「う、うわああああああああっ!?」

研究所の警備員が、悲鳴を上げた。
彼の瞳に映り込んだのは、部屋の中で見つけたある死体の姿だ。

それは腐っていた、まるで最初からそうだったように。
右足は最初から存在しなかったかの如く喪失していた。
腐り落ち、溶けた肉の亡骸が地面へと落ち融解していた。
役目を終えたように、黒瑪瑙のネックレスが不自然に砕けていた。























それが、烏宿暁彦。――烏宿亜紀彦という男(にんぎょう)の、本当の最期だった。




「魔王、ヤマオリ……?」

誰もが、その名前の意味に理解が追いつかなかった。
山折の巫女も、外から来た名探偵も、かつて一度彼と遭遇したエージェントですら。
いや、エージェントのみが、その意味を辛うじて理解していたのだろう。

「異界を繋ぐ扉から来た魔王。烏宿亜紀彦の身体を依り代に、この世界に降り立った。……かつてのお前はそうだと、言いたいのか」
「ご明察だエージェントくん。覚えていたようで……いや、思い出してくれたようで何よりだよ」

ヒントを与えたかいはあったと、魔王が微笑む。
天原創を出来の悪い子供と例え、諭すような優しく不気味な声で。
まるで教え子の成長を喜ぶ教師の如き顔だった。

「……I don't understand. でも、目の前の光景が何もかもTruthなのは、受け入れないといけないわね」
「………あのレポートに書いてあった事は、そういうことかよ……」

到底信じられない現実ではあったものの、それこそがただの真実であることを、アニカも、哉太も受け入れざる得なかったのだ。
茶子と第二実験棟を訪れた際に発見したヤマオリ・レポート。その最後に記された、死者の復活の成功を示す一文。

『一九四五 〇八 〇六 ■ ガ 降臨 サレタリ 。 ■■ 亜紀彦 軍曹 ノ 蘇生 ニ 成功 セリ』

実験棟の関係者は神が降臨したと思っていたが、その実態は異世界から魔王を、人知の及ばない超越存在を呼び込んでしまったというのだ。あの空洞がこいつ一人によって引き起こされたというのなら、自ら魔王と名乗るだけの格と実力はあるのだろう。

「truth is stranger than fiction.」
「事実は小説よりも奇なり、か。そりゃこの世界の人間ならそうだが、あの世界ならゴーストの人間乗っ取りなんて半ば日常だったぞ?」

パンデミック。感染者に宿る異能。異界を繋ぐ扉、過去に起こった不死の実験。もはやオカルトの類にまで突っ込んだこの騒動だか、挙げ句魔王の降臨と。並の人間なら頭が痛くなるだろう。
魔王も、アニカの言い放ったことわざに理解を示すかのように、かつて居た異界での注釈も交えて告げる。

「魔王。さっきの言い分だとMr.ヤマオリがあなたを呼んだって事になるけど。じゃああなたがdemon possessionしていたカラトマリという男はいまどうしてるの?」
「ああ、烏宿亜紀彦の事か」

ならば、今まで宿っていた烏宿という男はどうなっているのか。尤も、亜紀彦軍曹の蘇生とレポートに書いていた。それが魔王という中身によって動かされていただけの話。

「元々オレが死体だったアレを動かしてただけだ、右足も自前でなんとかするしか無かったしな。だから五体満足なこいつの身体は前よりは便利だ」

だからもう答えは決まっている。中身が死骸を保っていただけで、本質的に亜紀彦という男はただの死体だ。管理するものがいなくなれば、それは当然。

「まあ、オレがいなくなった以上はただの死体に戻ってるだろう」
「………」

烏宿暁彦。いや、烏宿亜紀彦という男は死んでいる。魔王が山折圭介の身体に居場所を変えた時点で、既に。死んだ人間を動かして、いままで生きてきたのだ。中身がなくなれば、役目を終えた死体は元の在り方へと還るだけの事。
到底信じられない事だが、今更これが嘘を付くとは思えない。魔王からすれば、自分という存在に辿り着いた者たちへのささやかな褒美、と言う認識に過ぎないが。




「……魔王。お前さっき一年前にもこの村に来た、と言ったな」
「ん? ……ああ、それがどうしたんだい、哉太くん?」
「……あの時珠ちゃんを追いかけていた連中は、お前の仲間か?」

魔王の発した一年前という言葉。哉太にとっては圭介との友情が断裂した忌まわしき日。
疑わしき人物から追われていた日野珠が血を流しながら逃げていた姿を見つけてしまったあの日。
もし仮にこの魔王が関わっているとするならば。

「……ああ、そういう事か。その珠とやらを追いかけて連中、という振り分けならちょっと違うが。あの時のオレは立場ってのがあったからな。テロリストだけ見られていたならまだしも、手駒(ジャガーマン)を見られたのはまずかった。だから記憶を消させてもらった」

