砂の城 ◆7WJp/yel/Y
日が真上に聳え出した昼時、自然の匂いと言う抽象的だが確かに感じるそれに溢れたのどかな島が一つある。
ぽかぽかと心地よい陽気と目に優しい緑が溢れたのどかな島には似つかない血と亡骸に溢れていた。
なぜならば、この島は革命組織・我威亜党によって『殺し合い』の会場に選ばれたから。
ぽかぽかと心地よい陽気と目に優しい緑が溢れたのどかな島には似つかない血と亡骸に溢れていた。
なぜならば、この島は革命組織・我威亜党によって『殺し合い』の会場に選ばれたから。
そして、殺し合いという人と人が傷つけ合い欺きあう場所では異様な五人(?)組が一つ存在していた。
内訳は男が一人、女が三人、生き物かどうかも判別できない物が一つ。
男は野球のユニフォームに身を包んだメガネの男、凡田大介。
女の一人は濃い青のスーツに身を包んだ二十代半ばほどの女性、四路智美。
同じく女の一人は白色のブレザーに身を包み長い髪をポニーテールに纏めた女子高生、神条紫杏。
残りの女の一人は赤いセーター(少しだけ焦げている)にのっぺりとした顔が特徴的な女性、荒井紀香。
そして、生き物かどうかも判別できないもの、まるで幼子の落書きのような色合いをしたほるひす。
おおよそ共通点と言えるものもない五人組。
内訳は男が一人、女が三人、生き物かどうかも判別できない物が一つ。
男は野球のユニフォームに身を包んだメガネの男、凡田大介。
女の一人は濃い青のスーツに身を包んだ二十代半ばほどの女性、四路智美。
同じく女の一人は白色のブレザーに身を包み長い髪をポニーテールに纏めた女子高生、神条紫杏。
残りの女の一人は赤いセーター(少しだけ焦げている)にのっぺりとした顔が特徴的な女性、荒井紀香。
そして、生き物かどうかも判別できないもの、まるで幼子の落書きのような色合いをしたほるひす。
おおよそ共通点と言えるものもない五人組。
そんな五人組では会話も少ない。
少ないが、今はそれ以上に妙な空気が五人の間に漂っていた。
後方から聞こえてきた三つの銃声が原因である。
後方、つまり先ほど別れた九条達が少女を探索しに行った方向だ。
何かが起こった、それは小学生でもわかるほど簡単なことだ。
だのに、先頭に立つ智美と紫杏は一切振り向かずに黙々と病院へと歩を進める。
少ないが、今はそれ以上に妙な空気が五人の間に漂っていた。
後方から聞こえてきた三つの銃声が原因である。
後方、つまり先ほど別れた九条達が少女を探索しに行った方向だ。
何かが起こった、それは小学生でもわかるほど簡単なことだ。
だのに、先頭に立つ智美と紫杏は一切振り向かずに黙々と病院へと歩を進める。
「オーナー…………」
「……気にする必要はないわ。九条さん達がマシンガンで試し撃ちでもしたんじゃないかしら?」
「く、黒野博士も戻ってこないでやんすよ?」
「手伝いに行ったんでしょ。用が済んだら一緒に戻ってくるはずよ。
そんなことより、早く病院に居る人たちと合流しましょう。
私たちの持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」
「さっき、凄い音が……」
「……そうね、もう繕わないわ、戦闘になったかもね。それもあの女の子ではない別の女の子と。
で、どうするの? 銃が二つあるけど、それでどうするの?
助けにいくとか言うけど、貴方はその襲っている人間を殺すの?
……殺せないでしょ、貴方じゃ。なら、私たちはまず仲間と思える人間と会うべきよ」
「………………」
「大丈夫、九条って人は生きてるわよ。第一、あのロケット弾を見たら誰だって逃げ出すわ」
「……気にする必要はないわ。九条さん達がマシンガンで試し撃ちでもしたんじゃないかしら?」
「く、黒野博士も戻ってこないでやんすよ?」
「手伝いに行ったんでしょ。用が済んだら一緒に戻ってくるはずよ。
そんなことより、早く病院に居る人たちと合流しましょう。
私たちの持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」
「さっき、凄い音が……」
「……そうね、もう繕わないわ、戦闘になったかもね。それもあの女の子ではない別の女の子と。
で、どうするの? 銃が二つあるけど、それでどうするの?
助けにいくとか言うけど、貴方はその襲っている人間を殺すの?
……殺せないでしょ、貴方じゃ。なら、私たちはまず仲間と思える人間と会うべきよ」
「………………」
「大丈夫、九条って人は生きてるわよ。第一、あのロケット弾を見たら誰だって逃げ出すわ」
凡田の疑問に、智美はにべもなく否定の言葉を続ける。
顔も見せずに言葉を並べる智美に、凡田は怒りではなくやるせなさを覚える。
凡田だって分かっている、あの銃声は確実に戦闘の合図だ
そして戦闘になったということは九条達はピンチだと言うことだ。
ならば、助けに行きたい。九条はここに来て最初に出会った人間であり、良い奴だから。
だけど、智美の「持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」という言葉も分かる。
ここで智美に荷物を渡し、あの大正時代の人間たちから聞かされた情報を教えればいいのかもしれない。
だが、病院で全て話せばいいと思っていたので、智美たちには触りすら喋っていない。
一から話していたら、間に合わない。
かと言って、何も話さずにここを去っていくわけにはいかない。
何せこの中で『タイムマシン』の存在を知っているのは凡田だけだ(少なくとも凡田はそう思っている)。
顔も見せずに言葉を並べる智美に、凡田は怒りではなくやるせなさを覚える。
凡田だって分かっている、あの銃声は確実に戦闘の合図だ
そして戦闘になったということは九条達はピンチだと言うことだ。
ならば、助けに行きたい。九条はここに来て最初に出会った人間であり、良い奴だから。
だけど、智美の「持ってる武器と情報を多くの人間に知らせる必要があるわ」という言葉も分かる。
ここで智美に荷物を渡し、あの大正時代の人間たちから聞かされた情報を教えればいいのかもしれない。
だが、病院で全て話せばいいと思っていたので、智美たちには触りすら喋っていない。
一から話していたら、間に合わない。
かと言って、何も話さずにここを去っていくわけにはいかない。
何せこの中で『タイムマシン』の存在を知っているのは凡田だけだ(少なくとも凡田はそう思っている)。
