アサルトリリィ -猫に寄りそう乙女の作法-
(デスゲーム――なんていきなり言われても、実感が湧かないものだな……)
ざっ、ざっ、ざっ――。
俺のスタート地点は雪が積もったエリアだった。
一歩、また一歩と進む度に足跡が刻まれていく。ヒンヤリとしたリアルな感触は、ここが仮想現実じゃないことをその冷たさで伝えてくる。
俺のスタート地点は雪が積もったエリアだった。
一歩、また一歩と進む度に足跡が刻まれていく。ヒンヤリとしたリアルな感触は、ここが仮想現実じゃないことをその冷たさで伝えてくる。
フルダイブ型のデスゲーム。殺し合い。
いきなりそんなことを言われても、これまで普通の生活をしてきた俺にはそれが現実で起こっていることだなんてイマイチ理解出来なかった。……こうして歩いてる今も、何か夢でも見てるんじゃないかと思ってる。
いきなりそんなことを言われても、これまで普通の生活をしてきた俺にはそれが現実で起こっていることだなんてイマイチ理解出来なかった。……こうして歩いてる今も、何か夢でも見てるんじゃないかと思ってる。
『ふざけるな!そんな理不尽が許されるとでも――』
「ななし……」
「ななし……」
理不尽を突き付けられて、抗おうとした美少女アバターの男。
俺はあいつを知っている。……知らないはずもない、あんな変態でも友達なんだから。
そこまで深く関わってたわけじゃないが……年下の俺に対して色々と気にかけてくれる、いい奴だった。VRCに不慣れだった頃、色々と教えてくれたのもななしだ。
俺はあいつを知っている。……知らないはずもない、あんな変態でも友達なんだから。
そこまで深く関わってたわけじゃないが……年下の俺に対して色々と気にかけてくれる、いい奴だった。VRCに不慣れだった頃、色々と教えてくれたのもななしだ。
『俺、好きな子が居てさ。しみうさちゃんっていう子なんだけど』
……。
もしもこれが現実だったら、あのななしの笑顔を見ることはもう出来ないのだろうか?
それは嫌だな……。ななしは本当にいい奴で……こんなところで理不尽に殺されていいような人間じゃないはずだ。
もしもこれが現実だったら、あのななしの笑顔を見ることはもう出来ないのだろうか?
それは嫌だな……。ななしは本当にいい奴で……こんなところで理不尽に殺されていいような人間じゃないはずだ。
好きな子だっているし、これから二人は付き合って……俺はそんな二人を見守って。
そんな当たり前の日常が続くはずだったんだ。……あいつの命がこんな理不尽に奪われていいはずが、ないんだ。
そんな当たり前の日常が続くはずだったんだ。……あいつの命がこんな理不尽に奪われていいはずが、ないんだ。
「……きっとこれは夢だよな、ななし」
これは夢だ。
あまりにも悪趣味で、気分を害するような類の夢に違いない。
ななしとはあまり深い関係じゃなかったが……それでもあいつの優しさには救われた。
あまりにも悪趣味で、気分を害するような類の夢に違いない。
ななしとはあまり深い関係じゃなかったが……それでもあいつの優しさには救われた。
ななしとは家族でもないし、リアルの関わりなんて一切ない。……だからこそ兄のことを気にせず、この世界では俺が俺で在ることが出来る。
もしもななしが俺に操作方法やVRCの楽しみ方を教えてくれなければ……この世界の魅力をあまり理解出来ないまま辞めてた可能性もある。
だから俺にとってななしは恩人みたいなもので……本当はもっと交流を深めたいとも思ってた。……俺には誰かとそんなに仲良くなる資格なんてないから、なるべくガッツリとは関わらないようにしてたけど。
それでも、これがもしも現実で。
こんなふうにななしの命が理不尽に奪われてしまうなら――もっとあいつと仲良くしておくべきだった。
こんなふうにななしの命が理不尽に奪われてしまうなら――もっとあいつと仲良くしておくべきだった。
……正直に言うと、後悔している。
でも俺がどれだけ後悔しても、これが現実なら――あいつが帰って来ることはない。
もう二度とななしと遊ぶことは、出来ないんだ……。
でも俺がどれだけ後悔しても、これが現実なら――あいつが帰って来ることはない。
もう二度とななしと遊ぶことは、出来ないんだ……。
「どうして俺じゃなかったんだ……」
誰かを見せしめにするなら、ななしじゃなくて俺を選べば良かったのに。
兄の劣化品で、無価値で、矮小で――こんなどうしようもない俺を殺せば良かったのに。
兄の劣化品で、無価値で、矮小で――こんなどうしようもない俺を殺せば良かったのに。
ななしはこれから、幸せになるはずだったんだ。
そんな奴が殺されて、俺みたいなゴミが生きているなんて。……本当に世の中は理不尽だな。
そんな奴が殺されて、俺みたいなゴミが生きているなんて。……本当に世の中は理不尽だな。