あっさりと魔王はネタバレをした。あの時、当直の研究員と揉め事になり、相手がそれをバラそうとしたため証拠隠滅を図った時だ。他の研究員にいらない面倒事を起こされても困るということで、自分の手駒で始末し、研究所はあくまで被害者であるという偽装工作を施した。
だが、運悪くその光景を日野珠が見てしまったという。魔王個人が懇意にしていたテロ組織のメンバーが村にいたのもあるが、研究所としては村の人間から死者が出れば芋づる式に実験のことがバレるかも知れない。
言ってしまえば慎重が過ぎるのだが、研究所のジジィ共の言葉を渋々飲み込んだ魔王が、日野珠に対しての処置は記憶の消去のみにしておいた。

「……あとは研究所の連中に適当な言い訳とアリバイ作らせて誤魔化せた、はずなんだがな。お前が横槍突っ込んだせいでややこしいことなったらしい」
「……そういう、ことか。お前が、珠ちゃんを」

その後は医療研究者が「山の中で倒れていた日野珠を保護しようとした」というアリバイ作り。それを疑った八柳哉太に冤罪が押し付けられたのは関係者の失態だったのだろう。
「面倒事増やしやがったなあいつら」と呆れる表情な魔王に対し、哉太の魔王への怒りは着実に増していく。
それを察したのか、小声で「Stay cool」と哉太の手を静かに握ったアニカのお陰で、何とかこの場は抑えていたが。
尤も相棒の冤罪の元凶だった男に、アニカも怒りを抱いていたが、それを抑えて魔王に問いを投げる。

「過去のカナタ絡みのincidentについてはよくわかったわ。じゃあ、Mr.ミナサキに世界の危機を伝えたintentionはなんなの?」
「それはただの遊びだな」
「――What?」

ただの遊び、と返されて。魔王以外の全ての人間の思考が凍りついた。
未名崎の言っていた事は全く違う。ただの遊び? 世界の危機という情報から、一研究員がこの村の感染爆発のきっかけを作ったその始まりが、遊びだと?

「――この世界に滅びが、オレに何の関係がある?」
「なにを、言って」
「とは言ったものの、あの時は暇をしていた。思い切って演技をしながら未名崎という研究員に伝えれみれば、面白い弾け方をしたものだ」

本当に、わけが分からなかった。世界の滅びを自分には何も関係ないように言い出すその口ぶり。
だが、少し冷静になってみれば当然のことだ。彼の言い分が正しければ、烏宿の前にも別の身体を使っていた。本当に世界の滅びなど関係ないのだろう、彼だけにとっては。

「まあオレとしてもこの世界が滅んでしまうのは面白くない、一応だが世界を救うつもりはあるぞ? 立場柄その現象がどんなものかは把握していたからな、最悪オレが万全な状態になればどうにでもなる、大したこともない世界の危機だったらしい」
「――――――」
「と言ってもだ。新しい身体に移っちまったせいで万全を期すのに5年ぐらいは掛かるな」

本気でそう言っているのだ。そう出来ることが当然だから言っているのだ。
この男は、この体になってから5年経過すれば、世界の危機などどうにか出来ると、そう本気で言っているのだ。



「………ひなたさんの事は、どう思ってるんですか」
「……あ?」

誰もが怒涛の衝撃の真実の放流に飲み込まれる中、そんな重い空気の中でうさぎが口を開いた。
どうして圭介の身体なのかは分からなかったが。彼が烏宿暁彦であるという事を認識した上で。
こんなのが彼女の父親であるという残酷な真実に、目を向けながら。

「あなたの娘さんは、烏宿ひなたさんが死んじゃったんですよ。あなた達の起こしたウイルス騒ぎのせいで!」
「――だから、なんだ?」

だが、それでも伝えたかった叫びはたった一言で切り捨てられる。
魔王にとって、烏宿ひなたという少女(むすめ)は、表向きの立場を得るために必要な演技の一つでしか過ぎなかった。勿論娘として相応に、大切に扱ったが、所詮暇つぶしの域は出なかった。

「だからなんだって話だ。まあ、あいつがオレの真実を知らずに逝けたのは幸せだったと思うがな。だって、ただの暇つぶしだぞ?」
「――――――――っっっ!!!!!!!!!」

酷い、ただ酷かった。仮にも自分の娘を、暇つぶしだと切り捨てた魔王の言動が。
その直後、唸るような憎悪の声を上げたうさぎを、直後はすみが抱きついて抑えた。

「あなたは、あなたは!! ひなたちゃんを、実の娘をなんだと思って……!!!」
「calm down! うさぎ! ……私たちだって、あなたと同じ気持ちよ」
「おいおい、犬のしつけはちゃんとしとけよ。危ないじゃないか………?」