それに、九条なら大丈夫かもしれないという安心感があった。
九条は自分よりも大人だと思ったし、何より凡田は会場に来てから一度も知り合いが死んでいなかった。
唯一の知り合いの二朱も、放送の前に出会った九条に智美、七原や布具里も死んでいない。
見せしめとして二人が死んでいたが、心のどこかでそれは別のことだと思っている部分も少なからずあった。
もちろん気を抜いているわけではない。
九条に死体があると聞かされた時は驚いたし、強力そうな銃を持って現れた少女を見た時は腰が抜けそうになった。
九条は自分よりも大人だと思ったし、何より凡田は会場に来てから一度も知り合いが死んでいなかった。
唯一の知り合いの二朱も、放送の前に出会った九条に智美、七原や布具里も死んでいない。
見せしめとして二人が死んでいたが、心のどこかでそれは別のことだと思っている部分も少なからずあった。
もちろん気を抜いているわけではない。
九条に死体があると聞かされた時は驚いたし、強力そうな銃を持って現れた少女を見た時は腰が抜けそうになった。
ただ、これだけ大勢の仲間と共に居て、さらに病院には別の仲間がいる。
その事実が凡田を少しだけ、ほんの少しだけ勘違いさせた。
死ぬことはないだろう、と。
俊敏で落ち着いた九条なら何とかするだろう、と。
奇妙な信頼感を理屈にして、凡田はこのまま智美たちと共に病院へと向かうことにした。
その事実が凡田を少しだけ、ほんの少しだけ勘違いさせた。
死ぬことはないだろう、と。
俊敏で落ち着いた九条なら何とかするだろう、と。
奇妙な信頼感を理屈にして、凡田はこのまま智美たちと共に病院へと向かうことにした。
「ぼんだ……」
「……大丈夫でやんすよ、ほるひす。九条くんも黒野博士も普通じゃないでやんす。
その二人と一緒なら東くんだって平気でやんす」
「……がんばれ。ほるひすもがんばる」
「あ、ありがとうでやんす」
「……大丈夫でやんすよ、ほるひす。九条くんも黒野博士も普通じゃないでやんす。
その二人と一緒なら東くんだって平気でやんす」
「……がんばれ。ほるひすもがんばる」
「あ、ありがとうでやんす」
まさかこの奇妙な生き物のような何かに励まされるとは思わなかった。
妙だ妙だと思い、話しかけてすらいなかったがいい奴なのかもしれない。
それにだんだんとこの妙な姿も可愛らしく見えてきた。
やはり仲間は良いものだ。
妙だ妙だと思い、話しかけてすらいなかったがいい奴なのかもしれない。
それにだんだんとこの妙な姿も可愛らしく見えてきた。
やはり仲間は良いものだ。
「着いた、か」
奇妙と言えば、この神条紫杏も奇妙な口調だ。
気取った、と言うよりもお固い口調。
とても凡田よりも五歳以上年下の女の子口調ではない。
それに妙な、そう妙な威圧感があって苦手だ。
ただ単純に威圧感があると言うだけなら、何人も見ている。
この整った可愛らしい顔で、お固い言葉とテキパキとした行動のギャップが奇妙なのだ。
気取った、と言うよりもお固い口調。
とても凡田よりも五歳以上年下の女の子口調ではない。
それに妙な、そう妙な威圧感があって苦手だ。
ただ単純に威圧感があると言うだけなら、何人も見ている。
この整った可愛らしい顔で、お固い言葉とテキパキとした行動のギャップが奇妙なのだ。
「……で、これからどうするでやんすか?」
「まあ、とりあえず……貴方達が会った男の子と女の子の名前を出せばいいんじゃない?
この大人数だし、殺し合いに乗っているとは思われにくいでしょ」
「まあ、とりあえず……貴方達が会った男の子と女の子の名前を出せばいいんじゃない?
この大人数だし、殺し合いに乗っているとは思われにくいでしょ」
確かにそうだ。
殺し合うのに五人も組んで動き回る酔狂な人間がこんなにも多く居るわけがない。
下手をすれば裏切られるかもしれない、その不安が四人分だ。
殺し合うのに五人も組んで動き回る酔狂な人間がこんなにも多く居るわけがない。
下手をすれば裏切られるかもしれない、その不安が四人分だ。
とは言え、そのまま直ぐに足を踏み込む勇気が湧かない。
もし、この病院に居るのが小波たちの仲間ではなく、その人を殺して獲物を待っている殺人鬼かも知れない。
その可能性を考えると簡単には足を踏み込めなかった。
とりあえず辺りをうろつくこと十数分。
やがて痺れを切らしたのか、智美が一息ついて病院へと向き直る。
もし、この病院に居るのが小波たちの仲間ではなく、その人を殺して獲物を待っている殺人鬼かも知れない。
その可能性を考えると簡単には足を踏み込めなかった。
とりあえず辺りをうろつくこと十数分。
やがて痺れを切らしたのか、智美が一息ついて病院へと向き直る。
「……私が行くわ。銃を持ってるの」
ジュニアコルト、それほど大きくない素人目にも扱いやすそうな拳銃を取り出して病院へと足を踏み出そうとする。
凡田もそれに続こうとするが、先に病院の自動ドアが開いた。
病院から誰かが出てくる。
それを理解した瞬間、心臓の動悸が速くなる。
だが、それも二人の男性が両手を挙げたことで若干治まる。
凡田もそれに続こうとするが、先に病院の自動ドアが開いた。
病院から誰かが出てくる。
それを理解した瞬間、心臓の動悸が速くなる。
だが、それも二人の男性が両手を挙げたことで若干治まる。
「俺は八神総八郎、中にもまだ萩原って人と曽村って仲間が居る。
俺たちには殺し合う意思はないし、そちら側にもないものと思う。
協力してほしい、より多くの人間でここから脱出するために……って湯田くん!?」
俺たちには殺し合う意思はないし、そちら側にもないものと思う。
協力してほしい、より多くの人間でここから脱出するために……って湯田くん!?」
落ち着いて言葉を並べる、出来る大人と言った風に見えた八神が突然驚愕の声を上げる。
凡田もその突然さに驚くが、八神の視線が凡田に向いていることに気づき、その意味を察する。
凡田もその突然さに驚くが、八神の視線が凡田に向いていることに気づき、その意味を察する。
「湯田じゃないでやんすよ、オイラは凡田大介でやんす」
凡田は落ち着いて言葉を返す。
自分に似過ぎた人間がいることはよく知っている。
ただそれを考えるとひどく嫌な予想しか浮かばないため、あまり考えないようにしている。
自分に似過ぎた人間がいることはよく知っている。
