「行っちゃった。慌ただしい人ね」
赤い消防車で走り去ってゆく男の姿を見送って田中花子は他人事みたいに呟いた。
与田四郎も押し付けられた荷物をめんどくさそうに眺めるばかりで、去ってゆく男を見送りもしない。
ただ一人、氷月海衣だけが心配そうな顔で男の行く末を案じていた。
「……行かせてよかったんでしょうか?」
この村は危険地帯だ。
車内であればゾンビは近づけないだろうが、特殊部隊に見つかる危険性は高い。
ましてや村から出ていくなんて奴らが張っている網に自ら飛び込む自殺行為である。
止めてやるべきではなかったのかと言う海衣の問いに花子は悩むでもなくあっさりと答えた。
「別にいいんじゃない。何かあったのなら、それはそれで彼の運命でしょう」
返す花子の反応はドライだ。
彼女は全てを救うヒーローではない。
出会った人間すべてに責任を持つわけではない。
「それよりもセンセ。さっき手渡された荷物は何だったのかしら?」
「えっと、女の子向けの着せ替え人形みたいですね。こんな状況でこんなものを渡されても困るんだけどなぁー」
与田は心底面倒そうに呟いた。
人情など無いのか、その場に捨ててしまいそうな興味のなさである。
「…………それ、私が預かってもいいですか?」
海衣がそう切り出す。
その言葉に込められた並々ならぬ決意のような色を見逃さなかったのか花子が尋ねた。
「お知り合い?」
「はい、私が見捨ててしまった女の子です」
これまでの経緯は話しているが、少女の名前までは伝えていなかった。
海衣は洋子を見捨てた。
その事実を忘れてはならない、目をそらしてもならない。
「そう。一応確認しておくけど。受け取ってどうするつもり?」
「洋子ちゃんに届けます」
洋子は既に死んだ。
何をしようが彼女に報いることはできない。
それを理解した上で、意味のない事をしようとしている。
「ま、そうね。余裕があるのならいいんじゃない」
だが、それを花子は非難も否定もしなかった。
出会った時に喰らったお説教のように、無意味な感傷だとてっきり一言くらいはあると覚悟していたが。
ドライでありながら感傷を否定しない、不思議なバランスの人である。
「いいんですか?」
「ええ。どうせ最終的に病院に向かうのだもの。ついでにそれくらいは構わなくてよ。
それに、善行は否定すべきことではないわ」
「善行……なのでしょうか?」
洋子は既に死んだ。
何をしようが彼女に報いることはできない。
これは死者へのお供え以上の意味はない。
「私はただ……自分が楽になりたいだけなのかもしれないのに」
洋子のために何かすることで、洋子を見捨てた自分の気を楽にしようとしているのではないか。
そんな、打算的な醜さが頭を離れない。
「固いわねぇ……これが若さかしら」
「ははっ。そう言う事を言うとなんかおばさん臭いですねぇ」
花子が与田の頭叩く。
「与田センセのちゃらんぽらんさを少しは分けてあげて欲しいわね」
はぁ……とため息を付いて、改めて海衣へと向き直る。
「いい海衣ちゃん。そうだとしても、だからと言ってそれは誰に咎められるような事でもないでしょう。
責める人間がいるとしたならそれはあなた自身よ」
「………………」
海衣は何も言えなかった。
その通りだ。
海衣を許せていないのは何より自分自身である。
「自分自身を救う事は悪ではないわ。人助けを善行とするのなら自分自身を救うのもまた善行であるべきなのよ」
「それは……都合が良すぎませんか?」
「そうね。だから都合の良さを受け入れる図太さを持ちなさい」
「…………努力します」
自罰的になりすぎている。
そんな自分は海衣だって本当は嫌だ。
自分自身が誰よりも嫌いなのだから。
「ただし、あくまで余裕のある場合ね。自身を犠牲してでもなんてのはダメ。
善行は自分自身を守って、その上で余裕のある人間が行う行為なんだから、身を切ってまでする事ではないと覚えておきなさい」
善行は自らを危険にさらしてでもするようなことではない。
講釈を垂れる花子はその価値観を正しく実践しているのだろう。
手の届く範囲の人間は助けるが、助けられない斎藤はあっさりと見切りをつける。
その割り切りこそが、彼女を彼女たらしめる天秤である。
「なら、私達の事も余裕があるから助けてるんですか?」
「それは違うわ。あなたを守るのは正当な取引による契約よ。与田センセの方は……まあそうかもね」
「えぇ……」
「冗談よ(半分くらいは)。研究所の関係者として、センセの情報提供は必要だからね。利害関係があるうちは守るわよ」
花子が与田も守護るだけの理由はある。
利害が一致しているうちは、と言う条件付きだが。
だが、それは一方的な契約ではなく与田だってそうだ。
花子の近くにいるから危険に巻き込まれることも理解しているが、花子の近くにいるから危機から守護って貰えるのだと理解していている。
それらを天秤にかけて、今は、花子に同行する道を選んでいるのだ。