誰も見たことのない憎悪の表情を、犬山うさぎはしていた。
姉のはすみですら一瞬怖気づく、いままでの人生でしたことのないそんな、鬼の如き形相だった。
そのうさぎの、憎しみに染まった形相を、アニカたちもまた共感していたのもまた事実だった。
実の娘をただの暇つぶし扱いと、人間とも思えぬ思考とその感覚は、間違いなく怒りを覚えさせるものであったのだから。
特に哉太は、友達の身体がいくら当人が望んだからと、こんな外道の良いように扱われる事実に。
だが、そんな彼らの反応を尻目に、憎しみの顔を浮かべたうさぎに対し、魔王は怪訝な顔を浮かべて、意外そうに衝撃の一言を放つ。

「……なぜお前がここにいる? イヌヤマ」
「……え?」

犬山うさぎを見て、魔王が「イヌヤマ」という、名前のような単語を放った。
誰もが困惑していた。勿論魔王も含めてだ。特に犬山姉妹二人は、キョトンとした顔で魔王を見つめる始末。

「いや、ただの他人の空似か? だが、こいつから感じるこの力は間違いなくあの時の……?」

魔王もまた、過去の記憶を紐解きながら思考する。
勇者パーティに属しながら、自分の元へと鞍替えし、術式の暴走と共に消えた「イヌヤマ」、それと同じ気配と顔立ち。
だが、転移先がそうだとしても記憶の齟齬に説明がつかない。子孫だと予測するには力の質が似通いすぎている。この少女から感じる力は、あのイヌヤマが使っていた術式と同じ。
いくらウイルスの発明には自分も関わっていたが、ウイルスの影響だけでは魔力が必要な「召喚術」は出来ないはずだ。
……ああ、だからこの世界は退屈はしない。不意に、魔王の口元が喜びで歪んだ。

一方、犬山はすみは。魔王がうさぎの事を知っているという事実に困惑していた。
妹の事は子供の頃からよく見てきた。自分を慕ってくれるそんな大切で大事な妹だ。
だから妹の友達を、烏宿ひなたを暇つぶし扱いした魔王には怒りの感情を抱いていた。けれど妹が魔王の関係者だったという事実には面食らう。
だからと言って、妹が妹であることは変わりないしその絆は揺るがない。何故か親に見せられたアルバムに妹の赤ちゃんの頃の写真が一切ないことは気になっていたこともあったが、そんな事はどうだっていい。

「私は、何があってもうさぎのお姉ちゃんだよ」

そう、妹を安心させるように姉は告げる。何が合っても姉妹であることは揺るがないという誓いを込めて。



「………お喋りは一旦切り上げとしようか」

イヌヤマの存在の近くを切欠に、魔王の軽薄な表情は鳴りを潜めた。
彼女がいるだけでアニカたちへの魔王の警戒度は一段と上がる。
空気が、重苦しくなった。魔王以外の誰もが冷や汗を流す。

「さっきも言った通り、オレは圭介(おれ)の願いに応じてこうなった」

それは、今後の方針の宣言。
山折圭介という上質な依代(にえ)の願いに応じ、魔王は再び降り立った。

「オレは意外にも面倒見がよくてな、願いを受け取った以上は叶えてやろうと思っている」

魔王は意外にも願望機としての側面もある。
元より誰かの願いに引き寄せられる存在であり、その傍らで暇つぶしという愉悦を行う暴虐の王。
故に、受け取った願いを、最低限叶えてやるのが神としての役目。

「こいつの願いは、こいつの為だけの山折村(せかい)の復活。つまり―――世界征服だよ。すべての世界を山折という帝國(くに)にする」

故に。魔王は山折村を立て直す。いいや、世界を山折村にする。ヤマオリ帝國として全て支配する。
勿論、彼の願い通り日野光を含めた彼の友人たちを復活させる。今のままでは無理だが、3年も経てば死者の蘇生なんぞいとも容易い。
それが、山折圭介が願った憎悪(ねがい)の末。

「圭ちゃんが、そんな、ことを……!」

もう、無茶苦茶だ。魔王と対峙する皆が思ったことだ。
哉太は結局圭ちゃんを止められなかったことを後悔する。彼の奥底に根付いた憎悪は、魔王を呼ぶ程に歪んでいたのだと。
それに山折帝國なんて、もはや常軌を逸した無茶苦茶な思考だ。だが、これにはそれが出来る。魔王にはそれが出来る。
年数経過である程度力を取り戻したのならば、この魔王はそれを実行して、為してしまう。
それを本当に出来る存在でなければ、言うことの出来ない大言壮語。