ただそれを考えるとひどく嫌な予想しか浮かばないため、あまり考えないようにしている。
「そ、そう……でしたか。いや、それにしてもよく似てる、口調まで……」
「……世の中にはあまり触れない方がいいことあるもんでやんすよ。
それに、今はそんなことを話してる場合じゃないでやんす」
「……世の中にはあまり触れない方がいいことあるもんでやんすよ。
それに、今はそんなことを話してる場合じゃないでやんす」
八神の驚いた姿を見ると徐々に対照的に落ち着いてきた。
そして、紫杏はその遣り取りがじれったく思えたのか言葉を挟んできた。
そして、紫杏はその遣り取りがじれったく思えたのか言葉を挟んできた。
「そのつもりで来た。小波走太という少年たちから話を聞いて、な」
その言葉に八神なる男は再び驚きを見せたのち、ふぅっと短い息をついた。
そして、顔を上げて軽い笑みを作って、ゆっくりと自動ドアへと向き直る。
そして、顔を上げて軽い笑みを作って、ゆっくりと自動ドアへと向き直る。
「入ろうか、話は中でしよう」
◆ ◆ ◆
時間僅かに戻して、病院の一室。
八神 総八郎は東の窓から外を眺めていた。
太陽は既に天高くまで登りはじめており、間もなく八神たちの天井に届くだろう。
それはつまり、二度目の放送が始まることを指している。
前回の放送では十八人もの人間が死んでしまったことから、今回の放送でも多くの人間が死んでしまっただろう。
ひょっとすると、今こうして居る間にも死んでいっている人間が居るかもしれない。
八神 総八郎は東の窓から外を眺めていた。
太陽は既に天高くまで登りはじめており、間もなく八神たちの天井に届くだろう。
それはつまり、二度目の放送が始まることを指している。
前回の放送では十八人もの人間が死んでしまったことから、今回の放送でも多くの人間が死んでしまっただろう。
ひょっとすると、今こうして居る間にも死んでいっている人間が居るかもしれない。
(抑えろ……!)
歯を食いしばり、今にも飛び出したくなる気持ちを抑える。
八神はただの人間だ、全てを救えるわけがない。
目に届く所に居る家族すら満足に守れなかった男がそんなことが出来るわけがないのだ。
ここは慎重にならなければいけない。
石橋を叩いて渡るほどの慎重差を持って、冷静に動く必要がある。
だから、八神は万全を期して真央や和那の帰りを待たなければいけないのだ。
八神はただの人間だ、全てを救えるわけがない。
目に届く所に居る家族すら満足に守れなかった男がそんなことが出来るわけがないのだ。
ここは慎重にならなければいけない。
石橋を叩いて渡るほどの慎重差を持って、冷静に動く必要がある。
だから、八神は万全を期して真央や和那の帰りを待たなければいけないのだ。
おおよそ病院の内部は把握した。
それほど大きな病院ではないが、決して小さな病院でもない。
拠点としてはかなり優れていると言えるだろう。
もちろん禁止エリアに指定された場合は、直ぐに移動を開始しなければいけないだろうが。
もし病院が禁止エリアになった際にはレジャービルへと移るのが妥当だろう。
それほど大きな病院ではないが、決して小さな病院でもない。
拠点としてはかなり優れていると言えるだろう。
もちろん禁止エリアに指定された場合は、直ぐに移動を開始しなければいけないだろうが。
もし病院が禁止エリアになった際にはレジャービルへと移るのが妥当だろう。
その場合は重傷者である萩原がウィークポイントとなってしまうが。
(……未来人、か)
萩原のことを考えると、彼が申告した自分はタイムパトロールと言うことを嫌でも思い出させる。
その瞳は嘘をついているようにも見えなかったし、状況証拠から考えても簡単に嘘だと決めつけることも出来ない。
だから、信じておく。
理論的に可能不可能ではなく、ただ彼を信じてみる。
その瞳は嘘をついているようにも見えなかったし、状況証拠から考えても簡単に嘘だと決めつけることも出来ない。
だから、信じておく。
理論的に可能不可能ではなく、ただ彼を信じてみる。
そこまで考えて、今度は廊下で落ち着かないようにうろうろとしている曽根村の姿をちらりと盗み見る。
特別、危険な人ではないと判断していいだろう。
今までの様子を見る限り、普通の人間だ。
世界の裏に違法サイボーグとその取り締まり組織があると言う夢物語を鼻で笑える普通の人間に見える。
だからこそ、残酷だった。
普通の人間にこんなことをさせる亀田の存在は許しておけない。
特別、危険な人ではないと判断していいだろう。
今までの様子を見る限り、普通の人間だ。
世界の裏に違法サイボーグとその取り締まり組織があると言う夢物語を鼻で笑える普通の人間に見える。
だからこそ、残酷だった。
普通の人間にこんなことをさせる亀田の存在は許しておけない。
「んん……」
「起きたかい、萩原さん」
「起きたかい、萩原さん」
亀田の残虐性を再認識していると、萩原が呻くような声と共に身体を起こす。
寝かしつけた方がいいのかもしれないが、彼にはまだ聞きたいことがたくさんある。
悪い気もしたが、是非を問える状況ではない。
だが、萩原に未来のことやタイムマシンのことを詳しく聞こうとしたが、どうやら寝返りを打っただけだったようだ。
思考の邪魔をされたが、あまり考えすぎても仕方がない。
ふう、っと息をつき頭を休めようとした瞬間、曽根村に先に声をかけられた。
寝かしつけた方がいいのかもしれないが、彼にはまだ聞きたいことがたくさんある。
悪い気もしたが、是非を問える状況ではない。
だが、萩原に未来のことやタイムマシンのことを詳しく聞こうとしたが、どうやら寝返りを打っただけだったようだ。
思考の邪魔をされたが、あまり考えすぎても仕方がない。
ふう、っと息をつき頭を休めようとした瞬間、曽根村に先に声をかけられた。
「……八神さん」
「ん、どうしました、曽根村さん?」
「人です。かなり多いですよ」
「……なんだって?」
「ん、どうしました、曽根村さん?」
「人です。かなり多いですよ」
「……なんだって?」
八神は曽根村の言葉を確かめる様に、廊下に出て同じ窓から外を眺める。
そこには確かに五人というこの状況下では珍しいだろう大所帯がこちらに向かって来ていた。
そこには確かに五人というこの状況下では珍しいだろう大所帯がこちらに向かって来ていた。
「五人、か」
「どうします?」
「……五人のグループが殺し合いに乗ってるとは考えにくいですね」