そう言った取引によって成立する関係性を互いに理解しながら、軽い調子で飄々としたやり取りをしている。
そんな達観したような大人の関係は、今の海衣には理解できそうにもなかった。
■
「思ったより人がいないわね、商店街」
「いるにはいますけど……」
朝陽が上がった商店街からは荒廃と絶望が照らし出されていた。
建物の倒壊や道路の損壊により、商店街の風景は地獄のように荒廃している。
屋根は崩落し、ガラスは割れ、看板も落ちていた。
薄汚れた瓦礫が街路を覆っており、剥がれた街路のタイルが捲れ上がっていた
情報収集のために訪れた商店街ではあるのだが。
所々に人影があるにはあるが、それらはゾンビばかりである。
一見した限りでは正気を保った正常感染者はいなさそうだ。
地震発生が深夜だったこともあり、殆どが商店街で商いを営み店舗の二階を住居としている住民だろう。
「商店街にC感染者がいたとしても普通に考えれば建物の中に避難してるんじゃないですか?」
「まあそうよねぇ…………」
とは言え、建物一つ一つを当たってゆくのは現実的ではない。
かと言って大声で呼び回るわけにもいかないだろう。
「大通りを練り歩いてウィンドウショッピングと洒落込みましょう。
誰か隠れているなら向こうからアプローチしてくれるかもしれないし」
ひとまず商店街の大通りを進み、誰かからのアプローチを待つ方針に決まった。
村民の海衣もいる上に、仮にも村医者をやっている与田もいる。
加えて3人組という事もあって、危険人物とは思われまい。
危険人物に襲い掛かられる可能性はあるが、それは花子が対応すればいい。
「ちょっと、ごめんなさいねぇー」
そう言いながら先頭を行く花子がゾンビを軽くいなして無力化していく。
自分は傷つかないことはもちろん、ゾンビも傷つけることなく制圧していっている。
いとも容易く行っているが、どれだけの実力があればできる行為なのか。
正直、海衣であればゾンビ一人に後れを取ってもおかしくはない。
「田中さんは何者なんですか?」
ゾンビを投げ飛ばし後ろ手に拘束していたその背に思わず抱えていた疑問を投げていた。
彼女がただの観光客ではないのは誰の目にも明らかだ。
果たしてその正体が危険なものではないと言えるのだろうか?
「それは、知らない方がいいわね」
そんな直接的な問いに対して、花子は曖昧に誤魔化すでもなく真正面から否定の意を示した。
「どうしてです?」
「世の中には知ってしまっただけで危うくなる情報もあるという事よ」
花子としてもこの期に及んで一般人を装って実力を隠すなどという事はしないが、自らの口から正体を明かすというのは憚られる。
それは彼女の請け負っている任務の特性上と言うのもあるが、それ以上に相手を慮ってのこともあった。
「とりあえず、私は謎の美女ってことで、納得してもらないかしら?」
「自分で美女言いますか」
ウインクを決める花子に与田が横からツッコむ。
どうにも緊張感の薄い2人のやり取りを厳しい瞳で眺めながら、海衣がため息をつく。
「……わかりました。あなたの正体は問いません。けど目的だけは聞かせて下さい。
田中さんは……いえお二人はこの村で、これからどうするつもりなんですか?」
「そうね。いい機会だし、現状の整理もかねてお互いの最終目標をすり合わせておきましょうか」
なんとなく同じような目的で動いているという認識はあるが、言語化して明確にしておくのは大切である。
必ずしも一枚岩である必要はないが、最低限互いの目的が衝突しないかは確認しておくべきだ。
そうでなければ最終的に物別れという事にもなりかねない。
「まず、私のこの事件に関しての目的は『事態の終息』ってところかしら」
「それはバイオハザードを解決させるってことですか?」
「もちろんそれも含まれるけど、厳密に言えば少し違うわ。
仮に女王感染者が死亡してこのバイオハザードが終息したとして、それですべてが解決するわけではないのよ」
「どういう意味ですそれ?」
思わず、横から与田が問い返す。
海衣も同じような表情をしていた。
「そうね。それじゃあ、その説明を兼ねて少し現状を整理しましょう」
その疑問を受け、花子が教師のように話を進めて、3本の指を立てた。
「この山折村で起きている事件のポイントとなる出来事は3つあるわ。
1つ。大地震によって引き起こされたバイオハザード。
2つ。放送による何者かによる告発。
3つ。そして村に特殊部隊が送り込まれた。
これらは別々に片付けなくちゃいけない問題よ」
「研究所と特殊部隊は分かりますけど、告発に関しては分けて考えるようなものなのですか?」
海衣が疑問を挟んだ。
同時に知らされた出来事だからだろうか。
あの告発は研究所によるバイオハザードと一連の出来事という印象が強い。
「ええ。むしろあれがこの出来事の中では一番異質であると言えるわ」
バイオハザードの発生とそれに伴う証拠隠滅のための特殊部隊。
それらは流れとしては自然に繋がるだろう。
だが、あの告発者だけは一連の流れに存在する必要がない、イレギュラーだ。
