騎士と騎士 ◆BUgCrmZ/Lk
道なき道をかき分けるように先頭を行くのはフランツだ。
周囲への警戒を怠らず、後を行くフランドールのため獣道をかき分け最低限ながら道を整え進む。
その表情にはいまだ疲れの色は見えず、余裕すら感じられる。
周囲への警戒を怠らず、後を行くフランドールのため獣道をかき分け最低限ながら道を整え進む。
その表情にはいまだ疲れの色は見えず、余裕すら感じられる。
対照的に、その後を行くフランドールの顔色は優れない。
見せぬようにはしているがその表情の端からは若干の疲労の色が覗いた。
それも当然。夜行訓練などによりある程度は慣れているフランツとでは溜まる疲労度が違う。
見せぬようにはしているがその表情の端からは若干の疲労の色が覗いた。
それも当然。夜行訓練などによりある程度は慣れているフランツとでは溜まる疲労度が違う。
「フランドール様。このあたりで少し休息に致しましょう」
そう言ってフランツが足を止めた。
見れば、少し先に休憩に適しているであろう、比較的開けた平地が見えた。
その提案が自分を気遣っての事だと気づいたのだろう。
フランドールはその提案を否定するように首を振った。
見れば、少し先に休憩に適しているであろう、比較的開けた平地が見えた。
その提案が自分を気遣っての事だと気づいたのだろう。
フランドールはその提案を否定するように首を振った。
「フランツ様、お気遣いは無用です。今は先を急ぎましょう。
こう見えても私、山歩きは得意ですのよ?」
こう見えても私、山歩きは得意ですのよ?」
この言葉自体は嘘ではない。
フランドールは日頃から城を抜け出して動物や子供らと戯れるおてんば姫だ、山道には慣れている。
フランドールは日頃から城を抜け出して動物や子供らと戯れるおてんば姫だ、山道には慣れている。
だが、整備された山道と獣道ではわけが違う。
加えて、夜道ともなれば、その歩き方も変わってくる。
更に異常なこの状況下における精神的な負荷。
どれも無視できるようなものではない。
加えて、夜道ともなれば、その歩き方も変わってくる。
更に異常なこの状況下における精神的な負荷。
どれも無視できるようなものではない。
「逸る心中はお察しします。ですが、逸ればこそ今はまだ無理をするべきではありません。
時期日が昇ります、せめてそれまでは身を休めご自愛下さい」
時期日が昇ります、せめてそれまでは身を休めご自愛下さい」
この手の場面での定番である、自分が付かれたから休もうなどという、気の利いた事をこの武骨な男が言えるはずもなく。
フランツはただ、実直に自らの意思を述べた。実直で不器用な男である。
フランツはただ、実直に自らの意思を述べた。実直で不器用な男である。
「……そうですね。申し訳ありません。少々気が逸っておりました」
だが、その裏表のない言葉が響いたのか、フランドールが折れた。
フランドールはフランツに感謝の意を表すと、腰かけに丁度良さ気な岩の上に腰かけ一息ついた。
少し緊張の糸を緩めると同時に、一瞬フラリとするような疲労が襲い掛かった。
そして自分が思っていた以上に気を張っていたことに気づく。
フランドールはフランツに感謝の意を表すと、腰かけに丁度良さ気な岩の上に腰かけ一息ついた。
少し緊張の糸を緩めると同時に、一瞬フラリとするような疲労が襲い掛かった。
そして自分が思っていた以上に気を張っていたことに気づく。
「出発は日の出の後に致しましょう。このような場所で申し訳ありませんが、それまではゆっくりとお休みください」
「承知いたしました。そうですね。それまでまだ時間がありますし、少しお話しましょうか。フランツ様」
「話、ですか?」
「承知いたしました。そうですね。それまでまだ時間がありますし、少しお話しましょうか。フランツ様」
「話、ですか?」
その言葉にフランツは眉をひそめる。
必要な事であれば自然とは口を付くが、改まって話をしようと言われると戸惑ってしまう。
彼にとっては女性を楽しませる話術など、あるいは戦闘などより難しい事なのかもしれない。
必要な事であれば自然とは口を付くが、改まって話をしようと言われると戸惑ってしまう。
彼にとっては女性を楽しませる話術など、あるいは戦闘などより難しい事なのかもしれない。
「ええ、私たちはまだお互いの事を知りません。一時とはいえ主従の誓いを交わした身。
