村の地下に眠る資材管理棟と言う名の捕虜収容所。
村の暗部とも言えるその場所で、山奥の小さな村を襲った事件をめぐる一つの真実が明らかになった。
世界を救わんとする善意の研究者を残し、その真実を抱え哉太とアニカの2人は地上に戻った。
自転車を漕ぎ、彼らが目指しているのは茶子との合流地点である診療所である。
学校裏から診療所に向かうには、大きく分けて2通りのルートが存在していた。
哉太たちがやってきた西回りのルートと役場方面に向かう南回りのルートある。
来た道をそのまま引き返した方が安全確保の面では無難なのだが、彼らは南回りのルートを選択した。
その理由は道中に仲間たちが集合している袴田邸があるからだ。
元より彼らはうさぎの救援要請を受けて湯川邸へと向かって行ったのである。
任された者の義務として失敗の報告だけはしておかなくてはならない。
何より袴田邸に残っているみんな様子が気にかかる。
いずれにしても一度顔を出しておくべきだろう。
自らの失態と訃報を届けることになる。
ペダルを漕ぐ足は重いが、振り切るように哉太はグッと足に力を込めた。
そうして、しばらくペダルを漕いだ後、生存者の避難場となっている袴田邸へと辿りついた。
高級住宅街から少し離れた場所にある変わり者の小説家が住まう辺鄙な一軒家。
だが、帰還した袴田邸の様子は明らかにおかしかった。
「……妙だな」
家には見張りの一つもないどころか、人の気配が感じられない。
探偵と武人の勘がすぐさま警告を鳴らし、2人が警戒レベルを引き上げる。
玄関には見覚えのない雷が落ちたような焦げ跡があった。
これは恐らく、ひなたか恵子の異能によるものだろう。
つまり、異能を使うだけの何か大きな出来事があったと言う事だ。
「……It smells.」
その場所に、アニカが鼻を鳴らした。
事件の匂いをかぎ取る探偵の嗅覚だ。
「…………開けるぞ」
最悪の事態を想定しながら、哉太が慎重に扉を開ける。
返るのは冷え切ったような静寂。
当然ながら出迎えはない、完全にもぬけの殻のようだ。
「誰もいないな……」
「……そうね」
2人はいざと言う時のために靴のまま家の中に足を踏み入れた。
フローリングの床が哉太たちの体重で軋む音だけが妙に響いて何とも気味が悪い。
家の中を捜索するが、やはり誰一人として見つかることはなかった。
その代わりと言っては何だが、書置きのようなメモ書きがテーブルの上に残されていた。
『農家の宇野さんから助けを求められました。
これから月影さんと恵子ちゃんの3人で宇野さんの家に向かいます。
みんなはこの家で待機していて下さい。 はすみ』
『地下室で何者かに恵子ちゃんが地下で殺されました。
恵子ちゃんを殺した人に月影さんとはすみさんも連れ去らわれたかもしれないので助けに向かいます。
それから勝子さん達が鈴菜さん達を助けに向かっている間に会議で話したヒグマに襲撃されました。
ワニとクマが合体したみたいな化け物で、はすみさんが言うには怪異らしいです。
遭遇したら後ずさりしながら目線を外さず、 刺激しないように逃げてください。
もし夕方までに私達が戻らなかったら、後はそっちの判断で行動して ひなた うさぎ』
はすみの書いたであろう綺麗な文字の物と。
その下にひなたとうさぎが書き足したであろう乱雑なメモである。
「……字蔵さんが殺された?」
そのメモの内容を見て、愕然とした様子で哉太がつぶやく。
確かにメモに書かれていた内容は衝撃的な事実である。
だが、アニカが気にしたのは別の所だ。
「このmemoは誰に向けて書かれた物なのかしら……?」
「誰って、そりゃあ俺達だろ?」
哉太は当然だろうと言った反応を返した。
袴田邸を離れた哉太たちが戻って来た時のために残した書置きであると考えるのが自然だ。
「それだと最初のmemoはおかしいわ。袴田邸にははすみたち以外にもひなたとうさぎがいたはずよ。
それならmessageを頼めばいい。わざわざmemoを残す必要がないわ」
アニカたちが袴田邸を出発した時は月影、はすみ、リンに加えうさぎ、ひなたも全員が袴田邸に居たはずだ。
はすみたちが離れることになったところで、わざわざメモ書きを残す必要がない。
「うさぎちゃんとひなたちゃんが休息を取ってる間に宇野さんが尋ねてきたとか?」
「うさぎは兎も角、ひなたは十分にrefreshできてるはずよ、rotationで言えば次に休むのははすみでしょう?」
朝方、皆が休息をとっている間監視をしていたはすみが休んでいたというのならまだしも。
その間に休息を取っていたひなたがまた休んだというのは考えづらい。
「なら、どういうことだよ?」
「はすみたちがmemoを残した時に、うさぎたちはここに居なかったかもしれない、と言う事よ」
この村は何が起きてもおかしくない状況だ。
袴田邸に残ったみんなにも何か動きがあってもおかしな事ではない。
「ヒグマの襲撃で避難した、ってのはさすがにないか……うさぎちゃんたちだけが離れる理由がない」
全員で避難したと言うのならわかるが、分断する理由がない。
少なくともメモを残す余裕があったのだから、そこまで逼迫した状況でなかったはずだ。
「けれど、それがopportunityとなって、何らかの別のpurposeが発生した可能性はあるわ」
「なるほどな。うさぎちゃんたちが俺達と同じく別動隊として動いてたかもって事か」
哉太たちの様に何らかの任務を受けた別動隊。
そう考えるなら、あの5人の中でうさぎとひなたというのは人選としては妥当か。
「ともかくBasementを調べる前に、もう少し家内をinvestigateしましょう。何か見つかるかもしれないわ」
恵子の死体があるという地下室を後回しにして、ひとまず袴田邸を調べることにした。
すると、すぐに何者かに家探しされたような痕跡をいくつも見つけた。
特にキッチンの食料が荒らされており、素人仕事にしてもかなり乱雑だ。
これを元から袴田邸にいた連中がやったとは考えづらい。
「みんなが居なくなった後に誰かが来たみたいだな」
状況が状況だ。今更空き巣を咎めるつもりはない。
そもそも哉太たちも袴田邸を勝手に使用していた立場だ、人の事を言えた義理はない。
訝しむ哉太を余所に、アニカが机の上を指でなぞった。
その指先に白い粉のようなものが付着する。
アニカがその指先をすんすんと嗅ぐ。
「なんだそれ?」
「face powderのようね。化粧品よ」
アニカは化粧品などに詳しくない哉太に軽く説明をする。
だが、不思議そうに哉太は首をかしげた。
「誰かがここで化粧をしたって事か?」
この屋敷は袴田と言う偏屈老人の一人暮らしだったはずだ。
まさか女装趣味があったという事もあるまい。
そもそも哉太たちが出立する前にはこのような痕跡はなかったはずだ。
この非常事態に呑気に化粧をする人間がいるなど……。
「あぁ……いや、そういう事しそうな人に心当たりはあるな……。
多分、茶子姉とリンちゃんだな。ニアミスしたってことか?」
袴田邸に仲間がいる事は茶子に伝えている。
あの人ならリンをあやすがてらその程度の事はやるだろう。
子供が散らかしたような惨状もリンがやったというのなら納得できる。
ここを訪ねていたとしても不思議ではないが、何をしに来たのか。
「整理すると、ここで起きたTime seriesとしては恐らくこうよ」
哉太たちがうさぎの友人の救出に向かう。
↓
ひたなたちがヒグマの襲撃を受け、撃退する。
↓
何らかの事情でひなたとうさぎが袴田邸を離れる。
↓
宇野が袴田邸を訪ねる。
↓
月影、はすみ、恵子が宇野邸に向かいメモを残し袴田邸を離れる。
↓
ひなたとうさぎが袴田邸に帰還。メモを残し再度袴田邸を離れる。
↓
茶子とリンが袴田邸を訪問。家探しと化粧をして立ち去る。
↓
哉太とアニカが到着。今に至る。
メモの内容をすべて信用するなら時系列はこうなる。
「けど、字蔵さんは死んでるんだろう?」
「Yeah.うさぎたちのmemoによればね」
つまり、どちらかのメモには嘘がある。
どちらのメモに嘘があるのか、その答えは地下室を見ればわかる事だ。
その答えを確認するため、哉太たちは地下室へと向かった。
地下室の扉を開くと深淵へと繋がるような暗がりが姿を現した。
階段を降りて行くと、周囲の空気は急速に冷えていき、その冷たさが二人の肌を刺す。
冷たい石の壁が彼らをじっと見下ろしているかのようであり、妙な息苦しさを感じさせた。
そうして哉太とアニカは階段を降り切って地下室に到達した。
一瞬の静寂の後、その場の残酷な答えに直面する。
「……字蔵さん」
沈痛な面持ちで哉太が悔しさをにじませた声で呟く。
アニカは表面上取り乱したりはせず冷静な様子だが、きっと奥底では同じ思いだろう。
うさぎのメモにあった通り、寒々とした空気が漂う狭い部屋の中央に、布団に横たわる字蔵恵子の死体が横たわっていた。
恵子の死体は全身の血を抜かれたかのように、異様に白く干からびているように見えた。
その横には、拘束された老人のゾンビが無様に転がっている。こちらはまだ息があるようだ。
「このゾンビは………この家の主の袴田って人か?」
「Yeah.Novelistの袴田伴次ね」
袴田は哉太が村を出てから引っ越してきた住民であるため直接的な面識はないが、著者近影を見たことがあるのかアニカが答える。
哉太たちが袴田邸に居た頃は地下室にこの家の主と思しきゾンビが閉じ込められていたはずだが、それが彼だろう。
「状況から言えば、このゾンビが地下室に降りた字蔵さんを殺して、他の誰かがゾンビを拘束したって所だろうけど……」
「だったらmemoにもそう書かれているはずよ」
あのメモには何者に殺されたとしか書かれていない。
つまり犯人は分からなかったという事である。
そんな分かりやすい状況ならああは書かない。
拘束されたゾンビに死体。地下室にはゾンビと争ったような跡もある。
拭き取られているが、地面にはうっすらと血痕も確認できる。
アニカは無言のまま恵子へ近づくと、プロの探偵として冷静に死体の検分を始めた。
「fatal injuryは首の傷かしら…………」
アニカは静かに呟いた。
首筋に開いた二つの穴。目立つ外傷はこれくらいだ。
傷口の周囲には軽い内出血が見られ、恵子が生きている間に受けた傷であることが分かる。
アニカはさらに、恵子の手や足、そして服の状態を注意深く観察した。
しかし、他に目立つ外傷や争った形跡は見当たらない。
衣服も乱れておらず、何者かに襲われた形跡はない。
布団に寝転がる恵子は、穏やかな寝顔のような死に顔だった。
後から整えた可能性もあるが、誰かに襲われたにしてはこれはおかしい。
そうなると、布団に寝かされている事もあり眠っているところを殺された可能性が高くなる。
だが、外部からの襲撃犯であるのならその騒ぎで目を覚まさない訳がないし。
眠っていたというのなら、「地下室を訪れた恵子がゾンビに襲われた」と言うシナリオも成立しない。
そうなると恵子を殺したのは外部からの襲撃者でもゾンビでもないことになるが……。
アニカは続いて恵子の寝かされている布団を丁寧に検査する。
不思議なことに、布団には血の跡が殆どついていない。
それが指し示すのは、犯行現場がここではないという事。
床にある拭き取られた血の跡が彼女の物である可能性はあるが、そうなるとわざわざ死体を布団に寝かせる理由がわからない。
彼女の死体を発見したうさぎたちが布団を敷いたという可能性もあるだろうが、死者を弔うのならこんな所に布団を運ぶよりも死体を上に運ぶだろう。
「そっちのzombieも調べたいわ」
「わかった。押さえておく」
拘束されているとはいえ襲い掛かってこないとも限らない。
念のため哉太が袴田ゾンビの手足を取り押さえ、アニカは慎重にその体を調べる。
ゾンビの首元にも噛み跡のような傷が確認できた。
一見すれば恵子と同じ傷跡だが、厳密に比較すればこちらの方が穴はやや大きい。
つまり噛み傷を残した犯人は2人いた可能性がある。
「ともかく、最初のメモが嘘だったってことだな」
恵子の死体があった以上はそうなる。
こうなると月影とはすみが途端に怪しくなってくる。
だが、はすみの人柄を知る哉太からすれば中々に信じがたい話した。
「恵子ちゃんを殺した犯人が書いたって可能性はないか?」
「handwriting identification(筆跡鑑定)はできないけど、少なくともsistersであるうさぎが本物であると認識して続きを書いているのだからそれはないと思うわ」
「なら、犯人に無理やり書かされたとか?」
「Whodunit(何のために)?」
ここは異能と言う横紙破りが横行する世界だ。
アリバイや証拠なんてものすらいくらでも模造できる。
そこから安易に結論を導き出すのは誤った結論に導かれない。
故に考えるべきはWhodunit。
何故それを行ったのか? という動機の部分だ。
このメモを書いた人間はなにがしたかったのか?