「本来であれば、住民たちは何も知らされず混乱のまま48時間が経過して、村ごと特殊部隊に隠滅される。と言う流れだったはずよ」
それを変えたのがあの放送だ。あの放送はまるで、ゲームにおける基本
ルールの説明のようだ。
あれがなければ村民たちはルールの分からないゲームの中に取り残され、あっという間にゲームオーバーになっていただろう。
明らかに今の流れを作った、ターニングポイントだ。
「それで言えば事後処理を担うはずの特殊部隊が、事後でもない今、女王暗殺を狙って介入しているのは本来の想定とは違うはず」
口元を押さえ呟くように言う。
つまりは特殊部隊側の独断専行。
バイオハザードという土台に2つの独断専行が乗っかった混沌(カオス)が今の山折村の状態だ。
「バイオハザードを起こしたモノの意志。あの放送を流したモノの意志。特殊部隊を介入させたモノの意志
少なくとも3つの意志が存在している。だから1つ解決しただけではダメなのよ、それだけでは他の意志によって殺される」
「……バイオハザードが起きたのは自然現象なのでは?」
バイオハザードは地震による影響だ。
自然現象に意志があるとするならそれこそ神の意志である。
この疑問を花子は否定するでもなく僅かに肩をすくめるだけで答えた。
「そうね。どちらにしても。他の意志が事態をややこしくしてるという事だけ理解して貰えればいいわ」
「他の意志があると、どう違うんです?」
「本来であればバイオハザードを解消した時点で終わるはずだったんだけど、それで終わらなくなったという事よ」
例えば、特殊部隊の目的はバイオハザードの終息、及びパンデミックの防止だ。
女王暗殺はあくまでその手段にすぎず、他に解決方法が見つかっていないからそうしているだけにすぎない。
だからこそ、特殊部隊に先んじて女王暗殺以外の方法でバイオハザードを解決すれば特殊部隊は撤退させられる。
はずだったのだが、それは特殊部隊が事後処理に徹して、女王暗殺に介入しなかった場合の話である。
仮に放送に従って村民同士の自己解決がなさていれた場合、放送内容にあった特殊部隊の介入は放送者の妄言だったと責任を押し付けることもできただろうが、今となってはもう無理だ。
自分たちを含む正常感染者に既に特殊部隊の姿が目撃されている。
ここまで好き勝手やっておいて口止めもないだろう。
故に、このバイオハザードが解決したとしても殲滅は終わらない。
正気を失ったゾンビたちはともかく、正常感染者は生き残ったところで口封じに皆殺しにされる。
マッチポンプもいいところだ。特殊部隊の介入はむしろ住民の首を絞めたことになる。
少数の正常感染者を切り捨て、多くの異常感染者が救える可能性を残し、感染拡大のリスクを最小に抑える。
大局としてみた場合、その判断にも理はあるだろう。
だが、当事者としてはたまったものではない。
どうダイスを振ろうとも正常感染者には生き残る目がない。
周囲を取り囲む特殊部隊を全滅させるなんてのは現実的ではないし、できたところで次の部隊が送り込まれるだけだ。
そんなことになったらそれこそ国家転覆を狙うテロリストに身を窶すしかなくなってしまう。
とは言え、花子一人生き残るだけならばどうとでもなるのだが。
その先で必要なのはどちらかと言えば武力より政治的な駆け引きだ。
通信さえ繋がれば、その辺は彼女の”上”が彼らと交渉してくれるだろう。
だが、それも花子一人だけの話だ。
機密保持の観点から一般人まで保護するのは難しいだろう。
そんな夢も希望もないことはわざわざ口にはしないが。
「じゃあ次は与田センセ、あなたは最終的にどこを目指してるの?」
「どこと言われましても。この件に関しては僕も完全に巻き込まれた側なので、生きてこの村を出られればそれでいいですよ」
「あら、マッドサイエンティストとしてこの事態を利用して実験を進めてやるぜ! うはははー! という感じではないのね」
「ないですよ。副所長じゃあるまいし」
与田の目的は生存。
面白みのない答えだが、彼に限らず大抵の住民の目的はそうだろう。
巻き込まれた側としては当然の結論と言える。
「それじゃあ、海衣ちゃんはどう? 何を目指しているの? 生き残るのは当然として他にも何かある?」
「私は…………」
問われ海衣はぐっとこぶしを握り締めた。
目指すべきもの、自身のしたい事など決まっている。
その決意を改めて言葉にする。
「――――私は真実が知りたい。どうしてこの村がこんなことになってしまったのか」
いつか出ていこうと思っていた。
この村からも、両親からも逃げ出そうと、そうずっと決意してきた。
都会から落ち延びた両親はこの村を悪く言ってばかりだったけれど、それでも、海衣にとっては生まれ育った自分の村だ。
その村がどうしてこんなことに巻き込まれねばならなかったのか、誰かに託されてからではなく自分の意志でその理由を知りたいと思っている。
「だ、そうよ。センセ」
「そこで僕に振りますか」