「どうします?」
「……五人のグループが殺し合いに乗ってるとは考えにくいですね」
五人なら、殺し合いに乗っている可能性にはまず乗っていないだろう。
それだけの大所帯で動けば目につきやすく、奇襲もしづらい。
さらに裏切りの可能性もグンと高くなり、裏切りに生じてさらに裏切る、なんて連鎖も起こるだろう。
五人も集まればそれを嫌う頭のいい人間はいるはずだ。
そのことから殺し合いに乗ったグループでないだろう。
それだけの大所帯で動けば目につきやすく、奇襲もしづらい。
さらに裏切りの可能性もグンと高くなり、裏切りに生じてさらに裏切る、なんて連鎖も起こるだろう。
五人も集まればそれを嫌う頭のいい人間はいるはずだ。
そのことから殺し合いに乗ったグループでないだろう。
「会ってみましょうか」
「あ、会うんですか?」
「あ、会うんですか?」
その言葉に目を見開いて曽根村は驚きの表情を表す。
警戒を抱くのも分かるが、八神は歩を止めずに一階の玄関へと向かう。
その際に、念のためにとブロウニング拳銃を曽根村へ渡しておく。
変わりにバットを一本、萩原の支給品から拝借したが。
警戒を抱くのも分かるが、八神は歩を止めずに一階の玄関へと向かう。
その際に、念のためにとブロウニング拳銃を曽根村へ渡しておく。
変わりにバットを一本、萩原の支給品から拝借したが。
「ここで待っていて下さい、俺が一人で行ってきます」
「……分かりました、どうかお気をつけて」
「……分かりました、どうかお気をつけて」
曽根村はブロウニング拳銃をチラリと目を移してから、八神を見送った。
それからは思ったよりも早く終わった。
紫杏の走太たちとこの場所を聞いたという言葉でより危険を感じなくなり、病院の中へと招いた。
そして、現在に至る、と言うわけだ。
特別なことがあるなら、病室まで至る最中に全員の名前を聞いておいたぐらいだろう。
……ただ、ほるひすという妙な生き物は気にかかったが。
六人ほどなら入院患者を眠らせることが大きな部屋、その部屋でベッドを二つだけ残して広々と使う。
ベッドの一つは萩原の眠るもの、もう一つは7人の人間がテーブル代わりに使うためのものである。
そして、現在に至る、と言うわけだ。
特別なことがあるなら、病室まで至る最中に全員の名前を聞いておいたぐらいだろう。
……ただ、ほるひすという妙な生き物は気にかかったが。
六人ほどなら入院患者を眠らせることが大きな部屋、その部屋でベッドを二つだけ残して広々と使う。
ベッドの一つは萩原の眠るもの、もう一つは7人の人間がテーブル代わりに使うためのものである。
「ああ、そうだ。そっちの名前は尋ねたけど俺はなあなあで済ませてたな。
俺は八神総八郎、ただのプロ野球選手だよ、オオガミホッパーズのね」
「オオガミホッパーズ……?」
俺は八神総八郎、ただのプロ野球選手だよ、オオガミホッパーズのね」
「オオガミホッパーズ……?」
その単語にスーツの女性、四路智美は眉をしかめる。
聞き覚えがない、ということなのだろう。
となると、時間についての問題を話さなければいけない、ということになる。
聞き覚えがない、ということなのだろう。
となると、時間についての問題を話さなければいけない、ということになる。
芹沢真央も小波走太も大江和那も、オオガミホッパーズの存在は知っていた。
だから、気を抜いていたがホッパーズが創設する前から連れてこられた人間もいるようだ。
自分の不注意が嫌になる。
見るからに利発そうな女性なだけに説明には骨が折れそうだ。
それに、ふと隣を見ると曽根村もまた的を得ていない顔をしている。
そう言えば言っていなかったな、と思いやはり面倒だと頭を抱えそうになる。
だから、気を抜いていたがホッパーズが創設する前から連れてこられた人間もいるようだ。
自分の不注意が嫌になる。
見るからに利発そうな女性なだけに説明には骨が折れそうだ。
それに、ふと隣を見ると曽根村もまた的を得ていない顔をしている。
そう言えば言っていなかったな、と思いやはり面倒だと頭を抱えそうになる。
「ええ、三年ほど前でしたかね? オオガミモグラーズがチーム名を変えまして……」
「……オオガミ? ドリルモグラーズじゃなくて?」
「あ、そこら辺はオイラに任せるでやんす!」
「……オオガミ? ドリルモグラーズじゃなくて?」
「あ、そこら辺はオイラに任せるでやんす!」
さて、どう説明しようか……と八神が頭を捻っていると、突如横から言葉を挟まれる。
メガネをかけた野球のユニフォームを着た男、湯田によく似た凡田大介と言う男だ。
あまり頭のよさそうに見えないこともあって、その横やりはあまりにも意外だった。
メガネをかけた野球のユニフォームを着た男、湯田によく似た凡田大介と言う男だ。
あまり頭のよさそうに見えないこともあって、その横やりはあまりにも意外だった。
「実は、この殺し合いに連れてこられた時にタイムマシンが使われていたんでやんすよ!」
「……」
「……」
「……あー、まあ、そんなわけです」
「……」
「……あー、まあ、そんなわけです」
痛い、と八神は思った。主に四路と白いブレザーを身にまとった女子高生、神条紫杏の視線が。
凡田を見て、その後に八神を見る。
全く嘘をついているわけではないので、肯定しないわけにもいかない。
少し迷ったが、自分なりに噛み砕いて説明することにした。
脱出するだけならば、ある程度は問題ない。
だが、生きて元の居場所に帰る、となるとこれ以上とないほど大きな壁として立塞がる。
……まあ、それも現状の問題を解決しなければ気の逸った妄想にすぎないのだが。
凡田を見て、その後に八神を見る。
全く嘘をついているわけではないので、肯定しないわけにもいかない。
少し迷ったが、自分なりに噛み砕いて説明することにした。
脱出するだけならば、ある程度は問題ない。
だが、生きて元の居場所に帰る、となるとこれ以上とないほど大きな壁として立塞がる。
……まあ、それも現状の問題を解決しなければ気の逸った妄想にすぎないのだが。
「今は、ひょっとしたら、って程度に考えておいてください。まだやることは山積みですから。
だけど頭から否定することだけは止めてください、それだけは危険です。
常識で考えることと馬鹿げていると鼻で笑うことは違いますから。
行動を重ねれば、その結果どうなるかやがてはっきりします。
だからこの後に詳しいことを話します、今は話すことが積りに積ってますから」