「いい? 偽装工作と言うのは犯行がバレたくない人間がする事なのよ」
事実として偽装工作は行われている。
つまりそれを行ったのは犯行が発覚して困る人間だ。
特殊部隊や気喪杉のような危険人物であればそのような事をする必要はない。
恵子だけを殺して月影とはすみだけを生かして連れ歩くというのも妙な話だ。
この犯行が発覚してももっとも困る人間がどんな人間かと言えば、それは。
「…………内部犯」
そう推測できる。
哉太の上げる可能性をアニカが潰してき、はすみへの疑いが積み重なって行く。
とは言え、直感や推測で犯人を決めつけられない。
小田巻の時もそれで危うい状況になった。
結論を出すのはまだ早い。
「ともかく、うさぎやはすみたちを探してみましょう」
「探すたってどうやって…………?」
手がかりがあるとしたら宇野邸に向かったと言うメモの内容くらいの物だが。
はすみのメモは虚偽である可能性が高い。本当に宇野が訪ねてきたのかも怪しい。
「それでもいいわ。はすみたちはともかく、うさぎたちがその情報をBelieveして向かった可能性はあるでしょう?
カナタ。このmemoに書かれたウノに心当たりはある?」
「最近越してきた人まで把握できてないけど……俺の知ってるのは農家の宇野さんくらいだな」
もしかしたら哉太の知らない宇野さんである可能性もある。
確か古民家群に住んでいたはずだが詳しい住所までは分からない。
「まあいいわ。addressなら役所に寄れば調べられるでしょう、古民家群の方もどのみちpathするわ」
手がかりがそれしかないというのなら行くしかない。
古民家群も役所も診療所までの通り道だ。
茶子との合流もあるがその程度の寄り道は許してもらおう。
うさぎたちは夕方に戻ると書いてあるが、そんなに待ってはいられない。
「よし。じゃあちょっと飛ばすぜ」
「safe drive! 忘れないでね!」
袴田邸を出た哉太は自転車を飛ばす。
南下して行く途中、少し離れた位置にあったガレージの前を通り過ぎる。
奇しくも、その時ガレージの中には茶子たちは滞在していたが、互いにその存在に気づくことなく目の前を通り過ぎた。
■
村の南部に位置する役場は張り詰めた緊張感に包まれていた。
急速な村の発展に伴い、役場の業務は異常なまでに作業量が増加していた。
転居してくる住民の管理。都市開発計画の相談。住居や店舗などの建築物許可申請の処理。
人口増加に伴い急増する税務処理、福祉サービス。防災、防災などの管理。etc.etc.
もはや日々の業務は修羅場のような有様であり、職員の徹夜作業は日常茶飯事。
現村長体制の問題の一つとされている。
だが、今役場を支配している緊張感はそれらの物とは異なっていた。
暮らしと言う命を繋ぐやり取りではなく、これから行われるのは直接的な命のやり取り。
村を襲う災厄の一つ。特殊部隊との正面切った決戦である。
戦場に向かったのは若き天才エージェント天原創。
役場にいた皆の支援を受け、万全の状況で決戦に挑む。
彼に託した異能によって、生命力を消耗した雪菜は身を休めるため休憩室に移動していた。
そして、休憩室には同じく異能によって生命力を消費したはすみと体調を診るという名目で薬剤師である月影の2人が同室していた。
休憩室には月影とその眷属はすみ、そして雪菜だけ。
そして雪菜は異能の使用によって疲労している状態である。
これはうら若き乙女の血を求める吸血鬼、月影夜帳にとっては絶好の状況である。
今なら2人がかりで抑え込めるかもしれない。
多少抵抗されて騒ぎになったとしても、眷属にしてしまえばどうとでも言い繕える。
隣室のひなたやうさぎに気づかれたところで余計なことを言う恐れもない。
だが、月影は口元に手をやり勃牙を抑える。
外には特殊部隊が控えている。
生き残るためには特殊部隊の排除は必須だ。
創が勝利できればそれでいい。
だが、出来なかった場合、最悪ここの面子で戦うことになる。
もったいないが、状況次第では彼女たちを囮にして逃げだす算段も必要だろう。
今下手な騒ぎを起こすのは得策ではない。
事を起こすのは特殊部隊との戦いが終わった後だ。
特殊部隊の存在がある意味での抑止力となり、ハンターを恐れ吸血鬼は息をひそめていた。
「雪菜ちゃん、体調は大丈夫~?」
「……ええ。大丈夫です」
はすみが雪菜に話しかける。
自身も消耗しているのは同じだというのに、他者の体を慮る。
その優しさを雪菜は素直に受け入れる事が出来ず、戸惑うような相槌を打つことしかできなかった。
雪菜は月影たちを警戒している。
ここにいるのは2人の監視と言う意味合いもあった。
創が頑張っているところで背後から撃たれてはたまらない。
もちろん2人が結託して襲ってくることも想定ている。
そうなったところで今の雪菜は叶和と2人で1人。
2体2のイーブンだ。大人しく負けるつもりはない。
月影は相変わらず怪しいが、雪菜が対処に困っているのがはすみだ。
はすみへの印象を雪菜は虐待を行っていた母のようだと創に称した。
男に依存し母になれず女を捨てきれなかった、そんな人だ。
その印象は今も覆っていない。
月影に付き従い、男に尽くすためなら何をするのも厭わない。
そんな『女』の顔をしている。
だが、雪菜を戸惑わせるのは、はすみはその状態にあっても他者への優しさを維持している事だ。
その温和な態度が判断を鈍らせる。
雪菜の母も、気まぐれに優しい日があった。
だが、そんなものはふとしたきっかけで崩れる砂上の楼閣でしかない。
この優しはそれと同じ男の言葉一つで崩れる者なのか、それとも雪菜の目が曇っているだけなのか。
すぐには結論を出せなかった。
「そうだ! 元気を出すのにいいものがあるの。ちょっと待っててね~」
そう言ってポンと胸の前で手を叩き、はすみは休憩室の奥へと向かうとそこに置かれていた冷蔵庫を開いた。
はすみにとっては勝手知ったる自分の職場である。どこに何かがあるかなど手に取るようにわかる。
地震によって冷蔵庫の中身はぐちゃぐちゃにかき乱されていたが、中の食品は無事のようだ。
はすみは倒れた食品をかき分け、そこから何本かの缶と瓶、チューブを数本取り出した。
エナドリとブラックコーヒー、そして栄養ドリンク。チューブのニンニク、生姜。
それらをマグカップに注いでマドラーで混ぜ込んでいく。
「お待たせ~。これを飲めば疲れなんて一発で吹き飛んじゃうわよ~」
「ありがとうござ…………うっ!」
はすみから差し出されたのは混沌としたマーブル色の液体だった。
あらゆる栄養とカフェインとタウリンをちゃんぽんした魔剤である。
元気になるどころかむしろ体に毒なんじゃないか?と思える毒々しさだ。
「ごめんなさいね~。地震で冷蔵庫止まっちゃってたみたいで温くなってて~」
謝るのはそこではない気もするズレた謝罪だ。
マグカップを受け取りながらも雪菜が口を付けるのを躊躇っていた。
「それじゃあ、いただきま~す」
そう言って、はすみは自分用のドリンクに躊躇うことなく口を付けた。
ごくごくと喉を鳴らして毒々しい液体を一気する。
その様子に雪菜はさっきとは別の意味で気圧されていた。
「ぷはぁ~! キクぅ~~!!!」
そう言ってはすみはバキバキに目を見開き大きく息を吐く。
毒見という訳ではないが、目の前で同じものを飲まれてしまっては断りづらくなった。
少なくとも自分の体調を気遣って出された物を無下にするのも気が引ける。
「えぇい……………………!」
ままよと意を決して雪菜がカップに口を付けた。
一度止まればもう飲み干せぬと、覚悟を決めて一気に飲み干す。
強烈な甘み舌に広がり、奥底にある辛みがピリピリと舌を刺激して、強烈な苦みが後味となって引いていく。
漢方っぽい独特の風味と香ばしいコーヒーの香りが喧嘩し合いながら鼻を抜けた。
シュワシュワとした炭酸と生姜の辛みが別方向から喉を刺激する。
「…………まずぅ」
味は最悪。
だが、胃の奥から熱を放つように、体が熱くなってきた。
首の根本でドクドクと血流が加速して流れるのを感じる。
運動もしてないのに発汗してきた。
味は最悪だが効果はてきめんのようだ。
と言うか即効性がありすぎてちょっと怖い。
「……そういったドリンクは一時的な栄養補給としては役に立つのは認めますが。
過剰な摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があるので薬剤師の立場としてはあまりお勧めしませんがね」
やや引いた様子で薬剤師が苦言を呈す。
そう言う常識的な指摘は飲む前に言ってほしかった。
休憩室でそんなやり取りをしていた、同刻。
隣室の執務室にはひなたとうさぎの2人が居残っていた。
窓際にいるひなたは、見よう見まねで先ほど創が行っていたように鏡を使って戦場の様子を伺っていた。
角度調整にてこずってなかなか上手くいかなかったが、目立つ青色のお陰でその姿を捕らえられた。
青髪の女に抱えられた圭介を追う特殊部隊。彼らの戦場は東にある古民家群に移っていた。
まだ創の姿は周囲に見えないが、恐らくそこに向かっているのだろう。
無意識のうちに片手に握った銃に力がこもる。
それは薩摩の死体から回収した銃だ。
戦況次第では援護射撃が必要になるだろう。
猟師の心得として猟銃を扱う事はあるが別に銃に詳しいという訳ではない。
この銃の名前も、詳しい性能も分からないが、あの銃キチが持っていたという事はそれなりの性能の銃なのだろう。
そこに関してだけは信頼がある。と言うかそこに関してだけしかない。
だとしてもここから届くわけではない。
戦場は1㎞近く離れている。狙撃銃でなければ届かない距離だ。
いくら性能が高くても拳銃では届かない。
それで届くという確証もないが、手段があるとしたならば異能を付与した超電磁砲。
創には最後の手段にしろと言われたがが、イザという時に撃つ覚悟だけはしておかねばならない。
一人、ひなたは戦いの覚悟を固める。
そこから少し離れた執務室の影でうさぎは気もそぞろな様子で俯いていた。
「お姉さんとお話ししなくていいの?」
その様子に気づきひなたが声をかける。
恵子の事もある。
この村では話したい時に話したい相手と話せるとは限らないのだ。
話せるうちに話したほうがいい。
だが、あれほど心配していた家族の無事を確かめられたと言うのにうさぎの表情は浮かない様子だ。
休憩室にいるはすみの下に向かうでもなく、こうして執務室でひなたの様子を見守っている。
むしろ、姉と顔を合わせるのを躊躇っているようだ。
「うん……。あの、お姉ちゃん様子がおかしくなかった?」
うさぎが触れたときのあの態度。
まるで姉が別の生き物になったような錯覚を覚えてしまった。
仲が良かったからこそ、普段と違う家族にどう対応すればいいのか分からない。
「確かに、様子おかしかった気もするけど……」
それをひなたに尋ねたところで分かるはずもない。
はすみの様子がおかしかったと言うのは、それは家族であるうさぎが一番よくわかっているだろう。
うさぎへの態度もそうだが、ひなたが気にかかったのは月影との距離感だ。
あの二人が出来ていた、なんて噂は聞いたことがない。
発展してきたと言えども狭い村だ、その手の話題は嫌でも耳に入る。
男女の仲は分からぬものだし、吊り橋効果という事もあるのかもしれないが、それにしたって急すぎる。
「こんな場合、ひなたちゃんなら、どうする?」
うさぎが弱気を吐露するように尋ねる。
だが。ひなたは一人っ子だ。姉妹がおかしくなっていたらどうするかと問われても答えようがない。
それでも、思い悩むうさぎのために答えをひねり出すべく、家族の様子がおかしくなっていたらどうするのかを考えてみる。
