僕は生まれた頃から、病弱で寿命が短いことが確定していた。
だからどうしてもなかなかポジティブになれなくて、誰かと関わってもいつお別れが来るのかわからなくて……両親以外とはずっとひとりぼっちだった。
だからどうしてもなかなかポジティブになれなくて、誰かと関わってもいつお別れが来るのかわからなくて……両親以外とはずっとひとりぼっちだった。
両親はいつも僕を憐れむような目で見ていた。
“こんな身体で生まれさせてごめんね”
とよく母親が口にしていた。
“こんな身体で生まれさせてごめんね”
とよく母親が口にしていた。
「大丈夫だよ!僕はこの短い人生でも、楽しいから!」
……嘘だ。
本当の僕はネガティブでどうしようもなく弱い。
それを寡黙だなんて言えば聞こえはいいけど、結局早死するのが決まってるから周りとあまり関わりたくなかった。
本当の僕はネガティブでどうしようもなく弱い。
それを寡黙だなんて言えば聞こえはいいけど、結局早死するのが決まってるから周りとあまり関わりたくなかった。
昔は友達も居たけど、病弱な僕に向ける哀れみの瞳が嫌いだったから――僕は心を閉ざした。
両親や友達は優しいけど、その優しさが僕にはたまらなく痛かったんだ。
両親や友達は優しいけど、その優しさが僕にはたまらなく痛かったんだ。
“ただ普通に、哀れまれることもなく自由に生きたい”なんていう願いすらこの身体は叶えてくれない。普通に生きることすら、許されない。
少し歩くだけでふらついたり、倒れたり。
そんな罰ゲームのような人生だ。
僕に出来ることは、この退屈で苦しい人生を両親のために生き抜くこと。
僕が死んだら、両親が哀しむから。それだけは嫌だった。
そんな罰ゲームのような人生だ。
僕に出来ることは、この退屈で苦しい人生を両親のために生き抜くこと。
僕が死んだら、両親が哀しむから。それだけは嫌だった。
たとえどんな人生だって――両親は必死に両親は僕を救おうとしてくれたから。
そんな両親が僕に“自由”を与えてくれたのが、VRCのヘッドセットだった。
貧乏な家庭なのにViveと、フルトラッキングにするための3点トラッカーを買ってくれて嬉しかった。
貧乏な家庭なのにViveと、フルトラッキングにするための3点トラッカーを買ってくれて嬉しかった。
そこから、僕はVRCを楽しんだ。
短いけれど、すごく楽しい時間だった。
短いけれど、すごく楽しい時間だった。
付けたユーザー名は黒百合。
愛とか、恋とか――そういうのに憧れてたからそういう名前を付けた。だって、それが黒百合の花言葉だから。
復讐や呪いっていう花言葉も同時に持つけど――呪いという花言葉は、ある意味では僕にしっくりきた。
愛とか、恋とか――そういうのに憧れてたからそういう名前を付けた。だって、それが黒百合の花言葉だから。
復讐や呪いっていう花言葉も同時に持つけど――呪いという花言葉は、ある意味では僕にしっくりきた。
VRCでも最初はひとりぼっちで、輪に混ざることすら出来なかったけど――」
「おっ、いい感じのゴスロリちゃんはっけ~ん。ボクは刹那!良けりゃボクと仲良くしようぜ。
まあボクはゴスロリってよりやみかわだけど――そんな隅っこで集団眺めててもつまんねぇだろ?」
まあボクはゴスロリってよりやみかわだけど――そんな隅っこで集団眺めててもつまんねぇだろ?」
「ありがとう。でもこういう時は、どうしたらいいのか、わからなくて……」
「とりあえず名乗っときゃいいと思うよん。そしたら刹那ちゃんが引っ張ってやるからさ」
刹那が満面の笑みでそう言うから。
そこから哀れみを一切感じなかったから、僕は名乗った。
そこから哀れみを一切感じなかったから、僕は名乗った。
「僕は……黒百合。良ければ刹那と、仲良くしたい」
「おーけおーけ、黒百合ね。じゃあこれから仲良くなろうぜ、黒百合!まずはあのワールドに連れて行ってやんよ!」
こうして僕と刹那は仲良くなった。
時間を積み重ねるうちに心を開いた。余命が少ないことも……正直に話した。
時間を積み重ねるうちに心を開いた。余命が少ないことも……正直に話した。
「余命ねぇ。まあボクも黒百合ほどじゃないけど、短いぜ。ホルモンやってるかんな。だから死ぬまでの間、この人生(おあそび)を全力で楽しんでやりたいかなっ!」
――その考え方が、羨ましくて。
同時に感銘を受けたから、僕も死ぬまで全力で楽しもうと思った。
同時に感銘を受けたから、僕も死ぬまで全力で楽しもうと思った。
でも、終わりはやがてやってくる。
いつも通り刹那と仲良く遊んでる時――僕の心臓は、鼓動を停止。
いつも通り刹那と仲良く遊んでる時――僕の心臓は、鼓動を停止。
いや――違う。
本当は既に死んでいたらしい。
それを知らないまま、魂だけがVRCに残ってた。
本当は既に死んでいたらしい。
それを知らないまま、魂だけがVRCに残ってた。
両親は僕の死を認めるのが嫌で、植物人間のような状態で死にながらも死んでないような――すごくハイテクでお金の掛る方法を取っていた。
でもお金も遂に尽きて――僕は、火葬された。
でもお金も遂に尽きて――僕は、火葬された。
そんなことが頭に流れ込んで――気付けば僕は檻に入れられていた。
檻に置いてあるのは、残酷な殺し合いを繰り広げている様子が写るモニター
そこには刹那や彼に紹介してもらって仲良くなったコセイ隊やぼっちの集いも映っていた。
檻に置いてあるのは、残酷な殺し合いを繰り広げている様子が写るモニター
そこには刹那や彼に紹介してもらって仲良くなったコセイ隊やぼっちの集いも映っていた。
僕は彼らを助け出したいけど――手足に手錠を嵌められて、檻に閉じ込められてる。
神様、どうかお願いします。
どうかみんなを助けてください。
特に刹那は――僕が愛してるあの子だけは、救ってあげてください
どうかみんなを助けてください。
特に刹那は――僕が愛してるあの子だけは、救ってあげてください
そしてこの世界も、守ってください。
この殺し合いには、嫌な予感がするから……。まるで楽しい世界が崩壊する序章を見ているみたいで……。
この殺し合いには、嫌な予感がするから……。まるで楽しい世界が崩壊する序章を見ているみたいで……。
そんな願いが無意味だとわかっていても、僕はそう願わずにいられなかった
【主催本拠地の檻の中/一日目/???】
【黒百合】
[状態]:健康、手足に手錠、檻の中に監禁中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:仲良くなれたみんなを。特に僕が愛している刹那を助けたい、けど……
1:神様、お願いします。みんなを、特に刹那を救ってください
2:刹那みたいに全力を尽くしてこの世界だけでも生きたい。そのためにこの世界を救いたい、けど……
3:僕に、何か出来ることは……
【黒百合】
[状態]:健康、手足に手錠、檻の中に監禁中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:仲良くなれたみんなを。特に僕が愛している刹那を助けたい、けど……
1:神様、お願いします。みんなを、特に刹那を救ってください
2:刹那みたいに全力を尽くしてこの世界だけでも生きたい。そのためにこの世界を救いたい、けど……
3:僕に、何か出来ることは……
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