「……っ、カナタ、無茶は……」
「……無茶する時だろ、こればっかりは」

アニカの不安通り、哉太は先の圭介の殴り合いで疲労困憊、限界寸前だ。
それでも、友達があんな外道に良いようにやられているという事実だけで、倒れたままの理由にはならない。

「……魔王、過去の因縁。ここで決着をつける」
「……っ」

天原創も、雪菜に支えられながらも立ち上がる。
この中で一番万全なのは天原創だ。異能の無力化が魔王に通用するかどうかは。いや、魔王の記憶封印を解除したのだから恐らく通用するだろう。
それ以上に、魔王を放っておく訳にはいかない、出来ればここで倒さなければ。ウイルス騒ぎなんて目じゃない惨劇が起こる。
犬山姉妹も、無言ながらも頷いて。アニカもまた腹を括って哉太を支えながら魔王を見据える。

「そうか、確かにお前たちなら、オレを止めれるかもしれないな。……少しだけ遊んでやる」

魔王はその光景を、歓迎する。喜びの声で告げて、構えた。
確かに勝算はある。今の自分は転移直後で、力の大部分を発揮するにはまだ時間が必要だ。
それは、魔王にも分かっていること、その上で。







「――精々死ぬなよ?」
「ガッ――――」

――刹那、魔王の姿が消えて。
直後、天原創の顔面が魔王に手により地面に叩きつけられ気を失う光景を、哀野雪菜は目撃した。
魔王の髪は、完全な金髪へと変貌していた。



「―――は?」

八柳哉太は、魔王の動きが全く見えなかった。
やっていることを推測するに自分がやっている縮地と仕組みは同じだろう。
だが、速度が段違いすぎた。雲耀、いや違う。
これはもはや瞬間移動の領域だ。早すぎて人間の動体視力が追いつかない。
魔王へと変生した山折圭介の身体は既に人間のそれではない。
魔王の力を最適化し、それに適した身体へと変化する。
適応の為に必要な時間こそ掛かるが、『常軌を逸した身体能力』程度なら憑依直後でもすぐにでも適応すされる。
それは、比較するなら身体強化能力を持つ気喪杉禿夫がいくら逆立ちしようと決して届かないほどに。

「一人目」
「……っ!」

さも当然と、気絶した天原には目もくれず、魔王の次の標的は哀野雪菜。
迫るのは軌道が丸わかりのテレフォンパンチ、だがあまりの速さに回避行動は不可能。
『線香花火』の身体強化で耐え、『傷痕』の強酸でカウンターする前提だった彼女の目論見を。

「あ゛がっ!?」

『線香花火』ですら抑えられない威力のテレフォンパンチによる衝撃が迸り、哀野雪菜の身体は遠くへと殴り飛ばされた。
臓器へのダメージは辛うじて防いだものの、骨の数本は折れたのか雪菜は潰れたカエルのような声を上げて地面に叩きつけられた。少なくともこの戦いにおいては動けない程に。

「二人目」
「――来て、トラミちゃん!」

声に反応し魔王が振り向けば、犬山うさぎが声を張り上げ干支の動物を召喚する。
時間は2時台。呼び出されるは戦闘においては最強たる虎ことトラミちゃん。
牙を振り上げ、その黄色い巨躯が魔王へと駆け出し迫る。

「……はぁ」

だが、そんな干支の戦闘最強の動物に対し、目撃した魔王の反応は落胆だ。
トラミがこちらまで接近するまで待った上で、その爪が振り下ろされる瞬間に。

「温い、この程度とは落ちぶれたな、イヌヤマ」

魔王が軽く横に手を振るえば、その手刀によって干支最強の虎が真っ二つに切断された。
イヌヤマの召喚術。魔王が知るそれは聖獣や幻獣の類すら呼び出すことの出来た、魔族の大軍勢すら圧倒するような存在をも召喚する大いなる天の祝福。
この女のその力はここまで落ちぶれたとは、落胆を通り越して失望だった。

「トラミ、ちゃん……!」
「このトラも、お前がもうちょっとまともなら少しは踏ん張れただろうに、そこまで弱くなったか」

召喚術によって呼び出される召喚獣の強さは術者の魔力の質と量、そして才能によって左右する。
この少女は才能こそあれど他が外れと来た。恐らくウイルスで擬似的に再現できただけであって呼び出された動物の強さは大したものではないのだろう、それでも並の実力者なら圧倒できるぐらいの底はあっただろうが。

「――もう良い、お前は死ね。万が一勇者を呼び戻される奇跡を起こされては流石に面倒だ」
「させるかぁ!」

うさぎに凶刃を向けようとして、はすみが動こうとしたその前に、その魔王の行動を阻んだのは八柳哉太。
アニカに運んでもらって刀を拾い直し、今出来る最大速度の縮地を以って肉薄。