「私だったらお母さんが変になったんなら、どうしてそうなったかって原因を知ろうとするかな。
お父さんの場合は……どうだろうなぁ?」
彼女を突き動かすのは知的好奇心。
実際、ゾンビと言う形で母はウイルスによっておかしくなってしまっている。
今だってその原因を知りたいと思って行動している。
「そう言えば、ひなたちゃんのお父さんって」
「うん。単身赴任中。と言っても、何をしているかは詳しくは知らないんだけど」
ひなたの父は東京に単身赴任している。
仕事上の機密もあって何かの研究職をしていると言う事くらいしか娘のひなたも知らされていない。
もしかしたら研究者である父がいればウイルスについても何かわかって解決できるかもしれないとも思うが、巻き込まれなかったことを喜ぶべきだろう。
「ひなたちゃんのお父さんってどんな人だっけ?」
ひなたの父が村を離れてもう8年前になる。
同じ村の出身と言っても、うさぎとしては顔も殆ど覚えていない。
「うーん。ちょっと神経質なところはあるけど真面目な人、かなぁ?」
定期的に連絡くらいはしているが、ひなたとしても離れて暮らして長い。
悪い父ではないとは思うが、素直に良き父とも言い難い。
「あ、そうだ、写真があるよ」
「写真?」
「うん。去年、高校に上がった制服を見せに、お母さんと一緒に上京した時に撮った写真があったんだ」
一旦鏡から手を放して、胸元を漁る。
単身赴任をしている父に会いに行った時に取った家族写真が生徒手帳に挟まっていったはずだ。
そして一枚の写真を取り出して、うさぎに差し出す。
受け取った写真に写っていたのはごくありふれた家族の情景だった。
真ん中にいるのは、真新しい制服を来た今より少し小さいひなたである。
横に立っているひなたによく似た妙齢の女性は、うさぎも見覚えのあるひなたの母親だ。
うさぎも商店街で買い物しているときにたまに挨拶くらいはする仲である。
その逆側に立っているの初老の男がひなたの父親だろう。
ひなたよりも色濃い、燃えるような赤い瞳。
研究員らしい白衣姿とは不釣り合いな首元のブラックオニキスのネックレス。
横に並ぶ笑顔の2人とは対照的な不愛想な表情。それは不器用な父の顔のようにも見える。
そしてメガネをかけた神経質そうな男の顔。
それは、年相応にくたびれた白髪交じりの痩せぎすの男だった。
■
村に東に位置する民家群には時代に取り残されたような古民家が立ち並んでいた。
かつては村の子供たちが元気に駆け回り、鬼ごっこをして遊んでいたであろう情景である。
そんなかつてのノスタルジーを感じさせる光景を再現する者たちがいた。
青い風が吹き抜ける。
逃げるのは少年を抱えた田舎に似つかわしくない派手な青い髪色をした女だ。
人一人を抱えているとは思えない程の機敏さで民家の隙間を駆け抜けてゆく。
その背を追う鬼役は迷彩色の防護服だ。
滅びた村では周囲に溶け込むはずの迷彩色は浮いている異物だ。
異物たる狩人の手には、平和な村にはあってはならない凶器が握られていた。
鬼は走りながら逃げる獲物の背に向けて銃口を向ける。
特殊部隊の狩人腕ならば走り続ける不安定な状態であろうとも狙いを外しはしない。
だが、その引き金が引かれる直前、青い影が建物の陰に隠れて射線が途切れた。
偶然ではない。先ほどからこの繰り返しだ。
相手は意図的に建物を盾に射線を切るように動いている。
銃に対して適切な対応だ。少なくとも素人の動きではない。
古民家群を駆け抜け、鬼から逃げる青い女。
それは山折圭介を抱えた青葉遥のゾンビである。
圭介に宿ったゾンビを従える王としての異能。
その力によって彼は精鋭を結集させ無敵のゾンビ軍団を結成した。
だが、それはたった一人の特殊部隊、今現在彼らを追う成田三樹康によって壊滅させられ、こうして敗走を強いられている。
圭介の異能は多くのゾンビを従えられる強力な力だが。
反面、従えるゾンビの数が増えるほど1体を操る精度は低くなるという
ルールが存在する。
そして、圭介は異能に目覚めた直後から、恋人である光の操作にリソースの多くを割いてきた。
傷つけぬよう、保護するように、己が異能で恋人を縛り付けてきた。
だが、そのゾンビ軍団も壊滅し、光も圭介を庇って死亡した。
皮肉にも、これによって彼の異能は力の注ぎ先を一つに絞られ、最強のエージェントの性能は十全に発揮される事となった。
脳内のウイルスの定着は強いストレスによって進行する。
そしてウイルスの脳への定着が進む度に異能も強化される。
誰よりも強いストレスにさらされた彼の異能は誰よりも強化されていた。
初期段階での圭介の異能はその都度ゾンビの行動を指示する格闘ゲームのようなものだった。
だが、それが能力進化によってRPGのように「たたかう」というコマンドを入力するだけでゾンビ行動を指示できるようになったのだ。
そして恋人の死を前に、圭介が思考を放棄したことで、素人である圭介が操作するより適切な『自己判断』によって動くゾンビが完成したのである。
遥はゾンビとも思えぬ機敏な動きで逃走経路を選択していく。
肉体の精度は全盛期のそれと遜色がない。
自己判断と言っても思考して選択している訳ではない。
それは身に染みこむまで叩き込まれた動きを再現しているに過ぎない。
異常感染した脳は増殖したウイルスによって脳萎縮が引き起こされる。
重度の認知障害と著しい思考能力の低下によってアルツハイマーのような症状が引き起こされる。
そのため出来ているのは殆ど反射的な無為意識の状況判断でしかない。
それでも、素人の圭介が逐一指示を出すよりも、無意識化に刻まれたエージェントの状況判断の方が適切である。
追手が素人あれば十分に逃げ切る事も出来ただろう。
だが、生憎それを追う狩人もまた一流。
国防を担う秘密特殊部隊の精鋭である。
鈍ったゾンビの思考で振り切れるものではない。
遥の足が曲がり角に差し掛かった所で成田はその足元を撃ち抜く。
弾丸は避けられたが、遥は逃走経路を変え逆方向の角へと曲がって行った。
所詮は動物的な反射行動。
行動を誘導するのは容易い。
兵士(ソルジャー)と諜報員(エージェント)は違う。
その中でも特筆すべき一番の違いは、戦闘に関する意識の差だ。
兵士は戦闘「を」行う事を前提としているが、諜報員は戦闘「も」行う事を前提としている。
この一字の違いは大きな差だ。
その為、戦闘力と言う一点において諜報員は兵士に劣る。
エージェントが重視するのはあらゆる局面に対応できる万能性だ。
秘密特殊部隊の中では潜入として工作員も務める黒木真珠がこれに近いが、駒の一つとしての万能型と、万能性を追求するエージェントでは目指すところの次元が違う。
その中における戦闘型のエージェントとは、あらゆる局面に対応できる戦闘面での万能を求めた存在である。
遠中近。あらゆる武器に対応し、一点で負けていても必ず得意分野で上回れる。
相手の得意を封じて、自らの長所を押し付ける後出しジャンケン。
故に最強。この理念を最も体現したのが青葉遥である。
これに対する対応策は簡単だ。異なる強みを持つ複数で当たる事。
一対一では脅威であるが、特殊部隊からすればそれだけの存在にすぎない。
万能たる性能を生かす戦略性こそがエージェントの真骨頂である。
身体操作は全盛期に迫る精度に至っているが、その身体能力こそが脅威であった美羽と違って、思考力のないゾンビとなったエージェントは脅威ではない。
ハヤブサⅢを狙撃するため高台に昇った際に、周囲の地形を一通り把握しておいた。
特に、背の高い建造物がない古民家群は把握しやすかった。
その先は道場を構える大きな武家屋敷だ。
長い白壁が延々と続き、周囲に盾となる遮蔽物はない。
「詰みだ」
成田も曲がり角を曲がって無防備な背に向かって銃を構える。
絶対に外さぬと、世界最高峰の狙撃手が確信を得たのだ。
そして、その確信こそが絶対の隙だ。
その刹那を縫うように、その影は音もなく飛び出した。
物陰から飛び出した小さな影は、暗殺者のように横に寝かせた鋭い刃を手にしていた。
獲物を捕らえたと思ったその瞬間こそが、狩人が最大の隙を晒す瞬間である。
暗殺者が突き出した刃が標的へと深々と突き刺さった。
この瞬間を狙って待ち伏せていた暗殺者の名は、天原創。
創がこの決定的瞬間を狙い済ましたように待ち伏せられたのは偶然ではない。
ゾンビの辿る逃亡ルートを推察し、決定機となるポイントを完璧に予測した。
それを可能としたのは、逃亡の舵を取っていたゾンビが、他でもない彼にエージェントのいろはを叩きこんだ師だったからである。
地獄の特訓で叩き込まれた師の動きだ。どう動くかなどいやと言うほど理解できる。
そしてそれを追い詰めんとする狩人の思考もまた予測することは可能だ。
これらの予測を持って、決定機が訪れるポイントで待ち構えて奇襲により一撃で仕留める。
プロ同士の衝突は戦闘になること自体が稀である。
大体の戦況は戦う前から勝負は決まっている。
その鉄則に従い、初撃で終わる戦闘だった。
「っぶねぇなぁ…………オイッ!」
だが、突き出された刃は、狙撃手が手にしていた銃の銃身で防がれていた。
銃身に刃が突き刺さり、そのまま成田の手から銃が弾き飛ばされる。
創の不意打ちは完璧だった。
曲がり角の先で気配を顰め待ち伏せしていた創の存在に、成田は直前まで気づいてはいなかった。
だが、この戦場には素人が一人紛れていた。
圭介だ。
創は自らの前を通り過ぎる圭介を抱えた遥をデコイとしてスルーした。
その際に、圭介の視線が陰に潜んでいた創を捉えていた。
成田が捉えたのはその僅かな視線の動き。
その違和感に従ったからこそギリギリで反応が出来た。
奇襲は失敗した。
加えて、この柳刃包丁が鉄をも突き刺す異様な切れ味を持っていると言う手札がバレた。
これは手痛い失策だ。
だが創はそれを気にするでもなく、止まることなく間髪入れず距離を詰めた。
そのまま包丁を奔らせ、奇襲から白兵戦に移行する。
先の小田巻戦では対応する側だったため、後手に回って相手のペースに持ち込まれたが、今回は仕掛ける側だ。
相手の強みを潰して自身の強みを押し付ける。エージェントの鉄則だ。
役場から見ていた戦いから相手が相当な銃の使い手であることは把握している。
距離を離すのは愚策。このまま近接戦で押し切る。
喉、左胸、鳩尾。
距離を詰めた創が一息で放ったのは全弾急所を狙った三段突き。
受ける成田は間合いから逃れるべく、大きく後方に跳ねながら、鼻先に美羽から徴収したもう一丁の銃口を返す。
だが、その引き金が引かれるよりも一瞬早く、創が包丁をクルリと逆手に持ち直して銃を握る手首を払った。
急所狙いという必殺から、一転した小技。
これにはたまらず成田は銃撃を諦め手首を引いた。
手首の返しだけで本当に防刃効果もある防護服を切り裂けたのか、と言う点は重要ではない。
先ほど見せつけた奇襲はこの刃物に殺せる切れ味があることを見せつけるための見せ技。
必殺を狙った一撃であると共に、その為の布石でもあったのだ。
防護服と言う特殊部隊最大の弱点を十分に理解している。
一撃でも当てれば勝利なのだから、切り裂けるかもしれないと思わせただけで十分な効果がある。
仮に奇襲に失敗しても警戒を引き出せる。巧いやり方だ。
成田はそのまま小さなバックステップを2度繰り返し距離を取ると、銃をホルダーにしまって武器をナイフに持ち替えた。
白兵戦は好みではないのだが、この距離まで詰められると流石に銃は不利である。
ひとまずナイフで凌ぎながら活路を見いだすしかない。
構えた視界の外で青い髪が遠ざかっていくのが見える。