元凶たる研究所の職員は苦笑いを浮かべた。
一応そのくらいの良心あったらしい。
「ともかく。二人とも私の目的とも一致しているようで何よりだったわ。
全ての事態を解決していけば自ずと真実は明らかになるし、そして何より――――そうしないと生き残れない」
そんな過酷な現実を明らかにする。
これは真実と生存を求める二人の目的と一致する。
「では、この三つを解決していく。私たちのパーティーはこの方針で行きましょう」
そう締めくくる。
自らの目的に組み込むために上手く言いくるめられた気もするが。
現状、彼女に付き従うのが一番明確なのも事実である。
「あっ。そうそう。海衣ちゃん」
チョイチョイと花子が手招きする。
なんだろうと海衣が近づくと、内緒話をするように耳元で何かを呟いた。
「………………え?」
「よろしくねん」
何か意外なことでも聞かされたように海衣は驚いたような表情を見せたが。
対照的に花子はいつも通りの軽い調子で何かを任せるように肩を叩いた。
「ところで与田センセ。靴紐ほどけていてよ」
「え。ホントですか?」
言われて、靴紐を確認するべく与田がその場に屈みこむ。
「って、ローファーなんで靴紐なんて、な……い!?」
立ち上がろうとした所をいきなり花子にドンと押し出された。
バランスを崩して後方にたたらを踏む。
何をするのかと抗議しようとした瞬間、彼の頭上を何かがすり抜け、背後の居酒屋の看板が弾け飛んだ。
「………………へっ」
「走って!」
「はい!」
唖然とする与田の手を取り、海衣が物陰へと駆けて行った。
花子は彼女らに追従せず、一人大通りへ向かって走り出した。
■
「……二手に分かれちまったか」
狙撃手――――成田三樹康は商店街の中でもひと際高い3階建ての大型ホームセンターの屋上にいた。
市街地において迷彩色は逆に目立つため、その身は寝具エリアから適当に見繕った白いシーツに包まれていた。
落下防止の安全柵となる網目状のフェンスの隙間に銃口を潜らせ、俯せの体制でスコープから標的の様子を覗く。
商店街内の狙撃場所を見繕っていた成田が辿り着いたのがここである。
過去の任務で何度か市街地での狙撃も経験しているが、このような場合、本来であればマンションなどの一室を徴収しそこから狙撃を行うモノである。
だが、今回はターゲットの位置を特定できない遭遇戦である。360度見渡せる視界の開けた場所が必要であった。
遠くまで見渡せる高さと開けた視界を持ち大地震の中でも安定した足場を保っている。
少なくともこの商店街における最高の狙撃ポイントがここであったことは疑いようはない。
狙撃失敗は故にこそだろう。
狙撃ポイントを事前に押さえておくのは作戦行動中の基本だ。
古い建物も多く地震の被害も大きいこの商店街に置いて狙撃に適したポイントは限られる。
だからこそ、最も優れた狙撃ポイントに現れた狙撃手の存在を狙撃前から把握していたのだろう。
想定した通りの超視力をハヤブサⅢが持っているとすれば、その程度は容易かろう。
驚異的なのは単純な視力ではなく、常にそこに意識を割き続けた集中力と警戒力だ。
そうして、あえて隙だらけな研究者の男を前に出して、まんまと成田に引き金を引かせた。
ともかく、初撃は外れた。
外した以上、挨拶程度に終わらせてこのまま撤退するのが無難な選択だ。
狙撃は一発勝負。
狙撃手は一発撃ったなら、成否にかかわらずその場を離れるのが定石である。
だが、成田は素早くボルトアクションを行うと宙に空薬莢を排出する。
そして、ボルトを前方に移動させ、ボルトハンドルを下げると、次弾をチャンバーに装填した。
その場に止まり狙撃を続ける。
そう決断を下したのだ。
狙撃手が場所を移動する理由の一つとして、一度失敗した狙撃を続けて成功させるのが難しいと言う理由が挙げられる。
警戒して身を隠した標的を遠距離からあぶりだすのは難しいからだ。
その為に狙撃ポイントを変え別角度から攻める必要がある。
だが、今回はそれに当てはまらない。
氷使いと白衣の方は既に物陰に身を隠したが、ハヤブサⅢの姿はいまだスコープ内に捉えているからだ。
物陰に隠れるでもなく大通りを駆け抜けていた。
その逃げ方はかなり杜撰だ。
(わざとだな)
それが陽動であるのは明らかだ。
だが、問題は何を目的とした陽動なのかだ。
順当に考えるのなら、狙撃手を仕留めるべく囮が引き付けている間に別動隊が動いているパターンだろう。
狙撃手は距離を詰められ寄られると弱い。
別方向に逃げた二人が狙撃手を潰すべく向かってきている可能性はある。
だが、仮に攻め込んできたとしても、屋上への唯一の入り口にはブービートラップが敷かれている。
扉を開いたところに物が落ちてくる程度の代物だが、音で侵入に気付きさえすれば対応は可能だ。
むしろハヤブサⅢと引き剥がした状態で氷使いと遊べるのは成田からすれば願ったり叶ったりな展開である。
なにより、危険な役割を素人に任せられないお優しさなのか、それとも重要な場面を任せられるほど他者を信用してないのか。
