オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd(ver.2)まとめwiki

騎士と姫

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騎士と姫 ◆BUgCrmZ/Lk


夜の帳が落ちた獣道。
山道にそぐわぬ華麗なドレスをまとった少女が一人。
高級な絹のように光り輝く美しい金の髪がなびき、肉付きのよい豊満な肉体が揺れる。
だが、それでも下品さではなくどこか上品さすら感じさるのは、その品性の賜物か。

オクティル王国、第一王女フランドール・オクティル
見る者を引き付ける蒼く大きなサファイアのような瞳は、強い意志に燃えていた。

王家の第一王女として生を受けた彼女は、慈悲と寛容さを兼ね備え国民の誰にも慕われていた。
ただ笑顔を振りまいているだけの淑女という訳ではなく、行動力にも優れており王女らしからぬ武勇伝をいくつも持っている。
最もその行動力がありすぎるところが、玉に傷ではあるのだが。

このような異常事態にも彼女は凛然とした態度で事態に挑んでいた。
どのような状況であろうと王女である誇りを忘れない事。
それが彼女の吟味であり。
この状況に対する意地であり。
この場における精一杯の虚勢であった。

己が誇りを汚さぬよう、凛と胸を張り、ただまっすぐに前を見据え突き進む。

だが夜の山道では、その姿勢は正解とは言えなかった。

「…………っ!?」

オクティルが踏み込んだ足元が崩れた。
ガクリと体制が崩れる。

その先に広がるのは急な斜面と底が見えない闇。
落ちればタダではすまない。
反射的に何かを掴もうと手を伸ばす。

虚しく空を切るはずだったその手はしかし、何者かによってしっかりと掴まれた。
窮地を救われる形となったオクティルは救い主の姿を見据える。

王女の手を掴んだのは、強面の大男だった。


――――――――――――――――――――――――

騎士の名はフランツ・O・ブリュデリッヒと言った。
代々騎士団長を配する名家ブリュデリッヒ家の嫡男である。

武骨な外見から誤解を受けることも多いが、彼自身は温和な性格の男である。
寡黙で社交性に優れているとは言い難いが、性格は誠実で品行方正。
剣の腕では騎士団でも右に出る者はなく、他の騎士からの信頼も厚い。
正しく絵に描いた様な騎士の鏡であった。

ただ一つ不幸があったとすれば、彼自身がそれを望んでいなかったという一点だろう。

もとより争いを好まぬ穏やかな性格であった。
名家の嫡男という立場がなければ学者か、あるいはどこぞで教鞭でもふるっていただろうと、ブリュデリッヒ自身はそう思っている。
とはいえ騎士という立場を嫌っているわけではない。
血なまぐさい事態こそ嫌っているものの、騎士の持つ誇り高さはブリュデリッヒの好むものである。

だからこそ、世は戦乱という訳でもなく。
近隣諸国との小競り合いこそあるものの、血なまぐさい事態とはそう直面するものではないと、楽観していた。

ならば、望まずして騎士の鏡となった愚直な男は、この状況に何を思うのか。


――――――――――――――――――――――――

「騎士フランツ・O・ブリュデリッヒ様に改めて感謝を。この度は危ないところをお救い下さり、感謝の言葉もありません」

ブリュデリッヒの力強い腕に引き上げられたオクティルは、最低限の身なりを整えると名乗りを上げた後、深々と頭を下げた。
王家のモノが、他国のしかも一介の騎士に頭を下げるなど異例の事態であるのだが、それを気にするオクティルではなかった。

「おやめ下さいフランドール様、そのような…………」

むしろ戸惑うのはブリュデリッヒの方である。
他国の姫君に頭を下げさしたなどとあっては、騎士の名折れ。
だがそれよりもブリュデリッヒを惑わす要素は別にあった。

彼女が下げた胸元から覗く光景。それは彼には些か刺激的すぎた。
男家族で育ち、騎士としての教育を受けてきた彼にとって女性の扱いは未知の領域である。
最低限の紳士としての振る舞いは叩き込まれたものの、免疫のないモノはどうしようもない。
まして見目麗しきオクティルが相手となれば尚更だ。
同僚である騎士カインであればうまくエスコートもできるのだろうが、彼にそのような器用さを望むのは酷というもの。
愚直で不器用な男であった。

――――――――――――――――――――――――

「不躾ながら、少し私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

お互いに落ち着きを取り戻し、ブリュデリッヒが周辺の安全を確認したところで、不意にオクティルがそう切り出した。

「この度の無差別に人を集め殺し合いをさせるなどという人道に反した行為。
 一人の人間としてもオクティル王家の誇りにかけても、断じて許すわけには参りません」

演説映えする美しく透き通る声が響く。
その姿にブリュデリッヒは思わず見惚れた。
目を奪われたのは、美しさよりも、その瞳に宿した強い意志にであった。


「私、オクティル王国第一王女フランドール・オクティルは宣言します。
 この場におけるすべての悲劇を止めてみせると。
 そしてこの事態を引き起こしたモノにしかるべき裁きを与えることを」

それは理想論である。
万能な人間などいない。
手の届かない悲劇を止める術はない。全ての悲劇を止めることなど不可能だ。
そんなことはオクティル自身もいやというほど理解していることだろう。
それでも、それだからこそ彼女は宣言する。

「しかしながら、私はなんの力も持たない無力な人間にすぎません。
 私一人にできることなどたかが知れています。
 フランツ・O・ブリュデリッヒ様。御身は祖国に剣を捧げた聖騎士であると承知の上で申し上げます。
 この場における一時で構いません。事態を収めるため、どうかこの無力な私にそのお力をお貸し下さいませんでしょうか?」

先ほどよりも一層深い礼。
その瞬間、ブリュデリッヒがオクティルに感じた感情は、恋慕や劣情などではなく、人間としての尊敬であった。

理想を掲げるのが指導者の役割である。
そう、ブリュデリッヒは理解している。
ならば、その剣となり理想を叶えるのは騎士の務め。

オクティルは一時であれ剣を捧げるに足る主君であると、ブリュデリッヒは確信した。
膝をつき最大限の敬意をもって誓う。

「この場限りの契約なれど、御身を捧げ忠義を誓います。マイロード」

ここに全てを救うという理想を掲げた姫と、その剣となる騎士の契約は完了した。
突き進むは理想の道か。
それとも力及ばず破滅の道か。
その行く先は何処か。

【一日目・深夜/B-2 山道】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える

【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える

08:if... 時系列順 10:馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(前編)
08:if... 投下順 10:馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(前編)
フランドール・オクティル 25:騎士と騎士
フランツ・O・ブリュデリッヒ 25:騎士と騎士


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