だが、魔王にとってはそれはノロマな亀を眺めるような愚鈍さにしか過ぎない。
容易く最低限の動作で避けようとして――魔王が予測した軌道より少し白刃の動きがズレる。
いくら魔王とて回避が少し間に合わず、頬を少しだけ切らしての回避となった。
傷口から垂れた血をその手で拭い、魔王は感心した表情でニヤリと笑みを浮かべる。

「――ほう」
「Be careless, my enemy.」

タネを明かすならそれはアニカによる軽いトリックだ。
あの移動速度を見て真っ当なやり方では勝てないと哉太は悟った。恐らくこの魔王は寸前まで迫った剣戟を片手まで回避した上でその返しで相手を殺す事など造作も無いことだろう。
天宝寺アニカのテレキネシスは原則自分の筋力以上の物体は動かせないが、逆を言えばその筋力で持てる程度のものなら何でも動かせる。このように、意図的に少し軌道をずらす程度のような細かな事も。
それが、哉太による魔王への最初の一撃だった。



「今のは上手だったぞ。お陰で数十年ぶりの傷を受けた」
「………そりゃ、どうも」

魔王からの素直な称賛が送られるが、素直に受け取れられる状況ではない。
まず根本的に存在としての質が違いすぎる、これで憑依したての弱体化状態だというのだから笑い話にすらならない。
時間が空けば空くほど勝てる可能性が低くなる。それよりも、圭介からこいつを引っ剥がす手段がまだ思いつかない。
うさぎがはすみにやったような手段で無理矢理引き剥がせるかとは思っていたが、それを許してくれるほど甘くはない。

「だが、お前は無理をし過ぎたな」
「……ッ!!」

その魔王の発言を境に、哉太の視界がぐにゃりと歪り、地面へと崩れ落ちる。
特殊部隊員との戦い、異能の進化による急速再生、その上で疲労限界寸前まで行っての殴り合いの喧嘩。
むしろそのような状況で相棒の手も借りて魔王に一撃与えることが出来ただけでも奇跡の産物だ。
手足が震え、心配するアニカに支えられなければ身体を起こすことすら出来ないのだから。

「――だが、その健闘をたたえて、あと一分耐えきったらならお前たちを一度見逃してやる。その間は魔法(すこしほんき)でやらせてもらおうか。――まずは」

魔王の圧が変化する。適応が進み、魔法の使用が解禁された。それでも使用可能なのは最低限のものであるが。魔王にとっての最低限が、常人にとってすらまともであるはずがない。

「そこの出来損ないからだ」
「……ッ!?」

魔王の手のひらから生成される魔力の焔。それを無造作にうさぎへと投げつける
目的は落ちぶれたイヌヤマの殺害。黒曜石の弾丸がうさぎへと降り注ぐ。

「させない!」

それを庇うようにはすみが金槌でその炎球を弾く。
本来なら月影夜帳が保有していたものを彼の死後はすみが回収していたのだ。
魔王の魔力を込めたそれを弾けたのは一重に神聖付与の恩恵か。

「だが、これは防ぎようはないぞ?」

ならば、と。ダメ押しとばかりに今度は大きめな黒曜石の槍を生成。
それを流れるような動作でうさぎに向けて投擲。炎球を弾いたはすみでは弾くことが出来ない速度で。

「――!? うさぎ!」
「え」

迫る黒槍、呆気にとられ動けないうさぎ。
その身体を庇うように、はすみがうさぎを突き飛ばす。

「――ッ!」
「あれはオレの魔力で作ったものだ、生半可な異能で干渉できると思わないことだ」

アニカも嫌な予感を察知して、テレキネシスで辛うじて軌道を曲げようとするもびくともしない。
シンプルに重力過多、テレキネシスの適応制限を超えているものだ。そもそも魔王の魔力で込められたそれを人の手でどうにか出来るものではない。
故に、結末の決まった運命は避けられることはなく。
――犬山はすみの身体を、残酷にも黒槍が貫きその身体を致命的なほどに抉った。

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

うさぎの悲鳴が昼空に木霊する。
倒れる姉の身体。その脇柄は大きく抉られて決壊した河川を思わせる程の血を垂れ流していた。
無惨にして残酷な現実を、犬山うさぎは目の当たりにしてしまい、絶叫する。
それでも、虚ろな眼ながらもうさぎをまだ見ていたあたり、辛うじてまだ生きている、だけだった。

「これで三人目か」
「おま、えぇぇぇぇぇっ!!!」

眼前の悲劇を黙っていられず、哉太が叫ぶも、体が動いてくれない。
手も足も震えて、思うように動いてくれない。
あんなものを見せられて、動けない自分が一番憎たらしかった。

「残り30秒、お前で最後としよう」

そんな彼に非情な宣告を下すように。魔王の背後には、その魔力で形成されたであろう魔力の剣が何本も浮かんでいた。
「6本か、現状ではこれが限界だな」と魔王があっけからんと吐き捨てるが、そんなもので心臓と脳を串刺しにされては無事ではすまない。

