あるいは裏切りという名の犬 ◆7WJp/yel/Y
温泉に浸かるわん子を置いて、脱衣所で天本はメモを取っていた。
メモの内容は放送で発表された禁止エリアの内訳と死者の名前である。
メモの内容は放送で発表された禁止エリアの内訳と死者の名前である。
天本はそのメモを眺めながら考え込んでいた。
付近に禁止エリアは存在しないため、温泉に居られる時間は長い。
死者の発表では知り合いが一人だけ呼ばれた。
同郷の黒野鉄斎という怪しげな研究をしている怪しげな老人だ。
付近に禁止エリアは存在しないため、温泉に居られる時間は長い。
死者の発表では知り合いが一人だけ呼ばれた。
同郷の黒野鉄斎という怪しげな研究をしている怪しげな老人だ。
「十六人から八人……」
天本は黒野の死を、どこか遠い出来事のように感じながら呟いた。
決意を鈍らせないためにも、意識的に感傷を覚えないように務めているのだ。
十六人から八人、ペースは明らかに落ちている。
合計で二十四人が死んだということは、残り三十四名。
決意を鈍らせないためにも、意識的に感傷を覚えないように務めているのだ。
十六人から八人、ペースは明らかに落ちている。
合計で二十四人が死んだということは、残り三十四名。
「……」
天本に提示された選択肢は二つだ。
既定路線通りわん子とともに行動するか、逆にここでわん子を殺してしまうか。
いつ誰が来るかわからない状態での殺人は危険とも言える。
既定路線通りわん子とともに行動するか、逆にここでわん子を殺してしまうか。
いつ誰が来るかわからない状態での殺人は危険とも言える。
「まだ、早いですね……」
言葉になったかも定かではないほどの小さな声でつぶやく。
先ほどの放送で七原や布具里、七味に春香、そして椿と言った殺し合いの場で知り合った人間の死が述べられ、
さらに、総数が残り十五人を切っているという段階ならば一歩踏み出せたかもしれない。
だが、現実にはまだ残り人数も多く、知り合い、つまり利用できる人間の誰も死んでいない状況。
わん子とともに行動をして、人数が減るのを待つしかない。
となると、一つだけ問題が生まれる。
椿のことだ。
先ほどの放送で七原や布具里、七味に春香、そして椿と言った殺し合いの場で知り合った人間の死が述べられ、
さらに、総数が残り十五人を切っているという段階ならば一歩踏み出せたかもしれない。
だが、現実にはまだ残り人数も多く、知り合い、つまり利用できる人間の誰も死んでいない状況。
わん子とともに行動をして、人数が減るのを待つしかない。
となると、一つだけ問題が生まれる。
椿のことだ。
「どう説明しましょうか……」
潜伏していた白瀬を発見し、背筋に嫌な予感が走った。
率直に死の予感と言っても良い。
そこからは本能的に逃げる形でわん子を連れてここまで来たのだ。
そこで問題となることは後々に椿と再開した時だ。
どうして椿たちへ何も言わずに逃げたのか、そこを説明しなければいけない。
率直に死の予感と言っても良い。
そこからは本能的に逃げる形でわん子を連れてここまで来たのだ。
そこで問題となることは後々に椿と再開した時だ。
どうして椿たちへ何も言わずに逃げたのか、そこを説明しなければいけない。
「椿さんが乱暴を……駄目ですね、上川さんたちも残っていますし。
単純に怖くなった、そう押し通すしか……」
単純に怖くなった、そう押し通すしか……」
頭が痛い。
と言っても、あの場から衝動的に逃げたこと自体は後悔していない。
あのままでは死が近かった。
こちらは確かに猟銃を持った椿が居るが、逆に言えば椿しか満足な武器を持っていない状態だった。
下手をしたら天本の命はなくなっていた可能性はある。
大体、あの場に居ても邪魔になるだけなのだ。
そのため、単純な戦力の低下とはならない。
あるとすれば、二人の少女という肉の盾が減ったということだけ。
と言っても、あの場から衝動的に逃げたこと自体は後悔していない。
あのままでは死が近かった。
こちらは確かに猟銃を持った椿が居るが、逆に言えば椿しか満足な武器を持っていない状態だった。
下手をしたら天本の命はなくなっていた可能性はある。
大体、あの場に居ても邪魔になるだけなのだ。