まんまと圭介は取り逃すことになるが、目の前の相手を無視してそちらに注意を裂くわけにもいかない。
この僅かな攻防だけでも分かる、他に意識を裂いて勝てる相手ではない。
既に攻防は始まってる。追跡を諦め成田は意識を切り替える。
「素人じゃねぇな。どこの所属だ?」
目の前の相手はどう見ても中学生程度の年齢だ。
贔屓目に見積もっても精々が高校生と言ったところだろう。
秘密特殊部隊にも元少年兵のオオサキがいる。少年兵の怖さはよく知っている。油断はしない。
娘の三香もすぐにこれくらいになるのだろう。そう思うと胸が熱くなる。
それくらいになると反抗期にでもなって父離れしてしまうのだろうか、彼氏でも連れてきたら卒倒しかねない。
そう考えると胸が悲しくなる。連れてきたガキをぶち殺しかねない。
ともかく、天から聞いた小田巻と互角に戦ったと言う少年の特徴に当てはまる。
だが、それにしては少し強すぎる。
これ程の手合い、小田巻では相手にならないだろう。
小田巻が成田の知らない強力な異能に目覚めていたか、それとも目の前の相手が何か異能(インチキ)をしているかだ。
「ま、答える訳ねぇか」
成田の問いかけに、無言の答えを返すように創の体が動く。
恐ろしく鋭く早い踏み込み、一瞬で距離が詰まる。
廃村に散り火花と闘志が空気を切り裂いた。
交錯する視線と共に光り輝く刃の軌跡が衝突する。
刃先を揺らめかせたフェイント交じりの一撃をサバイバルナイフで受けとめた。
その衝突に押されたのは成田の体だ。
大人と子供。覆しようのない体格差があるにもかかわらず、子供とは思えぬ凄まじい力だ。
成田はとっさに受け止めた包丁を滑らせるように横に受け流した。
そして僅かに体勢を崩した創の手首に掴みかかる。
だが、これは強引に振り払われた。技術ではない、単純な力負けである。
天才エージェントである創の唯一の欠点、それは第二次成長期を完了していない身体能力の欠如である。
余りにも早熟した天才であるが故の欠点だが、その欠点は肉体を活性化させる異能『線香花火』によって補われていた。
天才的な技術に異能による肉体。今の創に死角はない。
強化された身体能力を持って、踊るようなステップで創は再び斬りかかる。
それは常人であれば動きの起こりすら捉えきれぬ程、軽く速い。
その神速の一撃を成田は、大きく横に跳ねて攻撃を避けた。
察したというより、直感による事前回避だ。
それでも刃は防護服の寸前を掠める。
反応がコンマでも遅れていれば防護服を裂かれて終わっていた。
右手の逆手付きを避けられた創はそのまま回転しながら包丁を宙に放り投げた。
そして空中で左手に持ち替え、曲芸じみた斬撃を見舞う。
風を裂き、振り抜かれる包丁の刃が瞬く間に成田の首に迫る。
成田は転がるように屈みこみ、その鋭い風圧を感じながら泥臭く身を躱した。
創の瀑布のような猛攻を成田は凌ぎ続ける。
対処を一つでもしくじれば終わる綱渡り。
だが、成田の精神は途切れることなく緊張感を保ち続けていた。
素人とは比べるべくもないが、狙撃手である成田は近接戦が得意とは言えない。
白兵戦の技術は小田巻はおろか、天にも劣るだろう。
にも拘らず、それらを上回る創の猛攻をギリギリながらここまで凌げている。
それも当然。
成田は常日頃から世界最強のナイフ使いを間近で見てきたのだ。
その上、付き合いたくもない模擬戦に幾度も付き合わされてきた。
おかげ様でナイフでの戦闘も、防御だけはそれなりの腕前になった。
確かに目の前の少年は確かに強い。
確かに強いが、あの怪物に比べればこの程度、何するものぞ。
防御に徹すれば凌ぐくらいは問題ない。
それに、待つことにかけて狙撃手に敵う者などいない。
たった一度のチャンスのために常に緊張感を保ちながら待ち続けるのが狙撃手である。
冷静さを崩さず、かと言って反撃に転じるでもなく防御に徹し続けられる。
一度しくじれば終りの綱渡りだろうと、いつまでだって続けて見せよう。
その精神性こそがこの男の本当の脅威である。
むしろ、この状況で焦りがあるのは攻めあぐねている創の方だ。
今の創は雪菜の異能『線香花火』による身体強化と、はすみの『生命転換』によって強化された武器。3人分の力で戦っているに等しい状態である。
だが、この異能の効果がいつまでもつか分からない。短期決戦は必然であった。
創が勝負を決めにかかった。
右側から回り込むようにして間合いを詰める。
その動きを追って成田が反応するが、その直後。相手の反応を置き去りにする速度で創が稲妻のように切り返した。
死角を突く動き。
必殺すべく、創が大きく包丁を振りかぶる。
だが、成田の視線はギリギリでその動きを追っていた。
首を狙ったその構えに。成田が反応を示した。
その瞬間を狙って、創は屈みこんでその足を払った。
武器を最大限警戒させておいての足払い。
意表を突いたその攻撃を避ける術などあろうものか。
だが、その足払いは空を切った。
成田はそれを軽く跳躍して躱していた。
意表を突いたつもりだろうが、体術も交えたナイフ術としては基本である。
動きのキレと鋭さは大したものだが、教科書通りであるだけに読みやすい。
大田原やオオサキといった特殊部隊のナイフ使いどもに比べて、意表を突くにしても優等生のやりかたすぎる。
異能(インチキ)も含まれているかもしれないが、それでも年齢を考えれば創の才能は成田から見ても末恐ろしいレベルだ。
強さも巧さも、下手をすれば同じ少年兵であるオオサキよりも上かもしれない。
だが、怖さが足りない。
それじゃあダメだ。
「お行儀のいいこった」
言って、お返しとばかりに成田も蹴りを繰り出した。
決めにかかった相手にようやくできた一瞬の隙間。
だが、成田が蹴り抜いたのは創ではない、その横にある民家だ。
正面の武家屋敷と違って、元よりガタの来ていた古民家である。
それが地震の影響で倒壊寸前の状態となっており、とどめとなる一発の蹴りで容易く崩れた。
「なっ…………!」
崩れた民家が傾き、家屋の破片が襲い掛かる。
これに素早く反応して創は後方へ飛び退く。
小さな破片が幾つか直撃したが、それは大した問題ではない。
同じく成田も崩れた家屋を挟んで逆側に跳び退く。
彼我の距離が離れ、戦場に一本の線が通った。
古民家の建物の切れ目に、射線という名の線が。
耐え忍びこの一瞬を見出した、成田にとっての勝機。
成田の早打ち技術を持ってすれば、創が体勢を立て直す前に撃ち抜けるだろう。
だが、通った線は一本ではない。
ここより約1km離れた役場にて、その瞬間を待ち望んでいた者がいた。
成田が民家を打ち崩した事によって、繋がったもう一本の線。
古民家と役場を繋ぐ線もまた繋がったのである。
役場にある執務室の窓から様子を伺っていた猟師は、その瞬間を見逃さなかった。
ひなたは鏡による監視をやめ、直接窓から身を乗り出して銃を構える。
通常であればハンドガンによる狙撃など不可能である。
単純に射程が足りない。有効射程どころかひなたの腕では最大射程ですら1㎞先には届けられないだろう。
だが、銃の有効射程距離は、弾丸の初速によって決定される。
超電磁砲によって加速した弾丸ならばあるいは届くかもしれない。
パチンと電撃が弾けた。
黄金に輝く髪が揺れる。
創には最後の手段と言われていたが。
撃たねば創の命が危ぶまれる状況である。
この一瞬こそ、その決定機。
決着の時だ。
村を襲う災厄の一つ。
特殊部隊をここで仕留める。
その覚悟を電撃に変える。
驚くほど精神は落ち着いていた。
異能が身に馴染んでいるのか、電撃が素直に銃身に通って行くのが分かる。
前回のような怒りで弾ける轟雷ではなく、鋭く落ちる雷鳴のように。
静かに狙いを定めて、彼女は引き金を引いた。
役場と古民家を繋ぐ、一筋の雷光が奔った。
超電磁砲によって放たれた弾丸は狙撃銃に匹敵する1000m/sの速度で発射された。
その弾丸は、秒にも満たぬ刹那の世界で音速を超えて標的に届く。
相手を仕留めんとする狩人が、弾丸を躱すなどできるはずもない。
「ま――――――撃つなら今しかないよなぁ」
だが、雷をまとった弾丸は特殊部隊の眼前を通り過ぎて、武家屋敷の白壁を撃ち抜いた。
創を仕留めるべく前に向かうはずの成田の姿勢は、不自然なまでに上体を仰け反らせていた。
だが音越えの狙撃。気づいてから反応して間に合うものではない。
それが躱せたという事は、つまりは読んでいたという事だ。
狙撃手と言う生き物は常日頃からその地形における狙撃のベストポジションを把握しながら生きている。
家族と外食を取る時ですら、つい狙撃を気にして席を選んでしまう。もはや職業病と言ってもいい。
当然、役場からの斜線が通ったのは成田も理解していた。
もちろん狙撃手がいると言う確信があった訳ではない。
だが、狙撃手が居るのなら、撃つのはこの瞬間しかない。
日本一の狙撃手はそれを理解していた、だから躱した。
相手に猛攻に耐えに耐え、ようやくもぎ取った絶好の攻撃機会を、いるかも分からない狙撃手を炙り出すために使い捨てたのだ。
狙撃でこの男を仕留めるのは事実上不可能に近い。
出来るとするならば、よほど巧みに彼の認知外を付くか、数キロ離れた位置からの超長距離スナイプくらいのものだ。
だが、そんな芸当出来る人間は世界中ひろしと言えでも片手の指ほどもいないだろう。
倒れこむほど上体をのけぞらせた体制のまま、成田は肩のストラップを回してライフル銃を構える。
それは弾切れして重しになるだけのレミントンM700を捨て、代わりに回収しておいた六紋兵衛のライフル銃だった。
カウンタースナイプ。
成田への射線が通ったという事は、相手への射線も通ったと言う事だ。
日本一の狙撃手は倒れこみながら、スコープすら覗かずに引き金を引く。
狙いをつけるまでもない、相手の位置は放たれた弾丸が知らせてくれた。
放たれた弾丸は超電磁砲の辿った軌跡を寸分違わず辿って行き、
「………………え?」
パァンと弾けるような音と共に、役場に赤い花が咲いた。
■
弾丸は吸い込まれるようにひなたに迫り、パァンと頭部で弾けた。
皮肉にも、彼女の頭部を撃ち抜いたのは大師匠である六紋名人の銃だった。
ひなたの体は弾かれたように後方に吹き飛び、そのまま仰向けに倒れこんだ。
ペンキでもぶちまけた様な朱が執務室のカーペットを汚す。
「いやぁああああああああああああッッ!!」
少女の甲高い悲鳴が執務室に響き渡った。
目の前で友人の頭を撃ち抜かれ、半狂乱になりながらうさぎは倒れたひなたの下へ駆け寄る。
「ひなたちゃん!? ひなたちゃん……ッッ!」
「…………ぁぁ…………ぁっ」
呼びかけに、ひなたの喉奥から喘ぎのような掠れた声が上がった。
まだ死んではいない。
飛来した弾丸は頭蓋を貫いてはおらず、丸い頭蓋を滑ったようである。
大量の出血はしているが、少なくとも即死ではない。
「ッ! 待ってて!! すぐにみんなを呼んでくるから!!」
そう言ってうさぎが執務室を飛び出し、休憩室にいる3人を呼びに行った。
ほどなくして慌ただしい足音と共に4人が執務室になだれ込んだ。
「これは…………っ」
凄惨な光景に思わず月影が口元を押さえた。
雪菜も表情を歪め顔色を青くしている。
「すぐに治療を……! お願いします!」
懇願するようなうさぎの声に、事態の凄惨さに固まっていた全員が動く。
「夜帳さん、これを!」
はすみが執務室に置かれていた雪菜の手当に使用された救急箱を手渡す。
だが、その中身を確認した月影は厳しい表情を返した。
「…………ダメだこれじゃ道具が足りない」
応急手当て用の救急箱では、これほどの重傷者を治療するのは厳しい。
「哀野さんはとにかく清潔で使えそうなタオルか布を持ってきてください!