よろしければフランツ様のお話などを聴かせていただけませんか?」
よろしければフランツ様のお話などを聴かせていただけませんか?」
そう言われては断るのも無粋である。
窮しながらもフランツは腹を決める。
当然、自分語りなど得意ではないが、女性の好む話を無軌道に話せと言われるよりかは、幾分かマシである。
窮しながらもフランツは腹を決める。
当然、自分語りなど得意ではないが、女性の好む話を無軌道に話せと言われるよりかは、幾分かマシである。
「そうですね…………では、」
そしてフランツはポツリポツリと語り始めた。
友の話を。
友の話を。
■■■■■■■■
偽りの姫君、溝呂木桐子と騎士らしらぬ騎士カイン・シュタインがたどり着いたのは、市街の端にあるとあるホテルであった。
安ホテルと呼んで差支えないような飾り気のない施設だったが、贅沢を言っていられる状況でもない。
ここを一晩の宿と決め、まずは安全確認のためカインがホテル内へと先行した。
安ホテルと呼んで差支えないような飾り気のない施設だったが、贅沢を言っていられる状況でもない。
ここを一晩の宿と決め、まずは安全確認のためカインがホテル内へと先行した。
「姫様。一先ず待ち伏せやトラップと言った形跡はありませんでしたので、夜明けまではここで休むことに致しましょう」
一通り安全を確認したカインが戻ると、二人はいざという時のため脱出しやすい最下階の一室を陣取り、ようやくの休息に息を吐いた。
真っ先にベットに腰かけ身を休めた木桐子とは対照的に、カインは何かあればすぐに動ける入り口近くに起立する。
周囲にばれぬよう、明かりはつけていないため室内は薄暗く、これと言った娯楽もない。
真っ先にベットに腰かけ身を休めた木桐子とは対照的に、カインは何かあればすぐに動ける入り口近くに起立する。
周囲にばれぬよう、明かりはつけていないため室内は薄暗く、これと言った娯楽もない。
「このまま休んでるだけってのも退屈ねぇ。
そうだ、騎士様。何かお話しませんこと?」
そうだ、騎士様。何かお話しませんこと?」
唐突な木桐子の提案にカインはにこやかにに応じる。
「よろしいですよ。どのようなお話をお望みで?」
「そうねぇ。あなたの話なんてどうかしら?
聞きたいわ。勇敢な騎士様のお話」
「そうねぇ。あなたの話なんてどうかしら?
聞きたいわ。勇敢な騎士様のお話」
そう言って木桐子は誘うように笑う。
その笑みはあるいは妖艶であり、あるいは獲物を狙う蛇の様であった。
その笑みはあるいは妖艶であり、あるいは獲物を狙う蛇の様であった。
その言葉に互いの理解を深めようなどという真摯な気持ちはない。
少しでも相手の情報を知ることで、いざという時のための何らかの弱みを掴もうという魂胆である。
少しでも相手の情報を知ることで、いざという時のための何らかの弱みを掴もうという魂胆である。
その意図に気づいてかいないのか、カインは変わらず笑顔で応じる。
「構いませんよ、と言っても私に誇れる武勇などそう多くはありませんので。
つまらない話になるかもしれませんが、よろしければ私の昔話などを一つ」
つまらない話になるかもしれませんが、よろしければ私の昔話などを一つ」
そしてカインはスラスラと語り始める。
友の話を。
友の話を。
■■■■■■■■
カインがブリュデリッヒ家に従者として迎えられたのは13の時だった。
戻る宛ても住処もないカインはブリュデリッヒ卿の温情により屋敷の一室を与えられ、住み込みで小間使いとして働いていた。
そのためフランツとは同じ屋根の下で暮らしていたのだが、嫡男と小間使いでは立場が違いすぎるため、二人の接点などほとんどなかった。
そのためフランツとは同じ屋根の下で暮らしていたのだが、嫡男と小間使いでは立場が違いすぎるため、二人の接点などほとんどなかった。
彼らの関係が変化したのは、とある事件を切欠としていた。
それはカインがブリュデリッヒ家に住みついて1年が経とうという頃、他の使用人らと共にある一室の清掃を命じられた時の話だ。
その一室は他の部屋とは――少なくともカインが入室を許された部屋の中では――明らかに一線を画していた。
まず入室してすぐ目に入るのは壁際につりさげられたブリュデリッヒ家の家紋を模した巨大な旗である。
大理石で拵えられた床の上には、一般人には価値も計れないほどの豪華な絨毯が敷かれており。