「では、さようなら」

眼前に迫る死の象徴、来る剣の小雨。その狙いは心臓と脳。
ヒーローを夢見た少年の願いは今ここに潰える時だ。

「ダメぇぇぇぇっ!!!」

ただし、少女が串刺しにされなかったらの、話であるが。












こんな事になるんだったら、バカ正直に言っておけば良かったのかな




「―――――――――――――――――アニカ?」
「……かな、た。………がフッ!!」

可憐な少女の華奢な身体が、串刺しという名の鮮血に彩られる。
赤いヘドロの如く、血が滝となって口から流れ落ちた。
突き刺さった魔力の剣が霧散して、名探偵の、相棒たる少女が無惨にも穴だらけになった姿を、八柳哉太は目を逸らすことを許されないまま、その絶望を直視した。

「――――――」
「何、まぬけな、顔、して、るの、ばか」

身体から何かがごっそりと零れ落ちる感覚を、アニカは感じていた。
これが、死ぬ直前の感覚なのだろうか。
死ぬのは怖いものだと思っていたけれど、思いの外怖くないものだと、思ってしまう自分に呆れ果てている。

「……でも、しかたの、ないこと、なの、かな……」

そうだ、終わる。終わってしまうのだ。
ただ唖然とする相棒の顔を見て、頭を撫でてやろうかと思ったけれど。
動く力すら抜け落ちていく感覚に、もう長くはないのかと考えて。

「せめて、さいご、くらい」

崩れ落ちる身体で、せめてと言わんばかりに。
自分の血で染まってしまった哉太の、その顔に向けて。
唇と唇を、辛うじて、ほんの一瞬だけ重ねて。
そういえば、キスなんて、したことなかった、なんて下らないこと思い返しながら。
天宝寺アニカは、思う。
こういう事は、早く言っておくべきだったけれど。
正直言って、それを自覚したのは貫かれた直後だったから。
いや、あの殴り合いを見て叫んでしまった時に、そうだったのか。
だから、せめて。例えこの感情が分からなかったとしても、せめて。

「カナタ、わたし、かなたの、ことが―――――」
「邪魔だ」

アニカがそれを言い終わる前に、魔王の蹴りが死に体のアニカを吹き飛ばし、ちょうどはすみのすぐ隣の位置に転がり落とした。

「―――――――――――――――――――――――――ぁ」

その光景を最後に、八柳哉太の中で、何かが壊れた。
壊れて、気を失った。










『ざまぁみろ、哉太』

最後に、余りにも醜悪な形相で吐き捨てる友達の幻聴を聞き届けて。





「―――さて」

時間切れ、殺せたのは恐らく二人。
生存者は気絶三人、項垂れてる犬山(できそこない)一人。
まあ、準備運動としては中々楽しかったと肩を鳴らしながら。

「約束通り、お前たちは一度逃してやる。が、こいつの身柄は預かっておくとしよう」

気を失った哉太を肩に乗せ、何ら問題ないとばかりに黒髪に戻った魔王が歩き始める。
ここで全員仕留めても良かったが、自分が課した約束を無碍にするほど卑怯ではない。
それに、ゲームというのはクリア条件というものを何個か容易すべきものだ。
天原創。自分の施した記憶の封印を破るに至った異能を持つ者。あれには期待できる。
イヌヤマの方は出来損ないだ、勇者を呼び戻される可能性を危惧して仕留めるつもりだったが、あの腑抜け具合なら問題はないだろう。

「オレはこれから、オレを呼び寄せたもう一つの元凶。この山折村に潜む呪いの元凶を探し当てる」

世界征服の第一歩。この山折村を呪い、自分という存在を呼び寄せるに至った元凶の一人を探す。
探してどうなるかは彼にすらわからない。何故なら自分はちゃぶ台がえしが大好きだ。
そんな自分が、元凶と言う名の呪いと出会い、何が起こるかを楽しみにしているのだから。

「――オレを止めてみせるというのなら、この魔王・山折圭介を止めてみせるというのなら」

希望を与えなければ面白くない。可能性の芽は敢えて残しておくべきだ。
行方不明になったままの聖剣も、何故ここにいるかわからない召喚術師のイヌヤマも、自分が施し理想通りに目覚めたエージェントも、そしてこの村に根付く長きにわたる呪いも。
ここは、ちゃぶ台がえしの要因が豊富だ。だから、愉しもう。

「やってみせるがいい。オレは全ての運命が交差する場所で待っている」

そう言い残して、魔王は去っていく。
目指すは病院、その地下にある研究所支部。
数多の運命が交差する場所へと往く、魔王という災厄は大いなる呪いの姿を拝謁するために。


