奇形の天使 ◆w80xX5W6oQ
心当たりならいくらでもある。私を恨んでいる誰かの存在。
ある日突然拉致されて殺し合いを命じられても、
いつかこうなると思っていたと胸の奥底で納得していた。
ある日突然拉致されて殺し合いを命じられても、
いつかこうなると思っていたと胸の奥底で納得していた。
生まれながらの異常者なのか、それとも環境によるものか、或いはその両方か――
私には子供の頃から人を殺したいという願望が、そして強い衝動があった。
アニメや漫画やゲームの影響、という線はまず有り得ない。
私の母は狂信的なまでにそれらを害悪と見なしていて、私は反抗期を迎えるまでずっと
NHKの教育テレビと母親の検閲済みの娯楽作品しか与えられなかったから。
一方、私が初めて人を殺そうとしたのは、小学校三年生のとき。
可愛らしい女の子を殺したい、という衝動を抑えられなくなった私は、
ピアノ教室の帰り、公園で遊んでいる名前も知らない少女に襲い掛かった。
私には子供の頃から人を殺したいという願望が、そして強い衝動があった。
アニメや漫画やゲームの影響、という線はまず有り得ない。
私の母は狂信的なまでにそれらを害悪と見なしていて、私は反抗期を迎えるまでずっと
NHKの教育テレビと母親の検閲済みの娯楽作品しか与えられなかったから。
一方、私が初めて人を殺そうとしたのは、小学校三年生のとき。
可愛らしい女の子を殺したい、という衝動を抑えられなくなった私は、
ピアノ教室の帰り、公園で遊んでいる名前も知らない少女に襲い掛かった。
無邪気に笑う可憐な少女を憎い、殺したいと思ったのは、
自分の笑顔が虚構だと知っていたからだろうか。
自分の笑顔が虚構だと知っていたからだろうか。
とはいえ私は無知な子供で、人の殺し方なんて知らなかった。
襲い掛かった私は素手、衝動の赴くまま顔に噛み付いたはいいものの、
相手の抵抗は思いのほか強く、歯を突き立てるだけで精一杯。
通りかかった近所のおばさんたちに見咎められ、引き剥がされた。
襲い掛かった私は素手、衝動の赴くまま顔に噛み付いたはいいものの、
相手の抵抗は思いのほか強く、歯を突き立てるだけで精一杯。
通りかかった近所のおばさんたちに見咎められ、引き剥がされた。
相手の顔には歯型がくっきり。
喧嘩になった、と嘘をついた。こっぴどく叱られたけど、それだけだった。
小学生の女の子が子供相手に通り魔殺人、そんなこと誰も考えなかった。
私は野放し。その二年後、祖父が脳卒中で入院した。
別人のような表情になり、私のことを忘れてしまい、それでも快復した祖父を見て、
私は卒業文集に「将来の夢は看護師さんになることです」と書いた。
喧嘩になった、と嘘をついた。こっぴどく叱られたけど、それだけだった。
小学生の女の子が子供相手に通り魔殺人、そんなこと誰も考えなかった。
私は野放し。その二年後、祖父が脳卒中で入院した。
別人のような表情になり、私のことを忘れてしまい、それでも快復した祖父を見て、
私は卒業文集に「将来の夢は看護師さんになることです」と書いた。
祖父の生命を維持していた沢山のチューブ、それらを断ち切り、
或いは毒を混入する自分の姿を夢想しながら――
或いは毒を混入する自分の姿を夢想しながら――
気が付くと、私はソファに横たわっていた。天井は高く、見覚えはない。
整然と並んだ本棚を、常夜灯がほのかに照らす。目覚めた場所は、深夜の図書館。
視線を落とすと、見慣れた白衣に包まれた自分の下半身が目に入った。
勤務中に拉致されたのか、それとも拉致された後に着替えさせられたのか。
記憶が混乱している。ヨグス。何? 殺し合い。え? 違和感が首を圧迫する。
整然と並んだ本棚を、常夜灯がほのかに照らす。目覚めた場所は、深夜の図書館。
視線を落とすと、見慣れた白衣に包まれた自分の下半身が目に入った。
勤務中に拉致されたのか、それとも拉致された後に着替えさせられたのか。
記憶が混乱している。ヨグス。何? 殺し合い。え? 違和感が首を圧迫する。
指を這わせると、そこに首輪があることに気付く。記憶がゆっくりと焦点を結ぶ。
私を恨んでいる人なんて掃いて捨てるほどいるだろう、けれどもこんな真似を好むのは、
同僚の看護師、三城愛理沙。人格の歪んだ変態レズ女。彼女の仕業に違いないと思った。
ヨグスと名乗る宇宙人に関する記憶も、彼女の用意した映像なのだろう。
いつものことだった。荒唐無稽な作り話を私に信じさせようとするのは。
特殊な精神状態に追い込まれた上で、おかしな、そう、
冷静に考えるとおかしなことだらけの命令を私は彼女に吹き込まれる。
けれども私は逆らえない。それはいつものことだった。だからこれもいつものこと。
三城愛理沙の奴隷であること、それが私の日常だった。
私を恨んでいる人なんて掃いて捨てるほどいるだろう、けれどもこんな真似を好むのは、