(……いつまでも考え込んでても、仕方ないか)
ななしは死んで、俺は生き残った。……また生き残ってしまったんだ。
兄の時もそうだった。周りに優秀だと褒められてたあの人が死んで、劣等の俺が生き残った。
兄の時もそうだった。周りに優秀だと褒められてたあの人が死んで、劣等の俺が生き残った。
俺はいつも……そうやって生かされる。
ななしには仲の良い人も沢山居た。俺なんかより、よっぽど価値のある人だった。
代わりに俺が死ねば良かったのに、なんてそんな後悔をしても――運命は変わらない。
ななしには仲の良い人も沢山居た。俺なんかより、よっぽど価値のある人だった。
代わりに俺が死ねば良かったのに、なんてそんな後悔をしても――運命は変わらない。
本当に『神様』なんて存在がいるなら、そいつはすごく性格が悪いと思う。恨んでやりたいし、憎んでやりたい。怒りをぶつけたい。
だけどそんな存在がいるわけないと理解してるから――俺は否が応でも生きて、進むしかないんだ。
だけどそんな存在がいるわけないと理解してるから――俺は否が応でも生きて、進むしかないんだ。
「しみうさ、か……」
ななしが恋心を寄せていた相手の名前を口に出す。
しみうさ。……俺はその人と会ったことがないし、どんな人なのかわからない。
知っていることはユーザー名だけ。人柄どころか、性別すらも知らない。
しみうさ。……俺はその人と会ったことがないし、どんな人なのかわからない。
知っていることはユーザー名だけ。人柄どころか、性別すらも知らない。
だがあのななしが好きになったということは、きっと悪い人じゃないだろう。……ななしが悪女に騙されてる可能性もあるが、あまり考えたくはない。
とりあえず今の俺がななしのために出来ることは――。
とりあえず今の俺がななしのために出来ることは――。
「……最悪だ」
名簿を確認すると、しみうさの名前があった。
それはつまり、しみうさはこの殺し合いに巻き込まれてるという意味になる。ななしが片思いしてた相手が、このデスゲームに。
それはつまり、しみうさはこの殺し合いに巻き込まれてるという意味になる。ななしが片思いしてた相手が、このデスゲームに。
だが同時に目標も決まった。
ななしの代わりに、しみうさを守る。……それくらいしか俺に出来ることはない。
俺は兄にもななしにもなれないが――それでも生かされた者としての使命がある。
ななしの代わりに、しみうさを守る。……それくらいしか俺に出来ることはない。
俺は兄にもななしにもなれないが――それでも生かされた者としての使命がある。
――最悪だなんて言っておきながら、もしかしたら俺はそれを望んでいたのかもしれない。
何故なら今は、兄の時と違って『使命』が出来た。
どうしようもない現状を嘆き、自分の無力や周りの声に苦しむより何かに向かって歩いた方がまだ気が紛れるだろう。
……こんな状況で、自分の精神の保身を考えてしまうこの醜い心には虫唾が走るが。
どうしようもない現状を嘆き、自分の無力や周りの声に苦しむより何かに向かって歩いた方がまだ気が紛れるだろう。
……こんな状況で、自分の精神の保身を考えてしまうこの醜い心には虫唾が走るが。
それでも。こんな俺でも、誰かのために戦えるなら――それだけで多少は救われた気がした。
「よう。そんな浮かない顔してどうしたんだ?真二」
「お前は――マキシム?」
「お前は――マキシム?」
灰色ジャージというVRCでは珍しく簡素な服。そして美男美女が集うこの世界では目立つ、鋭い厳つい風貌。大柄な肉体。
日本語の発音も外人特有のもので――その声を聞き間違えるはずもない。
日本語の発音も外人特有のもので――その声を聞き間違えるはずもない。
「そうだぜ。久しぶりだな、真二」
「ああ。最初に出会った相手があんた、で――ッ!」
「ああ。最初に出会った相手があんた、で――ッ!」
「シッ!」
――瞬間、右ストレートが飛んできた。
どういうことだ?どうして、マキシムが……!?
わけがわからない。だが攻撃をされたのなら、避けるしかない。
どういうことだ?どうして、マキシムが……!?
わけがわからない。だが攻撃をされたのなら、避けるしかない。
プロのような速さだが、互いに生身ではなくアバターになっているおかげかギリギリ視認は出来る。
俺は咄嗟に身を屈めて――。
俺は咄嗟に身を屈めて――。
「ぶっ!?」
膝を鼻に叩き付けられた……ッ!
「弱い。哀れなほど弱いなァ、真二」
鼻血を垂れ流し、相手を睨む俺を――マキシムは楽しそうに煽っていた。
どういうことだ、これは……。まさかこの場ではフレンドとすらも、殺し合わなければならないのか……!?
どういうことだ、これは……。まさかこの場ではフレンドとすらも、殺し合わなければならないのか……!?