黒木や乃木平から聞く限りではハヤブサⅢは最後の詰めは必ず自分で行うタイプであると言う印象を得ている。
素人に別動隊を任せるようには思えない。
むしろ、もっとも効果的な作戦は素人2人を囮にしてハヤブサⅢが狙撃手を仕留める事だ。
2人は死ぬだろうが、狙撃手も仕留められる。
そう言った手段を取らず、自ら姿を晒している時点でこちらを仕留めようと言う狙いではないのだろう。
そうなると、先に逃げた2人が逃げる隙を作るための囮役であると考えるのが妥当な線だ。
ならば相手が最も嫌うのは囮役を無視して逃げた2人を仕留める事だろう。
そう考え、標的を変えるべく望遠スコープを動かそうとした、瞬間。
スコープ越しに鷹の眼と目が合った。
1kmを超えるあり得ない距離を挟んで、互いの静かに燃える視線が交錯する。
互いが互いを認識しており、認識されている事を認識していた。
それは警告だ。
成田にとって最も危険なのはハヤブサⅢに寄られることである。
素人などいくら来ようと物の数ではないが、奴に近づかれるのは危険だ。
この距離をして、それが事実であるとビリビリと肌に伝わってくる。
あの視線はお前がスコープで誰を狙っているかは分かっているぞ、という相手からのメッセージだ。
視線を外した瞬間、先ほど危惧した通りの作戦へと変わり、身を潜めた奴は囮から刺客へと変わるだろう。
故に、この視線は外せない。
(恐ろしいねぇ…………ハヤブサⅢ)
あろうことか視線一つでこちらの行動を誘導してきた。
怖い相手だ。
あまりに怖くて、存在しているのが我慢ならないくらいだ。
黒木には悪いが、ここで排除した方が安心できる。
成田は改めて腹這いの体勢でレミントンM700を構える。
単純にあの視力を前にしては別の狙撃ポイントに移動したところで即刻補足されるのがオチだろう。
ここが最も優れた狙撃ポイントであるのは間違いないならば、ここで狙撃に集中した方がいい。
こういう展開になるのなら乃木平に残ってもらってスポッターを任せればよかった。
そんな詮無きことを心中で愚痴る。
スポッターは風向きや風速を図り、周囲の状況確認を行う見張り役だ。
ただですらガスマスクで視界が狭まって上に、狙撃中は視界が狭まる。
標的以外の様子を確認するのは難しい。
彼我の距離は約1km。
入り組んだ市街地を進むとなれば、全力疾走であろうとも5分はかかるだろう。
仮に別動隊が攻めていると想定しても、十分に撤退の猶予はある。
今回の標的は兵士ではなく村人だ。遠距離攻撃の手段を持つ可能性は薄い。
場所がばれたところでカウンタースナイプのリスクも低いだろう。
懸念すべきは成田のように村内で狙撃銃を手に入れた可能性と『異能』だが。
1km先を狙えるような実力者が都合よくいるとは思えない。
いるとするのならスコープの中に捉えているエージェントだが、それらしい動きはない。
とまあ長々と言い訳を並べたが。
本音を言うのなら、退屈なゾンビ狩りにはもう飽き飽きだ。
そろそろ生きのいい相手を撃ちたい。
弾丸は遠距離狙撃に適した.300ウィンチェスターマグナムが1ダース。
もちろんここで全弾撃ち切るつもりはない。
5発を上限として、撃ち終われば即撤退すると決める。
それまでは少し遊ばせてもらうとしよう。
全身の防護服で風向きは肌で感じられないので、フェンスに括り付けたハンカチの揺れを視界の端で確認する。
スコープ越しに標的を見据えて重力を計算して照準をやや上に合わせた。銃口が1度ズレれば1㎞先に届く弾丸は17mもズレてしまう。
標準をミリ以下の精密動作で調整しながら相手の動きを予測し、弾丸の到達地点と合わせるようにタイミングを合わせ、引き金を引く。
発砲音を置き去りにして、弾丸が音速の3倍で放たれ1mmも狂いなく標的の頭部に飛来していった。
だが、標的は苦も無くそれを躱した。
狙撃に合わせるように移動速度を変化させ予測到達ポイントをズラし、弾丸を素通りさせる。
打ち下ろされた弾丸は商店街の地面に当たり石畳を爆ぜさせた。
.300ウィンチェスターマグナムを使用したレミントンM700の弾速は約2,800~2,900フィート/秒(約853~884メートル/秒)である。
約1㎞離れた相手に着弾するまで僅かに1秒余りの猶予しかない。
だがそれは逆に言えば、1秒以上の猶予があると言う事だ。
人間の反射神経の限界は0.1秒。
狙撃の瞬間を認識できるのならば理論上は避けられる。
だが、それを成立させるには、1km先の相手の指先の動きまで見えている必要がある。
そんな視力は現実的にはありえない。どだい不可能な話だ。
それを成し遂げるからこその『異能』か。
(目が良いとは予測していたが、ここまでのレベルとはね)
見てからライフルの弾丸を避ける輩など、百戦錬磨のスナイパーと言えでも初めて出会う。
単純な狙撃は通用しない。
敵のミスを期待するのも望み薄だろう。
(どこに向かっている?)