壁際には厳かな鎧兜が立ち並び、調度品も一見してわかる一流品ばかりだ。
聞けば、この部屋は昨年、死去したブリュデリッヒ家の大祖父の部屋だという。
このような場所への侵入を許されるのは、着実に自らが信頼を勝ち得てきている証であると考え、周囲の心証をさらに高めるためカインは清掃に励んだ。
その一室は他の部屋とは――少なくともカインが入室を許された部屋の中では――明らかに一線を画していた。
まず入室してすぐ目に入るのは壁際につりさげられたブリュデリッヒ家の家紋を模した巨大な旗である。
大理石で拵えられた床の上には、一般人には価値も計れないほどの豪華な絨毯が敷かれており。
壁際には厳かな鎧兜が立ち並び、調度品も一見してわかる一流品ばかりだ。
聞けば、この部屋は昨年、死去したブリュデリッヒ家の大祖父の部屋だという。
このような場所への侵入を許されるのは、着実に自らが信頼を勝ち得てきている証であると考え、周囲の心証をさらに高めるためカインは清掃に励んだ。
だが、その途中、カインはあるものに目を奪われ作業の手を止めた。
それは手のひらに収まるほどの小さな装飾だった。
それは手のひらに収まるほどの小さな装飾だった。
それはブリュデリッヒ家の大祖父が先の戦乱での多くの武功を認められ陛下より賜ったという騎士の勲章。
その存在感は膨大であり。その絢爛豪華な装飾はさることながら、何よりカインの心をつかんだのはその在り方。
これこそが武力と権力と名誉の象徴。
カインの憧れる全てである。
その象徴に、彼の心は強く魅かれた。
その存在感は膨大であり。その絢爛豪華な装飾はさることながら、何よりカインの心をつかんだのはその在り方。
これこそが武力と権力と名誉の象徴。
カインの憧れる全てである。
その象徴に、彼の心は強く魅かれた。
その夜。カインは高ぶり抑えきれず、こっそりと大祖父の部屋へと忍び込んだ。
くすね取り自分のモノにするなどという大それたことは考えていない。
そんなことをすればどうなるかくらいは理解している。
まずいことだと理解しつつも、だた、どうしても一度手に取ってみたかったのだ。
くすね取り自分のモノにするなどという大それたことは考えていない。
そんなことをすればどうなるかくらいは理解している。
まずいことだと理解しつつも、だた、どうしても一度手に取ってみたかったのだ。
掃除の際に最後に閉めておくと言って鍵は預かっていた。
そっと音を立てず鍵を開け、部屋の中に忍び込む。
当然中には誰もいない。
カインは吸い込まれるように勲章の前まで移動すると、そっとそれに手をかける。
それを手に取った瞬間、カインは言いようのない高揚感に包まれた。
そっと音を立てず鍵を開け、部屋の中に忍び込む。
当然中には誰もいない。
カインは吸い込まれるように勲章の前まで移動すると、そっとそれに手をかける。
それを手に取った瞬間、カインは言いようのない高揚感に包まれた。
それは人に、国に、全てに認められた証である。
己の存在を、己の武功を、己の名誉を。
他人のモノではなく、己の力でこの勲章を手に入れる事。
これこそが虐げられ、侮蔑されてつづけた男の、己の野心の到達点なのだと、この瞬間彼はそう確信した。
己の存在を、己の武功を、己の名誉を。
他人のモノではなく、己の力でこの勲章を手に入れる事。
これこそが虐げられ、侮蔑されてつづけた男の、己の野心の到達点なのだと、この瞬間彼はそう確信した。
陶酔するカイン。
それを現実に引き戻すように。
ガチャリと、背後から扉が開く音が聞こえた。
それを現実に引き戻すように。
ガチャリと、背後から扉が開く音が聞こえた。
「ッ!?」
カインが振り返ると、そこには慌てて扉から立ち去る小さな影が見えた。
影は一瞬でその場から立ち去ったため、その全容は把握できなかったが、その影が誰のモノであるかはすぐにわかった。
この屋敷に子供はカインとフランツしかいない。つまりあの小さな影はフランツのモノだ。
おそらく、夜中に部屋を抜け出したカインを偶然見つけ、何をしているのか気になりその後をつけていたのだろう。
尾行への警戒を怠った己の不覚に舌を打ちそうになるが、それよりも重大な事実に気付きカインの全身から血の気が引いた。
影は一瞬でその場から立ち去ったため、その全容は把握できなかったが、その影が誰のモノであるかはすぐにわかった。