♡
それはきっと、どこにでもある、ありふれた物語
♡
「仔猫ちゃん♡こんなに寒いのに、お互いにくっつくと暖かいですね♡」
「タチバナさん……。いつまでこうして、引っ付いてるの?」
「タチバナさん……。いつまでこうして、引っ付いてるの?」
あれから私たちは、ずっとこうして引っ付いてた。……厳密にはタチバナさんがずっと私を後ろから抱き締めて、離さなかった。
普段ならこういう時間も嫌いじゃないけど、流石にデスゲームの最中に大丈夫?とは思う。
普段ならこういう時間も嫌いじゃないけど、流石にデスゲームの最中に大丈夫?とは思う。
「仔猫ちゃんが可愛いので、つい……♡」
なで、なで。
タチバナさんは私の前まで来ると、満面の笑みで撫で始める。……この人、状況わかってないのかな?
タチバナさんは私の前まで来ると、満面の笑みで撫で始める。……この人、状況わかってないのかな?
「そうやって褒めてくれるのは嬉しいけど、今はデスゲームの最中。こんなことをしてる場合じゃ……」
「――こんな状況だからこそ、ですよ」
タチバナさんは私のことを撫でながら、芯のある声で語り始める。
「仔猫ちゃんの緊張感も、焦る気持ちも……わからないでもないです。大切なお友達が巻き込まれてるなら、今すぐにでも合流したいですよね」
「うん。……特にいのりと刹那は、まだ未熟だから不安要素が強い」
「うん。……特にいのりと刹那は、まだ未熟だから不安要素が強い」
お兄ちゃんやシロ姉やもみじさんはともかく、いのりと刹那の二人は私が見守ってあげないとどうなるかわからない。
あの二人は精神的にまだ幼い気がするから……。
あの二人は精神的にまだ幼い気がするから……。
「失ったものは、二度と帰ってこない。だから失いたくないし、守りたい。……その気持ちは、私もすごくわかります」
『私には昔、大切なお嬢様が居ましたけど……。謀殺されて、もう二度と会えなくなっちゃいました……』
情報交換の時、タチバナが悔しそうに話してたことを思い出す。
大切な人を守れなかったタチバナさんだからこそ、重みのある言葉。もうお嬢様は、二度と帰って来ないから……。
大切な人を守れなかったタチバナさんだからこそ、重みのある言葉。もうお嬢様は、二度と帰って来ないから……。
「嫌なことを思い出させてごめんなさい、タチバナさん」
「私は全然ノーダメなので大丈夫です♡
ただなんていうか――気持ちはわかりますけど、あまり焦りすぎちゃダメですよ?そういう気持ちは、命を懸けた場所では危ういですから」
ただなんていうか――気持ちはわかりますけど、あまり焦りすぎちゃダメですよ?そういう気持ちは、命を懸けた場所では危ういですから」
タチバナさんは笑顔を作ると、優しく頭を撫でてくれた。
雪が振り積もって、こんなに身体は冷えるのに――タチバナさんの手は、暖かい。優しい温もりを感じる……。
雪が振り積もって、こんなに身体は冷えるのに――タチバナさんの手は、暖かい。優しい温もりを感じる……。
「……うん、気を付けるね」
「良かったです。仔猫ちゃんは私の大切なお嬢様なんですから――焦らず、ゆっくりとがんばりましょう♡
仔猫ちゃんが死んじゃったら悲しむ人も居るんですよ?」
仔猫ちゃんが死んじゃったら悲しむ人も居るんですよ?」
「ありがとう、タチバナさん。……でも、どうしてタチバナさんはそんなに余裕があるの?」
「私はメイドですよ?命のやり取りくらい何度もしてきました♡」
「私はメイドですよ?命のやり取りくらい何度もしてきました♡」
……?
命のやり取り……?
命のやり取り……?
「……ビックリさせちゃいました?」
「うん。……ホントなの?」
「うん。……ホントなの?」
「仔猫ちゃんに嘘なんてつきませんよ。……だから私の手は、血に塗れてるんです」
「タチバナさん……」
「タチバナさん……」
タチバナさんの表情は、哀しそうで。
なんとかして心を癒してあげたいけど、何も言葉が思い浮かばなくて……。
なんとかして心を癒してあげたいけど、何も言葉が思い浮かばなくて……。
「……やっぱり、引いちゃいますか?」
違う。
たしかにビックリしたけど――まさかタチバナさんにそんな過去まであるとは思わなかったけど。
それでも私は、タチバナさんの――。
たしかにビックリしたけど――まさかタチバナさんにそんな過去まであるとは思わなかったけど。
それでも私は、タチバナさんの――。
「引かないよ。タチバナさんは私のメイドだから……どんな過去があっても、私は引かない」
「ふふ……。仔猫ちゃんは優しいですね♡」
「ふふ……。仔猫ちゃんは優しいですね♡」
タチバナさんは嬉しそうに微笑んで――私の頬に優しく口付けした。
……彼女と知り合って。主従関係になって、二回目のキス。
……彼女と知り合って。主従関係になって、二回目のキス。
最初はビックリしたけど――これはきっと、タチバナさんなりの愛情表現なのかもしれない。
「……私は優しくなんてないよ。
それにきっと――タチバナさんはお嬢様を守るために戦ったんだよね……?」
それにきっと――タチバナさんはお嬢様を守るために戦ったんだよね……?」
「そうですね。そのために鍛えて、技術を磨いて――最強の執事なんて呼ばれたこともありましたが、それでもお嬢様を守ることは出来ませんでした。……情けないですよね」
情けない?