標的は朝日を背にした成田の直線上、西側に進んでいる。
狙撃手に向かって距離を詰めるのではなく離れるように逃げている。
何か目的地があるのか、それとも単純に射程外まで逃げる算段なのか。
囮にしてもその動きは不可解だ。
だが、どのような狙いがあるにしても、行かせなければいいだけの話だ。
その足を止めるべく成田が次弾の引き金を引いた。
放たれた弾丸が一直線に狙うのは花子ではなかった。
彼女が駆け抜けるその脇にあった、2階建ての町銀である。
地震の影響でひび割れていた強化ガラスに音速を超える衝撃が奔りぬける。
直撃すれば致命傷になりかねない巨大な破片に、目に入れば失明にも繋がりかねない細かな破片。
あらゆる危険を含んだ鋭利なガラス片が、シャワーのように花子に向かって降り注いだ。
だが、エージェントは止まらず、降り注ぐガラスの隙間を見極め、雨粒を避けるようにすり抜けて行った。
避けきれない小さな破片はスーツの上着で振り払う。
そうして驚くべきことに、輝く透明な死の雨を無傷のまま突破した。
「ヒューッ」
その様子をスコープ越しに確認して、思わずマスクの下で感嘆の息を吐く。
全てを見極められる視力を持っているとしても、あれを無傷で切り抜けるとは人間技ではない。
仮に同じ視力があったとしても同じ芸当が出来るのは特殊部隊でも片手の数ほどもいまい。最も別の方法で切り抜ける輩はいるだろうが。
次弾を装填しながら次の狙いを考える。
だが、ここにきて敵の動きが変わった。一路西へ向かっていた軌道を変え北側の脇道に入った。
だいぶ西に進んでいるが、北側は氷使いと白衣が逃げて行った方向である。
既に2人が逃亡できるだけの時間を十分に稼いだと言う事だろうか。まさか合流するつもりだろうか?
だが、それは悪手だ。
俯瞰から見る光景と地上から見る光景は違う。
どれだけ視力がよくとも見えない位置のものは見えない。
例えば真上。
高所より見下ろす成田には見えていても、地面を駆けずり回る花子には見えない。
自身の駆け抜ける真上の建物がどうなっているかなど鷹の目であろうとも見えはしないだろう。
引き金が引かれライフル弾が花子の通り抜ける脇道の建物を撃ち抜いた。
通常であれば如何にライフル弾とは言え、鉄筋コンクリートを破壊することなどできない。
だが、地震によってひび割れ脆くなっている個所を狙い打てばこの通り。
花子が駆け抜ける脇道を潰すように、巨大なコンクリート塊が墜ちてきた。
倒壊が倒壊を生み、建造物が崩れ落ちる。
点では仕留められないならば、面で潰すだけである。
脇道は完全に倒壊した。
駆け抜ける花子は通路の出口にヘッドスライディングのように飛び込んだ。
体制を崩しながらもギリギリのところでなんとか圧殺を免れて、生還を果たした。
だが、それは一時しのぎにしかならない。
体勢を立て直すまで1秒はかかるだろう。
ボルトアクション式の狙撃銃は新兵であれば次射まで5秒はかかる。
だが、成田は1秒で完了する。
その1秒の隙で、詰みだ。
次弾の装填を完了。照準を飛び出した標的へと合わせるように滑らせる。
見えていようが避けようがない、音速を優に超える絶対必中の魔弾が放たれようとしていた。
だが、音速を超えるライフル弾丸よりも早く到達する物があった。
――――――光だ。
音速を超え光速。
スコープ越しに差し込んだ強烈な光が成田の目を焼いた。
奇しくも、成田がハヤブサⅢ相手に想定した対応策をまんまとしてやられた。
標的が怪しい動きをしたのならいくら何でも喰らわない。
だが、光は最初からそこに在った。
その光を放ったのは朝日を反射する巨大な鏡だった。
そんな都合のいい物が花子の駆け抜けた先に設置されていたのである。
だが、商店街のど真ん中に巨大な鏡などおかれているはずもない。
買い物客の憩いの場となる噴水広場に張られていたのは氷であった。
それは、朝日の入射角から反射角まで綿密に計算されて造られた氷の鏡だ。
氷。氷使い。
だが、強烈な光を浴びさせたところで怯むのはせいぜい数秒程度の話である。
ハヤブサⅢはいまだ遠く、別動隊も氷の鏡を作っていたのならこちらに寄っている暇はない。
1km以上離れている距離を詰めるのは不可能だ。
成田と違い、敵にこの隙を付ける様な遠距離攻撃の手段はないはずだ。
逃げるだけの時間は稼げるだろうが、逃げるだけならばこんな回りくどい方法は必要ないはずだ。
ならば何のために。
その疑問に答える様な異音が成田の耳に届く。
成田が屋上の入り口に仕掛けたトラップの音ではない。