この屋敷に子供はカインとフランツしかいない。つまりあの小さな影はフランツのモノだ。
おそらく、夜中に部屋を抜け出したカインを偶然見つけ、何をしているのか気になりその後をつけていたのだろう。
尾行への警戒を怠った己の不覚に舌を打ちそうになるが、それよりも重大な事実に気付きカインの全身から血の気が引いた。
先ほどまで手に持っていた勲章がない。
慌てて地面を見れば、大理石の床に直撃した勲章は、装飾の一部が砕け欠け落ちてしまっていた。
勢いよく振り向いた拍子に落としてしまったようだ。
勢いよく振り向いた拍子に落としてしまったようだ。
フランツに気付かなかった事。
鍵を閉め忘れた事。
目撃されてしまった事。
いや、それ以前に、そもそもらしからぬこんな愚行を犯した事。
いくつもの不覚が積み重なり今の最悪を引き起こした。
取り繕うこともできない、大失態だ。
鍵を閉め忘れた事。
目撃されてしまった事。
いや、それ以前に、そもそもらしからぬこんな愚行を犯した事。
いくつもの不覚が積み重なり今の最悪を引き起こした。
取り繕うこともできない、大失態だ。
終わった。何もかも。
絶望の中カインはそう思った。
失意に包まれながら、最低限の体裁を整え大祖父の部屋を後にした。
絶望の中カインはそう思った。
失意に包まれながら、最低限の体裁を整え大祖父の部屋を後にした。
ブリュデリッヒ家の家宝ともよんでいいモノの欠損だ。
すぐに使用人の誰かが気づくだろう。
勲章を壊した瞬間をフランツが見ていたとも思えないが状況からして、追及されるのは間違いないだろう。
逃げ出してしまおうか、そう思えど行くあてなどない。
すぐに使用人の誰かが気づくだろう。
勲章を壊した瞬間をフランツが見ていたとも思えないが状況からして、追及されるのは間違いないだろう。
逃げ出してしまおうか、そう思えど行くあてなどない。
いつ呼び出され、首を切られるのか。
それから数日は、生きた心地がしなかった。
死刑を待つ死刑囚の気分だった。
それから数日は、生きた心地がしなかった。
死刑を待つ死刑囚の気分だった。
だが、意外なことに数日たってもカインに何も御咎めが下ることはなかった。
激動する心中を隠しながらも日常は続く。
小間使いである彼に暇はなく、業務をこなしているなかで、数日ぶりにカインはフランツの姿を見ることとなった。
小間使いである彼に暇はなく、業務をこなしているなかで、数日ぶりにカインはフランツの姿を見ることとなった。
廊下で偶然すれ違う瞬間、カインが見たのは顔を腫らしたフランツの姿だった。
カインはその事情をそれとなく噂好きのメイドに聞いたところ。
大祖父の賜った大事な騎士勲章を、夜中に大祖父の部屋に忍び込んだフランツが誤って壊してしまったという。
あの顔は、その話に激昂した現当主であるブリュデリッヒ卿によるものであり、フランツはここ数日、謹慎と称して部屋に閉じ込められていたという話だ。
品行方正なお坊ちゃんがなぜそんなことをしたのか、などと噂好きのメイドはその後もいろいろとまくしたてていたが、カインの耳にはもはやそんな声は聞こえてはいなかった。
大祖父の賜った大事な騎士勲章を、夜中に大祖父の部屋に忍び込んだフランツが誤って壊してしまったという。
あの顔は、その話に激昂した現当主であるブリュデリッヒ卿によるものであり、フランツはここ数日、謹慎と称して部屋に閉じ込められていたという話だ。
品行方正なお坊ちゃんがなぜそんなことをしたのか、などと噂好きのメイドはその後もいろいろとまくしたてていたが、カインの耳にはもはやそんな声は聞こえてはいなかった。
従者見習いという立場のカインが家宝に近い勲章を壊したとなれば、すぐさま屋敷を追放され路頭に迷うだろう。
最悪、この事態に当主であるブリュデリッヒ卿が激昂すれば、小間使いなど命を落としてもおかしくない。
最悪、この事態に当主であるブリュデリッヒ卿が激昂すれば、小間使いなど命を落としてもおかしくない。
だが、勲章を壊したのが嫡男であるフランツであったという事ならば話は別だ。
追放されることはまずないし、殺されることもあり得ない。
大目玉をくらうだけで済むだけの話だ。
追放されることはまずないし、殺されることもあり得ない。
大目玉をくらうだけで済むだけの話だ。