大切な人を守るために、一生懸命に努力したタチバナさんが――情けない?
大切な人を守るために、一生懸命に努力したタチバナさんが――情けない?
「そんなわけ、ない……!」
たしかにタチバナさんはお嬢様を守れなかった。……結果だけ見るなら、そうかもしれない。
もしかしたらそんな彼女を「情けない」とか「不甲斐ない」とか――そんなふうに責める人もいるのかもしれない。
もしかしたらそんな彼女を「情けない」とか「不甲斐ない」とか――そんなふうに責める人もいるのかもしれない。
でも――そんなこと、私が許さない。
他の誰がタチバナさんを責めても私が彼女を否定させない!
他の誰がタチバナさんを責めても私が彼女を否定させない!
「タチバナさんは情けなくなんてない。他の人はどう思うかわからないけど……私は私のメイドを。一生懸命がんばったタチバナさんを情けないなんて、思わない……!」
「仔猫ちゃん……」
私とタチバナさんはまだ出会ったばかりだけど。それでも私たちは、主従関係を結んだから。
……それになんというか、この人と一緒に居るおかげでこの殺し合いでも落ち着けてる。焦らず冷静に、考えることが出来る。
『手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に。ボクの好きな古のエロゲの名言なんだけどさ――。
ほら、仔猫って意外と熱くなることあるじゃん?でも頭は冷静さは失っちゃダメだよ、って教訓!』
ほら、仔猫って意外と熱くなることあるじゃん?でも頭は冷静さは失っちゃダメだよ、って教訓!』
昔、刹那が言ってたことを思い出す。
手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に。
……あやかしびと、だったかな。すごく大切な教訓だと思う。
手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に。
……あやかしびと、だったかな。すごく大切な教訓だと思う。
だけど私は正直――焦ってた。
みんなが巻き込まれてるなら、早く合流したいから。……心配だから。
みんなが巻き込まれてるなら、早く合流したいから。……心配だから。
でもその結果、私が死んだらみんなが悲しむ。それに当たり前だけど、まだ死にたくない。
みんなと楽しんでた、あの平和な日常(VRC)に帰るために――誰一人として、欠けるわけにはいかない。
……だから出会い方こそ最悪だったけど、タチバナさんには感謝してる。
……だから出会い方こそ最悪だったけど、タチバナさんには感謝してる。
それに――。
「……タチバナさん。本当に情けないのは、私の方だよ」
「仔猫ちゃんが、情けない……?」
「仔猫ちゃんが、情けない……?」
「うん。だって私は――大切な人を守る努力どころか、大切な人から逃げたから……」
「逃げた――というのは、具体的にどういうことですか?」
「そのままの意味だよ。私は男なのに、女の子って嘘をついちゃって……罪悪感に耐え切れずに、逃げ出した……」
「なるほど、そういうことですか……」
「うん。だから、私の方がタチバナさんよりもよっぽど……」
「うん。だから、私の方がタチバナさんよりもよっぽど……」
「――そんなこと、ないですよ」
ぎゅ……。
タチバナさんが優しく、私の体を包んで――頭を撫でてくれた。
暖かい……。タチバナさんの体温が――優しさが、伝わってくる。
暖かい……。タチバナさんの体温が――優しさが、伝わってくる。
「タチバナさん……」
どうして、かな……。
こういうのは、あまり私らしくないかもしれないけど――。
こういうのは、あまり私らしくないかもしれないけど――。
……ぎゅ、。
私はタチバナさんの背中に手を回して――抱き着いていた。
彼女の優しさに身を寄せて、全身で感じ取って――。
彼女の優しさに身を寄せて、全身で感じ取って――。
「……辛かったですね、仔猫ちゃん」
辛かった……。
うん。たしかに、その通り……。
私はずっと辛かった。本当の私として振る舞ってたのに、ただそれだけで罪悪感に苛まれて。
男だとか、女だとか――それってそんなに大事なことなのかなって。
うん。たしかに、その通り……。
私はずっと辛かった。本当の私として振る舞ってたのに、ただそれだけで罪悪感に苛まれて。
男だとか、女だとか――それってそんなに大事なことなのかなって。
「うん。……私はそんな臆病者だけど、タチバナさんはそれでも私のメイドをする?」
「当然です♡それに私は仔猫ちゃんのその行動を臆病の一言で切り捨てるつもりはありません」