「本当なんでやんすよ! だって、オイラは大正時代の人に会ったんでやんすから!」
「……まあ、いい。八神さんの言うとおり、今はまだやることがあるからな」
だけど頭から否定することだけは止めてください、それだけは危険です。
常識で考えることと馬鹿げていると鼻で笑うことは違いますから。
行動を重ねれば、その結果どうなるかやがてはっきりします。
だからこの後に詳しいことを話します、今は話すことが積りに積ってますから」
「本当なんでやんすよ! だって、オイラは大正時代の人に会ったんでやんすから!」
「……まあ、いい。八神さんの言うとおり、今はまだやることがあるからな」
ムキになった凡田の言葉を神条は軽く流す。
その表情には軽い焦りや苛立ちのようなものが見える。
賢そうな女の子だが、やはりこの状況では精神も参ってしまうのだろう。
その表情には軽い焦りや苛立ちのようなものが見える。
賢そうな女の子だが、やはりこの状況では精神も参ってしまうのだろう。
「神条さんの言う通りね、今はこの首輪の解除からよ。
……我威亜党については保留、最優先課題の首輪から片付けるべきね」
「だな、他の情報については芹沢さんたちに任せておいて構わない」
「となると、まずは各々情報を喋っていきましょうか。私は……十波って子と会ったぐらいね。
脱出に使えそうな情報は持ってないわ、危険人物の情報は――」
「っとと、待ってくれ。今からメモをするから」
……我威亜党については保留、最優先課題の首輪から片付けるべきね」
「だな、他の情報については芹沢さんたちに任せておいて構わない」
「となると、まずは各々情報を喋っていきましょうか。私は……十波って子と会ったぐらいね。
脱出に使えそうな情報は持ってないわ、危険人物の情報は――」
「っとと、待ってくれ。今からメモをするから」
その言葉と共に素早くデイパックの中から筆記用具とメモ用紙を取り出す。
八神のこの行動で進行役を四路、書記兼口出しが八神と自然と決まってしまったようだ。
二人もそれで問題はないようで、特に何の異論も挟まなかった。
八神のこの行動で進行役を四路、書記兼口出しが八神と自然と決まってしまったようだ。
二人もそれで問題はないようで、特に何の異論も挟まなかった。
その一方で十波という言葉に神条が表情を僅かに歪ませたのを八神は気付かなかった。
曽根村と奇妙な生き物(本当に奇妙としか言いようがない)、ほるひすは気付いたようだ。
だが、ほるひすは心配そうに眺めるだけで、曽根村は対して興味を抱かなかったので放置した。
曽根村と奇妙な生き物(本当に奇妙としか言いようがない)、ほるひすは気付いたようだ。
だが、ほるひすは心配そうに眺めるだけで、曽根村は対して興味を抱かなかったので放置した。
「もういい?」
「OK、続けてください」
「危険だと思えるのはサングラスの男とメカ亀田っていう男が危険、パーカーの女の子も危ないわね。
ああ、正直当てになるかははっきりしないけどツナギを着たリボンの女の子も危ないらしいわ」
「……パーカーの女の子?」
「OK、続けてください」
「危険だと思えるのはサングラスの男とメカ亀田っていう男が危険、パーカーの女の子も危ないわね。
ああ、正直当てになるかははっきりしないけどツナギを着たリボンの女の子も危ないらしいわ」
「……パーカーの女の子?」
その言葉に八神の筆が止まる。
それを不審に思ったのか四路は眉を吊り上げながら八神を見つめる。
八神は顎に指を添えて少しばかり考える様に顔をしかめる。
が、やがて、「いや、気にしないでくれ」、とだけ言って筆をメモ用紙に戻した。
四路は気になったが、一先ずは情報の整理を先に行うことにした。
それを不審に思ったのか四路は眉を吊り上げながら八神を見つめる。
八神は顎に指を添えて少しばかり考える様に顔をしかめる。
が、やがて、「いや、気にしないでくれ」、とだけ言って筆をメモ用紙に戻した。
四路は気になったが、一先ずは情報の整理を先に行うことにした。
「私はそれぐらいよ、神条さんは?」
「私か、私も貴方と同じで特に目ぼしい情報はないな。精々が危険人物と友好的な人間ぐらいか」
「名前と容姿は?」
「まずは黒いコートを着た美しい金髪の女性だ、慎重な性格だったな、名前は知らん……どうした、八神さん」
「いや、気にしないでくれ……少し、嫌な気分になっただけだ。
その女はリンって女だよ。俺の古い知り合いだ、物騒な女だよ」
「私か、私も貴方と同じで特に目ぼしい情報はないな。精々が危険人物と友好的な人間ぐらいか」
「名前と容姿は?」
「まずは黒いコートを着た美しい金髪の女性だ、慎重な性格だったな、名前は知らん……どうした、八神さん」
「いや、気にしないでくれ……少し、嫌な気分になっただけだ。
その女はリンって女だよ。俺の古い知り合いだ、物騒な女だよ」
最後に気にしないでくれ、とだけ言って八神はメモ用紙に移す。
明らかに暴力の世界の住人だったあの女性と知り合い。
普通の野球人とは思えない。
だが、ここで問いだしてても簡単には口を割らないだろう。
そういうものだ、あの手の世界の人間は。
明らかに暴力の世界の住人だったあの女性と知り合い。
普通の野球人とは思えない。
だが、ここで問いだしてても簡単には口を割らないだろう。
そういうものだ、あの手の世界の人間は。
それにしても軽々と重苦しい内容を喋る娘だ、と八神は思った。
気が触れた、なんて言葉を簡単に使うことは自分はそうならないという自信があると言うことだ。
味方なら頼りになるタイプだな、敵なら面倒くさそうだが。
気が触れた、なんて言葉を簡単に使うことは自分はそうならないという自信があると言うことだ。
味方なら頼りになるタイプだな、敵なら面倒くさそうだが。
「仲間は二朱公人と夏目准の二人だけだな。後は小波走太と芹沢真央の二人、それだけだ」
「しあん、れっど、れっど」
「おっと、そうだったな。レッドという男もほるひすの仲間だったらしい。
……今度こそ、それぐらいだな」
「そう、じゃあ次は……曽根村さん、お願いするわ」
「わ、私ですか……私もあまり知り合いはいませんね。大江さんと出会ったぐらいです。
それ以外の人は、その、死んで……」
「しあん、れっど、れっど」
「おっと、そうだったな。レッドという男もほるひすの仲間だったらしい。
……今度こそ、それぐらいだな」
