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日常への帰還

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日常への帰還 ◆z4SM0PR6Oc


 葉桜加奈子、17歳。
 髪の色ブラウン。
 瞳の色ブラック。
 ごく普通の高校二年。
 ごく普通の両親のもとに生まれ。
 ごく普通に育ち。
 だらしのない幼なじみを叩き起こす、そんな普通の日々を過ごしてきた私だが。

 どういうわけか、今、荒野に立っている。

「夢かな」

 呟いてみたものの、激しく頬を打つ風はどうしようもなくリアルだ。
 というか寝てたはずなのに、寝巻きじゃなくて制服だし。
 何なんだこの状況。

 月明かりは思いのほか明るく、暗闇の恐怖は薄れるものの、見覚え位のない風景というのはそれだけで怖い。
 ほっぽり出された状況に呆然としながら、どうしたものかと歩きだしたところで。

「やぁ、こんばんはお嬢さん」

 気付けば、その人は目の前に立っていた。

 まるで幽霊にでも出会った気分だった。
 こんな状況だ、周囲を警戒していなかったわけではない。
 遮蔽物のない開けた空間で目の前にいたにもかかわらず、声をかけられるまでまったくその存在に気づかなかった。
 私にマンガみたいな気配を感じるなんて能力はないんだけれど、それ以前に当たり前の存在感というものが感じられない。

「いや、変なことに巻き込まれたね、お互いに」

 薄い笑顔で話しかける様子は自然体すぎるほどに自然体。
 現状を認識していないのか、声からは危機感というモノが感じられない。
 それともこちらを油断させる作戦なのか、慎重に警戒しながら相手の動向を窺う。

 顔のつくりは金髪碧眼。どう見ても日本人ではないのだけれど、衣装は純和風というか和服だ。
 なんというかミスマッチ。違和感があるはずなのに何も感じない存在感の無さはなにか不気味だ。
 年の頃は若くも見えるし、それなりにいっているようにも見える。

 それにパッと見た感じ線は細く争いなんてとてもじゃないができそうには見えない。
 それどころか、いざとなれば私でも組み伏せられるんじゃないか、と思わせるような弱々しい印象すら覚える。

「ん? ああ、大丈夫大丈夫、そう警戒しないで、キミをどうこうしようってつもりはないから。
 それともキミの方がその気なのかな? まぁどちらでもいいのだけれど、出来ればやめてほしいかな」

 本当にどうでいいような口ぶりで告げられた言葉で思い出す。
 いや、忘れていたわけではないのだが、改めて自覚させられる。
 アレが夢じゃないのなら、私たちは今、殺し合いの舞台にいるのだ。


 あまりにも不意打ちな最初の接触に対応を決めかねる。
 こっちがそのつもりがなくても。
 あっちがそういうつもりなら、そういう事になってしまう。
 どうする?
 どうすればいい?
 けど、それでも私は。
 私は、誰かを傷つける事なんて、

「いえ、私は、そんな……つもりは」

「そう? それはなにより。
 ボクも無駄な争いも無暗な殺生も嫌いなんだ。
 無駄な被害なんて少ないほうがいい、キミもそう思うだろう?」

 搾り出すように、告げた言葉を流すように軽く答える。
 その態度はあくまで飄々としていて意図がつかめない。
 どういうつもりなのか、意を決してこちらから踏み込む。

「それで、私に何かご用ですか?」

「ああ、そうそう、えっと……その前に名前を聞いてもいいかな?」

「葉桜加奈子、です」

「うん。加奈子ちゃんか、よろしく。
 加奈子ちゃんは日本人だよね?」

「ええ、そうですけど…………」

 答えを聞いて男は顔を綻ばせる。

「ああ、やっぱり。ボクもね昔仕事で一度だけ日本に訪れたことがあるんだ。
 あそこはいい国だ。特に文化がいい。ブシドーと言うんだろ、アレは素晴らしい」

「…………はぁ」

 いったい何の話だ?
 日本びいきの外国人だというのはその服装から読み取れたけれど、この状況でそれだけのハズがない。
 私の疑問を表情から感じ取ったのか、相手がその疑問に答える。

「ああ、キミが日本人みたいだったから。
 少し話がしたかったんだ」

「……………それだけ、ですか?」

「うん。それだけだよ」

 ホントにそれだけだった。
 何なんだろうこの人は。
 悪い人ではない。
 悪い人ではない、と思うが、あまりにも現状においてズレている。


「えっと……あなた、」

「ああ、ボクの名前かい?
 そうだなぁ、ボクのことは――フィクション、とでも呼んでくれればいいよ」

 …………フィクション?
 この作品はフィクションです。
 なんだそれ?