【F-5/一日目・午後】
山折 圭介
[状態]:『魔王』
[道具]:懐中電灯、予備弾5発、上月みかげのお守り
[方針]
基本.『お前の願いを叶えてやろう、山折圭介』
1.『山折村の厄災、自分をこの世界に呼び寄せたであろう元凶に会いに、研究所へ向かう』
2.『オレを止めて見せるなら、やってみせろ』
3.『さぁ、愉しいデウス・エクス・マキナの幕開けだ』
4.『八柳哉太、お前の身柄はオレが預かることとしよう』「ざまぁみろ、哉太」
[備考]
※山折圭介の願いにより『魔王』に憑依されました。現状の山折圭介の人格がどうなったかが後続の書き手におまかせします
※現状使える技能は以上な身体能力及び魔術(炎、黒曜石精製、魔法剣)ですが、時間経過によって使える魔術等が徐々に増えていきます
※基本的に黒髪ですが、力を使う間は金髪になります

八柳 哉太
[状態]:気絶、血塗れ(アニカの血)、異能理解済、疲労(超極大)、精神疲労(崩壊)、喪失感(極大)
[道具]:なし
[方針]
基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く
0.―――――――
[備考]
※虎尾茶子と情報交換し、クマカイや薩摩圭介の情報を得ました。
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能及びその対処法を把握しました。
※広場裏の管理事務所が資材管理棟、山折総合診療所の地下が第一実験棟に通じていることを把握しました。
※8年後にこの世界が終わる事を把握しました、が半信半疑です
※この事件の黒幕が烏宿副部長である事を把握しました





―――お姉ちゃん、死なないで、お姉ちゃん!!

こえが、きこえる。
たいせつないもうとのこえ。
でも、わたしはもうだめだ。もうしぬんだ。
ごめんね、うさぎ。
こんなよわいおねえちゃんでごめんね。

わたしがもっとたよりになったら、けいこちゃんもひなたちゃんも、つきかげさんもしなずにすんだのかな。

けれど、せめて、せめて。
ごめんねうさぎ、わたしはもうだめだから。
せめて、ひとりはたすけたいの。

てのとどくところに、あにかちゃんがいる。
ひどいきずだった。でもわたしのちからなら。
わたしのいのち、ぜんぶつかえばたすけられる。

うさぎ、ごめんね。こんなわがままなおねえちゃんでごめんね。
あにかちゃん、いままでありがとう。
もしかなたくんをたすけられるとしたら、あなたしかいないとおもうから。
つらいやくめをおしつけて、ほんとうにごめんね。
これでだいじょうぶだから、これでまたたちあがれるから。

もう、いかなきゃ。
おねがい、みんな。うさぎを、わたしのたいせつないもうとを。



まもってあげて。あのこを、ひとりにしないであげて。



【犬山はすみ 死亡】




目を覚ます。


身体を起こす。


「……はすみ?」

天宝寺アニカが目の当たりにしたのは、血塗れの手で自分を握ったままの、既に死に絶えた犬山はすみ。
その傍らで、泣き続ける犬山うさぎ。
気絶から目を覚まし、骨が折れた雪菜を支えながら歩く天原。
自分は死んだ、死んだはずだと。その実感はアニカにもあった。
けれど、何故か自分は生きていると来た。服の貫通痕から察するに間違いなくあれは致命傷だったはずだから。
どうして生きているのかなんて、推理せずとも、分かる話だった。

「………」

謝罪の言葉が、思いつかなかった。
それすら、自分のために命を燃やし尽くしたはすみを侮辱する行為だと察してしまったから。
犬山はすみの異能は自らの生命力を分け与えて他者の強化を齎すもの、それは用途次第で治癒の力ともなり得る。
命尽きようとした彼女は、死の運命に堕ちていた自分を治すために全ての生命力を行使して自分を治療したのだ。
微睡む闇の中で、はすみの声が聞こえた気がした。
辛い役目を押し付けてごめん、と。
探偵は事件が起こってから駆けつけるもので、その殆どが手遅れになってから。
だから、辛いことなんて、何度も経験するけれど、慣れないもの。
だけど。


――悲しむな……とは言いません……。ですが、それでも……歩みを……止めないで……


「――I understand.」

小さく呟いたその言葉は、小さな決意で。
もはや大円団は不可能だとしても。
それでも取り戻したいものがあるから。
怖いだとか、恐ろしいだとか、死にたくないだとか。
そんな本音(よわね)で、歩みを止める理由にはならない。
それに、結局いい損ねた思いを、伝えるためにも。

パン!と頬を叩く。
雪菜も天原も、悲しみに沈んでいたうさぎもアニカの顔を見る。
アニカとて、悲しんでいないわけではない。その目元は赤く腫れていて。
それでもという意志だけは、皆も感じ取れた。
敗者だらけの世界だ、歩みを止めようとするものは一人もいなかった。