「どういうこと……?」
「どういうこと……?」
「これは私の推測ですが……仔猫ちゃんって精神的にはオトコノコより女の子に近いんじゃありませんか?」
「……うん。昔は違ったけど、今はそうだね」
「やっぱりそうですよね♡それなら仔猫ちゃんが女の子っていうのは、嘘偽りない真実だと思います♡」
「やっぱりそうですよね♡それなら仔猫ちゃんが女の子っていうのは、嘘偽りない真実だと思います♡」
タチバナさんがニッコリと微笑む。
今まで『お金稼ぎ』とかで色々な人を見てきたから、人間観察には多少の自信があるけど――この屈託のない笑顔はほんとに嘘をついてない、本物だと思う。
今まで『お金稼ぎ』とかで色々な人を見てきたから、人間観察には多少の自信があるけど――この屈託のない笑顔はほんとに嘘をついてない、本物だと思う。
つまりこの人は、私が肉体的にリアルでは男だと知りながら――それでも私のことを女の子だと言ってくれてる。
ぼっちの集いやコセイ隊のみんなも、ありのままの私を認めてくれてるけど……やっぱりこういうのは、うれしい。……自然と頬が緩む。
「ありがとう、タチバナさん」
「ふふ、可愛い笑顔ですね♡でも私は自分の考えを言っただけで、何もお礼を言われるようなことしてないですよ?」
「うん。それでも私にとっては、嬉しかったから……」
「ふふ♡それなら良かったです♡」
「ふふ♡それなら良かったです♡」
タチバナさんが優しく、包み込む。
それはまるで、夜空みたいに――。
この小さな体を優しく――暖かく、包み込んでくれる。
それはまるで、夜空みたいに――。
この小さな体を優しく――暖かく、包み込んでくれる。
「もしかしたら相手の人には――仔猫ちゃんは嘘つきって思われちゃうかもしれません。でも、私は仔猫ちゃんを肯定します♡
……私も女の子の心になっちゃう気持ちは、わかりますからね。仔猫ちゃんの辛さも多少は理解してあげられるつもりです♡」
……私も女の子の心になっちゃう気持ちは、わかりますからね。仔猫ちゃんの辛さも多少は理解してあげられるつもりです♡」
「ありがとう。タチバナさんも……その、精神的には……」
「はい♡私も精神的には――完璧にメイドですよ♡
……執事としての私は、もう捨てましたから♡」
「はい♡私も精神的には――完璧にメイドですよ♡
……執事としての私は、もう捨てましたから♡」
執事じゃなくて、メイド。それはつまり性自認の変化も意味するはず。
今まで気付かなかったけど、もしかしたらこの人は……私と少し似てるのかもしれない。
今まで気付かなかったけど、もしかしたらこの人は……私と少し似てるのかもしれない。
シロ姉の前では女の子として振る舞うけど、普段は男の娘を公言してるいのり。
男の娘アバターで、自分の性別を誇ってる節すらある刹那。
そんな二人よりも――もしかしたらタチバナさんの方が、私に近いのかもしれない。
男の娘アバターで、自分の性別を誇ってる節すらある刹那。
そんな二人よりも――もしかしたらタチバナさんの方が、私に近いのかもしれない。
いのりや刹那とはすごく仲が良いし、個性が似た者同士として色々と分かりあってきた。
……でもタチバナさんほど私と状況が似てる人は今まで会ったことがない。
……でもタチバナさんほど私と状況が似てる人は今まで会ったことがない。
もしかしたらこの人なら――色々と苦しみや悲しみを、理解してくれるかもしれない。
「私たち――女同士、なんだね……。今までこういう知り合いは居なかったから……ちょっとうれしい」
「はい♡私たちは女の子同士です♡
それと仔猫ちゃん、ちょっとだけ目を瞑れますか?」
「え?……うん、わかった」
それと仔猫ちゃん、ちょっとだけ目を瞑れますか?」
「え?……うん、わかった」
どうして目を瞑る必要があるのかわからないけど――私はタチバナさんを信じてるから。
ゆっくりと目を閉じて――。
ゆっくりと目を閉じて――。
「仔猫ちゃん。――大好きです♡」
ちゅ♡
「……♡」
タチバナさんが私の唇に……キスをした。
私とタチバナさん――二人の唇が重ね合う。
私とタチバナさん――二人の唇が重ね合う。
どき、どき、どき――♡
不思議と胸の鼓動が高鳴りを感じる。
女の子同士なのに……変な気持ち。
女の子同士なのに……変な気持ち。
……世間的には私たちは男同士で。それだけでも引かれるのに、精神的には女の子同士で。
倒錯感に満ち溢れた歪な二人組。……きっとそんなふうに思われるかもしれない。
倒錯感に満ち溢れた歪な二人組。……きっとそんなふうに思われるかもしれない。
でも――タチバナさんは私のことを「好き」って言ってくれた。