うさぎさんは給湯室からお湯を! はすみさんは僕の治療を手伝ってください! 急いで!!」
「あっ……は、はい……!」
緊急事態であるため、月影が珍しく声を張って指示を出した。
混乱した頭に明確な指示を叩きこまれ、その指示を受けたうさぎたちは弾かれるように動き出す。
誰もその指示に疑いを持つ余地もなく反射的に行動を始めた。
だが、その指示はあまり適切ではない。
役場にある何かを集めるのなら、役場を良く知るはすみに収集の指示を出すべきだ。
指示を出した月影も混乱していた可能性はあるだろうが、もちろんそうではない。
うさぎと雪菜の2人が飛び出し。
執務室に残るのは血だまりに沈む瀕死となったひなたと、吸血鬼とその眷属。
実に都合のいい状況だ。
「はすみさん。彼女たちが戻ってこないか周囲を見ていてください」
「はい。わかりました~」
周囲への警戒をはすみにまかせ、月影はひなたに向き合う。
改めて地面に広がる血の海を見た月影の感想は。
「――――もったいない」
これである。
地面に零れてしまったものを舐めとるような下品な真似はできない。
咽かえるような血の匂いに、もう勃牙を押さえきれない。
地面に横たわるひなたの体を起こす。
まだ温かい首元に牙を突き立てんと涎が糸を引く口を開いて、その鋭い牙を覗かせる。
さぁ、食事の時間だ。
「ぅ…………ぁ……」
意識も曖昧になった虚ろな瞳が揺れる。
恵子の死体に刻まれていた噛み跡を誰が付けたのか。
そのこれ以上ない証拠が、今、彼女の目の前にあった。
だが、彼女の虚ろな視線は別のものを見ていた。
恵子の仇を知るための大切な情報。
それよりも、ひなたの興味を惹くモノ。
それは先ほどまで戦場の様子を覗き見るために使っていた鏡だった。
正確に言えば、その鏡に映る自分自身の姿だ。
弾丸の滑った頭皮は捲れ上がり、その頭部は白い頭蓋が露わになっていた。
その頭蓋も衝撃によって一部が砕け、ヒビの隙間からぶよぶよとしたピンク色が覗いている。
それは追い求めていたモノ。
ずっと見たいと思っていたモノ。
――――脳だ。
動物の贄にするまでもなく。
誰かを傷つけるまでもなく。
観察したいと思っていた汚染された脳はすぐそこにあったのだ。
首筋に熱した鉄杭のような何かが刺さった。
命の熱が消えてゆくのが分かる。
命の間際。
灯が消えるその瞬間。
ああ、ずっと調べたいと思っていたものがすぐそこに在るのに、体が動かない。
自分の死んでゆく事よりも真実が知れない事こそが口惜しい。
きっと血筋なのだろう。
父の、あるいはもっと、奥底にある血の業。
この血が流れている限り、この宿業からは逃れられない。
この知的好奇心こそが彼女のどうしようもない本質。
追い求め、ただ知りたい
命を知りたい。
それがきっと彼女がずっと追い求めていたモノ。
死の間際にして己の答えを知ったのだ。
「月影さん! ひなたさんは!?」
勢いよく扉が開かれ、沸いたお湯の入ったやかんを手にしたうさぎが執務室に戻ってきた。
だが、ひなたの傍らで治療に当たっていた月影は沈痛な面持ちで静かに首を振る。
「……力及ばず申し訳ありません。既に、手遅れでした……」
「…………そん、な」
うさぎの手から力なくやかんが落ちて、執務室の床に湯がぶちまけられる。
その後ろで、同じく戻って来た雪菜が両手にタオルやシーツを抱えた状態でその言葉を聞いていた。
無念を込めた苦しそうな表情で月影が告げる。
「烏宿さんは……お亡くなりになりました」
【烏宿 ひなた 死亡】
■
「――――――悪くない腕だったが、素人だな」
素早く倒れかけていた体勢を立て直しながら、成田はそう呟いた。
狙撃手であれば、狙撃が成功しようが失敗しようが、撃った時点でその場を即座に離れている。
かく言う成田も相手の術中にハマって同じ愚を犯し、ハヤブサⅢ相手に痛い目を見ている。
これは狙撃手としての基本だ。
そうしなかったと言う事は、恐らく狙撃手ではなく猟師かスポーツ射撃で腕を磨いた類の人間だろう。
「…………貴様ッ」
同じく体勢を立て直した創が、睨み付けるようにして怒りを向けた。
ここからでは弾丸の行く末は分からないが、その結末は予測できる。
成田はその怒りを涼風のように受け流して肩を竦める。
「おいおい。なに怒ってんだよ。人様を撃ったんだから、撃ち返される覚悟くらいはあったはずだろう?」
戦場では当然の理屈。
撃っていいのは撃たれる覚悟のある人間だけだ。
「……違う、それは"こちら側"の理屈でしかない。
普通に生きてきた人間を、撃たねば生きていけない状況にまで追い詰めたのはお前たちだろうが!」
自分のような悲劇を他の誰にも味合わせないために。
誰も銃を足らずに済む世界にするために。
少なくとも創はその為に自ら銃を手に取った。
だから今回も、他のみんなには後方支援に徹して貰って、自分だけが前に出た。
こうならないようにひなたにも釘を刺しておいたのに。足らなかった、実力が。
創が追い詰められなければひなたも撃つ必要もなかったはずだ。
その結果がこれか。
「はっ。青いねぇ」
青い理想を鼻で笑って、弾切れしたライフル銃を投げ捨てる。
残る武器はナイフが2本と銃が1丁。
身を軽くした成田は一本のナイフを構える。
その構えに合わせたように創が動く。
繰り出すは強化した身体能力を生かした最短最速の一撃だ。
己の不甲斐なさに対する怒りを乗せたような創の一撃。
それを、成田は防いだ。
当然だ。どれだけ速かろうとも、素人ではないのだ。
真正面からの一撃など通るはずもない。
「がぁぁあああああああッッ!!」
創が咆哮を上げる。
この一撃は受けられたのではなく受けさせた。
受け止められたナイフを技術ではなく、正面から力で押し切る。
今の創の力ならば、それで押し切れる。
「なっ……!?」
「おっ……」
驚きは互いの口からあった。
ナイフと包丁の鍔迫り合いは当たり前に成田が勝利した。
成田が何をしたわけでも、創が何をされたわけではない。
創の力がガクンと落ちたのだ。
異変は創の中でおきていた。
と言うより、異変がなくなったと言った方が正しいか。
創に施された異能『線香花火』の効果が切れたのだ。
一瞬の閃光を放ち、落ちて消えるが線香花火である。
成田がナイフを振り抜き小兵である創が弾き飛ばされる。
僅かに後退した創はすぐに体勢を立て直す。
すぐさま包丁を持ち直し、再度攻めの手を強めた。
異能の補助がなくとも創にはこれまで培った技術がある。
身体能力が元に戻ろうとも近接戦の技量はまだ創が上だ。
隙間なく攻めたてる斬撃の嵐。
だが、先ほどまでに比べて、防ぐ成田にも幾分か余裕ができた。
余裕が出来れば反撃にも転じられる。
殆ど隙間のない連続攻撃だが、全く隙のない先ほどまでの猛攻に比べればいくらか温い。
連続攻撃の隙間を縫って、成田はあえて前に踏み込み、体当たりする様に体ごと衝突させる。
覆しようのない重量差。身の軽い創の体は後方に弾き飛ばされた。
間合いが開き、特殊部隊の腕が揺らめいた。
銃を引き抜くべくガンホルダーに手がかかる。
西部劇のごとき、神速の早打ち。
彼に対峙した者は0.2秒後に額に穴が開いているだろう。
廃村に銃声が響く。
「く…………ぅっ!」
呻くような痛みの声。
それは創ではなく、成田の口から上げられた物だった。
撃ち抜かれたのは成田の手だ。
小口径の銃だったのか、防護服を貫くことはなかったが。
成田が腰元の銃を引き抜くよりも早く、正確にその手元を撃ち抜いていた。
風に流れる硝煙の先を辿る。
そこにあるのは風に揺れる蒼天のような青い髪。
驚きに目を見開いた創が呼ぶ。
「し、…………師匠」
そこに居たのは創の命を救い、全てを教えた師。
最強のエージェント、青葉遥だった。
そして、その背後にその少年は立っていた。
荒廃した村に佇むは、山折の名を冠す次代の長。
どう言う心変わりか、逃げたはずの山折圭介がそこに居た。
死んだような闇に囚われた眼。
その瞳は絶望の最中にありながら、奥底に黒い炎を宿している。
圭介は目の前で最愛の恋人を失った。
呆然自失としていた状態で、なすがままに逃げ出してしまった。
そうして逃げ延びて、命の危機が去ったところで。
ようやく実感と絶望が心に到来し始めた。
そこで沸いてきたのは身を焼く黒い灼熱。
――――――怒りだ。
あらゆる絶望と共にその衝動が身を焼いた。
永遠に消えない炎。
この炎消すにはどうすればいい?
灼熱に焼かれながら自問する。
村を取り戻す?
光を取り戻す?
