だがもう一人。龍次郎の後ろにいる幼女らしき人物。
生物工学及び物理学の権威、ミルシュトローム・テル・シュテーゲン博士だ。
自らの研究成果で性転換を果たした変人だと聞いたがその通りのようである。
だが私の知る限りでは参加者の中で首輪解除に最も貢献できるであろう人物である。

発見され接触してしまう結果になったのは、この人物との接触できたという点を見れば幸運だったのか不幸だったのか。
龍次郎も凶暴性ばかりが聞こえる風評と違って、こちらの話を聞く程度には理性的である。
もっとも舐められているだけかもしれないが。

そして、この組み合わせ。
上で起きていた、だいたいの事情を察する。

「こそこそとはご挨拶ね。別に私は彼方たちに敵意なんて持ってないわ。むしろいい話を持ってきたんだから」
「ほう、では何とする?」

片眉を吊り上げ見定めるような目つきでこちらを射抜く。
視線だけで私なんて吹き飛んでしまいそうだ。
当然ながら、まだ信用はされていないようである。

「首輪を集めてるんでしょう? 持ってるわよ首輪。しかもただの首輪じゃなくて特別性のをね」

相手の事情を先回りするような言葉に龍次郎の眉が動く。
どうやらこちらの言葉に興味を示したようだ。

この実験場で何かを探すように虱潰しに探していた事。
そしてミル博士の存在。
彼らが首輪の解除を目指して行動している人物であるという予測は難しくない。

むしろ、これだけの条件が整って何の成果もないというのも考えづらい。
なので自分の持っている首輪に関する情報をさも知っていた可能様な態度で提示する。
もし相手が知らないと言うのなら、その情報を開示することでどちらにせよ交渉で優位に立てるだろう。
最も特別性と言う言葉に喰いつかないあたり、向こうもその程度は把握してたようだが。

どの程度このハッタリが通用したのかは定かではないが、龍次郎はふむと一つ頷いた。

「ここまで生き残っているだけあって、ただの小娘という訳ではないようだな。して何が望みだ小娘」
「さしあたっては首輪の解除を。最終的にはワールドオーダーの目論見を破壊する事、といったところかしらね」

こちらの言葉、態度、全てを吟味するようにじっくりと見定め、龍次郎が口を開く。

「よかろう。その志は我らブレイカーズと同じくする物である」
「なら、」

手を組めるんじゃないかしら、と続けようとしたが、龍次郎の力強い声がその先を遮った。

「しかし、我らブレイカーズは強さを是とする組織である!
 無論その強さとは武力には限らずあらゆる分野を評価する。
 知力、技術力、精神力。我らの一員として尽くしたくば示して見せよ!」
「それはつまり私に何が出来るかを見せてみろってことかしら?」

然り、と頷く。
ブレイカーズの一員になるつもりなんてないけれど。
龍次郎の武力、ミル博士の技術力は対主催に必要な事である。
彼らの協力を取り付けるためにも龍次郎の御眼鏡に適わなければならない。

「いいわ、お見せしましょう。と言っても、探偵である私にできる事なんて一つだけなのだけど」

探偵という職業に思うところがあるのか、龍次郎がピクリと反応する。
それではこの事件についての探偵の推理を披露するとしよう。
みなと呼ぶには少ないけれど、衆人の前で名探偵はさてと言った。

【E-10 地下実験場・最下層/日中】
【剣神龍次郎】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:ナハト・リッターの木刀、チャメゴン
[道具]:基本支給品一式、謎の鍵、ランダムアイテム1~3個
[思考・行動]
基本方針:己の“最強”を証明する。その為に、このゲームを潰す。
1:首輪の解析を行わせる。
2:協力者を探す。ミュートスを優先。
3:役立ちそうな者はブレイカーズの軍門に下るなら生かす。敵対する者、役立たない者は殺す。
※この会場はワールドオーダーの拠点の一つだと考えています。
※怪人形態時の防御力が低下しています。
※首輪にワールドオーダーの能力が使われている可能性について考えています。
※妖刀無銘、サバイバルナイフ・魔剣天翔の説明書を読みました。

【ミル】
[状態]:健康
[装備]:悪党商会メンバーバッチ(1番)
[道具]:基本支給品一式、フォーゲル・ゲヴェーア、悪党商会メンバーバッチ(3/6)、オデットの杖、初山実花子の首輪、ディウスの首輪、ミリアの首輪、ランダムアイテム0~4
[思考・行動]
基本方針:ブレイカーズで主催者の野望を打ち砕く
1:首輪を絶対に解除する
2:亦紅を探す。葵やミリア、正一の知り合いも探すぞ
3:葵を助けたい
4:ミリアの兄に魔王の死と遺言を伝える
※ラビットインフルの情報を知りました
藤堂兇次郎がワールドオーダーと協力していると予想しています
※宇宙人がジョーカーにいると知りました
※ファンタジー世界と魔族についての知識を得ました

【音ノ宮・亜理子】
[状態]:左脇腹、右肩にダメージ、疲労(中)
[装備]:魔法少女変身ステッキ
[道具]:基本支給品一式×2、M24SWS(3/5)、7.62x51mmNATO弾×3、レミントンM870(3/6)、12ゲージ×4、ガソリン7L、火炎瓶×3
    双眼鏡、鴉の手紙、首輪探知機、月白氷の首輪
[思考]
基本行動方針:この事件を解決する為に、ワールドオーダーに負けを認めさせる。
1:ワールドオーダーの『神様』への『革命』について推理する。

117.Bite the Dust 投下順で読む 119.King of naked
時系列順で読む
全体幸福のために為すべきことは 剣神龍次郎 インベーダー
ミル
音ノ宮少女の事件簿 音ノ宮・亜理子

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年02月12日 18:38