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琉球新報:「軍強制」は明らか 検定意見は撤回すべきだ

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pipopipo555jp

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教科書問題 「軍強制」は明らか/検定意見は撤回すべきだ


 沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関し、「日本軍による強制」の記述を修正・削除した高校歴史教科書検定意見問題で、教科用図書検定調査審議会(検定審)は、県民が求めた検定意見の撤回を認めなかった。

 「集団自決」の現場にいながら命拾いをした多くの体験者らがこれまで「軍の強制」を証言してきた。その事実を検定審が一つ一つ丹念に検証した形跡はない。

 そのことを抜きに「軍の直接的な命令」を示す根拠はないと断定することに、果たして正当性があるだろうか。

 歴史的事実を追究する努力を尽くさず、体験者の証言を顧みることもなく「集団自決」の本質とも言える「軍の強制」を削除できるほど、歴史は軽いものなのか。

乱暴な論理


 検定審は訂正申請した教科書出版社に対して「直接的な命令」「強制」の断定記述は「生徒が誤解するおそれがある」との指針を通知していた。

 指針は検定審の考えを押し付けるものである。「集団自決」の実相と真摯(しんし)に向き合った教科書執筆者や教科書出版社に対する圧力以外の何ものでもない。

 「それぞれの集団自決が、住民に対する直接的な軍の命令により行われたことを示す根拠は、現時点では確認できていない」として、検定意見から一歩も踏み出さないとあっては、結論は分かり切っていたと言わざるを得ない。

 専門家からの意見聴取にしても形式的なものだったと言えまいか。

 検定意見が歴史に照らして正しいものであれば、それを堅持することは当然のことである。

 しかし、今回の「集団自決」についての検定意見は妥当なものと言えるだろうか。

 検定審の意見聴取に対して大城将保氏(沖縄県史編集委員)は「直接命令を下した指揮官名まで判明している事例も少なくない」と指摘している。

 多くの沖縄戦研究者が検定意見を批判していることを、検定審はまず重く受け止めた上で、審議に臨むべきではなかったか。

 意見聴取に対しては、日本軍の強制をめぐって多様な意見があった。検定審は結果的に「軍の強制はなかった」との意見を採用したとも言える。

 だが、検定審がこれまでの沖縄戦研究の積み重ねを無視するに至った理由は、不透明と言わざるを得ない。検定審はその説明責任を尽くすべきである。

 「軍命を示す根拠は確認できない」との理由だけで、納得する人がどれだけいるだろうか。

 すべての「集団自決」で軍の強制を示す根拠はない。だからといって、軍の強制が明らかにあったケースがあるにもかかわらず「軍の強制」記述を一切認めないのはあまりにも乱暴な論理である。

史実後世へ


 県内全41市町村議会で「検定意見の撤回」を求める意見書が可決され、県議会は二度にわたって決議した。検定意見の撤回などを求めた9月の県民大会には11万6千人(主催者発表)が集まるなど、検定意見の撤回は県民の総意と言っていい。

 一連の大きなうねりが政府の訂正申請に応じる方針を引き出したと言える。

 教科書出版社が「集団自決」の背景をより詳しくしたことには評価する声もある。一部の教科書は検定前に近い記述が認められた。

 だが、日本軍の関与を薄めさせようとする検定審と教科書調査官の意図に変化はない。「集団自決」の重要なポイントである「軍の強制」の記述抜きには、正しい歴史を子どもたちに教えることはできないのではないか。

 渡海紀三朗文科相は検定審の意見提出を受けて「歴史の教訓を決して風化させることのないようにと願う。沖縄県民の思いを重く受け止め、これからも子どもたちにしっかりと教えていかなければならない。沖縄戦の学習がより一層充実するよう努めたい」との大臣談話を出した。

 大臣談話を実現するには「集団自決」に導いた「軍の強制」について、文科省や検定審は現地での聞き取りなど、幅広い調査を実施するべきである。

 県民要求の一つは「記述の復活」である。今回の訂正申請承認を歓迎する声もあるが、中途半端な解決では後世に禍根を残すことにもなりかねない。

 史実を後世に伝えるのは県民の責務であることを再確認したい。

(12/27 10:00)
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