もう取り戻せない何かを、失った全てを取り戻したい。
大事なモノを奪った全てをぶち壊してしまいたい。
相反する考えが頭を支配して気が狂う。
いや、とっくに狂っていたのかもしれない。
その為にどうすればいいのか。
この先、自分が何かをしたいのか。
いっそ光と一緒に死んでしまうのもいい。
どれが正解なのか、全ては闇に沈み何一つ分からない。
だが、ただ一つだけ確かなことがある。
「光を殺したお前を殺さないと―――――俺の明日が始まらない」
殺意と言う名の漆黒の炎を抱え。
最愛の恋人を殺した特殊部隊を差す。
そうでなければ始まらない。
そうしなければ次の一歩を踏み出せない。
何をするにしても、それだけは確かだ。
だから。
「殺せ―――――――」
――――この復讐を成し遂げる。
命令を完遂するべく青が動く。
だが、如何に最強のエージェントとしての性能を十全に発揮しようとも。
圭介のゾンビ集団を1人で壊滅させた成田に対して、その一兵でしかなかった遥が敵うはずもない。
再度、銃撃を行おうとする遥を撃ち落とすべく成田が銃口を向ける。
だが、そこに横から創が割り込んだ。
創の斬撃を避けた成田の肩に遥の弾丸が撃ち込まれる。
その衝撃に思わずナイフを取り落とす。
落ちたナイフが地面につく前に、創が遠くに蹴り飛ばし。
蹴りの勢いのまま回転した創の回し前蹴りが成田の胴に見舞われた。
「…………ッ」
たたらを踏みながら下がる。
打撃自体は防護服の性能もあり、大したダメージはない。
だが、その打撃によって体勢が崩されては、その隙をついて防護服を突破できるだけの一撃を喰らいかねないため迂闊に貰う訳にはいかない。
体勢を立て直した成田が構えを変える。
美羽から徴収した予備のナイフを左手に持ち替え、右手に銃を手にした。
腕をクロスさせ銃とナイフを同時に扱うCQCの構え。
遠近同時に対応するにはこれしかない。
遥が後方から射撃を行い。それに合わせた様に創が前に出た。
示し合わせたように師弟の動きが連動する。
連係と言うより、遥の動きを創が上手く利用しているような形だが。
前回の戦いとの最大の違い、それは己の意思を持って判断するプロ、創の存在だ。
思考は一流だが、身体能力の足りない子供。
身体能力は一流だが、思考の停止したゾンビ。
半人前が2人で一人前と言ったところか。
成田は創の斬撃を受け止めつつ、遥に向かって牽制の弾丸を放つ。
どれほどの連携を見せようとも警戒すべきは防護服を突破できる武器である。
異能によって強化された包丁とデザートイーグル。
いずれも創の持つ武器である。創にさえ警戒を裂いていれば致命的な傷を負う事はない。
そうやって創へとの警戒を強めた所で、創が後方へと引いた。
入れ替わるように後方で射撃を行っていた遥が前に飛び出す。
流れるように前衛と後衛がスイッチする。
そのすれ違いざまに創の持っていた包丁が遥へと投げ渡された。
前衛には異能の刃、後衛には大口径のマグナム銃。
両方が殺せる武器を手にしている。
これは流石の成田と言えどもマズイ状況だ。
いずれの攻撃も貰えない絶体絶命とも言えるこの状況で、成田は咄嗟に銃を構えた。
銃口の向ける先は遥でも創でもない。
唯一の隙とも言える存在、圭介だ。
圭介を殺せば遥も止まるだろうし。
遥を守護るように遥が動けばそれはそれで隙が出来る。
起死回生の一手。
だが、圭介に狙いをつけた成田が眼を見開く。
成田が見たのは、ダネルMGLを構える圭介の姿だった。
遥ごと吹き飛ばすつもりなのだろう。
いや、むしろ後衛を務めていた遥が前に出たのはこのためだ。
躊躇うことなく圭介がその引き金に手をかける。
「何をしているんだッ!?」
それに反応した創が横から圭介の腕を跳ね上げる。
狙いを逸れ、上方に放たれた砲弾は明後日の方向に着弾し、木造の廃村は爆音と共に炎に包まれた。
火種が舞い飛び、炎の波は容易く民家に広がって行く。
「邪魔をするな!!」
「師匠ごと殺すつもりか!?」
「そうだ! それがどうした!?」
「ッ!?」
圭介の目的はあくまで成田を殺すことだ。
遥かも創も、その目的のために利用できるから利用しているに過ぎない。
吹き飛ばすことにも躊躇いはない。
「これを見ろ! 村が燃えている! キミの村だろう!?」
炎が村を焼く。
木製の民家ばかりの古民家群では火の手は矢のように広がって行く。
全てをなかった事にするかのように。
自分の手で復讐を成し遂げるために自分の村を燃やしている。
「構うものかッ!」
「なッ!?」
一番大切な物を喪って、圭介はようやく理解できた。
決断するという事は何かを切り捨てる事。
それが出来なかったから大切な物を失ってしまった。
気喪杉の時や、前回の成田との戦いでは知り合いを巻き込んで撃つことはできなかった。
身内への情の厚さ。村に対する郷土愛。
それらが決断を躊躇わせた。
その甘さが、光を殺した。
だから。
復讐を成し遂げる。
その目的を達するためなら、全てを切り捨てる覚悟を決めた。
既に失われた大切な物のために大切な物を切り捨てる。
例えこの村を滅ぼしたって構わない。
例え全てを滅ぼすことになろうとも成し遂げる。
そんな矛盾した正義を実行すると決めた。
「おいおい、仲良くしろよ若人ども」
遥の相手をしながら揉めている2人を揶揄する。
暴走する圭介を止めるために創が掛かりきりになって今、成田の相手をしているのは遥だけだ。
如何に最強のエージェントと言えどもゾンビとなった状態では大した脅威になりえない。
連係が崩れたその隙をついて、成田が後方に跳躍した。
その先には飛び火した炎で炎上する家屋があり、その中へと飛び込んだ。
炎と黒煙が吹き荒れる生身の人間では飛び込めぬ地獄。
だが、あらゆる極限環境を想定された防護服には耐火性能も含まれる。
成田のみが飛び込める炎の道だ。
「ッ! 逃がすな! 追え、殺せ!」
王による絶対命令。
意志のないゾンビは躊躇なく炎の中に飛び込んでいった。
「師匠っ…………くっ」
引き留めようと伸ばした手は炎に煽られ遮られた。
創の脳裏にノイズが奔る。
燃え盛る民家。創の奥底のトラウマを呼び起こさせる。
創は渦中に飛び込むことが出来なかった。
だが、このまま放っておけば成田は民家を突っ切り逃亡していた恐れがある。
ここで特殊部隊を仕留めるのなら足止め役は必要だった。
圭介にその意図は無かろうが、炎を恐れぬゾンビを向かわせるのはこれ以上ない妙手だ。
もっとも、犠牲をいとわぬと言う前提であればの話だが。
代謝の落ちたゾンビであれば呼吸も少なく、生身の人間よりは黒煙の中で活動は可能だろう。
だが、生命活動を行っている以上、まったく呼吸を行わない訳ではない。
炎に焼かれれば火傷も負うだろう。炎の中ではまともに戦うのは不可能だ。
かと言って、建物のどこにいるのか分からなくては外から援護のしようもない。
だが、それは遥の身の安全を考えればの話である。
圭介からすればグレネードランチャーで建物ごと吹き飛ばせば済む話だ。
そう考えた圭介がダネルMGLを構えようとした所で、それを創が制した。
体術に関しては技術に天と地ほどの差がある。
創はあっさりとダネルMGLを取り上げ、そのまま遠くへと弾き飛ばした。
「貴様ァ…………っ!」
復讐の邪魔をする創に、圭介が憎悪の籠った瞳で睨み付けるが知った事ではない。
素人に武器を持たせてもろくなことがない。
だがどうする。
中の様子は分からない。
創は炎には近づけない。
かと言って、圭介は味方のようで味方ではない。
外から適当にマグナムを撃ちこみ、遥に当たってしまっては目も当てられない。
自身一人では打開できない状況に思い悩む創。
だが、遥がいつまでもつかもわからない以上、いつまでもそうしている時間はない。
一か八か賭けに出ようとした所で。
「どうしたんだ!? 助けがいるなら手を貸すぞ」
そこに救いの声があった。
■
到達した一発の弾丸によって村役場の状況は一変していた。
もはや村役場は安全圏ではなくなった。
ここからも狙撃されるかもしれないと言う恐怖は全員に刻まれた。
迂闊に窓際に近づけないのはもちろんの事、窓際に近づけないという事は戦況が確かめられないという事だ。
創はまだ戦っているのか、それとも既に殺されたのか、それを確認することすらできない。
ひなたの死体には雪菜の持ってきたシーツを白布のように覆いかぶせることで弔っていた。
死体に布を被せたのははすみである。
それは死者の尊厳を守るためと言うより、噛み跡と言う証拠を隠すための隠匿行為だ。
死体を直視できなかった少女たちにそれに気づくことはできなかった。
実際の所、ひなたはすでに致命傷だった。
銃撃を受けた瞬間を見ていたうさぎと言う目撃者もいる。
別の可能性を疑う者はいない。
月影が行ったのは最後にお零れを一口頂いただけ。
確かに美味だったが、ひなたを見立てた魚料理と言うより食前のドリンク程度の味わいだった。
奪えた異能も一口分だけ、精々が10%と言ったところか。
それでも、同系統の異能である恵子から奪った『雷撃』と合わせればそれなりのモノになるだろう。
4人はひとまずひなたの死体を執務室に残して、1階のロビーに集まっていた。
窓際から遠く出口に近いそこで今後の対応について緊急会議を行っていた。
事は一刻を争う。
ひなたが狙撃されたと言う事は、特殊部隊がこの役場に標的がいると認識したという事である。
もしかしたら既に創を倒して、殲滅のためにコチラに向かっているのかもしれない。
戦うにせよ逃げるにせよ、すぐに決断を下さなければならない。
「すぐに援護に向かうべきよ」
そう強く主張するのは雪菜である。
もう誰かを見捨てる自分には戻りたくない。
今も戦っているかもしれない創を放ってはおけない。
「う、うん。そうだね……助けに行かないと!」
その意見に同意するのはうさぎである。
目の前でひなたを撃ち殺された悲しみや恐怖を押し殺して、強く拳を握りしめた。
「いいや、天原くんには悪いが、最悪の事態を考えて動くべきだ。
最初にも言いましたがまずは我々の安全が第一、今は生きることを考えましょう」
反対意見は月影から。
月影は最初に主張していた通りの逃げの一手を提案する。
特殊部隊は倒せるのなら倒したかったが、それも自分の安全が第一だ。
当初の目的であるリンを奪った宇野の住所はどさくさに紛れてはすみが手に入れている。
既にこの役場に用はない。
「そうね、私もそう思う」
「…………お姉ちゃん」
眷属であるはすみは当然月影に従う。
その様子にうさぎは戸惑うような悲し気な視線を向けた。
「何を言うんです、戦うのはみんなで決めた事じゃないですか? はすみさんだって戦うつもりだったでしょう!?」
前言を翻し男に付和雷同する女に雪菜は不快感を示した。
どれだけ穏やかな人格者であろうとも、男が絡むと豹変する女とは、やはり相容れない。
「そうですが、状況が変わった。あれは相手がこちらに気づいていない有利な状況だったからこそ受け入れられた提案だ。
敵がこちらに気づき、迫っているかもしれない状況では逃げるしかないでしょう?」
「あなたには聞いてないわ、月影さん……!」
はすみを庇うように答弁する月影に苛立ちをぶつける。
元より激昂しやすい性質だ、雪菜も感情的になって来た。
「二人とも喧嘩をしないで~。それに戦うと言っても、銃を使えるひなたちゃんが殺されてしまったし。うさぎも喧嘩なんてできないでしょう?」
「それは……」
うさぎには武術の心得もない。
ただのか弱い女子高生である。
戦闘になったらただの足手まといにしかならない。
それは本人も自覚している。
「けど……異能を使えば、2時なればトラミちゃんを呼べるよ……!」
うさぎは戦えずとももうじき2時を迎える。
十二支の中でも戦闘力に置いては最強クラスとなる、虎の時間だ。
「う~ん。そうだとしても優しいあなたにとっては動物に戦わせるのも辛いことでしょう?」
「っ……それは」
特殊部隊の男にスネスネちゃんが引き裂かれた瞬間が脳裏に思い出される。
うさぎにとっては人間も動物も等しく友である。
動物を戦わせるためだに呼んで、傷つけてしまう事は彼女にとって何よりも辛いはずだ。
「だから止めておきましょう、あなたを思っての事なのよ~」
うさぎをよく知るからこそできる、相手を気遣う優しさを装った残酷な言葉だ。
普段のはすみでれば絶対にこんな事を言うはずがない。
「やっぱりおかしいよ……どうしちゃったの? お姉ちゃん」
「うさぎ…………?」
うさぎが困惑をぶつける。
はすみはどうしてそんな事を言うのか分からないと言った風に首を傾げた。
仲の良かった姉妹の間に不穏な空気が流れ始める。
「お待ちください。お互い思う所はあるでしょうが、今はまずどうするかを決めるべきだ」
「そうね。そこに関してだけは同意するわ。犬山さん、今は抑えて」
月影に同意するのは業腹だが、事態が差し迫っているのは事実である。
早急に次の行動を決めねばならない。
多数決は2対2の同票。
行動方針に関して完全に意見が割れているのだから、それぞれが別行動をとるのが落としどころなのだろうが。
うさぎとしてはせっかく再会できた姉と三度離れるのは嫌だ。
様子のおかしくなった姉を放置するのも気持ちが悪い。
月影としてもうさぎと雪菜はごちそうだ。格好の獲物をできれば逃したくない。
全員で行動したいという動機はそれぞれにある。
かと言ってこのまま揉めていても何も方針も決まらずただ互いの溝が広がってゆくだけである。
そこに特殊部隊がやってきて全滅なんて最悪の事態になりねない。
どうにかして落としどころを引き出さなくては。
だが、そこに助けの声があった。
コンコンと、自らの存在を誇示するように扉をノックする音。
全員がその音に視線を向けると、そこには人形のような小さな少女が立っていた。
「May I help you? 何かお困りかしら?」
※F-6役場前にマウンテンバイクが駐車されています。
【F-6/役場1階・ロビー/一日目・午後】
【
天宝寺 アニカ】
[状態]:異能理解済、疲労(小)、精神疲労(小)、悲しみ(大)、虎尾茶子への疑念(大)、月影夜帳への疑い(大)、犬山はすみへの疑い(大)、決意
[道具]:殺虫スプレー、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ、スケートボード、ビニールロープ、金田一勝子の遺髪、ジッポライター、研究所IDパス(L2)、コンパス、飲料水、登山用ロープ、医療道具、マグライト、ラリラリドリンク、サンドイッチ
[方針]
基本.このZombie panicを解決してみせるわ!