「――Let's start the strategy meeting. これからの、私たちの未来の話を」


※E-5に打刀(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、脇差(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、ダネルMGL(2/6)、他八柳哉太の所持品が放置されています

【E-5/古民家群付近/一日目・午後】
天宝寺 アニカ
[状態]:異能理解済、衣服の破損(貫通痕数カ所)、疲労(大)、精神疲労(小)、悲しみ(大)、虎尾茶子への疑念(大)、強い決意、生命力増加(???)
[道具]:殺虫スプレー、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ、スケートボード、ビニールロープ、金田一勝子の遺髪、ジッポライター、研究所IDパス(L2)、コンパス、飲料水、登山用ロープ、医療道具、マグライト、ラリラリドリンク、サンドイッチ
[方針]
基本.このZombie panicを解決してみせるわ!
0.Let's start the strategy meeting. これからの、私たちの未来の話を
1.「Mr.ミナサキ」から得た情報をどう生かそうかしら?
2.negotiationの席をどう用意しましょう?
3.あの女(Ms.チャコ)の情報、癇に障るけどbeneficialなのは確かね。
4.やることが山積みだけど……やらなきゃ!
5.リンとMs.チャコには引き続き警戒よ。
6.私のスマホはどこ?
7.I'll definitely help. だから待ってて、カナタ。あの時の言葉を、ちゃんと伝えるために
8.……sorry and thank you. はすみ
[備考]
※虎尾茶子と情報交換し、クマカイや薩摩圭介の情報を得ました。
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能を理解したことにより、彼女の異能による影響を受けなくなりました。
※広場裏の管理事務所が資材管理棟、山折総合診療所が第一実験棟に通じていることを把握しました。
※8年後にこの世界が終わる事を把握しました、が半信半疑です
※この事件の黒幕が烏宿副部長である事を把握しました
※犬山はすみが全生命力をアニカに注いだため、彼女の身体に何かしらの変化が生じる可能性があります。

犬山 うさぎ
[状態]:感電による熱傷(軽度)、蛇・虎再召喚不可、深い悲しみ(極大)、精神疲労(大)
[道具]:ヘルメット、御守、ロシア製のマカノフ(残弾なし)
[方針]
基本.少しでも多くの人を助けたい
1.おねえ、ちゃん……
2.私は、誰なの?

天原 創
[状態]:異能理解済、記憶復活、顔面に傷(中)
[道具]:???(青葉遥から贈られた物)、ウエストポーチ(青葉遥から贈られた物)、デザートイーグル.41マグナム(0/8)
[方針]
基本.パンデミックと、山折村の厄災を止める
1.カラトマリ……いや、魔王ヤマオリ……
2.スヴィア先生を取り戻す。
3.スヴィア先生を探す。
4.珠さん達のことが心配。再会できたら圭介さんや光さんのことを話す。
5.「Ms.Darjeeling」に警戒。
6.――僕は、また。でも、今は。
※上月みかげは記憶操作の類の異能を持っているという考察を得ています
※過去の消された記憶を取り戻しました。
※山折圭介はゾンビ操作の異能を持っていると推測しています。

哀野 雪菜
[状態]:異能理解済、強い決意、肩と腹部に銃創(簡易処置済)、全身にガラス片による傷(簡易処置済)、スカート破損、二重能力者化、骨折(中・数本程・修復中)、異能『線香花火』使用による消耗(中)
[道具]:ガラス片、バール、スヴィア・リーデンベルグの銀髪
[方針]
基本.女王感染者を探す、そして止める。
1.絶対にスヴィア先生を取り戻す、絶対に死なせない。絶対に。
2.……魔王、ヤマオリ。恐ろしい、人。
3.これからの事、考えよう
[備考]
※叶和の魂との対話の結果、噛まれた際に流し込まれていた愛原叶和の血液と適合し、本来愛原叶和の異能となるはずだった『線香花火(せんこうはなび)』を取得しました。
























物語を、物語を創めよう。
デタラメを入れて、語りを遮りながら、ゆっくりと一つ一つ。
風変わりな出来事を打ち出して。

歪んだ物語(パンデミック)を覆す、機械仕掛けの卓袱台返し(バトルロワイアル)の幕開けと行こうかじゃないか。
――山折村の大いなる呪いよ。ゲームはまだ始まったばかりだぞ?


110. 投下順で読む 112.運命の決断を
時系列順で読む
天原 創 対魔王撃滅作戦「Phase1:Belladona」
哀野 雪菜
犬山 うさぎ
山折 圭介
八柳 哉太
天宝寺 アニカ
犬山 はすみ GAME OVER
月影 夜帳 GAME OVER

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最終更新:2024年01月09日 15:47