方向も違う。鳴るはずのない場所から、もっと異様な何かが聞こえる。
ここにたどり着ける存在など、いるはずがない。
いるはずがない、だが。
一人だけ、例外がいた。
■
商店街の建造物を屋根から屋根へ飛び移る一つの影があった。
影はトラップを仕掛けた正規の入り口ではなく、ホームセンターの窓枠や地震で崩れた壁の凹凸を駆け上がるようにして屋上に到達した。
屋根を飛びぬけ壁を駆け上がる恐るべき身体能力の持ち主。
まさに野生児としか呼びようのない、野生の申し子、
クマカイである。
クマカイにとって鳴り響いた銃声こそが、標的の位置を知らせる合図だった。
銃声がマダラ模様の狩人が放つ撃音であることはクマカイも理解していた。
つまり狩人は何者かを狙っている。獲物を狙う瞬間こそが狩人の一番の隙だ。
それを理解していた野生児はその隙を見逃さなかった。
狩人を狩る狩人。
これこそがクマカイの本質である。
あの時は勝てなかった。
だが、今ならば勝てると、治療もそこそこに駆け出し、ホームセンターの屋上へと辿りついた。
そして壁面を駆け登った勢いのまま、素足で屋上を駆け抜け槍のように蹴りを放つ。
足音を頼りに霞む瞳で振り返った成田は咄嗟にレミントンを盾にして受け止めるが、勢いまでは殺しきれない。
ガシャンという音と共に、成田の体はフェンスを破って空中に放り出された。
時が止まったような一瞬の浮遊感。
体が風にさらわれ、目の前に広がる景色が一瞬にして変わる。
徐々に回復してゆく視界に映る風景が高速で流れて行く。天が遠のき地面が近く。
落下してゆく中で自身の失態を悟りながら、成田は堪える様に体を丸めた。
瞬間、破裂音と金属のひび割れる音が混ざり合ったような轟音が鳴り響いた。
成田が落下したのは駐車場に止められていた車の上であった。
そこに背から落ちた成田がゆっくりと立ち上がり、パキリと足音を鳴らす。
車から降りて周囲に砕けて周囲に飛び散ったガラス片を踏みしめ、防護服についたガラス片を払う。
頭部や手から落ちぬよう最低限の受け身は取った。
車に打ち付けた背に痛みはあるが、特殊防護服の強度と自動車がクッションになったおかげで致命的な傷はない。
成田も五点着地くらいはできるが、あのまま落ちていればさすがに無傷とはいかなかっただろう。
ハヤブサⅢの異能と遠視スコープ越しの成田の視力は互角だった。
だが、視界が違った。
成田には成田に見えていたものがあり。
ハヤブサⅢにはハヤブサⅢにしか見えていないものがあった。
相手には建造物の屋根を渡り歩く伏兵の動きが見えていたのだろう。
見ていない所は見えない。射撃と言う極端に視界が狭まる状況ではそれを捉えるのは不可能だ。
そして、刺客が辿り着く瞬間に合わせて仲間が氷を用意したポイントに到達した。
氷使いとこれを生かすハヤブサⅢ。
確かに厄介な組み合わせだ。
乃木平が後れを取るのも頷ける。
成田としても狙撃手が超長距離戦でしてやられる屈辱を味あわされた。
すぐにでもこの屈辱を返しに行きたいところだが、同時に確かに黒木が適任だと納得する。
アレを仕留めるには大田原のような突き抜けた例外を除けば、同レベルの思考を持ち尚且つ強みで勝てる黒木が望ましい。
流石は我らが奥津隊長殿の采配である。
それに屈辱を返すよりも、まずは目下に迫る脅威を排さねばならない。
落下する寸前、霞む瞳でかろうじてとらえた影は男のモノだった。
だが、あの異常な身体能力と独特の殺気は人皮を被る野生児のモノだ。
まったく足癖の悪い、5歳の娘の方がまだ躾がなっている。
「躾の時間だ、野生児」
屋上から降りてくる相手を駐車場で迎え撃つか、それともホームセンターに入って室内戦を行うか。
狙撃銃からハンドガンに持ち替え、特殊部隊の狙撃手は野生児を待ち受けた。
【E-5/ホームセンター「ワシントン」屋上/1日目・朝】
【クマカイ】
[状態]:右耳、右脇腹に軽度の銃創、肋骨骨折、内臓にダメージ(小)、嶽草優夜に擬態
[道具]:スタングレネード
[方針]
基本.人間を喰う
1.マダラの人間を喰らう
3.特殊部隊及び理性のある人間の捕食
4.理性のある人間は、まず観察から始める
※ゾンビが大きな音に集まることを知りました。
※ジッポライターと爆竹の使い方を理解しました。
※スタングレネードの使い方を理解しました
【E-5/ホームセンター「ワシントン」駐車場/1日目/朝】
【
成田 三樹康】
[状態]:背中にダメージ