0.May I help you? 何かお困り?
1.「Mr.ミナサキ」から得た情報をどう生かそうかしら?
2.negotiationの席をどう用意しましょう?
3.あの女(Ms.チャコ)の情報、癇に障るけどbeneficialなのは確かね。
4.やることが山積みだけど……やらなきゃ!
5.リンとMs.チャコには引き続き警戒よ。一応、Mr.ウスイとMr.ツキカゲにもね。
6.私のスマホはどこ?
[備考]
※虎尾茶子と情報交換し、
クマカイや薩摩圭介の情報を得ました。
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能を理解したことにより、彼女の異能による影響を受けなくなりました。
※広場裏の管理事務所が資材管理棟、山折総合診療所が第一実験棟に通じていることを把握しました。
※8年後にこの世界が終わる事を把握しました、が半信半疑です
※この事件の黒幕が烏宿副部長である事を把握しました
【
哀野 雪菜】
[状態]:異能理解済、強い決意、肩と腹部に銃創(簡易処置済)、全身にガラス片による傷(簡易処置済)、スカート破損、二重能力者化、月影夜帳への不快感(大)、犬山はすみへの不信感(極大)、異能『線香花火』使用による消耗(小)
[道具]:ガラス片、バール、
スヴィア・リーデンベルグの銀髪
[方針]
基本.女王感染者を探す、そして止める。
1.絶対にスヴィア先生を取り戻す、絶対に死なせない。絶対に。
2.天原さん、を助けに行きたい。
3.月影夜帳の視線が気持ち悪い。何か、品定めしているみたい……。
4.犬山はすみはまるで昔の母を見ているようで何一つ信用できない。
5.烏宿ひなたと犬山うさぎを守る。
[備考]
※叶和の魂との対話の結果、噛まれた際に流し込まれていた愛原叶和の血液と適合し、本来愛原叶和の異能となるはずだった『線香花火(せんこうはなび)』を取得しました。
【
犬山 うさぎ】
[状態]:感電による熱傷(軽度)、蛇再召喚不可、困惑
[道具]:ヘルメット、御守、ロシア製のマカノフ(残弾なし)
[方針]
基本.少しでも多くの人を助けたい
1.どうしちゃったの、お姉ちゃん……?
【
月影 夜帳】
[状態]:異能理解済、『威圧』獲得(25%)、『雷撃』獲得(75%)、『発電器官』獲得(10%)
[道具]:医療道具の入ったカバン、双眼鏡、不織布マスク、モデルガン、金槌
[方針]
基本.この災害から生きて帰る。
1.はすみと協力して、乙女の血を吸う
2.和義を探しリンを取り戻して、彼女の血を吸い尽くす。
3.特殊部隊が来るかもしれないこの役場からさっさと避難したい。
4.天原創から哀野雪菜を引き離し、彼女の血を吸い尽くす。
5.
[備考]
※哉太、ひなた、うさぎ、はすみの異能を把握しました。
※犬山はすみを眷属としています。
※袴田伴次に異能『威圧』の50%分の血液を譲渡していましたが、彼の浄化に伴い、消失しました。
※犬山はすみに異能『威圧』の25%分の血液を譲渡しています。
※天原創の異能が強力な戦闘向けの異能だと思っています。
【
犬山 はすみ】
[状態]:異能理解済、眷属化、価値観変化、『威圧』獲得(25%)、異能使用による衰弱(小)
[道具]:医療道具、胃薬、不織布マスク、スタンガン、水筒(100%)、トートバッグ、お菓子。宇野の住所録
[方針]
基本.うさぎは守りたい。
1.夜帳さんの示した大枠の指針に従う。
2.女性生存者を探して夜帳さんに捧げる。
3.安遠真実のデスクから宇野和義の住民基本台帳を探す。
4.夜帳さんに哀野さん、ひなたさんを捧げたい。
5.天原くんの処遇は夜帳さんに任せる。
6.………………うさぎ。
[備考]
※月影夜帳の異能により彼の眷属になりました。
それに伴い、異能の性質が神聖付与から吸血効果・神聖弱点付与に変わりました。
※天原創の異能が強力な戦闘向けの異能だと思っています
■
「八柳新陰流――――天雷」
炎上する民家の外壁が、落雷の如き鋭い斬撃によって切り裂かれた。
炎の中で青い最強と戦っていた成田はその轟音に目を見開く。
その目が、切り裂かれた切れ目。そこから覗くデザートイーグルの銃口を捉えた。
炎を裂くマズルフラッシュ。
撃ち込まれた弾丸を炎の壁をぶち破って避ける。
火の粉をまき散らし、壁をぶち抜いて外に飛び出す。
そして、その勢いのまま地面を転がって即座に立ち上がった。
その成田の行く手に、先んじて回り込む創が現れる。
後ろからは成田を追って、成田の開けた穴から遥も飛び出してくる。
自慢の青髪が煤けており、全身に軽い火傷を負っているようだが、まだ健在のようだ。
そして、創から僅かに遅れて成田にとって見覚えのない少年が現れた。
創と圭介の窮地に現れたのは八柳哉太。
アニカと共に南下していた哉太は村が燃えている事に気づいた。
黒煙と共に遠目からでもその異変は捉えられた。
うさぎたちを探す目的地であり、哉太にとっては祖父が道場を構える実家のある場所だ。
ひとまず安全のため、アニカに自転車を譲り先に役場に向かわせると、哉太は一人、炎上する村の様子を見にやって来た
そこに在ったのは見覚えのない中学生と、彼の幼馴染でありとある事件で決別した親友、山折圭介だ。
それは奇しくも、哉太の窮地に圭介が駆け付けた気喪杉の時と逆の構図になっていた。
圭介と哉太が睨み合うように視線を混じらわせる。
聞きたいことはいくらでもあったが、相手が村人にとっての共通の敵特殊部隊と言うのなら是非もない。
事情を聴くのを後回しにして、哉太は対特殊部隊の戦線に加わった。
「……まったく、次から次へと」
心底面倒そうに成田が愚痴る。
この村で任務を行う以上、特殊部隊以外の人間は全てが敵だ。
ある程度は敵の増援も受け入れねばなるまい。
創と哉太。そして背後には遥。
三方から囲まれ逃亡は不可能。
成田は冷静に戦況を分析する。
増えたのは日本刀を構えた少年だ。
恐らく同門なのか、その構えはゾンビ軍団の前衛であった少女に似ている。
構えの隙の無さや威圧感は同等程度だが、ゾンビでない分こちらの方が厄介か。
いずれにせよ、少年の構える刀は防護服を突破しうるだろう。
いずれも成田に及ばぬ半人前だが、それが3人ともなれば一人前を上回るだろう。
取り囲まれ、自身が危機的状況にあるのは理解できる。
あるのは実力に裏付けされた自信であり、自身の力を過信はしない。
「悪いな香菜、三香。今度の保育園のお歌の発表会、行けなさそうだ」
防護服のマスクの下で消え入るような小声で、誰に言うでもなく呟く。
そして、そんな呟きなど無かったかのように、特殊部隊の男は銃と刃を握り締めた。
そんな気負いなど億尾にも見せず、いつも通りの調子で言う。
「オラ、来いよガキども。遊んでやるよ」
特殊部隊の挑発。
それを合図にして、炎包まれ滅びゆく村の中で3人の少年と特殊部隊の決戦が始まった。
真っ先に動いたのは哉太だ。
銃撃を恐れず、地を這うような恐ろしく低い体勢で間合いを詰めるべく前へ。
成田も銃を構えその動きを潰さんとするが、後方から放たれた創の援護射撃によって制された。
間合いが詰められ、成田の足元に打刀による一撃が振るわれる。
八柳新陰流『這い狼』
成田はそれを後方に跳躍して避けるも、すぐさま立ち上がった哉太の二の太刀が成田を襲う。
長物の強みは間合いと重さだ。
長物による一撃はただそれだけで重い。
生粋のナイフ使いである大田原やオオサキならまだしも、成田では受ることは難しいだろう。
剣士が相手となれば、やはり近接戦では話にならない。
成田は端から紙一重などと言うことは考えず、大きく避ける事に徹する。
奇しくも、その動きが相手の受けを起点とする八柳新陰流『朧蟷螂』を封じていた。
哉太の斬撃を避けたところに横合いから遥が銃弾を撃ち込んだ。
ゾンビの反射行動だが、その狙いは的確。
成田は体勢を崩しながらもそれを避けるが、避けきれなかった一発が太腿に当たった。
防護服を貫かないまでも痛みが奔る。嫌がらせとしてはこれ以上ない。
そして、最も厄介なのはバランサーとして立ち回る創だ。
哉太に前衛を任せられる実力があると見るや後衛に回り援護射撃に努めていたが。
こうして隙を見ては間合いを詰め崩しに加わる。
音もなく間合いを詰めた創が、足元を撃たれ動きを止めた成田の膝を踏みつける。
そして体勢が崩れたところに振り下ろされる哉太の斬撃。
成田は咄嗟に身を捻りるが、袈裟に振り下ろされた斬撃が胸元を掠め、糸のような細い鮮血が舞う。
浅い。
薄皮が切れた程度の傷だ。
致命傷には程遠い。
だが、これで決着だ。
防護服は切り裂かれた。
防護服に穴が開いた以上、特殊部隊の人間は終わりである。
ウイルスに適応できる5%の奇跡に縋るしかない。
そんな奇跡が起きないことは誰よりも成田が本人が理解しているだろう。
「ハハッ!!」
だが、成田は止まらなかった。
決着に油断した創の体を蹴り飛ばすと。
降りぬいた刃を掴み、むしろ自らの体に押し付けるように固定する。
「なっ!?」
哉太が咄嗟に刃を引こうとするが固定された刃は動かず、一瞬その動きが固まる。
そこに容赦なく弾丸が撃ち込まれた。
「ご、ふっ…………」
腹部に3発。
撃ち込まれた弾丸が臓腑を掻きまわす。
血を吐きながら哉太が膝をついてその場に倒れた。
そして倒れこんだ頭部にトドメの一発。
「…………まず一人」
マガジンを交換しながら淡々と呟く。
これまで成田は、戦闘に一つの縛りを設けていた。
正確に言えば成田に限らず今回の任務に当たるSSOGの隊員全員に課せられた縛りである。
それは相手の武器よる攻撃を受けない事。
防護服というリスクを抱えている以上、攻撃の一掠りすら許されなかった。
実力及ばず喰らう事はあれど、出来る限りその前提で動かざるを得なかった。
その縛りが解かれたらどうなるのか。
その答えがこれだ。
あっという間に少年を血だまりに沈めた特殊部隊の背家は次の獲物に狙いをつける。
ウイルスに感染した以上、成田はここで終わりである。
だが、防護服が破れたところで、感染したウイルスがすぐに発症する訳ではない。
感染から発症するまで、いくらかの猶予がある。
なら話は簡単だ。
その猶予の間に皆殺しにすればいい。
「ハ、ハハッ!!」
邪魔な防護マスクを自ら剥ぎ取って鬼が笑う。
悪ガキを捕えんとする、捕まれば死の鬼ごっこ。
背後で村が燃え、炎が爆ぜる。
命が火花の様に弾けて行く。
国家が鎖を付けた殺人嗜好の狂犬の笑みが、炎に照らされ映し出された。
成田には二つの顔がある。
良き父の顔。快楽殺人者の顔
どちらかが嘘と言う訳でも、どちらかが隠れ蓑と言う事でもない。
そのどちらもが成田三樹康と言う男の真実だ。
両極にあるようなその価値観を一つの肉の器に内包する。
清濁併せ呑み、それを両立する天秤こそが人間だ。
故に、成田三樹康は誰よりも人間である。
だが、成田は異常者ではあるが、常識がないわけでない。