その天秤を顧みれば、フランツがカインを庇うのは当然の事である。
少なくともフランツ自身は何の疑問もなくそう思っていた。
少なくともフランツ自身は何の疑問もなくそう思っていた。
だが、カインの中では違った。
その時カインが感じた感情は一言で言い表せないほどに複雑なものだった。
その時カインが感じた感情は一言で言い表せないほどに複雑なものだった。
当然のようにその選択を選ぶ、選べるフランツの環境、人間性への嫉妬。
最大級の弱みを握られた恐怖。
単純に助かったという安堵。
何を狙っているのかという猜疑心。
なにより、この行為を恩に着せるでもなく、何事もなくふるまうフランツの態度は完全に理解不能な代物であった。
最大級の弱みを握られた恐怖。
単純に助かったという安堵。
何を狙っているのかという猜疑心。
なにより、この行為を恩に着せるでもなく、何事もなくふるまうフランツの態度は完全に理解不能な代物であった。
その直後の話だった。
フランツが此度起こした愚行に対する罰としてお目付け役が付くこととなり。
年が近かったこともあるだろう、その役目を命じられたのはカインだった。
この命とともにカインは正式な従者として迎えられ、その地位を高めた。
フランツが此度起こした愚行に対する罰としてお目付け役が付くこととなり。
年が近かったこともあるだろう、その役目を命じられたのはカインだった。
この命とともにカインは正式な従者として迎えられ、その地位を高めた。
カインの壊した勲章の罰としてフランツにお目付け役としてカインがつけられる。
なんとも皮肉な話だった。
なんとも皮肉な話だった。
あの日から二人の関係は変化した。
良くも悪くも、劇的に。
良くも悪くも、劇的に。
■■■■■■■■
「――――それから今日この日までカインは私を支え続けてくれました。
彼は感謝して若し足りないほどの恩がある」
彼は感謝して若し足りないほどの恩がある」
フランドールがフランツから聞いたのは、彼の従者であり騎士でもあるカインという男との昔話だった。
フランツの言葉の端々から、この場にいないカインへの信頼を感じとり、フランドールは笑みをこぼす。
フランツの言葉の端々から、この場にいないカインへの信頼を感じとり、フランドールは笑みをこぼす。
「カイン様というのは、どのような方なのですか?」
フランツがこれほどまでに信頼を寄せる、カインという男がどのような男なのか。
この場にいないカインへの興味が湧き、フランドールはそう尋ねた。
この場にいないカインへの興味が湧き、フランドールはそう尋ねた。
「ハッキリとした性格故、誤解されることも少なからずありましたが。
私などは違い何事も器用にこなす、とにかく優秀な男でした」
私などは違い何事も器用にこなす、とにかく優秀な男でした」
フランツはそう素直に友を評した。
己の持たぬ器用さを持ち合わせたカインは、憧れの対象だった。
己の持たぬ器用さを持ち合わせたカインは、憧れの対象だった。
フランツは少しだけ照れの様な表情を浮かべた後。
噛みしめるように口を開いた。
噛みしめるように口を開いた。
「そして、」
■■■■■■■■
「それで、それからその次期当主って子と友情を育んだって訳ね。素敵な美談ね」
話を聴き終え、木桐子はそう頷いた。
本心からではない。
水商売で鳴らした耳触りのいいただの相槌だ。
本心からではない。
水商売で鳴らした耳触りのいいただの相槌だ。
「ええ、屋敷に年の近い者がおりませんでしたので、それからは自然と。
あれからもフランツには助けてもらってばかりで、彼には感謝してもしきれない」
あれからもフランツには助けてもらってばかりで、彼には感謝してもしきれない」
嘘である。
もちろん野盗紛いの事をしていた過去はぼかしてあるし、その他の細かい部分も適当に脚色している。
何よりカイン自身がフランツへ向ける感情は、単純に友情とは言い難い。
この話の意図は、フランツを己の弱点として仕立てことだった。
もちろん野盗紛いの事をしていた過去はぼかしてあるし、その他の細かい部分も適当に脚色している。
何よりカイン自身がフランツへ向ける感情は、単純に友情とは言い難い。
この話の意図は、フランツを己の弱点として仕立てことだった。
「どんな人なの、そのフランツって人は?」
興味を持ったのか木桐子がフランツの話題に喰いついてきた。
