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素晴らしき哉、人生

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素晴らしき哉、人生 ◆ORI/A.SOic


 少しの間、まるで気を失ったかの様にしてそこで寝ていたようだ。
 あれは夢だったのか? そう考える。
 いや、あれは、というよりも、奇っ怪な宇宙人とやらに浚われて、殺しあえだ何だと言われていたところからして、どうしようもなくくだらない夢なんじゃないかとも、そう思う。
 その曖昧模糊とした意識を引きはがしたのは、一人の男の声だった。
「二度、死んだな。君は」
 びくりとして、あたりを見回す。
 暗闇の中、月明かりに浮かび上がるのは、ごく普通の背広姿のサラリーマン。
 いや、サラリーマンとしか思えない、男の姿だった。
「一つ…聞きたいんだが」
 男は、そんな片蔦の様子など意にも介さず言葉を続ける。
「君は、剛胆なのかアホなのか、あるいはその両方なのか、どれだ?」
 いきなりのそのぶしつけな質問に、片蔦は一瞬怒りを覚えるが、はたと自分の有様を思い出し慌てふためく。
 先程―――つい先程、近所に住んでいる馴染みの少女、椎名祢音と出会い、この異様な状況に飲まれてか、急激な情熱の発露か、2人は情交を交わしたのだ。
 不意に、気がつく。
 そうだ、弥音。
 あの利発で少し大人びていて、それでいて愛らしい少女。
 つい先程感じた肌。そのぬくもり。滑らかな唇。細く華奢な腰。小さくて両手にすっぽり収まる臀部。そして濡れた粘膜。
 それら全てを一瞬にして思い出し、そしてそれら全てが今目の前に存在しないことを知る。
「…どうしたっ…!?」
 自分でも思いがけず、激情を露わにする。
「お前、弥音をどうしたッ…!?」
 にらみつける。
 にらみつけるが、男はまるでそれすら意に介さず、
「弥…音、ね。弥音、っていうのか。君のお相手は」
「何をしたッ!?」
「五月蠅いな、喚くなよ。
 いいか。僕は、"知らない"。
 君のその相手の女が何処にいるかなんて事は、な。
 僕の今の状況は、恐らく以前からの知り合いだろうその女と、こんな場所こんな状況で呑気にセックスをして、あまつさえ下半身丸出しで眠りこけているバカを発見した、ってーところだ。

 ただ下半身丸出しにしているだけなら、露出趣味の変質者かもしれないが、そのお粗末なシロモノは精液と愛液で濡れているし、着衣の乱れ方もいかにも情事の後、って具合だ。
 だから、君はよほどの肝っ玉の持ち主なのか、とんでも無いアホなのか、と考えていたんだがね(ま、あまり興味は無いけどさ)」
 ふぅ、と荒く息を吐く。
 片蔦の怒りは醒めては居ないが、一つ気がついたのは、この男が「少女」ではなく、「女」と言う言い方をしたという点だ。
 弥音は確かに少し大人びたところもあるが、見れば一目で少女と分かる外見。
 もしこの男が弥音に何かをしたのなら、彼女が所謂大人の女ではなく年端もいかぬ少女である事を知っているはずだし、使う言葉も違っていただろう。
「…見て、ないのか? 誰も…?」
 念を押すが、
「知らんね。君のナニがお粗末すぎて呆れて去ったのかは知らないが、僕は君以外誰も見ていない」
 一々かんに障る物言いをするが、どうも嘘では無い気がする。
「そうか、すまない」
 そう言い、荷物を纏めて探しに行こうとするが、
「待てよ。僕の用件がまだだ」
 引き留められる。
 用件、等と言われても、片蔦には何もない。
 今、片蔦の頭の中を占めているのは唯一弥音の事のみ。
 宇宙人も、殺し合いも、それら全ての事など、どうでも良い。
 早く、今すぐにでも弥音を探しに行かねば…。
 が。

 それを押しとどめるのは、この見知らぬ男の声だけではなかった。
 黒く、鈍く光る金属の塊。
 銃、だ。

「二度…」
 男は続ける。
「二度、死んだな、と言ったろ?
 一回目は、その弥音とかいう女と呑気にハメていたときだ。
 間抜け面したお前が、そこでその女に殺されていたってのが、可能性の1つめだ」
「ふざけんなっ…そんな事あるわけ…」
 無いだろ、と、最後まで言い切れなかったのは、目の前の鈍く光る物体のせいだろう。