[道具]:防護服、拳銃(H&K SFP9)、サバイバルナイフ、双眼鏡、研究所IDパス(L2)、謎のカードキー、浅野雅のスマホ、レミントンM700、.300ウィンチェスターマグナム(8発)
[方針]
基本.女王感染者の抹殺。その過程で“狩り”を楽しむ。
1.嶽草優夜に擬態したクマカイに対応。
2.「氷使いの感染者(氷月海衣)」に興味。
3.「酸を使う感染者(哀野雪菜)」も探して置きたい。
4.ハヤブサⅢを排除したい。
[備考]
※乃木平天と情報の交換を行いました。
※ハヤブサⅢの異能を視覚強化とほぼ断定しています。
■
「5時の方向。狙撃手。今から相手に撃たせるから、位置を確認したらセンセと噴水広場に向かって。
朝日が狙撃手の方に反射するよう氷を作ってもらえる? 朝日と氷の反射角はセンセに計算して貰えばいいわ」
花子が海衣に耳打ちしたのはそんな内容だった。
その後、彼女の予言通りに狙撃は行われ、事態についていけていない与田を引き連れ、海衣は道中で事情を説明しながら中央の噴水広場に到着。
与田の指示の元、氷の鏡を作り上げると、後は物陰に隠れて花子の到達を待った。
「ふぅ……助かったわ。完璧な仕事だったわ、お二人さん」
物陰に身を隠していた二人の元に、息を切らしながら現れた花子が労いの言葉をかけた。
「まったく……長距離射程でスナイパーの相手なんてやってらんないわよ。
とりあえず。第三戦力を当てたけどここからどうなるかは分からないわ。今のうちに逃げましょう」
愚痴るようにそう言って、僅かに焦ったような様子で商店街からの脱出を促す。
この商店街はもはやスナイパーの射程内。安全圏などない危険地帯だ。
スナイパーが落ちた所までは確認した。
だが、あれで死んだとも思えない。
可能性もあるが、ぶち当てた謎のパルクールマンが倒す可能性もあるが、即刻離脱すべきだろう。
正直、最後の一瞬は花子をしても危なかった。
少しでも遅れていたら建物の崩壊に巻き込まれてぺしゃんこだっただろう。
一人なら一人で別策を講じるだけではあるのだが、それでもやはり花子一人で特殊部隊に抗するのは厳しい所である。
表情には出していないが弾丸を避けられたのも割とギリギリであった。
流石の彼女の異能をしても1㎞以上離れた相手の指先の動きまでは流石に見えてはいない。
彼女が捉えていたのはスナイパーの存在と銃口の大まかな方向くらいのものだ。
それでも十分に異常な視力ではあるのだが、撃たれてから弾丸を躱すには足りない。
弾丸を躱せたのは予測したころを寸分違わず撃ち抜いてくれたスナイパーの腕前と、もう一つ彼女の眼に見えていた物が大きい
微かだが、彼女の眼には放たれる前の弾丸の軌道が見えていた。
限定的な未来予知。
全てを見通す神の瞳が、未来すら捉え始めた。
異能が進化している。
いや、これはウイルスへの適応が進んだのか。
考えるべきは、果たしてこれは花子だけに起きた現象なのかと言う点だ。
それとも、時間の経過により異能者全員に起きる現象なのか。
もしそうだとするのなら、48時間と言う時間制限の意味合いも変わってくる。
これは落ち着いたところで改めて与田に診てもらう必要があるかもしれない。
「ともかく、今はこのまま北に抜けましょう」
そう言って3人は商店街の脱出を目指した。
【E-4/商店街中央・噴水広場/1日目・朝】
【
田中 花子】
[状態]:疲労(中)
[道具]:ベレッタM1919(7/9)、弾倉×2、通信機(不通)、化粧箱(工作セット)、スマートフォン、謎のカードキー
[方針]
基本.48時間以内に解決策を探す(最悪の場合強硬策も辞さない)
1.商店街を脱出し人の集まる場所で情報収集
2.診療所に巣食うナニカを倒す方法を考えるor秘密の入り口を調査、若しくは入り口の場所を知る人間を見つける。
3.研究所の調査、わらしべ長者でIDパスを入手していく
4.謎のカードキーの使用用途を調べる
【
与田 四郎】
[状態]:健康
[道具]:研究所IDパス(L1)
[方針]
基本.生き延びたい
1.花子に付き合う
2.花子から逃げたい
【
氷月 海衣】
[状態]:罪悪感、精神疲労(小)、決意
[道具]:スマートフォン×4、防犯ブザー、スクールバッグ、診療所のマスターキー、院内の地図、一色洋子へのお土産(九条和雄の手紙付き)
[方針]
基本.VHから生還し、真実に辿り着く
1.何故VHが起こったのか、真相を知りたい。
2.田中さんに協力する。
3.女王感染者への対応は保留。
4.朝顔さんと嶽草君が心配。
5.洋子ちゃんにお兄さんのお土産を届けたい。
最終更新:2023年06月15日 21:20