「そう、じゃあ次は……曽根村さん、お願いするわ」
「わ、私ですか……私もあまり知り合いはいませんね。大江さんと出会ったぐらいです。
それ以外の人は、その、死んで……」
表情を暗くして曽根村は答える。
仕方のないことだと思ったが、なるべく早く情報の交換を終わらせたかった。
仕方のないことだと思ったが、なるべく早く情報の交換を終わらせたかった。
「大江? カズと会っているのか?」
「大江さんと知り合いなのかい、神条さん」
「同級生だ、浜野朱里と言う者ともな」
「大江さんならその朱里さんに会いに行ったよ。なんでも、殺し合いに乗っているらしくてね」
「…………そうか、実にあの二人らしい話だ。腰を折ってすまなかった、続けてくれ」
「大江さんと知り合いなのかい、神条さん」
「同級生だ、浜野朱里と言う者ともな」
「大江さんならその朱里さんに会いに行ったよ。なんでも、殺し合いに乗っているらしくてね」
「…………そうか、実にあの二人らしい話だ。腰を折ってすまなかった、続けてくれ」
少し悲しそうな、だけど安心したような複雑な表情をして口を止める。
同級生とは言ったが友達なのだろう、そうでなければこんな表情はしない。
同級生とは言ったが友達なのだろう、そうでなければこんな表情はしない。
「それから、最初に進藤さんと鋼さんは会って、二人の知り合いの、三橋と言う人が……」
「……!」
「……鋼さんを、殺しました」
「……!」
「……鋼さんを、殺しました」
その名前を聞いた瞬間、四路の顔は強張り、次の「殺した」という言葉で何とも表現できない顔になった。
悲しんでいるような泣いているような笑っているような怒っているような、あるいは何も感じていないような。
どうとでも取れる表情へと変わった。
だが、口は挟まない。
そのことから八神と神条と曽根村の三人は深く突き詰めないことにした。
おそらく仲の近い間柄なのだろう、その人が殺し合いに乗ってショック、と言ったところか。
悲しんでいるような泣いているような笑っているような怒っているような、あるいは何も感じていないような。
どうとでも取れる表情へと変わった。
だが、口は挟まない。
そのことから八神と神条と曽根村の三人は深く突き詰めないことにした。
おそらく仲の近い間柄なのだろう、その人が殺し合いに乗ってショック、と言ったところか。
「進藤さんを殺した人は……分かりません、見えないところから銃で撃たれたので」
「その方向を確認しなかったの?」
「……すみません、ただただ怖くて。逃げてしまいました」
「そう、ならいいわ。他には?」
「他には……他にはありません」
「その方向を確認しなかったの?」
「……すみません、ただただ怖くて。逃げてしまいました」
「そう、ならいいわ。他には?」
「他には……他にはありません」
曽根村はそう言って、会話を打ち切る。
ならば、次はベッドを囲んで時計回りに順番で回っているので八神の番だ。
喋るべき情報は大よそ大江和那と芹沢真央が探索に出かけ、それ以来曽根村以外の人間はここに訪れていない、と言ったところか。
精々が灰原と白瀬芙喜子について気をつけろ、と言ったところか。
他に述べるべきことはない、包み隠さずに言うならば何も知らない。
だから、八神は誇張するわけでもなく小出しにするわけでもなく率直に語った。
その言葉に、神条と四路は特に何の反応も示さない。
恐らく走太から病院に仲間が居るという話を聞いた時から、八神に情報面での大きな期待は抱いていなかったのだろう。
それどころか危険人物の話だったことから、余計に心労が増えたとばかりに顔をしかめてる。
ならば、次はベッドを囲んで時計回りに順番で回っているので八神の番だ。
喋るべき情報は大よそ大江和那と芹沢真央が探索に出かけ、それ以来曽根村以外の人間はここに訪れていない、と言ったところか。
精々が灰原と白瀬芙喜子について気をつけろ、と言ったところか。
他に述べるべきことはない、包み隠さずに言うならば何も知らない。
だから、八神は誇張するわけでもなく小出しにするわけでもなく率直に語った。
その言葉に、神条と四路は特に何の反応も示さない。
恐らく走太から病院に仲間が居るという話を聞いた時から、八神に情報面での大きな期待は抱いていなかったのだろう。
それどころか危険人物の話だったことから、余計に心労が増えたとばかりに顔をしかめてる。
「次は……えーっと」
「ほるひすだよ。ころさないけどひともまもるよ」
「聞いての通りだ。ほるひすの知っていることは私がしゃべったつもりだ。
……死人については、ある程度省略させてもらったがな」
「ほるひすだよ。ころさないけどひともまもるよ」
「聞いての通りだ。ほるひすの知っていることは私がしゃべったつもりだ。
……死人については、ある程度省略させてもらったがな」
そうか、とだけ言ってほるひすから目を離す。
とりあえず悪い生き物ではないようだ。
扱いについては神条に任せることにしよう。
となると、次は、と一人だけ年を召した女性、四十代ぐらいか、荒井紀香に目を移す。
すると、荒井は人の形をしたかなりの大きさの人形を弄っていた。
あまりのマイペースに、どうするか戸惑っていると助け船を入れる様に四路が口をはさむ。
とりあえず悪い生き物ではないようだ。
扱いについては神条に任せることにしよう。
となると、次は、と一人だけ年を召した女性、四十代ぐらいか、荒井紀香に目を移す。
すると、荒井は人の形をしたかなりの大きさの人形を弄っていた。
あまりのマイペースに、どうするか戸惑っていると助け船を入れる様に四路が口をはさむ。
「……紀香さんは特に話すことはないらしいわ。私と会うまでは」
「ふふふーん♪」
「あと、二朱公人……って人を探している、それぐらいね」
「ふふふーん♪」
「あと、二朱公人……って人を探している、それぐらいね」
なるほど、と呟いて凡田へと目を移す。
凡田は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて口を動かし出す。
本当に湯田くんとよく似ている、八神はそう思った。
凡田は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて口を動かし出す。
本当に湯田くんとよく似ている、八神はそう思った。
「オイラはさっき言ったとおり、大正時代の人と会ったでやんす、二人組だったでやんすよ!