「二回目は勿論、そのままアホ面ぶら下げて眠りこけていたときだ。
 僕が殺す気になれば、君はとっくに夢の中から死の世界へ移住完了していた」
 こちらには、反論のしようがない。
「まあそれがハメている最中だったら、君と女の2人が殺されていたかもしれないしな。
 ホラー映画でよくあるパターンだ。
 殺人鬼の潜む湖畔で、呑気にハメ狂っている馬鹿な若造は、真っ先に真っ二つ」
「…どうする気だよ…」
 銃口を突きつけつつ、かといって引き金を引くでもなく言葉を続ける男に、不気味さと同時に、苛立ちも感じている。
「女、探したいんだろ?」
「当たり前だ!」
 愚問、と言わんばかりに返す片蔦に、さらに意外な言葉が待っていた。
「手伝ってやっても、良い」
「…なん…だって…?」
 耳を疑う。
 少なくとも、今自分に銃口を突きつけている男から聞かれるとは予想できなかった言葉だ。
「ああ。君がその女を捜すのを、手伝っても良い。
 手伝っても良いが…条件がある」
 そう、来たか。
 片蔦は考える。
 この男はバカではない。
 むしろ、かなり鋭い方なのだろう。
 銃も持っているし、この訳の分からぬ状況で自分の手助けをしてくれるというのなら、心強いかもしれない。
 だが、その条件に何を持ってくるのか ―――。
 それはしかし、さらに意外すぎる言葉だった。
「これから僕は、君を撃つ。
 いいか。君を殺すつもりで、撃つ」
 数瞬、思考が止まる。
 君を、撃つ。これから、君を、撃つ。
 暗闇の中。月明かりの中。こんな異境の果てで。
 初めて出会った一人の男が、銃を手にしてそう言っている。
 これからぼくは、きみをうつ。
 きみをころすつもりで、うつ。


「それを防ぐか、避けるかして、君が無事生き残ったら、僕は君に協力しよう。
 防げず、撃たれて死んだら、はいそれまで、だ。
 …まぁ、こりゃ死ぬな、ってな具合になったら、きっちり止めは刺してやる」

 つまり、こういう事だ。
 DEAD or ALIVE.
 正に、生か死か。生き残れば味方する。死ねばおしまい。

「な…」
 口を大きく開けていた。
「何言ってンだ、あンた…?
 正気か…?」
「君も相当なモンだろ?」
 まだ丸出しのままの下半身に意識が向く。
「そ…そういう問題じゃないッ…!! ころっ…殺すとか、そ、そういうっ…そのッ…」
 言いよどむ片蔦の言葉を遮って、男は語り出す。
「…退屈なんだよ、何もかもが」
 月明かりが動いて、男の表情が垣間見れた。
 しかしそれが、悲しんでいるのか、苦しんでいるのか、片蔦にはなんとも分からぬ。
「僕の人生は、あまりにも退屈だ。
 何も楽しくない。情熱も、夢も、希望も、生の実感も、何もかもが、無い。
 空虚で空っぽ。伽藍堂の人生だ」
 先程までの皮肉じみた口調が、今度は自虐的に響く。
「だから、試しに人を殺してみたい」
 唐突な告白に、やはり片蔦は面食らう。
「殺し合い、ってのは、もしかしたら僕の望んだものそのものかもしれない。
 殺し合いの中になら、熱を取り戻せる何かがあるかもしれない。そうも思う」
 だから、俺を、殺すのか? 
 冗談じゃない、馬鹿げている!
 そう言い返そうとするが、声にならない。
「君が寝ている内に殺しても良かった。

 けど、やめた。
 君は、こんな状況だというのに、女とセックスして眠りこけるような底抜けのバカだ。
 だが、その底抜けのバカさには ――― 僕には無い、情熱の片鱗も見て取れる」
 褒められているのか貶されているのか、片蔦にはどうにも分からない。
「だから、試してみたい。
 君のそのどうしようもない情熱と、僕の殺意。どちらが勝つのか。どちらに従えば良いのか。
 僕は一旦、試してみたいんだ」
 既に男の声には、何の感情も篭もっていないように響いている。
 ただ冷徹で身勝手な宣言。
 そう、身勝手だ。
 全てが自分の都合、自分の事情。
 それだけの為に、初めてあった自分に対して、生か死かという選択を突きつけている。
「君も、何か道具を貰っているだろ? 使いなよ。それくらいは待つ。
 僕はカードも銃も使う。そして、弾は外さない」
 ぴたりと、まるでぶれる様子無く銃口を突きつけている。
 生か? 死か?
 何を使えば、どうすれば生き残れるのか?
 まるで判断が付かぬまま、そのときは近づいてくる。
「ああ、それと」
 男がそう付け足す。
「その粗末な下半身をしまう時間も、くれてやってもいよ」
 自分がまだ下半身丸出しな事をまた思いだし、片蔦は少しばかり、いや、大いに慌てた。



【一日目・深夜/E-2 学校】

片嶌俊介
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品 、不明カード、不明支給品2~4 (未確認)
【思考】
1. 撃たれる? 防ぐ?
2.弥音を追いたい。


宍岡琢磨
【状態】健康
【装備】ハンドガン(SIGザウアーP230、残弾7/7)
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、不明支給品0~2 (未確認)
【思考】
1. 目の前の男を撃つ。

04:ヒストリー・オブ・バイオレンス 時系列順 06:奇形の天使
04:ヒストリー・オブ・バイオレンス 投下順 06:奇形の天使
02:嵐のような愛を込めて 片嶌俊介 20:そして彼の受難は続く
宍岡琢磨 20:そして彼の受難は続く


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