「そうですね。私と違い、実直かつ誠実な真面目な男でした。
家柄、実力、人柄どれを取っても非の打ちどころのない騎士の鑑の様な男ですよ」
家柄、実力、人柄どれを取っても非の打ちどころのない騎士の鑑の様な男ですよ」
流れるようにカインは友褒め称える。
心からの本心とはいかないが、客観的な事実としてカインも認めている。
心からの本心とはいかないが、客観的な事実としてカインも認めている。
そしてカインは注意しなければ気付かぬような一瞬の間の後。
確かめるようにように口を開く。
確かめるようにように口を開く。
「そして、」
■■■■■■■■
『彼は私にないモノを持った、掛替えのない友ですよ』
持つ者と持たざる者。
器用な男と不器用な男。
それが互いに共通する真実だった。
器用な男と不器用な男。
それが互いに共通する真実だった。
【一日目・黎明~早朝/C-2 山道】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える
【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1~2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える
【一日目・黎明~早朝/F-5 市街地】
【カイン・シュタイン】
【状態】健康
【装備】スタンロッド
【スキル】『その歌をもて速やかに殺れ』
【所持品】基本支給品 、不明支給品0~1
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.トウコと共に行動をし、情勢を見る。
【カイン・シュタイン】
【状態】健康
【装備】スタンロッド
【スキル】『その歌をもて速やかに殺れ』
【所持品】基本支給品 、不明支給品0~1
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.トウコと共に行動をし、情勢を見る。
※スタンロッド
長さ60センチほどの金属製のロッド。スイッチを入れるとスタンガンの様な電撃を発し、触れた者を気絶させうる効果がある。
数回使うと電気切れして、ただの固い鉄の棒同然になる。
長さ60センチほどの金属製のロッド。スイッチを入れるとスタンガンの様な電撃を発し、触れた者を気絶させうる効果がある。
数回使うと電気切れして、ただの固い鉄の棒同然になる。
【溝呂木桐子】
【状態】健康
【装備】魔王のドレス
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、液体の入った小瓶
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.カインと共に行動し、守って貰う。
【状態】健康
【装備】魔王のドレス
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、液体の入った小瓶
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.カインと共に行動し、守って貰う。
※魔王のドレス
魔王が女性の姿をするときに身につけるドレスの内一つ。非常にエロスなデザイン。
防御効果など何らかの魔法効果が付与されている。
魔王が女性の姿をするときに身につけるドレスの内一つ。非常にエロスなデザイン。
防御効果など何らかの魔法効果が付与されている。
※液体の入った小瓶
10㎝程度の小瓶に、何かの液体が入っている。説明書きがあったため、桐子はその効果が何かは知っている。
10㎝程度の小瓶に、何かの液体が入っている。説明書きがあったため、桐子はその効果が何かは知っている。
27:さよなら、私 | 時系列順 | 23:ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て |
24:僕たちの失敗 | 投下順 | 26:目まぐるしく回る事態 |
9:騎士と姫 | フランドール・オクティル | 36:オクティル国物語 |
9:騎士と姫 | フランツ・O・ブリュデリッヒ | 36:オクティル国物語 |
14:騎士と姫2 | カイン・シュタイン | |
14:騎士と姫2 | 溝呂木桐子 |