そして私も――まだ出会ったばかりだけど。
タチバナさんのことが……。
そして私も――まだ出会ったばかりだけど。
タチバナさんのことが……。
私たちはしばらく、唇を重ね合っていた。
それはきっと、世界の時間に換算すると刹那の一瞬なのかもしれない。
それでも二人の世界では、たったそれだけの時間が長く思えて――。
それはきっと、世界の時間に換算すると刹那の一瞬なのかもしれない。
それでも二人の世界では、たったそれだけの時間が長く思えて――。
「……ぷは♡」
タチバナさんが私の唇から、離れていく。
名残惜しそうな瞳で私を見つめて――。
それはきっと……私が返事をしてないから。
名残惜しそうな瞳で私を見つめて――。
それはきっと……私が返事をしてないから。
色々と思うところは、ある。
誰かを好きになるのって……特別になるのって、辛さも伴うことだと知ったから。
誰かを好きになるのって……特別になるのって、辛さも伴うことだと知ったから。
でもタチバナさんは、こんな私を――出来損ないのガラクタを女の子だと認めてくれた。
その上で好きだって……気持ちを伝えてくれた。
それなら私も――自分の気持ちに正直で在りたい。
この一歩は、すごく重たいけど――それでも踏み出したい。
過去に囚われず――私は私として。仔猫として。
それなら私も――自分の気持ちに正直で在りたい。
この一歩は、すごく重たいけど――それでも踏み出したい。
過去に囚われず――私は私として。仔猫として。
「……ちゅ♡」
そう思った時には――自然と体が動いてた。
「ふふ♡仔猫ちゃんの方からもキスしてくれて……嬉しいです♡」
「私はもう、逃げない。――タチバナさん、大好き」
「私はもう、逃げない。――タチバナさん、大好き」
私は唇を離して、タチバナさんの目をしっかり見ると――この気持ちを正直に伝えた。
「ありがとうございます♡……私はすごく幸せなメイドですね♡」
タチバナさんが頬を染めて、うれしそうに微笑む。
その姿が可愛くて――胸の鼓動が加速する。
その姿が可愛くて――胸の鼓動が加速する。
男同士?女の子同士?
そんなの――もう、どうだっていい。
私たち二人の間で納得してるから――。世間的に頭おかしいなんて、百も承知だから。
そんなの――もう、どうだっていい。
私たち二人の間で納得してるから――。世間的に頭おかしいなんて、百も承知だから。
「うん。タチバナさんは私のものだから……絶対に離さない」
「仔猫ちゃん……」
「――タチバナさん、大好き」
「仔猫ちゃん……」
「――タチバナさん、大好き」
そっと、微かに――唇と唇が触れる。
私たちが今居るエリアは、雪が降り積もる神社。
そんな雪景色が大人の階段を白く、綺麗に光らせて――私はタチバナさんとそれを飛び越えたい。
私たちが今居るエリアは、雪が降り積もる神社。
そんな雪景色が大人の階段を白く、綺麗に光らせて――私はタチバナさんとそれを飛び越えたい。
「ん……。タチバナさんの舌、暖かい……」
「仔猫ふぁんも……暖かいれすよ……♡」
「仔猫ふぁんも……暖かいれすよ……♡」
タチバナさんと舌を舌を絡ませる。
二人で溶け合うように、お互いの愛を確認するように――何度も、何度も、絡め合う。
二人で溶け合うように、お互いの愛を確認するように――何度も、何度も、絡め合う。
パパ活や援交では決して得られなかった、大切な感情。
どれだけ白濁に塗れても、可愛いと言われても――埋まることのなかった心のパズル。
彼らは所詮、性欲だけで動く猿。――快楽に溺れるだけで満たせるほど、私の心は単純じゃない。
どれだけ白濁に塗れても、可愛いと言われても――埋まることのなかった心のパズル。
彼らは所詮、性欲だけで動く猿。――快楽に溺れるだけで満たせるほど、私の心は単純じゃない。
シロ姉には、いのりが居た。
だから私はそんな二人をずっと眺めて――どこか羨ましく思って。
いつか私も、また好きな人を見付けたら――勇気を持って一歩を踏み出したかった。
だから私はそんな二人をずっと眺めて――どこか羨ましく思って。
いつか私も、また好きな人を見付けたら――勇気を持って一歩を踏み出したかった。
私は誰かを好きになるには、あまりにも穢れてるけど。
そんな私でも――きっとタチバナさんは受け止めてくれるから。
そんな私でも――きっとタチバナさんは受け止めてくれるから。
「ちゅ……♡れろ、れろ……♡」
貪るように、タチバナさんと舌を絡ませて。
こんなデスゲームの最中だけど――今はこの幸福に身を委ねる。
こんなデスゲームの最中だけど――今はこの幸福に身を委ねる。