名前は七原正大と布具里ってのでやんす、今は北に向かって仲間を集めてるでやんす。
後は小波走太くんと芹沢真央ちゃん……それと九条くんでやんす」
「そうか……その九条って人は何処に?」
「それは、そのぅ……」
「襲われたのよ。今はちょっと別行動、あと二人も、ね」
名前は七原正大と布具里ってのでやんす、今は北に向かって仲間を集めてるでやんす。
後は小波走太くんと芹沢真央ちゃん……それと九条くんでやんす」
「そうか……その九条って人は何処に?」
「それは、そのぅ……」
「襲われたのよ。今はちょっと別行動、あと二人も、ね」
突然、渋るように言葉を濁す凡田。
それに八神は眉をしかめると、もはや恒例となった四路の横やりが入る。
襲われたとならば大事だ、は聞いておかなければいけない。
喋りづらい凡田には申し訳がないがなあなあで済ませていい時ではない。
それに八神は眉をしかめると、もはや恒例となった四路の横やりが入る。
襲われたとならば大事だ、は聞いておかなければいけない。
喋りづらい凡田には申し訳がないがなあなあで済ませていい時ではない。
「どんな奴に?」
「さっき言ったパーカーの女の子よ」
「さっき言ったパーカーの女の子よ」
パーカーの女の子、その言葉に八神の口内が乾く。
まさか、とは思う。
パーカーを着た女の子なんて数えられないほどに居る。
それが、高坂茜だとは限らない。
そう思って先ほどは流した。
だが、今回は引くわけにはいかないだろう。
まさか、とは思う。
パーカーを着た女の子なんて数えられないほどに居る。
それが、高坂茜だとは限らない。
そう思って先ほどは流した。
だが、今回は引くわけにはいかないだろう。
「その、パーカーの女の子って言うのは、背は低い?」
「え? ええ、そうね、大きくはないわ」
「髪は短め、で、体格も華奢?」
「ええ」
「髪が、一房だけ上に向かって、跳ねてる?」
「……そうね、これも知り合いかしら?」
「そうだな、知り合い……ああ、知り合いだ」
「え? ええ、そうね、大きくはないわ」
「髪は短め、で、体格も華奢?」
「ええ」
「髪が、一房だけ上に向かって、跳ねてる?」
「……そうね、これも知り合いかしら?」
「そうだな、知り合い……ああ、知り合いだ」
顔を塞ぎこみながら、ペンが折れるほど強く握りしめる。
その少女は間違いなく高坂茜だ。
何をどう思ったかは分からない、だが茜は殺し合いに乗った。
茜じゃない、なんて甘い考えは捨てた方がいいだろう。
その少女は間違いなく高坂茜だ。
何をどう思ったかは分からない、だが茜は殺し合いに乗った。
茜じゃない、なんて甘い考えは捨てた方がいいだろう。
……リンと八神のためなのかもしれない。
人形のように虚ろな茜に考える力があったとは思っていなかった。
人形のように虚ろな茜に考える力があったとは思っていなかった。
「情報は……芳しくなかったな」
「そこはこれから手に入れれば良い……」
「そこはこれから手に入れれば良い……」
確かに情報は振るわなかった。
だが、それ以上に何かを隠している人間がいる。
それは八神の茜であり、四路の三橋であるような人物。
喋りたくないこともあるだろう、八神には四路が頭の悪い人間には見えない。
重要なことならいずれ喋る。
それに、今は茜のことに捉われている。
だが、それ以上に何かを隠している人間がいる。
それは八神の茜であり、四路の三橋であるような人物。
喋りたくないこともあるだろう、八神には四路が頭の悪い人間には見えない。
重要なことならいずれ喋る。
それに、今は茜のことに捉われている。
「じゃあ、次は武器を……こっちはバットが八本とナイフ、拳銃が一つずつです」
そう言って、ベッドの上に自分から遠い位置にそれぞれを配置する。
もちろん拳銃の弾はあらかじめ抜いてある。
いきなり武器を前に置かれたからか、僅かに驚いたように全員の顔がゆがむ。
だが、まず紫杏がコルトガバメントをベッドに放り出したのを見て、四路もそれに続いてジュニアコルトを投げ出した。
もちろん、両者ともに弾は抜いてある。
もちろん拳銃の弾はあらかじめ抜いてある。
いきなり武器を前に置かれたからか、僅かに驚いたように全員の顔がゆがむ。
だが、まず紫杏がコルトガバメントをベッドに放り出したのを見て、四路もそれに続いてジュニアコルトを投げ出した。
もちろん、両者ともに弾は抜いてある。
「使えそうなのはガバメントか……」
「オイラは持ってないでやんす、九条くんがロケット弾を持ってたでやんすけど」
「ろ、ロケット弾?」
「使っちゃったみたいだけどね。ないものをねだってもしょうがないわ。その、ほるひすは?」
「ほるひすの支給品は……使えんな。何故こんなものを渡したのか首をひねらずにはいられない」
「オイラは持ってないでやんす、九条くんがロケット弾を持ってたでやんすけど」
「ろ、ロケット弾?」
「使っちゃったみたいだけどね。ないものをねだってもしょうがないわ。その、ほるひすは?」
「ほるひすの支給品は……使えんな。何故こんなものを渡したのか首をひねらずにはいられない」
相変わらず神条がほるひすの代わりに答える。
その口調は少し苛立っているように見える、やはり武器が思ったよりも少ないことが苛立っているのだろう。
それだけに、その支給品とやらが気になった。
その口調は少し苛立っているように見える、やはり武器が思ったよりも少ないことが苛立っているのだろう。
それだけに、その支給品とやらが気になった。
「その使えない支給品ってのは?」
「大砲だ」
「……大砲?」
「150mm砲、戦車につける大砲だな。もちろん戦車はもちろん弾も入ってはいない。
正直、なかった方がマシなぐらいだ」
「そいつは……何とも言えないな」
「大砲だ」
「……大砲?」
「150mm砲、戦車につける大砲だな。もちろん戦車はもちろん弾も入ってはいない。
正直、なかった方がマシなぐらいだ」
「そいつは……何とも言えないな」
戦車の砲身ならば生身の人間が持つことはまず不可能だろう。
持てるとしたらそれこそ違法パーツを身につけたサイボーグぐらいのものだ。
智美が出したものが銃一つということは、荒井の武器もないのだろう。
情報と同じく、こちらも芳しくないものとなった。
持てるとしたらそれこそ違法パーツを身につけたサイボーグぐらいのものだ。
智美が出したものが銃一つということは、荒井の武器もないのだろう。
情報と同じく、こちらも芳しくないものとなった。
「……じゃ、俺は行きます」
「? 何所にだ?」
「その、女の子俺の知り合いなんで。ついでにリンも探してこようかと」
「集めたあなたが?」
「? 何所にだ?」
「その、女の子俺の知り合いなんで。ついでにリンも探してこようかと」
「集めたあなたが?」
そう言われると辛い、と言わんばかりに眉をかく。
だが、どうしようもないのだ。
生きて帰る以上に茜が気にかかる、思ったよりも頼りになる女性がいることも大きい。
だが、どうしようもないのだ。
生きて帰る以上に茜が気にかかる、思ったよりも頼りになる女性がいることも大きい。
「ええ、集めた俺が、です。それにこう見えても結構強いんですよ、俺?」
「……そんなに大事な人なの?」
「そうですね。この年でようやく出来た家族ですから、あの二人は大事です」
「……複雑なんでやんすね」
「……そんなに大事な人なの?」
「そうですね。この年でようやく出来た家族ですから、あの二人は大事です」
「……複雑なんでやんすね」
複雑、そう複雑だ。
八神とリンと茜の関係は複雑だ。
家族で言い表すことはできるが、本質はもっと別なものなような気がする。
だが、大事な人であることは変わりはない。
八神とリンと茜の関係は複雑だ。
家族で言い表すことはできるが、本質はもっと別なものなような気がする。
だが、大事な人であることは変わりはない。
「コルトガバメント、借りていきますよ」
「……構わないが、六発しか残ってないぞ?」
「構いませんよ、どうせ使う相手は限られてます」
「……構わないが、六発しか残ってないぞ?」
「構いませんよ、どうせ使う相手は限られてます」