「…………変わったお名前ですね」

「ハハハ、そうだね。まあ、昔のあだ名みたいなモノさ。それで?」

「えっと、フィクションさんは、ちゃんと現状を認識されてるんですか?」

 その言葉に、フィクションさんは少しだけ意外そうな顔をすると、ふむ。とアゴをさすって思案顔になる。

「現状ねぇ、確か宇宙人に殺し合いを強要されてるんだっけ?
 拉致されるなんて初めての経験だし、困ったねえ。どう帰ろっか?」

 ハハハと笑う。

「そんな呑気な!
 殺し合いですよ、殺し合い!」

 あまりに呑気なその態度に苛立ちを覚え、声を荒げる。
 そのんな私の態度とは裏腹に、フィクションさんは相変わらず微笑を湛えた余裕顔。

「キミはいい子だね、加奈子ちゃん」

「な、なんですか突然」

「放っておけばいいのに、本気でボクなんかに怒ってくれいている。
 優しは美徳ではあるが、甘さでもある。こういう状況なら特にね」

「………………」

「けどまあ、別に問題ないんじゃないかな? キミは積極的に殺し合うって気はないんだろう?
 だったら今慌てる必要もないんじゃないかな。こうなった以上、慌てても仕方ないだろう?」

「それは、そうですけど。
 それに信じてるんですか? その……宇宙人って話」

「うーん。そこに関しては微妙なとこだね。
 まあ、誰であろうとボクのやることは変わらないんだけど。
 宇宙人相手に仕事するのは初めてだからねぇ」

「お仕事?」

「ん? まあ、引退した身だけど、今回のお礼に特別に、ね?」

 ? よくわからない事をいう。


「ま、それはいいとして。
 加奈子ちゃん、キミはこのカードに付いてどう思う?」

 取り出されたのは【ブラックアウト】と書かれたカード。
 あの宇宙人が言っていたスキルカードだ。

「どうって……確か、使えば技術が身につくって話のカードですよね? 何か信じがたい話ですけど」

 使えば技能が身に付くだなんて、そんなファンタジーな話があり得るのか?
 正直言って眉唾物である。

「うん、そうだね。ボクは使えるものはなんでも使う主義だけど、信頼のおけない道具は使わない主義でもあるんだ。
 このカードはどうだろうね?」

 そう言いながらクルリと指先でカードを玩ぶ。

「ま、試してみないとわからないか。それじゃ使ってみようか?」

「ば、爆発とかしませんかね?」

「ハハハ。それはそれで使い道がありそうでいいね。
 たしか、カードを持って宣言すればいいって話だったかな?」

 そういいながら指先に挟んだカードを前方に掲げ、告げる。

「―――――スキル【ブラックアウト】」

 その言葉を唱えた瞬間カードが光の粒子となってフィクションさんの体に取り込まれてゆく。
 その現象にフィクションさんも僅かに目を見開くが、すぐさま落ち着きを取り戻すと、確かめるように指を鳴らした。

 次の瞬間、何もない空間に黒い円が出現し、そして一瞬で消えた。

「ふーん。本当だったみたいだね」

「…………リアクション薄いですね」

 カード一枚で不思議パワーが身に付くとか。普通にとんでもないことだと思うんだけど。
 こうなってくると宇宙人という話も、にわかに信憑性を帯びてきたのかもしれない。

「うん。今のところ目に見えて感じられる副作用はなさそうだ。
 確か一人一枚配られるって話だったよね? どう、加奈子ちゃんも使ってみる?」

「……いえ、今は、止めておきます」

 私の否定を興味なさげに、そう。と軽く流す。
 現状を考えれば、フィクションさんの言うとおり使えるモノは使ったほうがいいのだろうけど。
 そんなものを使ってしまったら、日常から遠ざかるようで、少し、怖い。


「それで、加奈子ちゃんはどうしたいんだい?」

「え?」

 唐突な問いかけにビクリと身が縮む。

「加奈子ちゃんが、殺し合いをする気がないのはわかった。
 だけど、それだけってワケにはいかないだろう? 君は何がしたいんだい?」

「私は、」

 私は。
 何がしたいのか。
 自らに問いかける。
 己の望みはなんなのか。

「私は――――帰りたい」

 そうだ、私は帰りたい。
 お父さんやお母さんが待つあの家に帰りたい。
 友達や、圓がいる普通の日常に返りたい。
 私の願いはそれだけだった。

「帰りたいか。うん。いいね、その点ではボクと一緒だ。
 じゃあ協力しようか、加奈子ちゃん」

「協力?」

「そう協力。
 脱出手段の確保をするにも、いろいろと手はいるだろう?」

 それは正直、ありがたい申し出だった。
 日常に帰ると言っても、明確なプランなどあるはずなく。
 私一人でできることなどたかが知れている。
 協力者を募るというのは悪くない。

 つかみどころのない人だけど、悪い人ではなさそうだし。

「わかりました。よろしくお願いします」

「うん。よろしく、加奈子ちゃん」

 こうして脱出に向けた協力関係が成立した。



「よし、それじゃまずはいろいろ調べたいし、町の方に行ってみようか」

「はい。ってあれフィクションさん?」

 後を追って歩き出そうとしたとたん、いきなりその姿を見失う。

「ああ、こっちこっち」

 いつの間に移動したのか、後ろからの声に振り返る。

(…………なんだろう、存在感がないのかな?)

 てなちょっと失礼なことを思いつつ、慌てて後を追ってた。

【一日目・深夜/B-6 荒野】
【葉桜 加奈子】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明カード1枚、不明支給品1~2
【思考】
基本:日常に帰る
1.フィクションと協力して脱出方法を探す

【フィクション】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明支給品1~2
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.とりあえず町に行って情報収集

06:奇形の天使 時系列順 08:if...
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葉桜加奈子 18:思い出依頼
フィクション 18:思い出依頼


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