己が嗜好が世界から許されないモノであると理解している。
それを受け入れ居場所を用意してくれた特殊部隊にはそれなりに感謝をしている。
だからこそ、任務には命を懸けられる。
「さぁ、ショータイムだ―――――!」
次に成田が狙ったのは、若き天才エージェント天原創。
優先すべきは任務達成の障害となりうる相手である。
この中で一番厄介な相手はプロである創だ。
創に向かって、成田が駆ける。
防護服の性能をゴリ押した無謀な突撃。
自ら距離を詰める異様な行動だが、創はすぐさまデザートイーグルを構える。
そに対して、成田は避けるでもなく、盾の様に左手を突き出し手で覆うように射角を防ぐ。
引き金が引かれる。
41マグナム弾は防護服を貫き、そのまま手の平から肩へと抜けていった。
左手は潰れた。だが、傷付くことを前提とした突撃である。
受ける覚悟を決めた相手を止めることなどできはしない。
大口径の欠点。
大田原のような大男でもない限り、どう足掻いても反動によって一瞬の硬直が発生する。
まして創のような小兵ではなおさらだ。
自ら距離詰めたのは相手に撃たせるためだ。
片腕を捨てれば隙などどうとでも作れる。
「二人目」
「くっ…………!?」
避けようもなく、その一瞬を狙って弾丸が撃ち込まれた。
世界最高峰の狙撃手が外すはずもない。
弾丸は的確に急所を貫き、朱い血飛沫が炎の村に散った。
だが、その血は少年の物ではなかった。
庇うように割り込んだ青い髪の女から噴き出た物だった。
「し……師匠…………ッ!!?」
ゾンビの自由意思。体に染みついた動きの再現を行う。
青葉遥と言う女にとってこの行動は考えるまでもなく体が動くくらいに当然のモノだったという事。
その行動によって創の命は守護られた、だがその行為は二人の男の心的外傷を刺激した。
「ッぅうあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
発狂したような絶叫と共に、圭介が駆けだす。
身を挺して特殊部隊から少年を庇う女の姿が、自らを庇った恋人の光景に重なった。
駆け出した圭介は遥が落とした包丁を拾い上げ、成田に向かって特攻を計る。
それに反応した成田が咄嗟に相手を撃ち抜くが、両手で急所を守った圭介の突撃は止まらない。
先ほどの成田と同じだ、この突撃は撃たれる事を覚悟している突撃だ。
この銃にはそんな相手を止めるだけの威力はない。
「死ぃいいねぇええええッッ!」
「ぐ…………ぉッ!?」
間合いを詰めた圭介が僅かに開いた防護服の隙間目掛けて柳刃包丁を突き刺す。
だが、鍛え抜かれた軍人の分厚い胸板で刃が止まる。
「死ねッ!! 死ねぇッ!!!!」
圭介は構わず胸に刺した刃を押し込む。
グリグリと刃を押し込み、中の臓腑を抉って行く。
そして、吸血鬼化したはすみの異能により、この包丁には吸血の効果が付与されている。
刺した刃から注射器の様に血が吸い取られていった。
「ハッ。テメェも、死ぬんだよ――――――!!」
成田は血を吐きながら殺人を謳歌するように笑って、最後のナイフを振り上げた。
互いに命は捨てている。
互いに引くことなくただ相手を殺すためだけに刃を握り絞めた。
そして、成田は最後の力を振り絞り自らの胸を突き刺す圭介の頭目掛けてナイフを振り下ろした。
キィン、と言う音。
振り下ろされる直前で、どこからか投擲された刀が手元のナイフを弾いた。
投擲された方向を視界の端で見る。
致命傷を与えたはずの少年が血反吐を吐きながら刀を投げた姿があった。
少年の頭部に開いた穴からは、コルクを抜いたワインのように血が流れている。
その穴を塞ぐように周囲の肉が蠢き再生を始めていた。
脳と心臓を破壊されぬ限り再生を続ける異能。
頭部に打ち込まれた弾丸は、脳に到達する直前で頭蓋によって止まっていた。
最後の力を振り絞ったのか、そのままべしゃりと音を立て自らの血だまりに倒れる。
「ちっ……反則だろ」
忌々し気に舌を撃つ。
ギリギリの所で全員を殺し損ねた。
こっちは生身だと言うのに、どいつもこいつも反則じみている。
刃に吸われ成田の体から血液が抜けてゆく。
徐々に抵抗する力も弱まって行った。
意識も徐々に白み始めた。
よき父として、よき殺戮者として、成田はよく生きた。
いつ死ぬともわかぬ仕事だ、妻と娘には常に愛を伝えてきた。
心残りがあるとするなら、殺戮者としてガキどもを殺しきれなかった事か。
「クソ、ガキどもが…………」
「死ぃぃいぃいいいいいぃぃいいねぇえええええええええええぇぇッッ!!!!」
絶叫が意識を引き戻す。
圭介に押し切られ、成田の体が倒れる。
そして、地面に倒れこんだ衝撃によって、押し込んでいた刃が心臓に達した。
ごぷりと、塊のような血を吐いて、特殊部隊の男が絶命する。
終わってゆく村。
燃えさかる炎の中。
己が快楽のために他者の命を喰らう悪鬼、成田三樹康はここで潰えた。
その決着があった傍らで、創は自らを庇った恩師を抱えていた。
焼き尽くす様な周囲の暑さと冷たいゾンビの肌。
対極の熱を感じながら、腕の中で尽きて行く命を感じていた。
「ぅ……………ぁっ」
それはいつかの光景を脳裏に想起させる。
「……く………ぁ!!」
炎に包まれる町。
ただ一人の悪鬼羅刹に蹂躙される人々。
そして、己を救った青い髪の女。
「ぁ………………あぁ…………ッ!!」
頭が割れそうなほどの酷い頭痛だ。
記憶の奔流に創が頭を抱える。
その時、右手が自ら頭に触れた。
―――――異能の強化。
それはウイルスの脳へ定着が進む程にその効果は強まっていくと言うものだ。
創の異能はその右手で触れたウイルスによって引き起こされる現象の否定。
いわば零にする異能である。
強化されようとも零は零。
効果は変わらぬものだと思われたが、強化されたのはその対象だ。
彼の異能は、ウイルスによって引き起こされる現象のみならず、引いては『その元』となった存在の干渉すらも否定するにまで至るようになった。
カチリと、脳内の枷が外れ、記憶の鍵が開かれる。
記憶の中にある陰のかかっていたシルエットが晴れてゆく。
燃える街。多くの死。
その中心に人間離れした巨大な体躯の男が立っていた。
炎を照り返す獅子の鬣のような黄金の髪。
燃えるような赤い瞳は鮮血のように鮮やかな光を放っている。
そして何より目を引く、鏡のように輝く右足。
炎の中にたたずむその姿は、まるで――――魔王だ。
「ぅぅわあああああああああああああああああああああ!!」
少年の絶叫は炎の中に飲まれてゆく。
叩き付ける様な記憶の奔流に、創の意識はそこで途絶えた。
「光の仇だぁあ!!! 死ね、死ねぇえええッ!!」
圭介は叫びを上げながら、とっくに死んでいる成田の体を何度も刺し続けていた。
ゾンビにして操るつもりなど毛頭ない。
この男だけは自らの手で殺さなければ気が済まない。
そうして、何度も何度も刺し続け。
穴だらけの死体が返り血すら返さなくなった所で、ようやく息を切らしながら手を止める。
ゆっくりと身を離し、返り血を浴びて全身が真っ赤に染まった圭介が立ち上がった。
その手には吸血の異能によって血を吸い赤く染まった刃。
炎に包まれる赤い世界。
創は記憶の奔流に意識を失い。
頭部と腹部に弾丸を受けた哉太は、立ち上がることもできず傷口を押さえながら血に染まった幼馴染の姿を見上げていた。
怒りとも悲しみとも付かない深い闇に包まれた瞳。
周囲を焼く炎よりも目引くような黒い炎。
その暗い瞳が、哉太を見下ろす。
初めて会った相手を見る様な寒気がするほど冷たい瞳だ。
哉太の知る優しくも頼もしかった光は見る影もない。
「………………よぅ。哉太」
「圭…………ちゃん」
霞む視界で見上げるその姿は、不気味な魔王のようだった。
【成田 三樹康 死亡】
※E-5を中心に古民家群に大規模な火災が発生しています。
※E-5にダネルMGL(2/6)が転がっています。
※E-5に脇差(異能による強化&怪異/異形特攻・中)が転がっています。
【E-5/古民家群/一日目・午後】
【
山折 圭介】
[状態]:血塗れ。左手と肩に銃創、鼻骨骨折(処置済み)、右手の甲骨折(処置済み)、全身にダメージ(中)
[道具]:懐中電灯、予備弾5発、サバイバルナイフ、上月みかげのお守り、赤い柳刃包丁(強化済、吸血効果・神聖弱点付与)
[方針]
基本.VHを解決して……?
1.???
2.???
3.???
[備考]
※学校には日野珠と湯川諒吾のゾンビがいると思い込んでいます。
【
天原 創】
[状態]:気絶。異能理解済、記憶復活、犬山はすみ・月影夜帳への警戒(中)
[道具]:???(青葉遥から贈られた物)、ウエストポーチ(青葉遥から贈られた物)、デザートイーグル.41マグナム(0/8)
[方針]
基本.パンデミックと、山折村の厄災を止める
1.この記憶は……
2.スヴィア先生を取り戻す。
3.スヴィア先生と自分の記憶の手がかりを探す。
4.月影夜帳らからの情報はあまり信頼できないが、現状はそれに頼る他ない。
5.珠さん達のことが心配。再会できたら圭介さんや光さんのことを話す。
6.「Ms.Darjeeling」に警戒。
7.烏宿ひなたから烏宿暁彦について知っていることを聞きたい。
8.ゾンビ化した師匠が気に掛かる
※上月みかげは記憶操作の類の異能を持っているという考察を得ています
※過去の消された記憶を取り戻しました。
※山折圭介はゾンビ操作の異能を持っていると推測しています。
※他にも雪菜、ひなた、うさぎの異能による支援を受けているかもしれません。
詳細は後の書き手にお任せします。
【
八柳 哉太】
[状態]:瀕死。異能理解済、頭部と腹部に数発の銃創(再生中)、左耳負傷(処置済み・再生中)、疲労(中)、精神疲労(中)、怒り(大)、喪失感(大)
[道具]:打刀(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、双眼鏡、飲料水、リュックサック、マグライト
[方針]
基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く
0.圭ちゃん……
1.アニカを守る。
2.山折診療所に向かい茶子姉と合流する
3.ゾンビ化した住民はできる限り殺したくない。
4.いざとなったら、自分が茶子姉を止める。
5.念のため、月影夜帳と碓氷誠吾にも警戒。
[備考]
※虎尾茶子と情報交換し、クマカイや薩摩圭介の情報を得ました。
※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確認しました。
※リンの異能及びその対処法を把握しました。
※広場裏の管理事務所が資材管理棟、山折総合診療所の地下が第一実験棟に通じていることを把握しました。
※8年後にこの世界が終わる事を把握しました、が半信半疑です
※この事件の黒幕が烏宿副部長である事を把握しました
最終更新:2024年01月09日 15:46