ひなたとはVRまでしてないから、女の子同士でこんなことをするのは、初めてで――。
……ひなたの時はまだ私が私で在ることに罪悪感すらあったから、心から自分らしく振る舞えて好きだと言い合えたことも初めてで。
だからこの情熱(愛)を――胸のドキドキを、タチバナさんと分かち合いたい。
「ん、ぅ……♡こ、ねこ……ちぁ、ん……♡すごく、上手ですね……♡」
タチバナさんの目がとろんと蕩けてきた。
お金を稼ぐ時に褒められても微塵も嬉しくなかったけど――タチバナさんがこうして喜んでくれるのは、うれしくて胸のドキドキが強くなる。
お金を稼ぐ時に褒められても微塵も嬉しくなかったけど――タチバナさんがこうして喜んでくれるのは、うれしくて胸のドキドキが強くなる。
……このアバターにアレがついてたら、きっと今頃すごく大きくなってたくらいに。
でも今の私は、身も心も女の子だから――大きくなるものがない代わりに、パンツが湿ったような感覚。
何も触れてないのにすごく不思議な――けれどもそれが嫌だとは思わない。
何も触れてないのにすごく不思議な――けれどもそれが嫌だとは思わない。
暫くして、タチバナさんの唇から離れる。
お互いの口から透明の糸が引いて――タチバナさんはそれを愛おしそうに見ていた。
お互いの口から透明の糸が引いて――タチバナさんはそれを愛おしそうに見ていた。
ゴクリ――。生唾を飲み込む。
そんな表情をされると、私はもう――。
そんな表情をされると、私はもう――。
「タチバナさん……」
私が服を脱ぐと、服の上からでもわかるタチバナさんの豊満な胸とは正反対に小ぶりな胸が下着越しに露出した。
こうして改めて脱ぐと、ブラジャーの締め付けを更に強く感じる。――今までにはない、不思議な感じ。
こうして改めて脱ぐと、ブラジャーの締め付けを更に強く感じる。――今までにはない、不思議な感じ。
「ふふ♡仔猫ちゃんの小さなロリおっぱい、下着越しに見えちゃいましたね♡」
タチバナさんも服を脱いで――下着姿になった。
メイドらしい、清潔感のある白色の下着。……それなのに股の部分だけ濡れていて、そのミスマッチが不思議とえっちにすら感じる。
メイドらしい、清潔感のある白色の下着。……それなのに股の部分だけ濡れていて、そのミスマッチが不思議とえっちにすら感じる。
「タチバナさんになら、見られてもいいと思ったから……」
「それはうれしいです♡」
「うん。タチバナさん、だいすき……♡」
「それはうれしいです♡」
「うん。タチバナさん、だいすき……♡」
そして私たちは――下着姿で、体を重ねた。
タチバナさんの暖かな体温を直に感じる。
タチバナさんの暖かな体温を直に感じる。
私はVR感覚もあったから――シロ姉やお兄ちゃんに撫でられた時も『暖かさ』を感じた。
でも今のこの感じは、そういうのとはまた別の種類の暖かさ。……愛情は愛情でもまた別の意味の、愛情。
私たちはそうしてしばらく――と言っても、体感時間でリアルの経過ではそれほど長くないかもしれないけど。
二人の時間を、温もりを。じっくりと過ごした。
雪降る神社なのに、不思議と寒さは感じない――。
二人の時間を、温もりを。じっくりと過ごした。
雪降る神社なのに、不思議と寒さは感じない――。
♡
仔猫ちゃん。
私は仔猫ちゃんのことが大好きです♡
VRCに出会ってから、多少は気を紛らわせてましたが――やっぱり主の居ない生活というのは、どこか物悲しくて。
私は仔猫ちゃんのことが大好きです♡
VRCに出会ってから、多少は気を紛らわせてましたが――やっぱり主の居ない生活というのは、どこか物悲しくて。
そんな時に舞い降りた天使が――仔猫ちゃん、あなたです♡
だから私は仔猫ちゃんという天使に出逢えたことに心から感謝してます♡
だから私は仔猫ちゃんという天使に出逢えたことに心から感謝してます♡
……このデスゲーム自体は許容する気もないし、理不尽を強いる運営には苛立ちも覚えます。
女としての肉体を得て、仔猫ちゃんと出逢えて――そんな幸福はありましたが、やっぱりVRCを殺し合いの舞台装置にされることは好ましくないです。
開幕から一人えっちしてた私ですが、アレは自分なりの気の沈め方でもあるんですよ♡
なにより大好きな仔猫ちゃんの家族やお友達を巻き込んだというのが、今では一番許せません。……仔猫ちゃんを巻き込んだこと自体も含めてです。
たしかに私は仔猫ちゃんのおかげで多少は前向きになれました。……でもやっぱり、仔猫ちゃんにはこんなデスゲームに参加してほしくなかったです。
大好きだから。大切だからこそ――平和な日常だけを楽しんでほしかった。