同僚の看護師、三城愛理沙。人格の歪んだ変態レズ女。彼女の仕業に違いないと思った。
ヨグスと名乗る宇宙人に関する記憶も、彼女の用意した映像なのだろう。
いつものことだった。荒唐無稽な作り話を私に信じさせようとするのは。
特殊な精神状態に追い込まれた上で、おかしな、そう、
冷静に考えるとおかしなことだらけの命令を私は彼女に吹き込まれる。
けれども私は逆らえない。それはいつものことだった。だからこれもいつものこと。
三城愛理沙の奴隷であること、それが私の日常だった。
看護師になった私は、その立場と医療知識を利用して何人もの患者を密かに殺した。
あるときは病死に見せかけて、またあるときは同僚の医療ミスに見せかけて。
少年少女による快楽殺人を匂わせるニュースが流れるたびに思った。
ここに映っていたのは自分だったかも知れない、と。そう思いながら私は笑った。
私はこんな間抜けじゃない。逮捕されるなんて、矯正されるなんて、殺人者として三流以下。
私は誰にも咎められず、罪を背負わず罰を受けず、息をするように人を殺し続けてやる。
あるときは病死に見せかけて、またあるときは同僚の医療ミスに見せかけて。
少年少女による快楽殺人を匂わせるニュースが流れるたびに思った。
ここに映っていたのは自分だったかも知れない、と。そう思いながら私は笑った。
私はこんな間抜けじゃない。逮捕されるなんて、矯正されるなんて、殺人者として三流以下。
私は誰にも咎められず、罪を背負わず罰を受けず、息をするように人を殺し続けてやる。
でも――私に間違いがあったとすれば、自分の異常性を過信していたこと。
私は頭の回転が遅く、想定外の事態に直面するといとも容易くパニックに陥る。
同僚に自分の同類が紛れ込んでいるなんて、考えたこともなかった。
協力者として接近してきた三城愛理沙に犯行を隠しとおすことが出来ず、
あっさり弱みを握られて、今では彼女の命じるまま人を殺す有様だった。
殺す相手を選べないなんて、殺人者ではなくただの道具だ。
テレビに映る“三流以下”よりはるかに劣るシリアルキラー、それが今の私だった。
私は頭の回転が遅く、想定外の事態に直面するといとも容易くパニックに陥る。
同僚に自分の同類が紛れ込んでいるなんて、考えたこともなかった。
協力者として接近してきた三城愛理沙に犯行を隠しとおすことが出来ず、
あっさり弱みを握られて、今では彼女の命じるまま人を殺す有様だった。
殺す相手を選べないなんて、殺人者ではなくただの道具だ。
テレビに映る“三流以下”よりはるかに劣るシリアルキラー、それが今の私だった。
ゆっくりと身を起こし、デイパックを開いた。現れたのは【病の呪い】のカード。
スキルカードだなんて、また愛理沙は。無邪気な作り話に笑ってしまう。
けれども私は指示に従う。ヨグスの言葉を思い出し、カードを手に取り宣誓する。
仕組みは分からない。新種の細菌兵器なのかも知れないし、もっと別のものかも知れない。
ただ、これだけは言える。愛理沙は私を殺せない。私を本気で陥れることは、彼女には出来ない。
スキルカードだなんて、また愛理沙は。無邪気な作り話に笑ってしまう。
けれども私は指示に従う。ヨグスの言葉を思い出し、カードを手に取り宣誓する。
仕組みは分からない。新種の細菌兵器なのかも知れないし、もっと別のものかも知れない。
ただ、これだけは言える。愛理沙は私を殺せない。私を本気で陥れることは、彼女には出来ない。
彼女には私が必要なのだ。彼女のいびつな要求に応じることの出来る私が。
そしてそれは私も同じ。諦めにも似た安堵が胸の奥底を侵食してゆく。
幼い頃から抱えている消えることのない欲求を満たすべく、
そしてそれを欲してくれる愛理沙の元に戻るべく、私はソファから立ち上がった。
そしてそれは私も同じ。諦めにも似た安堵が胸の奥底を侵食してゆく。
幼い頃から抱えている消えることのない欲求を満たすべく、
そしてそれを欲してくれる愛理沙の元に戻るべく、私はソファから立ち上がった。
【一日目・深夜/E-3 図書館内】
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】【病の呪い】
【所持品】基本支給品、スキルカード【病の呪い】、不明支給品1~2
【思考】
1.殺し合いに乗る
2.F-4病院を目指す
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】【病の呪い】
【所持品】基本支給品、スキルカード【病の呪い】、不明支給品1~2
【思考】
1.殺し合いに乗る
2.F-4病院を目指す
【備考】
ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
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