これは使うことにならないし、女性の細腕で扱えるものでもない。
素人の凡田も扱いきれるものではないし、ほるひすに至っては銃を持てるかどうかすらわからない。
だから、この中で八神が持って行くとしたらガバメント以外あり得なかった。
素人の凡田も扱いきれるものではないし、ほるひすに至っては銃を持てるかどうかすらわからない。
だから、この中で八神が持って行くとしたらガバメント以外あり得なかった。
「じゃあ、行ってきます。曽根村さん、萩原さんと一緒に情報の説明お願いします。
俺の知っていることはもう曽根村さんに話してありますから」
俺の知っていることはもう曽根村さんに話してありますから」
八神は笑いながら病室を後にした。
こうして、CCR最強のエージェントがようやく動き始める。
脱出すると言う大事の前に、家族を説得すると言う小事を優先して。
それも当然だろう。
彼はしたいと思ったことを、しなければいけないと思ったことを優先する男だから。
こうして、CCR最強のエージェントがようやく動き始める。
脱出すると言う大事の前に、家族を説得すると言う小事を優先して。
それも当然だろう。
彼はしたいと思ったことを、しなければいけないと思ったことを優先する男だから。
【F-6/病院/一日目/昼】
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)、バット
[道具]:なし
[思考]基本:茜とリンを説得する。
1:バトルロワイヤルを止める。
2:白瀬、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
※茜ルートBAD確定後、日本シリーズ前からの参戦
【八神総八郎@パワプロクンポケット8表】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(6/7)、バット
[道具]:なし
[思考]基本:茜とリンを説得する。
1:バトルロワイヤルを止める。
2:白瀬、灰原が殺し合いに乗ったのでは?と疑っている。
[備考]
※走太と真央から、彼らにこれまでであった話を聞きました。
※荻原との話でタイムマシンの存在を確信。
※茜ルートBAD確定後、日本シリーズ前からの参戦
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷、貧血(中)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(ボール7球、グローブ8つ)@現実
野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、左腕
[思考・状況]
1:???
【曽根村@パワプロクンポケット2】
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。
[状態]:右手首打撲
[装備]:ナイフ、ブロウニング拳銃(3/6、予備弾数30発)、バット
[道具]:支給品一式×3、魔法の杖@パワプロクンポケット4裏
[思考]
基本:漁夫の利で優勝を目指す
1:一先ず病院で休憩。
[備考]
※タイムマシンの存在を聞かされていません。
【荒井紀香@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
[状態]:全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小)
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、野球人形
[思考]基本:二朱くんに会う。
1:二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです。
2:あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる。
[備考]
※第一回放送に気付いていません。
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[状態]:健康
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]基本:どのようにも動ける様にする。
1:生きて帰って平山の言葉を伝える。
2:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。
[状態]:健康
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、詳細名簿、ノートパソコン(バッテリー消耗小)、駄菓子数個
[思考]基本:どのようにも動ける様にする。
1:生きて帰って平山の言葉を伝える。
2:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば……
[備考]
※この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
※芳槻さらを危険人物と認識しました。
※島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。
※小波走太一行とは情報交換を行っていません。
【ほるひす@パワプロクンポケット6表】
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0~1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……
[状態]:表面が焦げてる、悲しみ?
[装備]:バット
[道具]:支給品一式、不明支給品0~1
[思考]基本:ころさないし、ひともまもるよ。
1:こうし……ひらやま……
【凡田大介@パワプロクンポケット2】
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条を信頼、そして心配。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
[状態]:全身に打撲
[装備]:お守り、バット
[道具]:支給品一式、鍵
[思考・状況]基本:ガンダーロボを救出したい
1:基本人殺しはしたくない。
2:九条を信頼、そして心配。
[備考]
※七原、真央、走太と軽い情報交換をしました。
【四路智美@パワプロクンポケット3】
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。
[状態]:嫌な汗が背中に伝わっている。
[装備]:拳銃(ジュニア・コルト)、バット
[道具]:支給品一式、ダイナマイト5本
[思考・状況]基本:二度と三橋くんを死なさない。
1:三橋くんが殺し合いに乗った……か。
2:十波典明の言葉を丸っきり信用するわけではないが、一応警戒。
3:亀田の変貌に疑問?
[備考]
※メカ亀田を危険人物を判断しました。
※ピンクのパーカーを着た少女を危険人物と判断、作業着を着た少女を警戒。
※探知機は呪いの人形に壊されました。
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075:アンドロイドは笑わない | 荒井紀香 | 089:偉人の選択 |
075:アンドロイドは笑わない | 神条紫杏 | 089:偉人の選択 |
073:MISSING RELATION | 曽根村 | 089:偉人の選択 |
073:MISSING RELATION | 萩原新六 | 089:偉人の選択 |
075:アンドロイドは笑わない | ほるひす | 089:偉人の選択 |
075:アンドロイドは笑わない | 凡田大介 | 089:偉人の選択 |
073:MISSING RELATION | 八神総八郎 | 091:交錯 |
075:アンドロイドは笑わない | 四路智美 | 089:偉人の選択 |