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シニア映画歓:「ザ・コーヴ」問題(野島孝一)

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シニア映画歓:「ザ・コーヴ」問題



 日本のイルカ漁を描いた米国のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(入り江)の上映中止が相次いでいる。といっても、「命を懸けてでも上映する」という館主もいるから、まったく上映されないわけではない。反対運動をしている人たちが騒げば騒ぐほどマスコミで取り上げられ、映画への関心を高めるから、結果として映画はヒットする可能性が高い。上映に抗議する人たちは、映画の宣伝に一役買っているのを承知なのか。

 海を血で染めるイルカの虐殺は、確かにショッキングだが、牛や豚だって殺されている。それを生業(なりわい)にしている人たちの生活を考えれば、軽々に是非を論じてよいものかと思う。またこの映画には盗撮場面があり、道義的問題として抗議する人の気持ちもわからぬでもない。

 しかし、この映画はそれとは別に重大な指摘をしている。イルカは水銀値が高く、食べると健康に影響を及ぼす恐れがあるという。そのイルカ肉が鯨肉と偽って販売されているというのだ。学校給食にも出されたとされる。事実なら国民の健康にかかわる重大事ではないか。水俣病に似た症状が出てきてもおかしくないのではないか。

 上映中止を訴える人たちは、水銀の数値がでたらめだと主張しているらしいが、その根拠はあるのか。いずれにせよ、関係省庁は事実関係を調査する必要がある。正確な情報がほしい。そうでないと安心して鯨の刺し身が食べられないではないか。そんな余裕はないけれど。(野島孝一)

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毎日新聞 2010年7月1日 東京夕刊

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