大好きだから。大切だからこそ――平和な日常だけを楽しんでほしかった。
……こんな事件に巻き込まれるのは、私みたいに人生終わってる輩だけで良かったんです。仔猫ちゃんはこんな世界を知るべきじゃない。
今はまだ平和だから良いですが――これから先、何が起こるかもわかりません。
仔猫ちゃんや彼女の家族、お友達は出来る限り守りたいですが……正直、私一人で全員を守るのは難しい。……元々は一流と呼ばれてた執事でしたから、シビアな現実もわかっちゃうんです。
いつか仔猫ちゃんは――大切な人たちの死に直面することになる可能性が高い。
その時、私なんかが仔猫ちゃんの心を支えてあげられるのか……今から不安で仕方ないというのが本音です。メイドなのに、情けないですよね。
その時、私なんかが仔猫ちゃんの心を支えてあげられるのか……今から不安で仕方ないというのが本音です。メイドなのに、情けないですよね。
私は仔猫ちゃんのおかげで、温もりを知ることが出来ました。
……こんな私が誰かと愛し合うなんて、本当にそんな資格はないと思います。
……こんな私が誰かと愛し合うなんて、本当にそんな資格はないと思います。
でも私は仔猫ちゃんのことが大好きで、仔猫ちゃんも大好きだと言ってくれました。……本当に仔猫ちゃんは天使ですね♡
私たちは元々男性。今は女の子同士ですが、その事実はずっと変わりません。
でもお互いに好きなら――そういう愛の形も誇らしくすら思えます♡
でもお互いに好きなら――そういう愛の形も誇らしくすら思えます♡
仔猫ちゃんの心は女の子で。
私も……VRCにのめり込むうちに、いつの間にか心までメイドになっていました。
私も……VRCにのめり込むうちに、いつの間にか心までメイドになっていました。
あくまでメイドで、女の子という気持ちはそこまで強いわけでもなかったのですが――男性の一人称を使わなくなってた時点で、女の子に寄っていたとは思います♡
それに――仔猫ちゃんを見ているうちに、子宮がきゅん♡となって。
やっぱり私も、気付かないうちに女の子になってると自覚しました♡
やっぱり私も、気付かないうちに女の子になってると自覚しました♡
私の過去は本当に最悪です。
二度と思い出したくないですが――忘れることもしたくありません。
あの事件は最悪でしたが――私を取り巻いてた環境は、大好きでしたから♡
二度と思い出したくないですが――忘れることもしたくありません。
あの事件は最悪でしたが――私を取り巻いてた環境は、大好きでしたから♡
でも――執事の私は、もう終わりました。
私はタチバナ。仔猫ちゃんの専属メイド、タチバナです♡
過去は捨てられないし、ずっと引きずりますが――それでも私は生まれ変わりました。
私はタチバナ。仔猫ちゃんの専属メイド、タチバナです♡
過去は捨てられないし、ずっと引きずりますが――それでも私は生まれ変わりました。
悲しい想いは――降り積もる雪のように、大きいです。
それでも――私は未来へ進みたい。仔猫ちゃんという天使と一緒に風を受けて、希望を手に入れたいです♡
それでも――私は未来へ進みたい。仔猫ちゃんという天使と一緒に風を受けて、希望を手に入れたいです♡
……こんな私が、希望なんて持つなと言われるかもしれませんけどね。
なにより私が「愛」なんて、そんな資格は――。
なにより私が「愛」なんて、そんな資格は――。
「タチバナさん……?様子がおかしいけど、どうしたの……?」
「ふふ♡なんでもありませんよ、仔猫ちゃん♡」
「ふふ♡なんでもありませんよ、仔猫ちゃん♡」
こちらを心配して声を掛けてくれた優しい天使――仔猫ちゃんにメイドの微笑みをプレゼントです♡
……私はお嬢様を守ることが出来なかった欠陥品ですが、仔猫ちゃんと一緒に居ると不思議と少しだけ落ち着きます。これが天使の力ですね♡
……私はお嬢様を守ることが出来なかった欠陥品ですが、仔猫ちゃんと一緒に居ると不思議と少しだけ落ち着きます。これが天使の力ですね♡
誰かを愛し、愛される。
そんな資格は未だにないというのが、正直な気持ちではありますけどね。
そんな資格は未だにないというのが、正直な気持ちではありますけどね。
それでも――仔猫ちゃんの気持ちに応えてあげたい。
最初は仔猫ちゃんを元気づけてあげるために口付けをしたのですが……可愛い天使に大好きと言われたら、こんな私でも多少は熱情に浮かされちゃいます♡
最初は仔猫ちゃんを元気づけてあげるために口付けをしたのですが……可愛い天使に大好きと言われたら、こんな私でも多少は熱情に浮かされちゃいます♡
「――仔猫ちゃんは、本当に可愛い天使ですね♡」