そのため、単純な戦力の低下とはならない。
あるとすれば、二人の少女という肉の盾が減ったということだけ。
「……あら?」
「さっぱりしたワン!」
「さっぱりしたワン!」
そんな物騒なことを考えていると、わん子が脱兎の如く浴場から飛び出してくる。
わん子の姿を見て、天本は反射的に笑顔を作る。
笑顔の仮面を作ることは得意だ。
そのため、わん子には天本の張り詰めた表情をしていた事実を見ることが出来なかった。
わん子の姿を見て、天本は反射的に笑顔を作る。
笑顔の仮面を作ることは得意だ。
そのため、わん子には天本の張り詰めた表情をしていた事実を見ることが出来なかった。
「もういいって……まだ十分も経っていませんよ?」
「お風呂はもういいワン!」
「お風呂はもういいワン!」
そもそもとして、犬の転身体であるわん子にとって風呂とは水浴びの延長でしかない。
さっぱりと暖かなお湯に浸かればそれだけで満足なのだ。
さっぱりと暖かなお湯に浸かればそれだけで満足なのだ。
「湯船に浸かっただけじゃないですか……駄目ですよ」
「わわっ……!?」
「ちゃんと身体は綺麗にしないと、女の子なんだから」
「わわっ……!?」
「ちゃんと身体は綺麗にしないと、女の子なんだから」
天本は本心半分、打算半分でわん子を浴場へと押し戻す。
ここで親身になることでわん子の信頼を勝ち取ろうという腹積もりである。
メモを脱衣所に残したまま、浴場へと足を踏み入れる。
そして、桶でお湯を掬ってわん子の背中にゆっくりと流す。
ここで親身になることでわん子の信頼を勝ち取ろうという腹積もりである。
メモを脱衣所に残したまま、浴場へと足を踏み入れる。
そして、桶でお湯を掬ってわん子の背中にゆっくりと流す。
薄い、子供の背中だった。
思えば誰かとともに風呂に入るなど、天本の人生で初めての経験だった。
そう思うと、目の前の少女に妙な愛情を覚え始めた。
もっとも、それはペットへと向ける愛玩の感情に近いが。
思えば誰かとともに風呂に入るなど、天本の人生で初めての経験だった。
そう思うと、目の前の少女に妙な愛情を覚え始めた。
もっとも、それはペットへと向ける愛玩の感情に近いが。
「うぅ……!」
「ほら、暴れないで」
「ほら、暴れないで」
わん子は石鹸の泡から逃げるようにじたばたと暴れ始める。
特別鍛えてもいない天本でも簡単に押さえつけられる程度の、どこか遠慮をした弱々しい暴れ方だった。
軽く押さえつけて、優しく髪を撫でる。
僅かに身じろぎした後、やがておとなしくなり天本の手に身を任せる。
天本は意識してわん子の柔らかい体にタオルを滑らせていく。
特別鍛えてもいない天本でも簡単に押さえつけられる程度の、どこか遠慮をした弱々しい暴れ方だった。
軽く押さえつけて、優しく髪を撫でる。
僅かに身じろぎした後、やがておとなしくなり天本の手に身を任せる。
天本は意識してわん子の柔らかい体にタオルを滑らせていく。
(震えている……)
石鹸を嫌う無意志的な動きとは別に、わん子の身体が震えていることに気づいた。
それが恐怖によるものだと天本はすぐに感づいた。
自分もまた殺し合いに対して恐怖を覚えているからだ。
それが恐怖によるものだと天本はすぐに感づいた。
自分もまた殺し合いに対して恐怖を覚えているからだ。
「帰りたいですか?」
自分自身に問いかけるように、わん子へと問いかけた。
「……ワン」
天本は情が移りそうになる自身の心をはっきりと自覚する。
わん子の身体を撫でながら、何度も何度も非情になるべきだと言い聞かせる。
出来るはずだ、そう自分を励ましながら天本はわん子と接する。
いざとなったら殺す相手に、親身になって言葉を投げかける。
わん子の身体を撫でながら、何度も何度も非情になるべきだと言い聞かせる。
出来るはずだ、そう自分を励ましながら天本はわん子と接する。
いざとなったら殺す相手に、親身になって言葉を投げかける。
「本当は消えるはずだったから、そういう心の準備はできてたワン……」
「消える?」
「でも、それでも、帰りたい……」
「消える?」
「でも、それでも、帰りたい……」
天本が不思議そうに聞き返す。
だが、わん子は聞こえていないのか、それ以上はなにも口にしない。
天本の心中に単純な好奇心が生まれるが、下手に警戒心を与えてしまうことを嫌って追求はしなかった。
ただ、頭を撫でるようにわん子の髪を梳かしていく。
だが、わん子は聞こえていないのか、それ以上はなにも口にしない。
天本の心中に単純な好奇心が生まれるが、下手に警戒心を与えてしまうことを嫌って追求はしなかった。
ただ、頭を撫でるようにわん子の髪を梳かしていく。
「くぅん……♪」
嬉しそうに喉を鳴らすわん子はその名の通り犬のようだった。
少女と犬の可愛らしさを併せ持ったわん子の挙動に、天本の胸がズキリと痛む。
髪を梳かし終えると、天本は静かにわん子の首に手をかける。
細い首だった。
華奢な天本の腕力でも殺せそうな、あまりにも弱々しい細い首。
このまま両手に力を込めれば殺せそうな、そんな首筋だった。
少女と犬の可愛らしさを併せ持ったわん子の挙動に、天本の胸がズキリと痛む。
髪を梳かし終えると、天本は静かにわん子の首に手をかける。
細い首だった。
華奢な天本の腕力でも殺せそうな、あまりにも弱々しい細い首。
このまま両手に力を込めれば殺せそうな、そんな首筋だった。
瞬間、人を殺すという道徳的な嫌悪感により胃の中で胃液が暴れ始める。
天本はその嫌悪感を呑み込み、わん子に悟らさせないように心がける。
殺そうと考えだけでこんな有様だ、これで本当に人を殺せるのだろうか。
そんな不安が天本へと襲いかかる。
天本はその嫌悪感を呑み込み、わん子に悟らさせないように心がける。
殺そうと考えだけでこんな有様だ、これで本当に人を殺せるのだろうか。
そんな不安が天本へと襲いかかる。
「……帰りたいですね」
それでも同時に胸に過ることは、愛しい人との生活だった。
雲に遮られ続けていた人生の中で唯一光に思えたあの時間を、もう一度体験したい。
雲に遮られ続けていた人生の中で唯一光に思えたあの時間を、もう一度体験したい。
「……帰りたいですね」
「ワン……」
「私は、絶対帰ります」
「ワン……」
「私は、絶対帰ります」
―――貴女を、殺して。
【E-4/温泉/一日目/日中】
【天本玲泉@パワプロクンポケット4】
[状態]:健康、暖かい
[装備]:なし
[道具] 支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る。
1:一応は芽森を利用して協力者を探してみる。
2:人を結果的に殺すが、今は様子見。
3:第3放送前後にホテルに行く?
[状態]:健康、暖かい
[装備]:なし
[道具] 支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:日の出島に帰る。
1:一応は芽森を利用して協力者を探してみる。
2:人を結果的に殺すが、今は様子見。
3:第3放送前後にホテルに行く?
【芽森 わん子@パワポケダッシュ】
[状態]:疲労小、暖かい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:天本さんに付いていって温泉に入る。
2:帰ってきたらタツヤさんと行動。
3:走太君を探したい。
4:いつかタツヤさんに自分の正体を伝えたい。
[状態]:疲労小、暖かい。
[装備]:ヒーローのスカーフ@パワポケ7、モップ@現実
[参戦時期]:わん子ルート、卒業直後
[道具]:支給品一式(食料はキムチと何か)、ヒーローの衣装セット@パワポケ7、ヒーローのスカーフ四個@パワポケ7
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する。
1:天本さんに付いていって温泉に入る。
2:帰ってきたらタツヤさんと行動。
3:走太君を探したい。
4:いつかタツヤさんに自分の正体を伝えたい。
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| 098:見下された女の行動~調和~ | 天本玲泉 | ― |
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